中国・習近平の台湾侵攻の危機について、諸説が姦しい昨今で、当ブログでも頻繁に取り上げさせていただいています。
武力侵攻の時期は、2022年の北京季五輪後の2023年以降で、中国軍の創建100周年の2027年迄の間との説が多いですね。
その多くの声の中で、尖閣諸島への侵攻や、台湾本島の制圧は困難だと説いておられるのは、中国・台湾の軍事専門家である防衛省防衛研究所地域研究部長の門間理良(もんま・りら)氏。
ジャーナリストの吉田典史氏が、門間氏へのインタビュー記事があります。
門間氏は、2023年から2027年までの間に習近平の中共軍が、東沙島を奪取する可能性が高いと唱えておられる。
その理由は、この島を軍事基地化できれば2つの海峡に睨みを利かせられるとともに、平時における南シナ海北東海域のコントロールが容易になる事。
軍事的には比較的容易に奪え、おそらく数日もかからずに島を奪取できるはずだと門間氏。
また、東沙島には民間人がほとんど住んでいないことも重要なポイントで、民間人が多数犠牲になると国際世論が厳しくなり、中国は激しい非難を受けることになる。
しかし、犠牲になるのが軍人と公務員ならば、その非難は限定的。中国は「攻撃対象は軍事施設であり、降伏も勧告した。ある程度の死者が出たのはやむを得なかった」といった方向に話をもっていくと。
国外から激しい批判を受けることになりますが、中国政府は一顧だにしない。国内で「偉大な指導者」「毛沢東に並ぶ偉業」と称えられるメリットの方が、習近平には重要。
現時点では、台湾は真剣に東沙島を守るような態勢を作ってはいないと門間氏。
むしろ、蔡英文政権は、「東沙島が奪われた時はやむを得ない」と考えているように思えますと。
「台湾軍の犠牲を減らすために、断腸の思いで東沙島を放棄する」といった意味合いの宣言をして、それを機に台湾本島や周辺の島の守りを強固にすると同時に、世界に中国政府や中国軍がいかに危険な存在であるかを訴え、支援を求めるはずだと。
離島をあえて放棄することで、日米や西側の国々との関係を強化するほうが、政治的にメリットがあると考えている。結果的に台湾と日米や西側の国々との関係はこれまで以上に強くなると門間氏。
また、蔡英文政権は、独立に走ることなく「現状維持」を標榜し続けるとも。
台湾併合を掲げる中国は、小さな島・東沙島だけを得て満足するのか。
客観的に見れば「一歩前進、二歩後退」になりますが、中国国内では“大きな一歩”として位置づけられるはずと門間氏。
党に報道が管理されているので、「習近平主席の英明な指導の下で、我が軍が台湾当局の占拠する島を解放した」と大々的に宣伝するので、中国の大多数の国民は、拍手喝采すると。
アメリカを中心に日本や西側の国々は中国に猛反発しても、国外からの評価よりも国民の目のほうが大切な習近平は、膠着状態である台湾を統一を前進させる国内の評価のほうがメリットが大きいと。
中国軍に台湾本島全土を制圧し統一したり尖閣諸島に侵攻奪取する能力があるのか。
中国軍が台湾本島に軍事侵攻し、全土を制圧することは難しいと考えていると門間氏。
台湾本島にミサイル攻撃やサイバー攻撃を行うことは可能ですが、それに続く攻撃がないと全土を抑え込むことは難しい。まして米軍が実際に台湾支援で前面に出てくると、本島の攻略はさらに難しくなる。
1949年の建国以来、最大規模の軍事動員をかけなければ成功はしない。そのためには、相当な準備が必要になると。
尖閣諸島への侵攻については、東沙島が奪われたとしても尖閣諸島の安全保障の状況に、基本的に影響はないと門間氏。
中国軍が尖閣諸島を奪おうと侵攻するならば、日米との対決になる。米軍基地まで攻撃しないといけないのでそうなると局地戦では済まず、全面的な戦争になると。
日米と全面戦争になって敗北したとなると、習近平に限らず誰が指導者でも共産党政権は維持できない。
中国共産党にとっては、政権を維持することが最も重要。政権が倒れるリスクを負って尖閣諸島を奪うことに大きなメリットはないと門間氏。
かつて、キッシンジャーとニクソンは日本の頭越しに中国と接近をした。オバマ政権後期は、パンダハガー派が主流となり中国に翻弄され、今日の南シナ海の不法領有を産んだ。バイデン氏はその時の副大統領であり、対中接近を主導したライス補佐官(当時)も、新バイデン政権に、上院の承認を得ない手段で入閣している。
バイデン大統領の息子のチャイナゲート疑惑も晴らされていない。
日本政府や国民は、バイデン政権や米軍を信用してよいのか。
自衛隊には「自分の国は自分で守る」気概と能力があります。日本政府がその姿勢を明確に示すことができれば、アメリカ政府や米軍は、日本を、自衛隊を支援しますと門間氏。
中国との覇権争いの中で、アメリカは優位な立場を守るためには、東アジアで最も大切な同盟国である日本が韓国とも良好な関係となり、日米韓に何らかの形で台湾も加わって中国に対抗していくことが理想と考えていると門間氏。
大事なのは日米同盟。この関係をさらに強くしていくことが必要だと。
但し、そこには従来のおんぶにだっこで、核の傘に全面依存の姿勢は日本自身の為にも改編がもとめられますね。
# 冒頭の画像は、台湾・新竹市で行われた台湾軍の軍事演習(2021年1月19日)
トサミズキの葉
↓よろしかったら、お願いします。
武力侵攻の時期は、2022年の北京季五輪後の2023年以降で、中国軍の創建100周年の2027年迄の間との説が多いですね。
その多くの声の中で、尖閣諸島への侵攻や、台湾本島の制圧は困難だと説いておられるのは、中国・台湾の軍事専門家である防衛省防衛研究所地域研究部長の門間理良(もんま・りら)氏。
ジャーナリストの吉田典史氏が、門間氏へのインタビュー記事があります。
「中国が台湾の離島奪取」の可能性が濃厚、行動に出るのはいつか 防衛研究所・門間氏が見通す中国の台湾侵攻シナリオ | JBpress (ジェイビープレス) 2021.8.7(土) 吉田 典史:ジャーナリスト
終戦の日が近い。この時期になると情緒的で感覚的な「反戦平和」報道が増える。一方で、戦前、戦中の日本の行いは正しかったと論じるような報道もある。そのどちらに与することなく、平和と安全について事実に基づき、深く思索する識者の声こそ、マスメディアは伝えるべきであろう。これは、現在の国際情勢についても言える。そこで今回は、中国・台湾の軍事専門家である防衛省防衛研究所地域研究部長の門間理良(もんま・りら)氏に、台湾や尖閣諸島(沖縄)の現況と今後についてお話を伺った。
2027年までに「東沙島」奪取の可能性が高い
──門間さんは中国軍(人民解放軍)が台湾の東沙島を狙っていると論文やマスメディアで発表していますね。
門間理良氏(以下、敬称略) 中国軍が東沙島(筆者注:台湾の南西に位置し、台湾が実効支配している島)を奪取する可能性が高まっていることを4年程前から懸念し、指摘してきました。
中国にとって東沙島は重要な意味を持っています。東西約2800メートル、南北865メートルの大きさで、面積にしてわずか1.74平方キロメートルに過ぎないのですが、地政学的に重要なのです。バシー海峡の西側と台湾海峡の南側に位置しています。中国がこの島を軍事基地化できれば2つの海峡に睨みを利かせられるとともに、平時における南シナ海北東海域のコントロールが容易になります。
中国軍が東沙島を奪おうとすれば、比較的容易にできると思われます。東沙島は台湾本島南部の高雄からは約410キロメートルの距離にありますが、中国大陸の汕頭(スワトウ)からは約260キロメートルの近さなので、中国軍が航空優勢を確保しやすい。標高は最も高いところで 7メートルの平坦な地形です。また、周囲は海ですから攻撃がしやすい。おそらく数日もかからずに島を奪取できるはずです。
東沙島には民間人がほとんど住んでいないことも重要なポイントです。現在、台湾軍将兵と海巡署(日本の海上保安庁に相当)の職員があわせて数百人いるだけです。もしも短距離弾道ミサイル、巡航ミサイルによる攻撃や着上陸作戦などで民間人が多数犠牲になると国際世論が厳しくなり、中国は激しい非難を受けます。しかし、犠牲になるのが軍人と公務員ならば、その非難は限定的となるでしょう。中国は「攻撃対象は軍事施設であり、降伏も勧告した。ある程度の死者が出たのはやむを得なかった」といった方向に話をもっていくことでしょう。
攻撃があるとしたら、その時期は2023年以降の可能性が高い。2022年には北京で冬季五輪が開催されます。また、同年秋には中国共産党大会が開催され、習近平が総書記兼軍事委員会主席に3選されるはずです。従って、2027年の党大会で引退すると仮定すると、2023年から2027年までの間に東沙島を奪取する可能性が高い。
東沙島を奪取すると、当然、国外から激しい批判を受けることになりますが、中国政府は一顧だにしないでしょう。国内では「偉大な指導者」「毛沢東に並ぶ偉業」と称えられ、秋の党大会で「統一事業は動き出した。後事は後継者に託す」と退くことが考えられます。
2027年までに中国が重大な軍事行動を起こすと考える理由は他にもあります。共産党政権の強力な後ろ盾である中国軍の創建100周年が2027年なのです。「銃口から政権が生まれる」と喝破した毛沢東が作った国は、この重要な年を軍事的勝利で彩りたいと考えているのではないでしょうか。
蔡英文政権の損得勘定
──習近平は英雄になりたいのですね。日本のメディアの報道によると、台湾は中国軍の動向を警戒し、東沙島で軍事訓練をしているようです。アメリカも、前政権では台湾への武器売却を繰り返していました。
門間 現時点では、台湾は真剣に東沙島を守るような態勢を作ってはいないと私は見ています。例えば、中国の巡航ミサイルや弾道ミサイルを迎撃するミサイルすら配備していないのです。東沙島を守るために基地を頑丈に造り直すこともしていません。
アメリカが供与を決定した武器の中に、高機動ロケット砲システム(HIMARS)があります。HIMARSはC-130H輸送機で空輸でき、最大射程は300キロメートルに及びます。東沙島に配備されれば、中国へのけん制になるかもしれませんが、それは将来の話です。こういう現状では東沙島は簡単に奪われるし、奪い返すのも困難です。台湾が東沙島を奪還しようとしないのならば、アメリカも軍を送ることはしないはずです。
むしろ、蔡英文政権は、「東沙島が奪われた時はやむを得ない」と考えているように私には思えます。実際に東沙島を侵攻されたら、「台湾軍の犠牲を減らすために、断腸の思いで東沙島を放棄する」といった意味合いの宣言をするのではないか。そして、それを機に台湾本島や周辺の島の守りを強固にするはずです。世界に中国政府や中国軍がいかに危険な存在であるかを訴え、支援を求めるでしょう。
蔡英文政権は、中国と軍事衝突するよりも、台湾の政治経済に実害を与えない離島をあえて放棄することで、日米や西側の国々との関係を強化するほうが、政治的にメリットがあると考えているように思います。結果的に台湾と日米や西側の国々との関係はこれまで以上に強くなるでしょう。
とはいえ、アメリカが「1つの中国」政策を否定して台湾独立を支援することはありません。そのことを十分承知している蔡英文政権は、独立に走ることなく「現状維持」を標榜し続けると思われます。
大多数の中国国民は拍手喝采?
──台湾を脅し続けた結果、得たのが小さな島・東沙島だけだったとなると、習近平の威信や求心力に影響は出ないのでしょうか?
門間 客観的に見れば「一歩前進、二歩後退」になりますが、中国国内では“大きな一歩”として位置づけられるはずです。中国では、報道機関が中国共産党の政策を宣伝する役割を担っています。党に報道が管理されているのです。習近平政権はそれをふんだんに利用しているし、これからも変わらないと思います。
東沙島を奪取した時には、「習近平主席の英明な指導の下で、我が軍が台湾当局の占拠する島を解放した」と大々的に宣伝し、統一に向けての「偉大な一歩」を踏み出したと報じるはずです。中国からすると、1950年代半ばから膠着状態である台湾を統一するのは、筆頭格の使命と言えます。中国の大多数の国民は、拍手喝采するでしょう。
一方でアメリカを中心に日本や西側の国々は中国に猛反発します。それで習近平政権は割に合うのかと言えば、実は大きなメリットになるだろうと思います。中国が重きを置くのは外交よりも内政だからです。国外からの評価よりも国民の目のほうが大切なのです。
尖閣諸島に侵攻してくる可能性は低い
──そもそも、中国軍に台湾本島全土を制圧し、統一をする力はあるのでしょうか? 産経新聞(2021年6月18日)などによると、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、上院歳出委員会の公聴会で、議員の質問にこう答えたとあります。「中国が台湾を軍事侵攻する可能性について、軍事的な能力が不足している上、動機も見当たらない。短期的には低いと考えている」。
門間 私も中国軍が台湾本島に軍事侵攻し、全土を制圧することは難しいと考えています。台湾の面積は九州よりもやや小さいくらいで、人口は約2300万人です。そこに侵攻しようとすると、中国は1949年の建国以来、最大規模の軍事動員をかけなければ成功はしない。そのためには、相当な準備が必要になります。例えば、大量の軍需物資を台湾に比較的近い福建省や広東省に集積しなければなりません。その動きを米軍は偵察衛星や電波情報をはじめ様々な形で事前に把握できます。米軍は警戒を高め、台湾有事への対応準備ができるのです。
中国軍は、台湾本島にミサイル攻撃やサイバー攻撃を行うことは可能ですが、それに続く攻撃がないと全土を抑え込むことは難しい。まして米軍が実際に台湾支援で前面に出てくると、本島の攻略はさらに難しくなるでしょう。
──仮に東沙島が奪われたとすると、尖閣諸島をはじめとする日本の安全保障体制にどのような影響があるでしょうか?
門間 尖閣諸島の安全保障の状況に、基本的に影響はないと思います。アメリカの大統領や国務長官が「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用範囲である」と明言してきました。
中国が2013年に「東シナ海防空識別区」を設定して以降、航空自衛隊の緊急発進が増えてきましたが、中国軍機は尖閣諸島の上空付近を避けて飛行しています。日米を警戒し、一定の配慮をしているのではないか、と思います。
中国軍が尖閣諸島を奪おうと侵攻するならば、日米との対決になります。中国が米軍の自衛隊への支援を防ごうとする場合、那覇(沖縄)、佐世保(長崎)、岩国(山口)、さらに横須賀(神奈川)の米軍基地まで攻撃しないといけない。こうなると局地戦では済まず、全面的な戦争になります。
もしも日米と全面戦争になって敗北したとなると、習近平に限らず誰が指導者でも共産党政権は維持できないのではないか。中国共産党にとっては、政権を維持することが最も重要なのです。政権が倒れるリスクを負って尖閣諸島を奪うことに大きなメリットはない。私の見立てでは、中国軍が尖閣諸島に大規模に侵攻してくる可能性は低いのです。
──日本政府や国民は、アメリカ政府や米軍を信用してよいのでしょうか? 土壇場になると中国政権と水面下で手打ちにして、日本政府に不利な状況を飲ませることをしないでしょうか?
門間 自衛隊には「自分の国は自分で守る」気概と能力があります。日本政府がその姿勢を明確に示すことができれば、アメリカ政府や米軍は、日本を、自衛隊を支援します。
大事なのは日米同盟。この関係をさらに強くしていくことが必要です。
今後、少なくとも30年は続くであろう中国との覇権争いの中で、アメリカは優位な立場を守ろうとしています。そのためには、東アジアで最も大切な同盟国である日本が韓国とも良好な関係となり、日米韓に何らかの形で台湾も加わって中国に対抗していくことが理想と考えているでしょう。
終戦の日が近い。この時期になると情緒的で感覚的な「反戦平和」報道が増える。一方で、戦前、戦中の日本の行いは正しかったと論じるような報道もある。そのどちらに与することなく、平和と安全について事実に基づき、深く思索する識者の声こそ、マスメディアは伝えるべきであろう。これは、現在の国際情勢についても言える。そこで今回は、中国・台湾の軍事専門家である防衛省防衛研究所地域研究部長の門間理良(もんま・りら)氏に、台湾や尖閣諸島(沖縄)の現況と今後についてお話を伺った。
2027年までに「東沙島」奪取の可能性が高い
──門間さんは中国軍(人民解放軍)が台湾の東沙島を狙っていると論文やマスメディアで発表していますね。
門間理良氏(以下、敬称略) 中国軍が東沙島(筆者注:台湾の南西に位置し、台湾が実効支配している島)を奪取する可能性が高まっていることを4年程前から懸念し、指摘してきました。
中国にとって東沙島は重要な意味を持っています。東西約2800メートル、南北865メートルの大きさで、面積にしてわずか1.74平方キロメートルに過ぎないのですが、地政学的に重要なのです。バシー海峡の西側と台湾海峡の南側に位置しています。中国がこの島を軍事基地化できれば2つの海峡に睨みを利かせられるとともに、平時における南シナ海北東海域のコントロールが容易になります。
中国軍が東沙島を奪おうとすれば、比較的容易にできると思われます。東沙島は台湾本島南部の高雄からは約410キロメートルの距離にありますが、中国大陸の汕頭(スワトウ)からは約260キロメートルの近さなので、中国軍が航空優勢を確保しやすい。標高は最も高いところで 7メートルの平坦な地形です。また、周囲は海ですから攻撃がしやすい。おそらく数日もかからずに島を奪取できるはずです。
東沙島には民間人がほとんど住んでいないことも重要なポイントです。現在、台湾軍将兵と海巡署(日本の海上保安庁に相当)の職員があわせて数百人いるだけです。もしも短距離弾道ミサイル、巡航ミサイルによる攻撃や着上陸作戦などで民間人が多数犠牲になると国際世論が厳しくなり、中国は激しい非難を受けます。しかし、犠牲になるのが軍人と公務員ならば、その非難は限定的となるでしょう。中国は「攻撃対象は軍事施設であり、降伏も勧告した。ある程度の死者が出たのはやむを得なかった」といった方向に話をもっていくことでしょう。
攻撃があるとしたら、その時期は2023年以降の可能性が高い。2022年には北京で冬季五輪が開催されます。また、同年秋には中国共産党大会が開催され、習近平が総書記兼軍事委員会主席に3選されるはずです。従って、2027年の党大会で引退すると仮定すると、2023年から2027年までの間に東沙島を奪取する可能性が高い。
東沙島を奪取すると、当然、国外から激しい批判を受けることになりますが、中国政府は一顧だにしないでしょう。国内では「偉大な指導者」「毛沢東に並ぶ偉業」と称えられ、秋の党大会で「統一事業は動き出した。後事は後継者に託す」と退くことが考えられます。
2027年までに中国が重大な軍事行動を起こすと考える理由は他にもあります。共産党政権の強力な後ろ盾である中国軍の創建100周年が2027年なのです。「銃口から政権が生まれる」と喝破した毛沢東が作った国は、この重要な年を軍事的勝利で彩りたいと考えているのではないでしょうか。
蔡英文政権の損得勘定
──習近平は英雄になりたいのですね。日本のメディアの報道によると、台湾は中国軍の動向を警戒し、東沙島で軍事訓練をしているようです。アメリカも、前政権では台湾への武器売却を繰り返していました。
門間 現時点では、台湾は真剣に東沙島を守るような態勢を作ってはいないと私は見ています。例えば、中国の巡航ミサイルや弾道ミサイルを迎撃するミサイルすら配備していないのです。東沙島を守るために基地を頑丈に造り直すこともしていません。
アメリカが供与を決定した武器の中に、高機動ロケット砲システム(HIMARS)があります。HIMARSはC-130H輸送機で空輸でき、最大射程は300キロメートルに及びます。東沙島に配備されれば、中国へのけん制になるかもしれませんが、それは将来の話です。こういう現状では東沙島は簡単に奪われるし、奪い返すのも困難です。台湾が東沙島を奪還しようとしないのならば、アメリカも軍を送ることはしないはずです。
むしろ、蔡英文政権は、「東沙島が奪われた時はやむを得ない」と考えているように私には思えます。実際に東沙島を侵攻されたら、「台湾軍の犠牲を減らすために、断腸の思いで東沙島を放棄する」といった意味合いの宣言をするのではないか。そして、それを機に台湾本島や周辺の島の守りを強固にするはずです。世界に中国政府や中国軍がいかに危険な存在であるかを訴え、支援を求めるでしょう。
蔡英文政権は、中国と軍事衝突するよりも、台湾の政治経済に実害を与えない離島をあえて放棄することで、日米や西側の国々との関係を強化するほうが、政治的にメリットがあると考えているように思います。結果的に台湾と日米や西側の国々との関係はこれまで以上に強くなるでしょう。
とはいえ、アメリカが「1つの中国」政策を否定して台湾独立を支援することはありません。そのことを十分承知している蔡英文政権は、独立に走ることなく「現状維持」を標榜し続けると思われます。
大多数の中国国民は拍手喝采?
──台湾を脅し続けた結果、得たのが小さな島・東沙島だけだったとなると、習近平の威信や求心力に影響は出ないのでしょうか?
門間 客観的に見れば「一歩前進、二歩後退」になりますが、中国国内では“大きな一歩”として位置づけられるはずです。中国では、報道機関が中国共産党の政策を宣伝する役割を担っています。党に報道が管理されているのです。習近平政権はそれをふんだんに利用しているし、これからも変わらないと思います。
東沙島を奪取した時には、「習近平主席の英明な指導の下で、我が軍が台湾当局の占拠する島を解放した」と大々的に宣伝し、統一に向けての「偉大な一歩」を踏み出したと報じるはずです。中国からすると、1950年代半ばから膠着状態である台湾を統一するのは、筆頭格の使命と言えます。中国の大多数の国民は、拍手喝采するでしょう。
一方でアメリカを中心に日本や西側の国々は中国に猛反発します。それで習近平政権は割に合うのかと言えば、実は大きなメリットになるだろうと思います。中国が重きを置くのは外交よりも内政だからです。国外からの評価よりも国民の目のほうが大切なのです。
尖閣諸島に侵攻してくる可能性は低い
──そもそも、中国軍に台湾本島全土を制圧し、統一をする力はあるのでしょうか? 産経新聞(2021年6月18日)などによると、米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は、上院歳出委員会の公聴会で、議員の質問にこう答えたとあります。「中国が台湾を軍事侵攻する可能性について、軍事的な能力が不足している上、動機も見当たらない。短期的には低いと考えている」。
門間 私も中国軍が台湾本島に軍事侵攻し、全土を制圧することは難しいと考えています。台湾の面積は九州よりもやや小さいくらいで、人口は約2300万人です。そこに侵攻しようとすると、中国は1949年の建国以来、最大規模の軍事動員をかけなければ成功はしない。そのためには、相当な準備が必要になります。例えば、大量の軍需物資を台湾に比較的近い福建省や広東省に集積しなければなりません。その動きを米軍は偵察衛星や電波情報をはじめ様々な形で事前に把握できます。米軍は警戒を高め、台湾有事への対応準備ができるのです。
中国軍は、台湾本島にミサイル攻撃やサイバー攻撃を行うことは可能ですが、それに続く攻撃がないと全土を抑え込むことは難しい。まして米軍が実際に台湾支援で前面に出てくると、本島の攻略はさらに難しくなるでしょう。
──仮に東沙島が奪われたとすると、尖閣諸島をはじめとする日本の安全保障体制にどのような影響があるでしょうか?
門間 尖閣諸島の安全保障の状況に、基本的に影響はないと思います。アメリカの大統領や国務長官が「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用範囲である」と明言してきました。
中国が2013年に「東シナ海防空識別区」を設定して以降、航空自衛隊の緊急発進が増えてきましたが、中国軍機は尖閣諸島の上空付近を避けて飛行しています。日米を警戒し、一定の配慮をしているのではないか、と思います。
中国軍が尖閣諸島を奪おうと侵攻するならば、日米との対決になります。中国が米軍の自衛隊への支援を防ごうとする場合、那覇(沖縄)、佐世保(長崎)、岩国(山口)、さらに横須賀(神奈川)の米軍基地まで攻撃しないといけない。こうなると局地戦では済まず、全面的な戦争になります。
もしも日米と全面戦争になって敗北したとなると、習近平に限らず誰が指導者でも共産党政権は維持できないのではないか。中国共産党にとっては、政権を維持することが最も重要なのです。政権が倒れるリスクを負って尖閣諸島を奪うことに大きなメリットはない。私の見立てでは、中国軍が尖閣諸島に大規模に侵攻してくる可能性は低いのです。
──日本政府や国民は、アメリカ政府や米軍を信用してよいのでしょうか? 土壇場になると中国政権と水面下で手打ちにして、日本政府に不利な状況を飲ませることをしないでしょうか?
門間 自衛隊には「自分の国は自分で守る」気概と能力があります。日本政府がその姿勢を明確に示すことができれば、アメリカ政府や米軍は、日本を、自衛隊を支援します。
大事なのは日米同盟。この関係をさらに強くしていくことが必要です。
今後、少なくとも30年は続くであろう中国との覇権争いの中で、アメリカは優位な立場を守ろうとしています。そのためには、東アジアで最も大切な同盟国である日本が韓国とも良好な関係となり、日米韓に何らかの形で台湾も加わって中国に対抗していくことが理想と考えているでしょう。
門間氏は、2023年から2027年までの間に習近平の中共軍が、東沙島を奪取する可能性が高いと唱えておられる。
その理由は、この島を軍事基地化できれば2つの海峡に睨みを利かせられるとともに、平時における南シナ海北東海域のコントロールが容易になる事。
軍事的には比較的容易に奪え、おそらく数日もかからずに島を奪取できるはずだと門間氏。
また、東沙島には民間人がほとんど住んでいないことも重要なポイントで、民間人が多数犠牲になると国際世論が厳しくなり、中国は激しい非難を受けることになる。
しかし、犠牲になるのが軍人と公務員ならば、その非難は限定的。中国は「攻撃対象は軍事施設であり、降伏も勧告した。ある程度の死者が出たのはやむを得なかった」といった方向に話をもっていくと。
国外から激しい批判を受けることになりますが、中国政府は一顧だにしない。国内で「偉大な指導者」「毛沢東に並ぶ偉業」と称えられるメリットの方が、習近平には重要。
現時点では、台湾は真剣に東沙島を守るような態勢を作ってはいないと門間氏。
むしろ、蔡英文政権は、「東沙島が奪われた時はやむを得ない」と考えているように思えますと。
「台湾軍の犠牲を減らすために、断腸の思いで東沙島を放棄する」といった意味合いの宣言をして、それを機に台湾本島や周辺の島の守りを強固にすると同時に、世界に中国政府や中国軍がいかに危険な存在であるかを訴え、支援を求めるはずだと。
離島をあえて放棄することで、日米や西側の国々との関係を強化するほうが、政治的にメリットがあると考えている。結果的に台湾と日米や西側の国々との関係はこれまで以上に強くなると門間氏。
また、蔡英文政権は、独立に走ることなく「現状維持」を標榜し続けるとも。
台湾併合を掲げる中国は、小さな島・東沙島だけを得て満足するのか。
客観的に見れば「一歩前進、二歩後退」になりますが、中国国内では“大きな一歩”として位置づけられるはずと門間氏。
党に報道が管理されているので、「習近平主席の英明な指導の下で、我が軍が台湾当局の占拠する島を解放した」と大々的に宣伝するので、中国の大多数の国民は、拍手喝采すると。
アメリカを中心に日本や西側の国々は中国に猛反発しても、国外からの評価よりも国民の目のほうが大切な習近平は、膠着状態である台湾を統一を前進させる国内の評価のほうがメリットが大きいと。
中国軍に台湾本島全土を制圧し統一したり尖閣諸島に侵攻奪取する能力があるのか。
中国軍が台湾本島に軍事侵攻し、全土を制圧することは難しいと考えていると門間氏。
台湾本島にミサイル攻撃やサイバー攻撃を行うことは可能ですが、それに続く攻撃がないと全土を抑え込むことは難しい。まして米軍が実際に台湾支援で前面に出てくると、本島の攻略はさらに難しくなる。
1949年の建国以来、最大規模の軍事動員をかけなければ成功はしない。そのためには、相当な準備が必要になると。
尖閣諸島への侵攻については、東沙島が奪われたとしても尖閣諸島の安全保障の状況に、基本的に影響はないと門間氏。
中国軍が尖閣諸島を奪おうと侵攻するならば、日米との対決になる。米軍基地まで攻撃しないといけないのでそうなると局地戦では済まず、全面的な戦争になると。
日米と全面戦争になって敗北したとなると、習近平に限らず誰が指導者でも共産党政権は維持できない。
中国共産党にとっては、政権を維持することが最も重要。政権が倒れるリスクを負って尖閣諸島を奪うことに大きなメリットはないと門間氏。
かつて、キッシンジャーとニクソンは日本の頭越しに中国と接近をした。オバマ政権後期は、パンダハガー派が主流となり中国に翻弄され、今日の南シナ海の不法領有を産んだ。バイデン氏はその時の副大統領であり、対中接近を主導したライス補佐官(当時)も、新バイデン政権に、上院の承認を得ない手段で入閣している。
バイデン大統領の息子のチャイナゲート疑惑も晴らされていない。
日本政府や国民は、バイデン政権や米軍を信用してよいのか。
自衛隊には「自分の国は自分で守る」気概と能力があります。日本政府がその姿勢を明確に示すことができれば、アメリカ政府や米軍は、日本を、自衛隊を支援しますと門間氏。
中国との覇権争いの中で、アメリカは優位な立場を守るためには、東アジアで最も大切な同盟国である日本が韓国とも良好な関係となり、日米韓に何らかの形で台湾も加わって中国に対抗していくことが理想と考えていると門間氏。
大事なのは日米同盟。この関係をさらに強くしていくことが必要だと。
但し、そこには従来のおんぶにだっこで、核の傘に全面依存の姿勢は日本自身の為にも改編がもとめられますね。
# 冒頭の画像は、台湾・新竹市で行われた台湾軍の軍事演習(2021年1月19日)
トサミズキの葉
↓よろしかったら、お願いします。