![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/71/bb04e2bdfd6c4ca0dc7424cfc28639c6.jpg)
非国家主体でありながらガザを実効支配してきたイスラム主義組織ハマスは、昨年10月の奇襲でイスラエル市民ら約1200人を殺害し、200人以上を拉致した。この急襲作戦はイスラエルの報復攻撃を招き、2月末までにガザ住民らに 3万人を超える死者を出す悲惨な事態となった。
ハマスはガザの統治責任をどこまで自覚して奇襲に打って出たのかと、富士通FSC特別顧問の山内昌之氏。
ガザ住民の間では、「これほどの惨事になるとは考えずに攻撃を仕掛けた」などとハマスへの批判が公然と聞かれ始めた。12月のガザ地区の世論調査では、37%の住民がハマスの急襲を批判した。いまはもっと増えているだろうと、山内氏。
テロのハマスは、ガザの一般市民を盾にして市中に籠り、市民の犠牲を産むことでイスラエルへの批判を喚起するテロ戦術を採っているのですから、被害を負わされている市民がハマスを批判するのは当然!
むしろ、イスラエルの犠牲に対する反抗を一方的に非人道的と非難するポピュリズムこそが、他人事感覚で外野からの野次と認識されるべき。
喧嘩両成敗たるべしと遊爺は唱えてきています。
ようやくテロのハマスのそれこそ非人道的卑劣な戦術を批難する声が湧いてきているのですね。
山内氏のご指摘に賛同します。
ハマスとイスラエルは互いに 復讐(ふくしゅう)と刑罰の念から「権謀の 兵いくさ 」に出たが、いまやガザの戦闘は政治と道義の両面で「亡国の 兵(いくさ)」に変質したのではないかと、山内氏。
イスラエル軍は、ガザの住民を南部境界付近のラファまで追い詰め、21世紀では未曽有の民間人死傷者を出した。苛烈な軍事作戦は歴史の厳しい審判を受けるに違いない。ただし、ハマスの方も、パレスチナ民族主義組織を自負していながら住民に重い犠牲を強いた政治的責任が不問に付されるわけではないと!
ハマスはイスラム主義武装闘争派でもあり、レバノンのヒズボラ、シリアのイラン革命防衛隊系諸派、イエメンのフーシ派などの非国家主体によるイスラエル包囲網の一角として、イランによる反米・反イスラエルの陣地戦で貢献したと見る向きもあるとも。
米国とイスラエルは一貫してイランとの直接対決に及び腰だが、イランの支援するハマスなどへの機動戦的な報復を辞さない。
このはざまで犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だと、山内氏。
テロのハマスが、市民を盾にして籠る非人道戦術を採っている由縁ですね。
犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だ。彼らは本来のイスラエル・パレスチナ問題だけでなく、「米国・イスラエル対イラン」という、異質な国際対立の手駒にされてしまったと、山内氏。
ロシアはもはや、イランの軍事支援なしにウクライナ戦争を継続できない。ウクライナも、米国などイスラエルの同盟国の援助なしではロシアに屈服しかねない。サウジアラビアを軸とした東アラブは、イスラエルとの競争的共存から友好的協力に進む好機をハマスにつぶされた。
ロシアとイランは、ウクライナ戦争とシリア内戦における最大の同盟国だが、ロシアはユダヤ人の人口が多く、イスラエルやサウジアラビアとの関係性は、ロシアとイランでは違うと、山内氏。
イランにとっても、大国ロシアと非国家主体ハマスの比重は同等ではない。
複雑な利害構造の中で、とても小さく資源もないガザのために一肌脱ぐ国は、ロシアや中国など「独裁非民主国家群」からも、米欧日など「自由民主国家群」からも現れていない。
それでは、ガザ住民に多大な犠牲を出し続ける戦闘を止めるには何をなすべきか。
2国家解決案をうたった1993年のオスロ合意という先人の知恵に戻る必要があると。
ガザの自決権と生存権の確立は、ガザ住民に犠牲を強いるハマスのやり方では決して果たされない。
2国家解決案は、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想された。
アッバス議長はその功労者である。今や人々は、「麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」とばかりにアッバス氏に厳しい。確かに、悪評高い自治政府腐敗の責任はある。
だが、「老いたる馬は道を忘れず」とも言う。アッバス氏らは、ハマスのようにテロをしたわけでない。ハマスの後にガザ統治を国際的に信託される資格があるのは、現実的には自治政府の他にない。
イスラエルのネタニヤフ首相は、2国家解決案の立役者だったラビン首相やぺレス外相の遺志に背いてこの案を確信的に妨害し、西岸の入植地を増大させる野心を捨てていない。
汚職容疑でいつ逮捕されてもおかしくないネタニヤフ氏は、保身のためハマスとの戦闘を政治利用しているふしがあると。
トランプ前大統領が復帰する可能性がある11月の米大統領選挙を見届けるまで、本格的な休戦に応じないだろうとも。
2月には野党を含む8割の議員の賛成で、パレスチナ国家樹立を外から押し付けられることに反対する国会決議が採択された。世論調査でも、60%以上のユダヤ系市民がパレスチナ国家を拒否。
国際社会が2国家解決案に期待をつなぐとすれば、さしあたりバイデン米大統領に頼る以外に有効な方策はない。バイデン氏がイスラエルに休戦と2国家解決案をのませるには、対イスラエル援助の見直しを示唆しながら圧力をかけることが不可欠だと。
ガザ住民がパしスチナ自治政府を嫌悪する感も理解できるが、イスラエルやアラブ諸国の共同管理や国連の管理を受け入れれば幸福になれるのだろうかとも。
16世紀のモロッコの法学者ワンシャリースィーは、ムスリムの土地であるならムスリムの暴政家のほうが公正なキリスト教徒よりもましだ、と言い切ったのだそうです。
自治政府を嫌うあまり、ガザで半恒久的な外国による占領と、西岸地域に対するイスラエルの入植地拡大を許してよいのか。そうなれば、暴力とテロの連鎖が際限なく繰り返される悲運は終わらないと。
繰り返しになりますが、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想されたオスロ合意に戻れと。
パレスチナのアッバス議長、イスラエルのラビン首相やぺレス外相と言った人材の登場が望まれます。
はたまた、バイデン氏とエジプトとの仲介力か。
# 冒頭の画像は、ネタニヤフ首相
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ハマスはガザの統治責任をどこまで自覚して奇襲に打って出たのかと、富士通FSC特別顧問の山内昌之氏。
地球を読む ガザの惨劇 犠牲の責任 ハマスにも
山内昌之 富士通FSC特別顧問 (3月 4日 読売朝刊)
戦争の主体は普通なら国家であり、独立主権国家は自らの意志で戦争を止められる。しかし、パレスチナ自治区ガザにおける戦闘はもっと複雑である。
非国家主体でありながらガザを実効支配してきたイスラム主義組織ハマスは、昨年10月の奇襲でイスラエル市民ら約1200人を殺害し、200人以上を拉致した。この急襲作戦はイスラエルの報復攻撃を招き、2月末までにガザ住民らに 3万人を超える死者を出す悲惨な事態となった。
ハマスはガザの統治責任をどこまで自覚して奇襲に打って出たのか。古代の軍事国家スパルタの王アギス 2世でさえ、いちばん大事な知識は「いかに統治し、統治されるべきかを認識することだ」という政治哲学を 披瀝(ひれき)していた。
ガザ住民の間では、「これほどの惨事になるとは考えずに攻撃を仕掛けた」などとハマスへの批判が公然と聞かれ始めた。12月のガザ地区の世論調査では、37%の住民がハマスの急襲を批判した。いまはもっと増えているだろう。
江戸時代のある儒学者の言によれば、刑罰と征戦は同じで、小なれば刑罰、大なれば征戦だという(桃西河『 坐臥(ざが) 記』)。
ハマスとイスラエルは互いに 復讐(ふくしゅう)と刑罰の念から「権謀の 兵いくさ 」に出たが、いまやガザの戦闘は政治と道義の両面で「亡国の 兵(いくさ)」に変質したのではないか。
イスラエル軍は、ガザの住民を南部境界付近のラファまで追い詰め、21世紀では未曽有の民間人死傷者を出した。苛烈な軍事作戦は歴史の厳しい審判を受けるに違いない。ただし、ハマスの方も、パレスチナ民族主義組織を自負していながら住民に重い犠牲を強いた政治的責任が不問に付されるわけではない。
ハマスはイスラム主義武装闘争派でもあり、レバノンのヒズボラ、シリアのイラン革命防衛隊系諸派、イエメンのフーシ派などの非国家主体によるイスラエル包囲網の一角として、イランによる反米・反イスラエルの陣地戦で貢献したと見る向きもある。
米国とイスラエルは一貫してイランとの直接対決に及び腰だが、イランの支援するハマスなどへの機動戦的な報復を辞さない。
このはざまで犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だ。彼らは本来のイスラエル・パレスチナ問題だけでなく、「米国・イスラエル対イラン」という、異質な国際対立の手駒にされてしまったからだ。
しかも、ガザの戦闘はウクライナ戦争とともに、米ジャーナリストのトーマス・フリードマン氏が言う「壮大な地政学的争い」の核心的象徴となった。
「2国家案」軸に解決を
ロシアはもはや、イランの軍事支援なしにウクライナ戦争を継続できない。ウクライナも、米国などイスラエルの同盟国の援助なしではロシアに屈服しかねない。サウジアラビアを軸とした東アラブは、イスラエルとの競争的共存から友好的協力に進む好機をハマスにつぶされた。
ロシアとイランは、ウクライナ戦争とシリア内戦における最大の同盟国だが、ロシアはユダヤ人の人口が多く、OPEC(石油輸出国機構)プラスの一員でもある。イスラエルやサウジアラビアとの関係性は、ロシアとイランでは違う。
イランにとっても、大国ロシアと非国家主体ハマスの比重は同等ではない。
複雑な利害構造の中で、とても小さく資源もないガザのために一肌脱ぐ国は、ロシアや中国など「独裁非民主国家群」からも、米欧日など「自由民主国家群」からも現れていない。それでは、ガザ住民に多大な犠牲を出し続ける戦闘を止めるには何をなすべきか。
まず、パレスチナ国家樹立とイスラエルとの共存による2国家解決案をうたった1993年のオスロ合意という先人の知恵に戻る必要がある。同時に、サウジアラビアを軸とした中東の競争的共存の枠組みに、ハマスを排除したガザ・ヨルダン川西岸の2地域を組み込まねばならない。
ガザの自決権と生存権の確立は、ガザ住民に犠牲を強いるハマスのやり方では決して果たされない。
2国家解決案は、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想された。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はその功労者である。今や人々は、「麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」とばかりにアッバス氏に厳しい。確かに、悪評高い自治政府腐敗の責任はある。
だが、「老いたる馬は道を忘れず」とも言う。アッバス氏らは、ハマスのようにテロをしたわけでない。ハマスの後にガザ統治を国際的に信託される資格があるのは、現実的には自治政府の他にない。
イスラエルのネタニヤフ首相は、2国家解決案の立役者だったラビン首相やぺレス外相の遺志に背いてこの案を確信的に妨害し、西岸の入植地を増大させる野心を捨てていない。
汚職容疑でいつ逮捕されてもおかしくないネタニヤフ氏は、保身のためハマスとの戦闘を政治利用しているふしがある。トランプ前大統領が復帰する可能性がある11月の米大統領選挙を見届けるまで、本格的な休戦に応じないだろう、
イスラエルに攻撃をやめさせる道筋を、理屈では誰もが知っている。総選挙などでネタニヤフ氏や連立極右・宗教右派を敗北させて穏健派に組閣させ、2国家解決案の必要性を国民に受け入れさせることだ。
だが、2月には野党を含む8割の議員の賛成で、パレスチナ国家樹立を外から押し付けられることに反対する国会決議が採択された。世論調査でも、60%以上のユダヤ系市民がパレスチナ国家を拒否した。
それでも国際社会が2国家解決案に期待をつなぐとすれば、さしあたりバイデン米大統領に頼る以外に有効な方策はない。バイデン氏がイスラエルに休戦と2国家解決案をのませるには、対イスラエル援助の見直しを示唆しながら圧力をかけることが不可欠だ。
ガザ住民がパしスチナ自治政府を嫌悪する感も理解できるが、イスラエルやアラブ諸国の共同管理や国連の管理を受け入れれば幸福になれるのだろうか。
16世紀のモロッコの法学者ワンシャリースィーは、ムスリムの土地であるならムスリムの暴政家のほうが公正なキリスト教徒よりもましだ、と言い切った。
自治政府を嫌うあまり、ガザで半恒久的な外国による占領と、西岸地域に対するイスラエルの入植地拡大を許してよいのか。そうなれば、暴力とテロの連鎖が際限なく繰り返される悲運は終わらない。
あるギリシャ古典には「人間のいとなみは運であり、思慮ではない」とある。しかし、この指摘は決して正しいとはいえない。
----------------------------------------------
山内昌之氏 1947年生まれ。カイロ大客員助教授、ハーバード大客員研究員、東大中東地域研究センター長などを経て現職。東大名誉教授。中東調査会常任理事。主著「中東国際関係史研究」。
山内昌之 富士通FSC特別顧問 (3月 4日 読売朝刊)
戦争の主体は普通なら国家であり、独立主権国家は自らの意志で戦争を止められる。しかし、パレスチナ自治区ガザにおける戦闘はもっと複雑である。
非国家主体でありながらガザを実効支配してきたイスラム主義組織ハマスは、昨年10月の奇襲でイスラエル市民ら約1200人を殺害し、200人以上を拉致した。この急襲作戦はイスラエルの報復攻撃を招き、2月末までにガザ住民らに 3万人を超える死者を出す悲惨な事態となった。
ハマスはガザの統治責任をどこまで自覚して奇襲に打って出たのか。古代の軍事国家スパルタの王アギス 2世でさえ、いちばん大事な知識は「いかに統治し、統治されるべきかを認識することだ」という政治哲学を 披瀝(ひれき)していた。
ガザ住民の間では、「これほどの惨事になるとは考えずに攻撃を仕掛けた」などとハマスへの批判が公然と聞かれ始めた。12月のガザ地区の世論調査では、37%の住民がハマスの急襲を批判した。いまはもっと増えているだろう。
江戸時代のある儒学者の言によれば、刑罰と征戦は同じで、小なれば刑罰、大なれば征戦だという(桃西河『 坐臥(ざが) 記』)。
ハマスとイスラエルは互いに 復讐(ふくしゅう)と刑罰の念から「権謀の 兵いくさ 」に出たが、いまやガザの戦闘は政治と道義の両面で「亡国の 兵(いくさ)」に変質したのではないか。
イスラエル軍は、ガザの住民を南部境界付近のラファまで追い詰め、21世紀では未曽有の民間人死傷者を出した。苛烈な軍事作戦は歴史の厳しい審判を受けるに違いない。ただし、ハマスの方も、パレスチナ民族主義組織を自負していながら住民に重い犠牲を強いた政治的責任が不問に付されるわけではない。
ハマスはイスラム主義武装闘争派でもあり、レバノンのヒズボラ、シリアのイラン革命防衛隊系諸派、イエメンのフーシ派などの非国家主体によるイスラエル包囲網の一角として、イランによる反米・反イスラエルの陣地戦で貢献したと見る向きもある。
米国とイスラエルは一貫してイランとの直接対決に及び腰だが、イランの支援するハマスなどへの機動戦的な報復を辞さない。
このはざまで犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だ。彼らは本来のイスラエル・パレスチナ問題だけでなく、「米国・イスラエル対イラン」という、異質な国際対立の手駒にされてしまったからだ。
しかも、ガザの戦闘はウクライナ戦争とともに、米ジャーナリストのトーマス・フリードマン氏が言う「壮大な地政学的争い」の核心的象徴となった。
「2国家案」軸に解決を
ロシアはもはや、イランの軍事支援なしにウクライナ戦争を継続できない。ウクライナも、米国などイスラエルの同盟国の援助なしではロシアに屈服しかねない。サウジアラビアを軸とした東アラブは、イスラエルとの競争的共存から友好的協力に進む好機をハマスにつぶされた。
ロシアとイランは、ウクライナ戦争とシリア内戦における最大の同盟国だが、ロシアはユダヤ人の人口が多く、OPEC(石油輸出国機構)プラスの一員でもある。イスラエルやサウジアラビアとの関係性は、ロシアとイランでは違う。
イランにとっても、大国ロシアと非国家主体ハマスの比重は同等ではない。
複雑な利害構造の中で、とても小さく資源もないガザのために一肌脱ぐ国は、ロシアや中国など「独裁非民主国家群」からも、米欧日など「自由民主国家群」からも現れていない。それでは、ガザ住民に多大な犠牲を出し続ける戦闘を止めるには何をなすべきか。
まず、パレスチナ国家樹立とイスラエルとの共存による2国家解決案をうたった1993年のオスロ合意という先人の知恵に戻る必要がある。同時に、サウジアラビアを軸とした中東の競争的共存の枠組みに、ハマスを排除したガザ・ヨルダン川西岸の2地域を組み込まねばならない。
ガザの自決権と生存権の確立は、ガザ住民に犠牲を強いるハマスのやり方では決して果たされない。
2国家解決案は、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想された。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長はその功労者である。今や人々は、「麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」とばかりにアッバス氏に厳しい。確かに、悪評高い自治政府腐敗の責任はある。
だが、「老いたる馬は道を忘れず」とも言う。アッバス氏らは、ハマスのようにテロをしたわけでない。ハマスの後にガザ統治を国際的に信託される資格があるのは、現実的には自治政府の他にない。
イスラエルのネタニヤフ首相は、2国家解決案の立役者だったラビン首相やぺレス外相の遺志に背いてこの案を確信的に妨害し、西岸の入植地を増大させる野心を捨てていない。
汚職容疑でいつ逮捕されてもおかしくないネタニヤフ氏は、保身のためハマスとの戦闘を政治利用しているふしがある。トランプ前大統領が復帰する可能性がある11月の米大統領選挙を見届けるまで、本格的な休戦に応じないだろう、
イスラエルに攻撃をやめさせる道筋を、理屈では誰もが知っている。総選挙などでネタニヤフ氏や連立極右・宗教右派を敗北させて穏健派に組閣させ、2国家解決案の必要性を国民に受け入れさせることだ。
だが、2月には野党を含む8割の議員の賛成で、パレスチナ国家樹立を外から押し付けられることに反対する国会決議が採択された。世論調査でも、60%以上のユダヤ系市民がパレスチナ国家を拒否した。
それでも国際社会が2国家解決案に期待をつなぐとすれば、さしあたりバイデン米大統領に頼る以外に有効な方策はない。バイデン氏がイスラエルに休戦と2国家解決案をのませるには、対イスラエル援助の見直しを示唆しながら圧力をかけることが不可欠だ。
ガザ住民がパしスチナ自治政府を嫌悪する感も理解できるが、イスラエルやアラブ諸国の共同管理や国連の管理を受け入れれば幸福になれるのだろうか。
16世紀のモロッコの法学者ワンシャリースィーは、ムスリムの土地であるならムスリムの暴政家のほうが公正なキリスト教徒よりもましだ、と言い切った。
自治政府を嫌うあまり、ガザで半恒久的な外国による占領と、西岸地域に対するイスラエルの入植地拡大を許してよいのか。そうなれば、暴力とテロの連鎖が際限なく繰り返される悲運は終わらない。
あるギリシャ古典には「人間のいとなみは運であり、思慮ではない」とある。しかし、この指摘は決して正しいとはいえない。
----------------------------------------------
山内昌之氏 1947年生まれ。カイロ大客員助教授、ハーバード大客員研究員、東大中東地域研究センター長などを経て現職。東大名誉教授。中東調査会常任理事。主著「中東国際関係史研究」。
ガザ住民の間では、「これほどの惨事になるとは考えずに攻撃を仕掛けた」などとハマスへの批判が公然と聞かれ始めた。12月のガザ地区の世論調査では、37%の住民がハマスの急襲を批判した。いまはもっと増えているだろうと、山内氏。
テロのハマスは、ガザの一般市民を盾にして市中に籠り、市民の犠牲を産むことでイスラエルへの批判を喚起するテロ戦術を採っているのですから、被害を負わされている市民がハマスを批判するのは当然!
むしろ、イスラエルの犠牲に対する反抗を一方的に非人道的と非難するポピュリズムこそが、他人事感覚で外野からの野次と認識されるべき。
喧嘩両成敗たるべしと遊爺は唱えてきています。
ようやくテロのハマスのそれこそ非人道的卑劣な戦術を批難する声が湧いてきているのですね。
山内氏のご指摘に賛同します。
ハマスとイスラエルは互いに 復讐(ふくしゅう)と刑罰の念から「権謀の 兵いくさ 」に出たが、いまやガザの戦闘は政治と道義の両面で「亡国の 兵(いくさ)」に変質したのではないかと、山内氏。
イスラエル軍は、ガザの住民を南部境界付近のラファまで追い詰め、21世紀では未曽有の民間人死傷者を出した。苛烈な軍事作戦は歴史の厳しい審判を受けるに違いない。ただし、ハマスの方も、パレスチナ民族主義組織を自負していながら住民に重い犠牲を強いた政治的責任が不問に付されるわけではないと!
ハマスはイスラム主義武装闘争派でもあり、レバノンのヒズボラ、シリアのイラン革命防衛隊系諸派、イエメンのフーシ派などの非国家主体によるイスラエル包囲網の一角として、イランによる反米・反イスラエルの陣地戦で貢献したと見る向きもあるとも。
米国とイスラエルは一貫してイランとの直接対決に及び腰だが、イランの支援するハマスなどへの機動戦的な報復を辞さない。
このはざまで犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だと、山内氏。
テロのハマスが、市民を盾にして籠る非人道戦術を採っている由縁ですね。
犠牲を余儀なくされたガザ住民の苦境は、たとえようもなく悲劇的だ。彼らは本来のイスラエル・パレスチナ問題だけでなく、「米国・イスラエル対イラン」という、異質な国際対立の手駒にされてしまったと、山内氏。
ロシアはもはや、イランの軍事支援なしにウクライナ戦争を継続できない。ウクライナも、米国などイスラエルの同盟国の援助なしではロシアに屈服しかねない。サウジアラビアを軸とした東アラブは、イスラエルとの競争的共存から友好的協力に進む好機をハマスにつぶされた。
ロシアとイランは、ウクライナ戦争とシリア内戦における最大の同盟国だが、ロシアはユダヤ人の人口が多く、イスラエルやサウジアラビアとの関係性は、ロシアとイランでは違うと、山内氏。
イランにとっても、大国ロシアと非国家主体ハマスの比重は同等ではない。
複雑な利害構造の中で、とても小さく資源もないガザのために一肌脱ぐ国は、ロシアや中国など「独裁非民主国家群」からも、米欧日など「自由民主国家群」からも現れていない。
それでは、ガザ住民に多大な犠牲を出し続ける戦闘を止めるには何をなすべきか。
2国家解決案をうたった1993年のオスロ合意という先人の知恵に戻る必要があると。
ガザの自決権と生存権の確立は、ガザ住民に犠牲を強いるハマスのやり方では決して果たされない。
2国家解決案は、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想された。
アッバス議長はその功労者である。今や人々は、「麒麟(きりん)も老いては駑馬(どば)に劣る」とばかりにアッバス氏に厳しい。確かに、悪評高い自治政府腐敗の責任はある。
だが、「老いたる馬は道を忘れず」とも言う。アッバス氏らは、ハマスのようにテロをしたわけでない。ハマスの後にガザ統治を国際的に信託される資格があるのは、現実的には自治政府の他にない。
イスラエルのネタニヤフ首相は、2国家解決案の立役者だったラビン首相やぺレス外相の遺志に背いてこの案を確信的に妨害し、西岸の入植地を増大させる野心を捨てていない。
汚職容疑でいつ逮捕されてもおかしくないネタニヤフ氏は、保身のためハマスとの戦闘を政治利用しているふしがあると。
トランプ前大統領が復帰する可能性がある11月の米大統領選挙を見届けるまで、本格的な休戦に応じないだろうとも。
2月には野党を含む8割の議員の賛成で、パレスチナ国家樹立を外から押し付けられることに反対する国会決議が採択された。世論調査でも、60%以上のユダヤ系市民がパレスチナ国家を拒否。
国際社会が2国家解決案に期待をつなぐとすれば、さしあたりバイデン米大統領に頼る以外に有効な方策はない。バイデン氏がイスラエルに休戦と2国家解決案をのませるには、対イスラエル援助の見直しを示唆しながら圧力をかけることが不可欠だと。
ガザ住民がパしスチナ自治政府を嫌悪する感も理解できるが、イスラエルやアラブ諸国の共同管理や国連の管理を受け入れれば幸福になれるのだろうかとも。
16世紀のモロッコの法学者ワンシャリースィーは、ムスリムの土地であるならムスリムの暴政家のほうが公正なキリスト教徒よりもましだ、と言い切ったのだそうです。
自治政府を嫌うあまり、ガザで半恒久的な外国による占領と、西岸地域に対するイスラエルの入植地拡大を許してよいのか。そうなれば、暴力とテロの連鎖が際限なく繰り返される悲運は終わらないと。
繰り返しになりますが、90年代のパレスチナとイスラエルの指導者のぎりぎりの妥協で構想されたオスロ合意に戻れと。
パレスチナのアッバス議長、イスラエルのラビン首相やぺレス外相と言った人材の登場が望まれます。
はたまた、バイデン氏とエジプトとの仲介力か。
# 冒頭の画像は、ネタニヤフ首相
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/6b/ff598c122823f7592802533f7fe21668.jpg)
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