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【ワシントン=今井隆】米国防総省は2日、2016会計年度(15年10月~16年9月)の国防予算案を発表した。軍事力増強を進める中国に対抗するため、中長期的な観点から新型兵器の調達や開発に重点を置いた。基本予算と国外作戦費用の合計は、15会計年度と比べて4.4%増の5853億ドル(約68兆7700億円)で、大幅な増額要求となった。
■カギは共和党
ワーク国防副長官は2日の記者会見で、「米国は依然として世界の安全保障のために真っ先に対応する国だ」と語り、予算増へ理解を求めた。中国の台頭、ロシアとの対立、過激派組織「イスラム国」との戦い━━。米国を取り巻く安保環境を見渡せば、国防予算の反転は待ったなしと言える。
人件費や調達費などの基本予算は、15会計年度比7.7%増の5343億ドル(約62兆7800億円)、別枠の国外作戦費用はアフガニスタンの戦闘部隊撤収に伴って同20.7%減の509億ドル(約5兆9800億円)。議会によって13年3月に発動された10年に及ぶ歳出の強制削減措置に基づけば、基本予算の上限は4990億ドル(約58兆6300億円)だが、制度廃止を前提に2年ぶりに増額を要求した。
問題は、議会多数派の野党・共和党が歳出の強制削減撤廃を受け入れるかどうかだ。国防予算の増額自体は支持しているものの、財源捻出のためにオバマ政権が主張する超富裕層への課税強化などについて共和党は強硬に反対している。政権の要求がどこまで反映されるかは不透明だ。
■戦略打破
米国がアジア太平洋地域重視の「リバランス(再均衡)政策」を進める上で、中国に対する軍事的優位の維持は必要不可欠だ。予算要求にあたっては、米軍の接近を阻む中国の「接近阻止・領域拒否(A2AD)」戦略を打破することを目指した。基本予算の調達費を同15.1%増の1077億ドル(約12兆6500億円)、研究開発・試験評価費を同9.9%増の698億ドル(約8兆2000億円)としたのは、決意の表れだ。長距離打撃力やステルス性向上、新兵器開発に主眼を置いている。
具体策として、F35ステルス戦闘機の購入を前会計年度の38機から57機に増やし、長距離爆撃機開発や、次世代戦闘機の開発を念頭に置いた研究に加え、「高速打撃兵器」「電磁兵器」「レーザー兵器」の技術革新を進める。宇宙やサイバーも重点分野に位置づけた。
■「イスラム国」
「イスラム国」掃討作戦の費用として、国外作戦費用から同3.9%増の53億ドル(約6200億円)を要求した。このうち13億ドル(約1500億円)はイラク軍やシリア反体制派に対する訓練や装備の支援に充てる。
■海兵隊グアム移転
在沖縄海兵隊のグアム移転関連予算として1億2600万ドル(約148億円)を要求し、15会計年度と比べ約2.5倍となった。実弾射撃訓練場の整備にあてる。移転促進により、将来的な沖縄の基地負担軽減につながることが期待される。
ワーク国防副長官が記者会見で、「米国は依然として世界の安全保障のために真っ先に対応する国だ」と語り、オバマ大統領が世界の警察の放棄宣言をしていたことを覆すかの様な姿勢を示しています。
「イスラム国」掃討作戦の費用として、国外作戦費用から前年比3.9%増の53億ドル(約6200億円)を要求したことが注目されますが、我々日本人には、2年振りに増加する中国共産党をけん制する、A2/AD戦略打破や、沖縄海兵隊のグァムへの移転計画を遡上にのせているのは、雄々しさも乗り越えて、強い米国の復活を目指す姿勢が見えてきています。
問題は、中間選挙で上下両下院を共和党が占めていて、スンナリと予算案が通るかどうかと言うことです。
2年振りに前年度に比して増額した予算の財源は、オバマ大統領案は富裕層への増税を唱えていますが、この点が共和党とオバマ大統領とで異なりますので、両党が政策合意に漕ぎつけられるかが鍵となります。
中間選挙の勢いを維持し、次期大統領選挙で政権奪回を目指したい共和党は、何でも反対を唱えるのではなく、責任政党となりうる姿勢を示すことが必要ですがどうなるのでしょう。
次期大統領候補者は、民主党はクリントン氏で決まりでしょうが、共和党はいまだに絞り込めていない様子です。
次期米大統領選 共和混沌、候補なお20人 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
財政難で10年間の歳出の強制削減措置を公にしたことで、台頭する中国は勢いづき、米国の弱体化を見越して、覇権拡大での力の行使を大胆に行うようになってきていることは、南シナ海や、東シナ海の海や空での今日の中国による暴挙ぶりを観れば明らかに米国をなめきっていますね。
はやくも、中国外務省の洪磊報道官は米国防予算案について、「予算案の状況はまだ把握していないが、関係国家のアジア太平洋地域での行動は、地域の平和と安定に寄与すべきだ」と述べ、中国の脅威への対抗姿勢を打ち出す米国を牽制したそうです(2/4 産経)が、予算案が公表されただけでも、中国に対して強い抑止力となっている証でしょう。
日本の防衛予算も増額の案が出されます。
中朝動向踏まえ…防衛予算、3年連続増額へ | 日テレNEWS24
米国の世界の警察への復帰と併せて、中国、ロシア、イスラム国他のテロなどで乱れて来ている世界情勢やアジアの情勢が、安定化に向かうことを祈ります。
# 冒頭の画像は、東部ドネツク空港を奪還したウクライナ政府軍 (1月)
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この花の名前は、センニンソウ
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政府広報(北方領土問題) - YouTube
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