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イスラム過激派組織「イスラム国」が後藤健二さん(47)を殺害したとする映像を公開し、日本人をテロの標的にすると宣言したことについて、海外の主要メディアはどう分析したか。
◇対テロ「分水嶺」
事件は、日本がテロとの戦いでより積極的な役割を求められる「分水嶺れい」になったととらえる報道は、米国を中心に目立った。
米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は1日、「長く平和主義を保ってきた国家にとって、この危機が転機になりうる」との認識が日本で広がっていると報じた。「米国や西側の同盟国が直面する(テロ組織の)暴力とは無縁だと長期間、認識していた平和かつ繁栄した国家に、世界は突然、はるかに危険な場所に見え始めた」と分析した。
米紙ワシントン・ポスト(電子版)も同日、「外国紛争への関与を禁じる平和憲法を持ち続けている国に、遠い中東での紛争が持ち込まれた」と報じた。連続銃撃テロ事件のあったフランスのフィガロ紙は「伝統的に平和主義を貫いてきた(日本)列島にとって試練となる。憲法の平和主義の伝統と決別する新たな一歩となる」などと指摘した。
一方、日本に対する厳しい見方もある。仏紙リベラシオンは2日、「日本外交の失敗」との見出しで「東京は人質解放交渉で影響力を発揮できなかった」などと指摘。中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は2日の社説で「安倍政権には中東の複雑な情勢への対応力が不足していることを改めて示した」と断じた。
◇「アラブ主導で」
人質の解放交渉にあたったヨルダンでは、アラブ諸国が対テロの結束をリードすべきだと指摘する。
有力紙ヨルダン・タイムズは2日、社説で事件は「イスラム国を打ち負かす使命を国際社会がともに継続する理由を与えた」と指摘。「イスラム諸国が(この戦いを)指揮し、世界中の過激派の脅威に取り組む長期的な努力の始まりとなるべきだ」と結んだ。
◇「サイバー対策を」
韓国各紙は2日、日本と同様、対イスラム国有志連合で人道主義支援国に入っている韓国も「例外ではない」(東亜日報)とするなど大きく報じた。
韓国ではイスラム国参加の意向をツイッターなどに書き込んだ韓国人少年(17)がシリア国境に近いトルコで行方不明になった。ソウル新聞社説は「サイバー上でイスラム国との接触を遮断する方法を検討してもらいたい」と論じた。
◇「日本の軍拡」宣伝
安倍首相が事件を受け、自衛隊の活用拡大に触れた点を挙げ、中国や韓国では日本の軍事力拡大につながるとの「宣伝」に利用する報道があった。中国の環球時報は、安倍政権がイスラム国と対決するのは「必ずしも反テロの道義や責任からではなく、反テロを口実に日本の軍事力を海外に拡大する思惑がある」などと主張。韓国の朝鮮日報は「人質殺害を契機に日本が自衛隊の海外軍事活動の拡大を進めている」と報じた。
(ワシントン 白川義和、パリ 本間圭一、アンマン 溝田拓士、北京 五十嵐文、ソウル 豊浦潤一)
米の対テロ会合、岸田外相出席へ
政府は、米ワシントンで19日に開かれるテロ対策の「暴力的過激主義に関する閣僚会合」に岸田外相を出席させる方向で調整を始めた。イスラム過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件を受け、国際テロ対策に取り組む各国との連携を強化する狙いがある。日本としては、引き続き非軍事分野で貢献していく姿勢もアピールしたい考えだ。
米国の2紙は、平和憲法を盾に、「テロとは無縁だ」とか、「外国紛争への関与を禁じた」りして、たこつぼに閉じこもる様にしてきた日本にとって、今回の事件は、テロとの戦いでより積極的な役割を求められる「分水嶺」になっていると報じています。
国内の厭戦気運が広まっているなか、テロとの戦いへの関与に悩んでいる米国の、日本のテロとの戦いへの関与の姿勢を、非協力的であったと捉える、あるいは、遠い他国の事と鈍感であったことから目覚めさせられたといった皮肉が込められた報道に感じるのは、遊爺だけでしょうか。
ちなみに、WSJは、「安倍晋三首相は、「イスラム国」による日本人人質事件を受けて、自衛隊の海外活動を拡大するための法整備を進める必要性を表明、これに対し反対派からは慎重論が出ており、自衛隊の海外派遣が大きな政治問題になりつつある。」と報じたりしていますが、事実関係を淡々と報じる姿勢を貫いています。
特集:国境超える「イスラム国」の脅威 - WSJ
仏紙リベラシオンは、日本の外交に厳しい姿勢。環球時報も、「安倍政権には中東の複雑な情勢への対応力が不足している」と日本政府を力不足と卑下しています。
日常の対日認識が滲み出ている報道ぶりですが、反面言い当てているともいえる内容とも言えます。
特に、どちらかと言うと中国の「世論戦」に犯されて、安倍政権を歴史に逆行すると批判するなど、反日報道が少なくない米国の2紙が、「分水嶺」に立たされたとして、テロとの戦いへ積極参加不足を指摘し、促すかの様な報道をしていることには、興味をひかれます。
環球時報は、なんでも日本批判さえすればよいとしている姿勢ですから、こんなものでしょう。ウイグルの危機管理に悩まされ、渦中にあり、ISIL/ISISの脅威に直面しながらも、逆手に取ってウイグル抑圧に利用しようとしている自国の政策が、日本より優れていると言いたいのでしょうか。
前日の繰り返しになりますが、情報収集能力も、国民の救出手立てもなく、なすすべのなかった日本。
海外で窮地に追い込まれた邦人を、救出できる国にしていただけることを、安倍政権に期待します。
海外の邦人人質救出へ耳も口も手足も持たない日本 - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、後藤氏を殺害するISIL/ISIS
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この花の名前は、トレニアのカタリーナ・ブルーリバー
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政府広報(北方領土問題) - YouTube
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