遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

米中貿易戦争 「いまのところアメリカのボロ勝ち」 そして、その先にあるものは…

2019-05-23 01:18:37 | 中国 全般
 米中貿易戦争は結果的に中国経済への打撃が大きく、アメリカへの影響は軽微であると分析していると説くのは、内閣参事官など歴任、政策シンクタンク「政策工房」会長、嘉悦大学教授の高橋洋一氏。
 トランプ大統領は中国の現体制の崩壊まで、この貿易戦争を続けるつもりなのかもしれないと。
 
米中貿易戦争 検証して分かった「いまのところアメリカのボロ勝ち」 そして、その先にあるものは… (髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社 2019.05.20

■ついにばれてしまった中国の手口
先週13日に発表された3月の景気動向指数は、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」であった。GDPと景気動向指数はかなりの相関があるので、本日月曜日に発表される1-3月期のGDP速報もマイナスになっている可能性がある。

政府与党は「雇用や所得など内需を支えるファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)はしっかりしている」、「内需、設備投資はいい傾向が出ている」として防衛線を張っているが、雇用、設備投資、所得などは「遅行指数」といわれ、景気の後からやってくるものだ。これらがいいといっても、既に景気の下降局面であることは否定できないのだ。

国内の景気が良くないうえ、
これからは海外要因も日本の景気への足かせになるだろう。米中貿易戦争は当面の出口が見えず激化の一途をたどっているし、欧州のブレグジットでも当面の混乱は避けられない。

筆者はこれまで米中貿易戦争について数々の書物を書いてきたが、例えば22&linkId=26277a499dc2d5b96777ae2267817c37&language=ja_JP" title="米中貿易戦争で日本は果実を得る " target="_blank">米中貿易戦争で日本は果実を得る では、
米中貿易戦争は結果的に中国経済への打撃が大きく、アメリカへの影響は軽微であると分析している。そのうえで、もちろん日本への影響もあるが、上手く振る舞えば漁夫の利もありえるとしてきた。

これは、IMFレポートなどで書かれている国際経済の分析フレームワークを使えば、当然に出てくる答えであるが、最近の情勢を踏まえて、さらに先を読んでみよう。

目先の関心は、いつ頃米中貿易戦争が終息するかにあるだろうが、結論からいえば、当分の間、米中が互いに譲歩することはなかなか考えにくい。
これは、本稿コラムで再三指摘してきたが、
米中貿易戦争は貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、背景には米中の覇権争いがあり、それは、古い言葉で言えば、資本主義対共産主義の「体制間競争」まで遡るものだからだ。
この体制間競争は、旧ソ連の崩壊で決着がついたが、
中国は旧ソ連の体制をバージョンアップさせて、再びアメリカに挑んできたともいえる。

たしかに中国はしたたかで、トランプ大統領率いるアメリカは昨今いろいろな国と摩擦を生み出している。アメリカが孤立し、結果として中国が中心に新たな国際社会が成る、という見方もある。

しかし、ここで思い出すのが、
フリードマンの『資本主義と自由』だ。同書の第1章「経済的自由と政治的自由」で、フリードマンは経済的自由と政治的自由は密接な関係だとし、経済的自由のためには資本主義の市場が必要だと説いている。
この観点から言えば、政治的自由のない中国では経済的自由にも制約があり、そうである限りは本格的な資本主義を指向できない。結局、政治的自由がないのは経済には致命的な欠陥なのである。それでもこれまで
中国は、擬似的な資本主義で西側諸国にキャッチアップしてきたが、トランプ大統領は中国の「窃盗」を見逃さなかった
つまり、資本主義国に追いつくために、
中国はこれまで知的所有権・技術の「窃盗」を行ってきたことがバレたのだ。

■勝ち目はないようにみえるが…

米国議会報告書等が、その手口を明かしている。典型的なのは、まず中国への輸出品について、中国当局が輸入を制限する。それとともに、輸出企業に対して「中国進出しないか」と持ちかける
ただし中国進出といっても、中国企業を買収し、100%子会社にするのではなく、
中国企業との合弁会社を持ちかけるのだ。その場合、外国資本の支配権はないようにしておく。そして、立ち上げた合弁企業から技術を盗みだし、中国国内で新たな企業を創設して、その技術の独占を主張するといった具合だ。

このような事例は、決して珍しいわけではないし、また中国が他の先進国に直接投資し子会社を設立してから、投資国の企業や大学などから企業秘密や技術を盗むこともしばしば報告されている。

筆者が「中国の共産主義は旧ソ連のバージョンアップ版である」というのは、中国はソ連のような体制内のブロック・閉鎖経済を志向するのではなく、貿易については世界各国と取引しているからだ。貿易で対外開放しているかのように見せかけたうえ、中国内への投資も自由なように見せかけているのは、旧ソ連とは明らかに異なる

共産主義の本質は「生産手段の国有化」であるので、完全には対内投資を自由にできない。そこで、
中国は実質的に支配する合弁会社を利用するという手段で、見かけ上は中国への対内投資が自由にできるようにしているのだが、これがソ連のバージョンアップ、というわけだ。そしてその隠れ蓑のなかで外国の技術を盗み出すわけでだからなかなか巧妙である。

しかし、アメリカは、中国による知的所有権・技術の「窃盗」を見逃さず、それを梃子にして中国を攻めている。それが、アメリカの対中関税の引き上げにつながっているわけだ。

もちろんそれに対し、
中国も報復関税をアメリカに対して課している。しかしながら中国のアメリカからの輸入額が1300億ドル、アメリカの中国からの輸入額は5390億ドルなので、報復関税をやりあっても、中国のほうが先に弾が切れてしまう。このことだけをみても中国には勝ち目はないように見える。

もっとも、報復関税に関して本当に勝敗がつくのは、関税によって自国の輸入製品の価格が上昇するときだ。
実は、どのくらい関税をかけられるかではなく、関税の結果、価格が上昇するかしないか、が勝負の本質なのである。

■物価指数をみれば一目瞭然

この観点からいえば、アメリカの勝ちは明白だ。というのも、米中貿易戦争以降も、アメリカの物価はまったく上がっていないからだ。インフレ目標2%に範囲内に見事におさまっている。

これは何を意味するのか。アメリカが中国からの輸入品に関税を課したら、関税分の10~25%程度は価格に転嫁されて、結果、価格上昇があっても不思議ではない。しかし、それでも物価が上がっていないということは、
関税分の価格転嫁ができていないのだ。それは、中国からの輸入品が、他国製品によって代替できているということだ。価格転嫁ができなければ、輸出側の中国企業が関税上乗せ分の損をまるまる被ることになる(一方アメリカ政府は、まるまる関税分が政府収入増になる)。

中国の物価はどうか。
中国では、食品を中心として物価が上がっている。つまり、価格転嫁が進んでいるのだ。

これで、(現時点では)貿易戦争はアメリカの勝ち、中国の負けということになる

もっとも、中国がアメリカからの輸入品(農産物)に関税をかけ続ければ、そのうちアメリカの輸出農家も影響を受けるだろうともいわれる。しかし、その場合には、アメリカ政府は輸出農家に何らかの形で補助金を出せばいい。なにしろ関税収入があるので、補助金対策の財源には困らないからだ。

■崩壊、が見えたワケ
それでも、中国は負けを認めるわけにはいかないから、「wait and see」(当面注視)と言い続けざるを得ない。この「wait and see」は、トランプ大統領が好む言葉で、これを中国は負け惜しみで使っているが、持久戦になれば中国にとって不利であるのは間違いない。

これをやや
長期的な視点で見ると、前述の体制競争論にあるように「自由のない共産主義体制下においては、経済成長は難しい」という結論が導き出される(再確認される)ことになるだろう。

さらに
中期的にみても脱工業化に達する前に消費経済に移行した国は、一人あたりの所得が低いうちには高い成長率になるものの、結局先進国の壁を越えられない......という「開発経済の限界」が中国にも当てはまることになるかもしれない。これが中国にもあてはまるならば、次の10年スパンで中国の成長が行き詰まる可能性が高いだろう。

かつてレーガン米大統領は、1980年代初頭に「力による平和」を旧ソ連に仕掛け、それがきっかけになり、旧ソ連の経済破綻、旧ソ連の崩壊を10年で引き起こした。

筆者には、
トランプ大統領の対中強硬姿勢が、かつてのレーガン大統領の対旧ソ連への強硬姿勢にダブって見えるのだ。

トランプ大統領は、中国の知的所有権収奪と国家による補助金を問題にしている。もちろん、中国はこれらを拒否しているが、それも当然。なぜならこれを拒否しなければ、中国の社会主義体制が維持できないからだ。中国の一党独裁体制の下で進められた政策を放棄すれば、それは体制否定にも成りかねない。

つまり、この貿易戦争は、中国国内の政治構造にも大きく影響を与えるだろう。中国は広大な国土をもつ国なので、日本では想像ができないくらいに中央と地方の関係は複雑である。
そのなかで、これまで経済発展のためには、ある程度地方分権を容認せざるを得なかったが、習近平体制になってから、逆に中央集権化の流れを加速している。そして知的所有権収奪と国家補助金については、中央政府とともに地方政府もこれまで推進してきたが、それを「アメリカの追及が厳しいから、もうやめよう」と習主席が認めると、地方政府からの突き上げをくらう可能性が高い。だから、習主席としては絶対に認められないのだ。

ということは、
米中貿易戦争はしばらく続くことになるが、続けば続くほど、中国にとっては不利で、結局、習近平体制の基盤を揺るがすことにもつながるかもしれない。こうしてみると、ひょっとしたらトランプ大統領は中国の現体制の崩壊まで、この貿易戦争を続けるつもりなのかもしれない

 米中貿易戦争は、米国の貿易赤字減らしという単なる経済問題ではなく、背景には米中の覇権争いがあることは、もはや衆知のこととなっています。
 古い言葉で言えば、資本主義対共産主義の「体制間競争」まで遡るもので、この体制間競争は、旧ソ連の崩壊で決着がついたが、中国は旧ソ連の体制をバージョンアップさせて、再びアメリカに挑んできたと高橋氏。
 これまで中国は、擬似的な資本主義で西側諸国にキャッチアップしてきたが、トランプ大統領は中国の「窃盗」を見逃さなかった。資本主義国に追いつくために、中国はこれまで知的所有権・技術の「窃盗」を行ってきたことがバレたと。

 米国議会報告書等が、その「窃盗」の手口を明かしていると。
 まず中国への輸出品について、中国当局が輸入を制限。同時に、輸出企業に対して「中国進出しないか」と持ちかける。
 ただし、中国企業との合弁会社で外国資本の支配権はないようにしておく。
 そして、立ち上げた合弁企業から技術を盗みだし、中国国内で新たな企業を創設して、その技術の独占を主張するといった具合。

 高橋氏が「中国の共産主義は旧ソ連のバージョンアップ版である」というのは、貿易で対外開放しているかのように見せかけたうえ、中国内への投資も自由なように見せかけているのは、旧ソ連とは明らかに異なるから。
 
 しかし、アメリカは、中国による知的所有権・技術の「窃盗」を見逃さず、それを梃子にして中国を攻めていると。
 その端緒が関税の引き上げ合戦。
 報復関税をやりあっても、中国のほうが先に弾が切れてしまう。このことだけをみても中国には勝ち目はない。
 しかも、報復関税に関して本当に勝敗がつくのは、関税によって自国の輸入製品の価格が上昇するときだ。実は、どのくらい関税をかけられるかではなく、関税の結果、価格が上昇するかしないか、が勝負の本質だと高橋氏。。

 この観点からいえば、アメリカの勝ちは更に明白。
 米中貿易戦争以降も、アメリカの物価はまったく上がっていないと。
 中国からの輸入品が、他国製品によって代替されていて、関税分の価格転嫁ができていないのだと。
 
 遊爺は、中国以外の国が、中国に代わって、関税で値上がりした中国製品と競合して対米輸出をすることで漁夫の利を得られるチャンスが生じると唱えてきましたが、高橋氏も同様の主張をしておられるのですね。

 米中摩擦は日本企業にとって、投資環境の改善という経済面のメリットまでもたらしてくれている - 遊爺雑記帳
 蘇州で撤退ラッシュの第2ラウンドが始まっている - 遊爺雑記帳

 かたや中国の物価はどうか。中国では、食品を中心として物価が上がっている。つまり、価格転嫁が進んでいるのだ。
 これで、(現時点では)貿易戦争はアメリカの勝ち、中国の負けということになると高橋氏。
 
 それでも、負けを認めるわけにはいかないのが共産党一党支配のうえに、独裁体制を構築した習近平。
 高橋氏には、トランプ大統領の対中強硬姿勢が、かつてのレーガン大統領の対旧ソ連への強硬姿勢にダブって見えると。

 トランプ大統領は、中国の知的所有権収奪と国家による補助金を問題にしている。もちろん、中国はこれらを拒否しているが、それも当然。なぜならこれを拒否しなければ、中国の社会主義体制が維持できないからだと。

 そして、米中貿易戦争はしばらく続くことになるが、続けば続くほど、中国にとっては不利で、結局、習近平体制の基盤を揺るがすことにもつながるかもしれない。
 トランプ大統領は中国の現体制の崩壊まで、この貿易戦争を続けるつもりなのかもしれないと!



 # 冒頭の画像は、ワシントンで貿易交渉に臨んだ中国の劉鶴副首相




  この花の名前は、トキワイカリソウ


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia







コメント (1)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 自民党サイバーセキュリティ... | トップ | トランプ米国大統領が打ち出... »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
洗脳からの覚醒はの学問道場を見ろ! (洗脳からの覚醒はの学問道場を見ろ!)
2019-08-27 11:22:34

国民電波洗脳による、テレビ、新聞、週刊誌、ラジオ等の、嘘八百の見事な洗脳情報と、嘘と騙しと仕掛けと、策略に満ち溢れた世の中で、思考停止状態にある日本人は、自分自身の脳、すなわち思考そのものを点検せよ! 我々はハッ、と気付いて、いや、待てよ! と立ち止まり、常に注意深く、用心深く、警戒し、疑いながら生きれば、騙されることはない。 今までの常識や、全ての事柄を疑うべきだ!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事