尖閣諸島の周辺海域で、平成24年の国有化以降最長となる111日連続で中国公船が確認され、台風で一旦途切れたものの再開されています。
更に、16日には中国政府が勝手に設定した禁漁期間が明け、大量の漁船が「海警」の擁護の元、押し掛けると通告してきていました。
いまのところ、わずかな漁船が散見されたとの報道はありましたが、中国政府が抑えていて、大量の漁船が襲来してはいませんが、いつ来てもおかしくない「尖閣危機」といった状況に突入していることは、諸兄がご承知の通りです。
この「尖閣危機」に日本はどう対処すべきなのか。
産経が、直面する石垣市の中山市長、海洋問題の研究専門家の山田吉彦東海大教授、元海将の香田洋二氏といった三つの関連角度のことなる方々の提言を特集していました。
共通しているのは、中国が尖閣諸島の領有に向けた行動を、ステップアップし、尖閣への上陸実力行使を開始しかねない段階に至っている危機感と、その対応としての日本の実効支配実績の早急な実施提案。
それぞれのお立場からの角度で、急ぐよう提言されておられます。
中山石垣市長は、尖閣が中国領になってしまえば、広範囲のEEZが失われるだけではなく、日中間の中間線が尖閣と石垣島の間に引かれることになると、危機を訴えておられます。もちろん、漁業従事者の方々の漁場が既に危険に晒されていることは言うまでもないことですね。
日本の領海内で、漁船が追尾されていることは、諸兄がご承知の通りです。
また、大挙して押しかける中国漁船を取り締まることで尖閣領海内で管轄権を行使していると宣伝し、「尖閣は日本の領土」という事実を突き崩そうとするのではないか。つまり、中国の実効支配実績を明示すると。
日米安保条約の適用が、実効支配下にある(管轄権が行使されている)ことが条件とされているからですね。
日本の実効支配実績造りとしては、
自民党国会議員の有志が進めている尖閣の生態系調査を可能にする議員立法の推進
石原都知事(当時)の都営化時代にもあがっていた、固有の植物を食べてしまい生態系を変化させてしまうヤギの駆除
石垣島から台湾に向かって遭難した疎開船の人々の遺骨の収集
自民党が平成24年の衆院選で公約に掲げた、船着き場の設置や公務員常駐
気象観測施設も必要だが、せめて簡易型の灯台を本格的なものに設置し直してほしい
と。
山田教授は、(「海警」の領海侵入・漁船追尾を含む)111日の連続接近で、中国にとっては、もう尖閣は中国の領土に組み入れた認識なのではないかと。
中国側はターゲットを日本の漁船に絞っている。日本側の漁業を排除していくことで、中国側は周辺海域で施政権を行使しているという既成事実を作ろうという狙いがあると。
そして、いまだに「尖閣に領土問題はない」といっていたら、また後手に回るだろう。もう領土の侵略という問題だと。
22年9月の中国漁船衝突事件までは圧倒的に日本が優勢だったにもかかわらず(船長などを日本の法で裁くことなく中国に還してしまい)尖閣の国有化も、石原慎太郎元知事の東京都に買わせなかったことで、中国の思うつぼにはまった。石原氏によって東京都が尖閣を買っていたら、今ごろは少なくとも尖閣諸島が活用されていたことだろうと。
日本の実効支配実績造りとしては、
日本人が住むということが不可欠だ。一案として、尖閣に国際的な海洋研究所のような施設を作ることを提案したいと。
日本は、威厳を持った外交を展開しなければならない。国連安全保障理事会で常任理事国相手に問題提起し、米国に同調させることが重要だと。
中国はすでに「尖閣は中国の領土だ」という認識なのだから、明確に手を打たないと、それが国際社会に定着してしまう。尖閣問題を先送りするのは、もう終わりにしないといけないと。
元海将の香田洋二氏は、深刻なのは日本領海内で日本漁船を追尾したこと。領有権を主張するだけでなく、尖閣が中国国内法執行の対象だと行動で示そうとしたといえる。近いうちに国内法に基づき日本漁船を拿捕する可能性もあると。
そして、日本政府は主張を明確にするには、中国と「同質・同烈度」の対応を取るのが原則だと。
例えば、中国が領有権を主張する南シナ海の海域や台湾海峡で日本の公船を航行させる方法がある。尖閣周辺に中国が1日来れば日本も1日。100日来れば日本も100日。「中国がこちらの領有権を認めないなら、日本もそちらの主張を認めません」という意思を行動で示す必要がある。
自衛隊と台湾軍との人的交流を始めてもいい。
と。
中国が尖閣諸島を奪いに来るときは正面からの軍事侵攻はせず、ある日突然、日本の警戒態勢の隙を突いて上陸し、五星紅旗(国旗)を立てるだろうとも。
他国ならば一定時間内の退去を警告し、占拠が続けば軍隊を投入して実力で奪還する。
しかし、日本では相手が分からず、武器が使用されず、組織的かつ計画的な侵害といえない状況で敵の武力攻撃は認定できず、(自衛隊の武力行使が可能となる)防衛出動を発令できないのが現状。
自衛隊が現地に確認に赴くにも、防衛出動が出ていない状況での偵察・情報収集任務が自衛隊法に定められていない。防衛省設置法の「調査・研究」に基づき丸腰で、隊員の命を盾として情報収集するのが精いっぱいなのだそうです。
法整備や対応方針の策定に速やかに取り組むべきだ。
日本政府は、緊張感もスピード感も欠けている。国会も議論をせずに惰眠をむさぼっていると。
中国が勝手に決めている、16日の禁漁期限明けの大量漁船団とその管理の「海警」の襲来通告。
今のところは、セーブされている様です。
山田教授が指摘されているとおりで、石原都知事と中山市長とで取り組まれた都営化が実現していれば、こんな事態には至ってはいません。
惰眠を続けていた民主党政権(当時)や自民党政権(選挙公約に掲げながら放置)の無為無策が、着実に進めてきた中国によって、完全に劣勢に追い込まれています。
しかし過ぎたことを悔やんでいても、覆水盆に返らず。
今が、最後のチャンスです。
自民党有志議員が法案提出に動いていますが、与野党が一致して国難に対処する時です。しかも、残された時間はない。
専門家の提言も参考に、早急な実効支配策の立案・実行をお願いします。
# 冒頭の画像は、尖閣近海の海警と日本漁船と巡視船 平成28年8月
この花の名前は、カンパニュラ アルペンブルー ホシギキョウ
↓よろしかったら、お願いします。
更に、16日には中国政府が勝手に設定した禁漁期間が明け、大量の漁船が「海警」の擁護の元、押し掛けると通告してきていました。
いまのところ、わずかな漁船が散見されたとの報道はありましたが、中国政府が抑えていて、大量の漁船が襲来してはいませんが、いつ来てもおかしくない「尖閣危機」といった状況に突入していることは、諸兄がご承知の通りです。
この「尖閣危機」に日本はどう対処すべきなのか。
産経が、直面する石垣市の中山市長、海洋問題の研究専門家の山田吉彦東海大教授、元海将の香田洋二氏といった三つの関連角度のことなる方々の提言を特集していました。
【論点直言 尖閣危機】尖閣めぐる中国の動きにどう対処すべきか - 産経ニュース 2020.8.22
中国公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)への攻勢が止まらない。8月2日まで111日連続で尖閣周辺を航行し、長時間にわたる領海内への侵入もあった。この間、日本政府の度重なる抗議にもかかわらず中国側は一貫して非を認めず、「中国の領海」を主張している。この「尖閣危機」に日本はどう対処すべきなのかを識者らに聞いた。
「公務員常駐など実効支配の強化策を」 沖縄県石垣市長の中山義隆氏
政府が平成24年に尖閣諸島を国有化して以降、中国公船による接続水域や領海への侵入は常態化している。ここ1、2年はさらに公船が現れる日数が増え、8月2日まで111日連続で尖閣周辺を航行するなどエスカレートしている。
今後さらにエスカレートし、尖閣に上陸するような事態を懸念している。16日には中国政府が設定した禁漁期間が明けたが、今後、中国漁船が大挙して押し寄せてくるかもしれない。中国公船が中国漁船を取り締まることで尖閣領海内で管轄権を行使していると宣伝し、「尖閣は日本の領土」という事実を突き崩そうとするのではないか。
尖閣周辺は大きな魚が取れる好漁場だ。尖閣があるおかげで排他的経済水域(EEZ)も広くなっている。仮に尖閣が中国領になってしまえば、広範囲のEEZが失われるだけではなく、日中間の中間線が尖閣と石垣島の間に引かれることになる。
中国がスプラトリー(中国名・南沙)諸島でやっていることを踏まえれば、尖閣を取れば間違いなく埋め立てし、空港を造って軍事基地化する。日本の安全保障に対し、極めて重大な意味を持つことになる。
自民党国会議員の有志が尖閣の生態系調査を可能にする議員立法を準備していると聞くが、ぜひやるべきだ。石垣市もかねてから要望してきた。尖閣諸島の魚釣島は外来種のヤギが増えて固有の植物を食べてしまう。生態系が変化してしまうのでヤギを駆除することも必要だ。
戦時中の昭和20年7月には石垣島から台湾に向かった疎開船が遭難して多くの人が魚釣島に埋葬されている。ご遺族が存命のうちに遺骨収集をしたい。遺骨収集は南方や硫黄島(東京都小笠原村)でやっているように、当然やるべき話だ。
自民党は平成24年の衆院選で船着き場の設置や公務員常駐を公約に掲げた。海上保安庁の態勢は強化されて大変ありがたいが、海保強化は島自体はさわらず、中国の公船が増えたので島の周辺を警備するという話だ。日本側から能動的に動く部分がほしい。
公約にはすぐに実現できないものもあるかもしれないが、形を変えてでも実効支配を強化する施策を実行してほしい。船着き場を造ると中国漁船が来るという話もあるが、せめて簡易型の灯台を本格的なものに設置し直してほしい。気象観測施設も必要だ。(聞き手 杉本康士)
-------------------------------------------------------
なかやま・よしたか 沖縄県石垣市登野城生まれ。近畿大商経学部卒。証券会社勤務、八重山青年会議所理事長などを経て平成18年、石垣市議会議員に当選。22年2月に同市長選で初当選し、現在3期目。53歳。
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「明確な手を打ち、問題先送りは終わりに」 東海大教授の山田吉彦氏
尖閣諸島の周辺海域で、平成24年の国有化以降最長となる111日連続で中国公船が確認された。中国にとっては、もう尖閣は中国の領土に組み入れた認識なのではないか。
中国側はターゲットを日本の漁船に絞っている。日本側の漁業を排除していくことで、中国側は周辺海域で施政権を行使しているという既成事実を作ろうという狙いがあるのだろう。
中国の対応は今年に入って明らかに変わった。常に周辺海域に滞在し続けている。一昨年に中国海警局が中央軍事委員会に組み込まれ、法的にも軍と連携できるようになった。一元的に指示でき、連動しやすい態勢が整ったので、尖閣は自国の領土であるというスタンスに切り替えた。その上で、新型コロナウイルスの国際的な感染拡大を利用した上での(対応の)ステップアップだったのだろう。
日本は「尖閣諸島には領土問題は存在していない」と主張してきた。だが、すでに中国によって問題として作り上げられてしまった。それなのにいまだに「尖閣に領土問題はない」といっていたら、また後手に回るだろう。これはもう領土の侵略という問題だ。
正直言って尖閣問題で日本は中国に押されている。この10年間、同じ対応を続けてきたのが敗因だ。22年9月の中国漁船衝突事件までは圧倒的に日本が優勢だったにもかかわらずだ。尖閣の国有化も、石原慎太郎元知事の東京都に買わせなかったことで、中国の思うつぼにはまった。石原氏によって東京都が尖閣を買っていたら、今ごろは少なくとも尖閣諸島が活用されていたことだろう。
今だからこそ尖閣諸島を明確に日本の施政下にあるといえるような管理体制を実施しなければならない。そのためには、日本人が住むということが不可欠だ。一案として、尖閣に国際的な海洋研究所のような施設を作ることを提案したい。
日本は威厳を持った外交を展開しなければならない。国連安全保障理事会で常任理事国相手に問題提起し、米国に同調させることが重要だ。中国はこの問題を棚上げにするつもりはないということを認識すべきだ。中国はすでに「尖閣は中国の領土だ」という認識なのだから、明確に手を打たないと、それが国際社会に定着してしまう。尖閣問題を先送りするのは、もう終わりにしないといけない。(聞き手 大島悠亮)
-------------------------------------------------------
やまだ・よしひこ 千葉県生まれ。学習院大経済学部卒。埼玉大大学院経済科学研究科博士課程修了。東洋信託銀行(当時)、日本財団勤務などを経て現職。平成26年には海洋問題の研究で第15回正論新風賞を受賞。57歳。
-------------------------------------------------------
「日本も南シナ海や台湾海峡航行を」 元海将の香田洋二氏
中国が尖閣諸島の実効支配をもくろむ理由は、自らの領土だと主権を明確にするため、国家の威信のためだ。海警局の船が111日間連続で尖閣周辺の接続水域に居座ったのも自分たちの海だという主張だろう。ただ、接続水域は一定のルールの下でどの国でも航行できる。異常ではあるが、違法ではない。
深刻なのは日本領海内で日本漁船を追尾したこと。領有権を主張するだけでなく、尖閣が中国国内法執行の対象だと行動で示そうとしたといえる。近いうちに国内法に基づき日本漁船を拿捕(だほ)する可能性もある。
日本政府は「遺憾の意」の表明を続ける選択もあるが、主張を明確にするには中国と「同質・同烈度」の対応を取るのが原則だ。
例えば、中国が領有権を主張する南シナ海の海域や台湾海峡で日本の公船を航行させる方法がある。尖閣周辺に中国が1日来れば日本も1日。100日来れば日本も100日。「中国がこちらの領有権を認めないなら、日本もそちらの主張を認めません」という意思を行動で示す必要がある。自衛隊と台湾軍との人的交流を始めてもいい。
中国が尖閣諸島を奪いに来るときは正面からの軍事侵攻はせず、ある日突然、日本の警戒態勢の隙を突いて上陸し、五星紅旗(国旗)を立てるだろう。
おそらく上陸者の素性はすぐに分からない。一般の漁民か、海上民兵か、軍人か。それでも他国ならば一定時間内の退去を警告し、占拠が続けば軍隊を投入して実力で奪還する。日本では相手が分からず、武器が使用されず、組織的かつ計画的な侵害といえない状況で敵の武力攻撃は認定できず、(自衛隊の武力行使が可能となる)防衛出動を発令できないのが現状だ。
上陸者は軍の特殊部隊の公算が大きいが、特定する情報はない。自衛隊が現地に確認に赴くにも、防衛出動が出ていない状況での偵察・情報収集任務が自衛隊法に定められていない。防衛省設置法の「調査・研究」に基づき丸腰で、隊員の命を盾として情報収集するのが精いっぱいだ。
このような情けない事態にならないよう法整備や対応方針の策定に速やかに取り組むべきだ。日本政府は(武力攻撃には至らない)グレーゾーン事態に「迅速かつシームレスに対応する」と掲げているが、緊張感もスピード感も欠けている。国会も議論をせずに惰眠をむさぼっている。(聞き手 田中一世)
-------------------------------------------------------
こうだ・ようじ 徳島県生まれ。防衛大卒後の昭和47年、海上自衛隊入隊。海上幕僚監部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、平成20年に退官。現在はジャパンマリンユナイテッド顧問。70歳。
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中国公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)への攻勢が止まらない。8月2日まで111日連続で尖閣周辺を航行し、長時間にわたる領海内への侵入もあった。この間、日本政府の度重なる抗議にもかかわらず中国側は一貫して非を認めず、「中国の領海」を主張している。この「尖閣危機」に日本はどう対処すべきなのかを識者らに聞いた。
「公務員常駐など実効支配の強化策を」 沖縄県石垣市長の中山義隆氏
政府が平成24年に尖閣諸島を国有化して以降、中国公船による接続水域や領海への侵入は常態化している。ここ1、2年はさらに公船が現れる日数が増え、8月2日まで111日連続で尖閣周辺を航行するなどエスカレートしている。
今後さらにエスカレートし、尖閣に上陸するような事態を懸念している。16日には中国政府が設定した禁漁期間が明けたが、今後、中国漁船が大挙して押し寄せてくるかもしれない。中国公船が中国漁船を取り締まることで尖閣領海内で管轄権を行使していると宣伝し、「尖閣は日本の領土」という事実を突き崩そうとするのではないか。
尖閣周辺は大きな魚が取れる好漁場だ。尖閣があるおかげで排他的経済水域(EEZ)も広くなっている。仮に尖閣が中国領になってしまえば、広範囲のEEZが失われるだけではなく、日中間の中間線が尖閣と石垣島の間に引かれることになる。
中国がスプラトリー(中国名・南沙)諸島でやっていることを踏まえれば、尖閣を取れば間違いなく埋め立てし、空港を造って軍事基地化する。日本の安全保障に対し、極めて重大な意味を持つことになる。
自民党国会議員の有志が尖閣の生態系調査を可能にする議員立法を準備していると聞くが、ぜひやるべきだ。石垣市もかねてから要望してきた。尖閣諸島の魚釣島は外来種のヤギが増えて固有の植物を食べてしまう。生態系が変化してしまうのでヤギを駆除することも必要だ。
戦時中の昭和20年7月には石垣島から台湾に向かった疎開船が遭難して多くの人が魚釣島に埋葬されている。ご遺族が存命のうちに遺骨収集をしたい。遺骨収集は南方や硫黄島(東京都小笠原村)でやっているように、当然やるべき話だ。
自民党は平成24年の衆院選で船着き場の設置や公務員常駐を公約に掲げた。海上保安庁の態勢は強化されて大変ありがたいが、海保強化は島自体はさわらず、中国の公船が増えたので島の周辺を警備するという話だ。日本側から能動的に動く部分がほしい。
公約にはすぐに実現できないものもあるかもしれないが、形を変えてでも実効支配を強化する施策を実行してほしい。船着き場を造ると中国漁船が来るという話もあるが、せめて簡易型の灯台を本格的なものに設置し直してほしい。気象観測施設も必要だ。(聞き手 杉本康士)
-------------------------------------------------------
なかやま・よしたか 沖縄県石垣市登野城生まれ。近畿大商経学部卒。証券会社勤務、八重山青年会議所理事長などを経て平成18年、石垣市議会議員に当選。22年2月に同市長選で初当選し、現在3期目。53歳。
-------------------------------------------------------
「明確な手を打ち、問題先送りは終わりに」 東海大教授の山田吉彦氏
尖閣諸島の周辺海域で、平成24年の国有化以降最長となる111日連続で中国公船が確認された。中国にとっては、もう尖閣は中国の領土に組み入れた認識なのではないか。
中国側はターゲットを日本の漁船に絞っている。日本側の漁業を排除していくことで、中国側は周辺海域で施政権を行使しているという既成事実を作ろうという狙いがあるのだろう。
中国の対応は今年に入って明らかに変わった。常に周辺海域に滞在し続けている。一昨年に中国海警局が中央軍事委員会に組み込まれ、法的にも軍と連携できるようになった。一元的に指示でき、連動しやすい態勢が整ったので、尖閣は自国の領土であるというスタンスに切り替えた。その上で、新型コロナウイルスの国際的な感染拡大を利用した上での(対応の)ステップアップだったのだろう。
日本は「尖閣諸島には領土問題は存在していない」と主張してきた。だが、すでに中国によって問題として作り上げられてしまった。それなのにいまだに「尖閣に領土問題はない」といっていたら、また後手に回るだろう。これはもう領土の侵略という問題だ。
正直言って尖閣問題で日本は中国に押されている。この10年間、同じ対応を続けてきたのが敗因だ。22年9月の中国漁船衝突事件までは圧倒的に日本が優勢だったにもかかわらずだ。尖閣の国有化も、石原慎太郎元知事の東京都に買わせなかったことで、中国の思うつぼにはまった。石原氏によって東京都が尖閣を買っていたら、今ごろは少なくとも尖閣諸島が活用されていたことだろう。
今だからこそ尖閣諸島を明確に日本の施政下にあるといえるような管理体制を実施しなければならない。そのためには、日本人が住むということが不可欠だ。一案として、尖閣に国際的な海洋研究所のような施設を作ることを提案したい。
日本は威厳を持った外交を展開しなければならない。国連安全保障理事会で常任理事国相手に問題提起し、米国に同調させることが重要だ。中国はこの問題を棚上げにするつもりはないということを認識すべきだ。中国はすでに「尖閣は中国の領土だ」という認識なのだから、明確に手を打たないと、それが国際社会に定着してしまう。尖閣問題を先送りするのは、もう終わりにしないといけない。(聞き手 大島悠亮)
-------------------------------------------------------
やまだ・よしひこ 千葉県生まれ。学習院大経済学部卒。埼玉大大学院経済科学研究科博士課程修了。東洋信託銀行(当時)、日本財団勤務などを経て現職。平成26年には海洋問題の研究で第15回正論新風賞を受賞。57歳。
-------------------------------------------------------
「日本も南シナ海や台湾海峡航行を」 元海将の香田洋二氏
中国が尖閣諸島の実効支配をもくろむ理由は、自らの領土だと主権を明確にするため、国家の威信のためだ。海警局の船が111日間連続で尖閣周辺の接続水域に居座ったのも自分たちの海だという主張だろう。ただ、接続水域は一定のルールの下でどの国でも航行できる。異常ではあるが、違法ではない。
深刻なのは日本領海内で日本漁船を追尾したこと。領有権を主張するだけでなく、尖閣が中国国内法執行の対象だと行動で示そうとしたといえる。近いうちに国内法に基づき日本漁船を拿捕(だほ)する可能性もある。
日本政府は「遺憾の意」の表明を続ける選択もあるが、主張を明確にするには中国と「同質・同烈度」の対応を取るのが原則だ。
例えば、中国が領有権を主張する南シナ海の海域や台湾海峡で日本の公船を航行させる方法がある。尖閣周辺に中国が1日来れば日本も1日。100日来れば日本も100日。「中国がこちらの領有権を認めないなら、日本もそちらの主張を認めません」という意思を行動で示す必要がある。自衛隊と台湾軍との人的交流を始めてもいい。
中国が尖閣諸島を奪いに来るときは正面からの軍事侵攻はせず、ある日突然、日本の警戒態勢の隙を突いて上陸し、五星紅旗(国旗)を立てるだろう。
おそらく上陸者の素性はすぐに分からない。一般の漁民か、海上民兵か、軍人か。それでも他国ならば一定時間内の退去を警告し、占拠が続けば軍隊を投入して実力で奪還する。日本では相手が分からず、武器が使用されず、組織的かつ計画的な侵害といえない状況で敵の武力攻撃は認定できず、(自衛隊の武力行使が可能となる)防衛出動を発令できないのが現状だ。
上陸者は軍の特殊部隊の公算が大きいが、特定する情報はない。自衛隊が現地に確認に赴くにも、防衛出動が出ていない状況での偵察・情報収集任務が自衛隊法に定められていない。防衛省設置法の「調査・研究」に基づき丸腰で、隊員の命を盾として情報収集するのが精いっぱいだ。
このような情けない事態にならないよう法整備や対応方針の策定に速やかに取り組むべきだ。日本政府は(武力攻撃には至らない)グレーゾーン事態に「迅速かつシームレスに対応する」と掲げているが、緊張感もスピード感も欠けている。国会も議論をせずに惰眠をむさぼっている。(聞き手 田中一世)
-------------------------------------------------------
こうだ・ようじ 徳島県生まれ。防衛大卒後の昭和47年、海上自衛隊入隊。海上幕僚監部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、平成20年に退官。現在はジャパンマリンユナイテッド顧問。70歳。
-------------------------------------------------------
共通しているのは、中国が尖閣諸島の領有に向けた行動を、ステップアップし、尖閣への上陸実力行使を開始しかねない段階に至っている危機感と、その対応としての日本の実効支配実績の早急な実施提案。
それぞれのお立場からの角度で、急ぐよう提言されておられます。
中山石垣市長は、尖閣が中国領になってしまえば、広範囲のEEZが失われるだけではなく、日中間の中間線が尖閣と石垣島の間に引かれることになると、危機を訴えておられます。もちろん、漁業従事者の方々の漁場が既に危険に晒されていることは言うまでもないことですね。
日本の領海内で、漁船が追尾されていることは、諸兄がご承知の通りです。
また、大挙して押しかける中国漁船を取り締まることで尖閣領海内で管轄権を行使していると宣伝し、「尖閣は日本の領土」という事実を突き崩そうとするのではないか。つまり、中国の実効支配実績を明示すると。
日米安保条約の適用が、実効支配下にある(管轄権が行使されている)ことが条件とされているからですね。
日本の実効支配実績造りとしては、
自民党国会議員の有志が進めている尖閣の生態系調査を可能にする議員立法の推進
石原都知事(当時)の都営化時代にもあがっていた、固有の植物を食べてしまい生態系を変化させてしまうヤギの駆除
石垣島から台湾に向かって遭難した疎開船の人々の遺骨の収集
自民党が平成24年の衆院選で公約に掲げた、船着き場の設置や公務員常駐
気象観測施設も必要だが、せめて簡易型の灯台を本格的なものに設置し直してほしい
と。
山田教授は、(「海警」の領海侵入・漁船追尾を含む)111日の連続接近で、中国にとっては、もう尖閣は中国の領土に組み入れた認識なのではないかと。
中国側はターゲットを日本の漁船に絞っている。日本側の漁業を排除していくことで、中国側は周辺海域で施政権を行使しているという既成事実を作ろうという狙いがあると。
そして、いまだに「尖閣に領土問題はない」といっていたら、また後手に回るだろう。もう領土の侵略という問題だと。
22年9月の中国漁船衝突事件までは圧倒的に日本が優勢だったにもかかわらず(船長などを日本の法で裁くことなく中国に還してしまい)尖閣の国有化も、石原慎太郎元知事の東京都に買わせなかったことで、中国の思うつぼにはまった。石原氏によって東京都が尖閣を買っていたら、今ごろは少なくとも尖閣諸島が活用されていたことだろうと。
日本の実効支配実績造りとしては、
日本人が住むということが不可欠だ。一案として、尖閣に国際的な海洋研究所のような施設を作ることを提案したいと。
日本は、威厳を持った外交を展開しなければならない。国連安全保障理事会で常任理事国相手に問題提起し、米国に同調させることが重要だと。
中国はすでに「尖閣は中国の領土だ」という認識なのだから、明確に手を打たないと、それが国際社会に定着してしまう。尖閣問題を先送りするのは、もう終わりにしないといけないと。
元海将の香田洋二氏は、深刻なのは日本領海内で日本漁船を追尾したこと。領有権を主張するだけでなく、尖閣が中国国内法執行の対象だと行動で示そうとしたといえる。近いうちに国内法に基づき日本漁船を拿捕する可能性もあると。
そして、日本政府は主張を明確にするには、中国と「同質・同烈度」の対応を取るのが原則だと。
例えば、中国が領有権を主張する南シナ海の海域や台湾海峡で日本の公船を航行させる方法がある。尖閣周辺に中国が1日来れば日本も1日。100日来れば日本も100日。「中国がこちらの領有権を認めないなら、日本もそちらの主張を認めません」という意思を行動で示す必要がある。
自衛隊と台湾軍との人的交流を始めてもいい。
と。
中国が尖閣諸島を奪いに来るときは正面からの軍事侵攻はせず、ある日突然、日本の警戒態勢の隙を突いて上陸し、五星紅旗(国旗)を立てるだろうとも。
他国ならば一定時間内の退去を警告し、占拠が続けば軍隊を投入して実力で奪還する。
しかし、日本では相手が分からず、武器が使用されず、組織的かつ計画的な侵害といえない状況で敵の武力攻撃は認定できず、(自衛隊の武力行使が可能となる)防衛出動を発令できないのが現状。
自衛隊が現地に確認に赴くにも、防衛出動が出ていない状況での偵察・情報収集任務が自衛隊法に定められていない。防衛省設置法の「調査・研究」に基づき丸腰で、隊員の命を盾として情報収集するのが精いっぱいなのだそうです。
法整備や対応方針の策定に速やかに取り組むべきだ。
日本政府は、緊張感もスピード感も欠けている。国会も議論をせずに惰眠をむさぼっていると。
中国が勝手に決めている、16日の禁漁期限明けの大量漁船団とその管理の「海警」の襲来通告。
今のところは、セーブされている様です。
山田教授が指摘されているとおりで、石原都知事と中山市長とで取り組まれた都営化が実現していれば、こんな事態には至ってはいません。
惰眠を続けていた民主党政権(当時)や自民党政権(選挙公約に掲げながら放置)の無為無策が、着実に進めてきた中国によって、完全に劣勢に追い込まれています。
しかし過ぎたことを悔やんでいても、覆水盆に返らず。
今が、最後のチャンスです。
自民党有志議員が法案提出に動いていますが、与野党が一致して国難に対処する時です。しかも、残された時間はない。
専門家の提言も参考に、早急な実効支配策の立案・実行をお願いします。
# 冒頭の画像は、尖閣近海の海警と日本漁船と巡視船 平成28年8月
この花の名前は、カンパニュラ アルペンブルー ホシギキョウ
↓よろしかったら、お願いします。