秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表されましたね。
七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。
おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだと、福島香織さん。
今日の経済発展を産んだ鄧小平の流れを継ぐ共青団派と、毛沢東の専制政治時代への復帰を目指す習近平との 2大勢力。
最近の、中国経済の低迷、ゼロコロナ政策での人民のストレスの中、北戴河会議で習近平の任期延長は認められたものの、経済復活の条件が付けられたとの話は、当ブログでも取り上げさせていただいていました。
ただ、5年、その権力を保てるかは別だと解説していただいているのは、元産経新聞中国駐在記者で、中国出入り禁止となった、福島香織さん。
中国が対日姿勢を急転換か その訳は? - 遊爺雑記帳
毛沢東の独裁政治が招いた天安門事件。その反省で、集団指導体制と定年制を導入し、日本の戦後の経済の急成長に学び、今日の中国経済大国を創る元となった鄧小平の共青団派。
その集団指導と定年制を、毛沢東時代に戻そうとしている習近平。
秋の党大会で、その目論見が達成されるはずでしたが、このところの国内経済の低迷、ゼロコロナでの都市封鎖、諸外国の世界の工場としてのサプライチェーン依存からの脱却の動きで、逆風にさらされている習近平。
党大会前に、OBを交えておこなれる、人事協議の北戴河会議。習近平の強引な定年延長は承認されたものの、経済復興の条件付きとなったのですね。
つまり、習近平の独裁ではなく、鄧小平路線と毛沢東路線の対立復活。
鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろうと、福島さん。
この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになると。
最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。
これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないかと福島さん。
権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。
すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。
しかし、後継が育っていない習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろい。
中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも習近平派の王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろうと福島さん。
習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からないと。
習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだとも。
そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンかと、福島さん。
゜だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないとも。
国内の支持率低下への対策で、外国との緊張を高め、民意を逸らすのは中国、韓国、北朝鮮、ロシアといった日本の近隣諸国の常套手段とは、諸兄がご承知の通りです。
福島さんの知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していたのだそうです。
# 冒頭の画像は、今年3月の中国全人代の閉幕式に出席した習近平国家主席(左)と李克強首相(ロイター)
【石平のChina Watch】北戴河会議後の変化と今後 - 産経ニュース
この花の名前は、キバナコスモス
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。
おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだと、福島香織さん。
今日の経済発展を産んだ鄧小平の流れを継ぐ共青団派と、毛沢東の専制政治時代への復帰を目指す習近平との 2大勢力。
最近の、中国経済の低迷、ゼロコロナ政策での人民のストレスの中、北戴河会議で習近平の任期延長は認められたものの、経済復活の条件が付けられたとの話は、当ブログでも取り上げさせていただいていました。
ただ、5年、その権力を保てるかは別だと解説していただいているのは、元産経新聞中国駐在記者で、中国出入り禁止となった、福島香織さん。
中国が対日姿勢を急転換か その訳は? - 遊爺雑記帳
習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道 | JBpress (ジェイビープレス) 2022.9.1(木) 福島 香織:ジャーナリスト
秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表された。七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。
思ったより早い開催となったのは、おそらく人事に大きな波乱の要素が今のところない、ということだろう。おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだ。
ただ、5年、その権力を保てるかは別だ。周辺の状況をみるに、習近平が圧倒的な権力を掌握しての3期目続投ではなく、今の「習近平 vs.李克強」という党内に「2つの司令部」の権力闘争状況を含めた集団指導体制の継続ということではないだろうか。つまり、党大会で決着がつくと思われていた権力闘争が党大会では終わらず、継続するということだ。
台湾の親中紙の「聯合報」と「経済日報」が8月25日に、「『李上習不下』(李克強が総書記になり、習近平は国家主席と軍事委主席の職位を維持して、権力闘争が継続すること)が“確定”した」と党内筋の話として報じていたが、このニュースはすぐに削除された。可能性としてはこういう形もゼロではないが、このような人事が実現するならば、もう少し周辺がざわつくのではないかと思われる。
では、どのような人事で、どのような路線が党大会後に展開されるのだろう。ちょっと気が早いが、今の段階でありえそうな想定を出してみよう。
李克強と習近平がアピールする鄧小平路線と毛沢東路線
河北省で8月1日から15日まで行われた夏の非公式会議、北戴河会議では、習近平が外交、経済、新型コロナ政策、一帯一路などの失敗について、かなり厳しい批判の矢面に立ったとみられている。
内容ははっきりとはわかっていないが、明確にされたのは、8月16日に李克強が経済特区の深圳を視察し、同じ日に習近平が遼寧省錦州市の遼瀋戦役革命記念館を訪れたことだ。
とみられている。
深圳では李克強が鄧小平像に献花し、自ら鄧小平路線の継承者であることをアピールし、企業家や南東部沿海省市の経済官僚を集めて経済座談会も行った。
一方、遼瀋戦役、つまり国共内戦三大戦役の1つである1948年の遼瀋戦役の現場を視察した習近平は、毛沢東路線の継承者であることをアピールしたといえる。遼瀋戦役は毛沢東の戦争であり、国共内戦は今の台湾問題の根源となる戦争だったので、習近平としては、毛沢東の成しえなかった夢を受け継ぐ、つまり台湾を中華民国から「解放」し統一する、というシグナルを発した
この北戴河会議直後、李克強と習近平が、それぞれ鄧小平路線と毛沢東路線の両極端をアピールした背景を想像力逞しくすると、北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない。
ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。
おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる。
「劣化版」の戦いはずるずる続く
では、最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。
次の党大会の指導部の陣容を想像すると、これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないか、と思われる。
政治局常務委員7人のうち、習近平を除く68歳以上の老人が引退し、67歳以下が全員残るとすると、引退するのは72歳の栗戦書と68歳の韓正の2人。政治局常務委員の定員数が拡大されないなら、新たに昇進するのは2人で、常識的な予想であれば、現政治局委員で副首相を務める胡春華と丁薛祥の2人だろう。
胡春華は李克強、汪洋の両方から可愛がられている共青団派のエースであり、鄧小平路線の継承者だ。丁薛祥は習近平の秘書役をしてきた習近平の側近で、頭はいいが、党内で重視される、いわゆる行政実務経験が十分ではない。つまり総理や総書記が務まる器ではない。
そうすると、政治局常務委員7人は、習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、丁薛祥、胡春華となる。李克強派(鄧小平路線継承)が李克強、汪洋、趙楽際、胡春華の4人、習近平派が習近平、王滬寧、丁薛祥の3人で、李克強派が有利になる。
仮に汚職の噂が絶えない趙楽際が引退するとしてもう1人あがるとしたら、宣伝部長で習近平派の黄坤明の可能性があるが、丁薛祥にしても黄坤明にしても小粒感が否めない。また、そもそも王滬寧自身は、江沢民、胡錦涛、習近平という、派閥の色合いの違う3人の指導者とうまくやってきた玉虫色のキャラクターであり、単純に習近平派ともいえない。
政治局25人の面子を考えると、年齢的に11人が引退することになる。この引退者の中に劉鶴(副首相、習近平の経済ブレーン)、栗戦書(全人代常務委員長)、陳希(中央組織部長)が含まれる。この3人は習近平の側近の中で、比較的能力が高く、しかも習近平が心から信頼を置いている人物だ。この3人が政治局を引退することは習近平に大きな痛手となろう。
なぜなら、この3人を除けばその他の習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろいで、しかも習近平の権力におもねって近寄ってくるに過ぎず、いまいち信用されていないからだ。具体的には蔡奇(北京市書記)、李強(上海市書記)、陳敏爾(重慶市書記)、李希(広東省書記)、丁薛祥(中央弁公庁主任)、黄坤明(中央宣伝部長)、李鴻忠(天津市書記)の7人である。この中で本来、政治局常務委員への出世が期待されていた蔡奇、李強、陳敏爾、李希は全員、新型コロナ対応や電力問題などで行政評価にミソがつき、その無能ぶりを露呈してしまった。彼らが政治局常務委員に出世できるとはちょっと考えにくい。
こうした状況で、権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。
すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。李克強は能力的に総書記も十分に務められるので、聯合報の特ダネのような「李克強総書記説」が流れるのだろう。ただ、李克強が総書記になってしまうと、総書記を引退した習近平が首相や全人代委員長など格下の職位に就くことは党内的にはありえないので、政治局常務委員7人では足りなくなる。
中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろう。
習近平が台湾統一を試みる可能性
こういう状況なので、党大会のあとに展開する中国の状況としては、現在の路線矛盾を抱えながら、外交の孤立化、経済の停滞、社会の混乱が長期化するだろうとの予測が出ている。
つまりは、習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からない。
要するに習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。
そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか。
だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう。台湾ではロシア・ウクライナ戦争後、防衛費増強と徴兵制延長の問題がかなりホットな話題として議論されているが 8月上旬、ペロシ米下院議長の訪台後に行われた中華民意研究協会の世論調査では、74.7%が徴兵制を現在の4カ月から1年に延長することに賛成している。
知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していた。
党大会まであと1カ月半、今後どのような変化があるかまだ分からないが、なかなか厳しく不穏な時代が始まろうとしているといえよう。
秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表された。七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。
思ったより早い開催となったのは、おそらく人事に大きな波乱の要素が今のところない、ということだろう。おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだ。
ただ、5年、その権力を保てるかは別だ。周辺の状況をみるに、習近平が圧倒的な権力を掌握しての3期目続投ではなく、今の「習近平 vs.李克強」という党内に「2つの司令部」の権力闘争状況を含めた集団指導体制の継続ということではないだろうか。つまり、党大会で決着がつくと思われていた権力闘争が党大会では終わらず、継続するということだ。
台湾の親中紙の「聯合報」と「経済日報」が8月25日に、「『李上習不下』(李克強が総書記になり、習近平は国家主席と軍事委主席の職位を維持して、権力闘争が継続すること)が“確定”した」と党内筋の話として報じていたが、このニュースはすぐに削除された。可能性としてはこういう形もゼロではないが、このような人事が実現するならば、もう少し周辺がざわつくのではないかと思われる。
では、どのような人事で、どのような路線が党大会後に展開されるのだろう。ちょっと気が早いが、今の段階でありえそうな想定を出してみよう。
李克強と習近平がアピールする鄧小平路線と毛沢東路線
河北省で8月1日から15日まで行われた夏の非公式会議、北戴河会議では、習近平が外交、経済、新型コロナ政策、一帯一路などの失敗について、かなり厳しい批判の矢面に立ったとみられている。
内容ははっきりとはわかっていないが、明確にされたのは、8月16日に李克強が経済特区の深圳を視察し、同じ日に習近平が遼寧省錦州市の遼瀋戦役革命記念館を訪れたことだ。
とみられている。
深圳では李克強が鄧小平像に献花し、自ら鄧小平路線の継承者であることをアピールし、企業家や南東部沿海省市の経済官僚を集めて経済座談会も行った。
一方、遼瀋戦役、つまり国共内戦三大戦役の1つである1948年の遼瀋戦役の現場を視察した習近平は、毛沢東路線の継承者であることをアピールしたといえる。遼瀋戦役は毛沢東の戦争であり、国共内戦は今の台湾問題の根源となる戦争だったので、習近平としては、毛沢東の成しえなかった夢を受け継ぐ、つまり台湾を中華民国から「解放」し統一する、というシグナルを発した
この北戴河会議直後、李克強と習近平が、それぞれ鄧小平路線と毛沢東路線の両極端をアピールした背景を想像力逞しくすると、北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない。
ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。
おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる。
「劣化版」の戦いはずるずる続く
では、最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。
次の党大会の指導部の陣容を想像すると、これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないか、と思われる。
政治局常務委員7人のうち、習近平を除く68歳以上の老人が引退し、67歳以下が全員残るとすると、引退するのは72歳の栗戦書と68歳の韓正の2人。政治局常務委員の定員数が拡大されないなら、新たに昇進するのは2人で、常識的な予想であれば、現政治局委員で副首相を務める胡春華と丁薛祥の2人だろう。
胡春華は李克強、汪洋の両方から可愛がられている共青団派のエースであり、鄧小平路線の継承者だ。丁薛祥は習近平の秘書役をしてきた習近平の側近で、頭はいいが、党内で重視される、いわゆる行政実務経験が十分ではない。つまり総理や総書記が務まる器ではない。
そうすると、政治局常務委員7人は、習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、丁薛祥、胡春華となる。李克強派(鄧小平路線継承)が李克強、汪洋、趙楽際、胡春華の4人、習近平派が習近平、王滬寧、丁薛祥の3人で、李克強派が有利になる。
仮に汚職の噂が絶えない趙楽際が引退するとしてもう1人あがるとしたら、宣伝部長で習近平派の黄坤明の可能性があるが、丁薛祥にしても黄坤明にしても小粒感が否めない。また、そもそも王滬寧自身は、江沢民、胡錦涛、習近平という、派閥の色合いの違う3人の指導者とうまくやってきた玉虫色のキャラクターであり、単純に習近平派ともいえない。
政治局25人の面子を考えると、年齢的に11人が引退することになる。この引退者の中に劉鶴(副首相、習近平の経済ブレーン)、栗戦書(全人代常務委員長)、陳希(中央組織部長)が含まれる。この3人は習近平の側近の中で、比較的能力が高く、しかも習近平が心から信頼を置いている人物だ。この3人が政治局を引退することは習近平に大きな痛手となろう。
なぜなら、この3人を除けばその他の習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろいで、しかも習近平の権力におもねって近寄ってくるに過ぎず、いまいち信用されていないからだ。具体的には蔡奇(北京市書記)、李強(上海市書記)、陳敏爾(重慶市書記)、李希(広東省書記)、丁薛祥(中央弁公庁主任)、黄坤明(中央宣伝部長)、李鴻忠(天津市書記)の7人である。この中で本来、政治局常務委員への出世が期待されていた蔡奇、李強、陳敏爾、李希は全員、新型コロナ対応や電力問題などで行政評価にミソがつき、その無能ぶりを露呈してしまった。彼らが政治局常務委員に出世できるとはちょっと考えにくい。
こうした状況で、権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。
すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。李克強は能力的に総書記も十分に務められるので、聯合報の特ダネのような「李克強総書記説」が流れるのだろう。ただ、李克強が総書記になってしまうと、総書記を引退した習近平が首相や全人代委員長など格下の職位に就くことは党内的にはありえないので、政治局常務委員7人では足りなくなる。
中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろう。
習近平が台湾統一を試みる可能性
こういう状況なので、党大会のあとに展開する中国の状況としては、現在の路線矛盾を抱えながら、外交の孤立化、経済の停滞、社会の混乱が長期化するだろうとの予測が出ている。
つまりは、習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からない。
要するに習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。
そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか。
だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう。台湾ではロシア・ウクライナ戦争後、防衛費増強と徴兵制延長の問題がかなりホットな話題として議論されているが 8月上旬、ペロシ米下院議長の訪台後に行われた中華民意研究協会の世論調査では、74.7%が徴兵制を現在の4カ月から1年に延長することに賛成している。
知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していた。
党大会まであと1カ月半、今後どのような変化があるかまだ分からないが、なかなか厳しく不穏な時代が始まろうとしているといえよう。
毛沢東の独裁政治が招いた天安門事件。その反省で、集団指導体制と定年制を導入し、日本の戦後の経済の急成長に学び、今日の中国経済大国を創る元となった鄧小平の共青団派。
その集団指導と定年制を、毛沢東時代に戻そうとしている習近平。
秋の党大会で、その目論見が達成されるはずでしたが、このところの国内経済の低迷、ゼロコロナでの都市封鎖、諸外国の世界の工場としてのサプライチェーン依存からの脱却の動きで、逆風にさらされている習近平。
党大会前に、OBを交えておこなれる、人事協議の北戴河会議。習近平の強引な定年延長は承認されたものの、経済復興の条件付きとなったのですね。
つまり、習近平の独裁ではなく、鄧小平路線と毛沢東路線の対立復活。
鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろうと、福島さん。
この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになると。
最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。
これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないかと福島さん。
権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。
すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。
しかし、後継が育っていない習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろい。
中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも習近平派の王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろうと福島さん。
習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からないと。
習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだとも。
そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンかと、福島さん。
゜だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないとも。
国内の支持率低下への対策で、外国との緊張を高め、民意を逸らすのは中国、韓国、北朝鮮、ロシアといった日本の近隣諸国の常套手段とは、諸兄がご承知の通りです。
福島さんの知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していたのだそうです。
# 冒頭の画像は、今年3月の中国全人代の閉幕式に出席した習近平国家主席(左)と李克強首相(ロイター)
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