ガザではイスラエルの軍事作戦によってハマスの戦闘員が大きな打撃を被っており、懸念が深まっていたなかハマスの亡命中の幹部らが、カタールの首都ドーハで会合を開いたと、WSJ。
ガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏から届いたメッセージは、「心配するな、イスラエルはわれわれが望むところにいる」
会合の内容を知る複数の関係者によると、シンワル氏はメッセージで、多数の民間人が犠牲になれば、イスラエルに戦争の終結を迫る国際的な圧力が強まるとの見方を示したのだそうです。
テロのハマスが一般市民を盾にして戦っている由縁で、世界の世論もイスラエルは非人道的との批難の声が姦しい。
中東で最強の軍隊を持つイスラエルに対し、ガザのハマス軍事部門は不利な戦いを続けている。戦争のきっかけは、米国がテロ組織に指定するハマスが昨年10月7日に仕掛けたイスラエルへの奇襲だったと、WSJ。
一方、イスラエル奇襲の首謀者であり、イスラエルが作戦での標的の一つに定めるシンワル氏は別の次元の戦いを行っている。同氏の目標は、ハマスが戦争終結後にガザのがれきの中から立ち上がり、歴史的な勝利を宣言し、パレスチナ国家樹立の大義における指導的立場を確立することだと、WSJ。
シンワル氏の弟、ムハンマド・シンワル氏が日々の作戦を指揮するハマスは11月の一時的な停戦以降、戦術を変えてきた。戦闘員は現在、大規模な銃撃戦は避け、小規模な待ち伏せ作戦に重点を置いているのだそうです。
イスラエルの機甲戦に対し、ハマスが待ち伏せ作戦によって拠点を防衛できる見込みはほとんどない。だが、ハマスの限られた軍事力やシンワル氏の戦争目的に見合ったものといえると、WSJ。
イスラエル軍ではウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に応じた上級司令官から下位の兵士に至るまで、多くが現場での戦術的な勝利の積み重ねが恒久的な戦略的勝利につながらない可能性を懸念している。イスラエルは5カ月近くにわたり激しい戦闘を続けてきたが、軍事・政治組織としてのハマスの影響力を排除するという目的達成には程遠いと、WSJ。
ネタニヤフ首相は、ハマスを根絶する「完全な勝利」を達成すると誓う。
しかし、イスラエル軍はそれよりも慎重な姿勢を示し、10月7日のような攻撃を二度と仕掛けられない水準にまでハマスを弱体化させることを目指すと、WSJ。
戦争によって、ガザの住民は犠牲を強いられている。
ガザのハマス指導者らはエジプトの政府高官や亡命中のハマス政治部門の幹部に対し、カッサム旅団は少なくとも6000人の戦闘員を失ったと語っている。戦争前の総数は推定3万人だった。イスラエルによると、ガザではこれまでに約1万2000人のハマス戦闘員を殺害した。これとは別に、10月7日にイスラエルでの戦闘で約1000人を殺害したとしている。
米首都ワシントンにあるシンクタンク、アラブ湾岸諸国研究所のフセイン・イビシュ氏は、ハマスを弱体化させることはイスラエル軍にとって現実的な目標だと語る。ただ、そうした状況を継続するにはガザを全面的に占領する必要があり、そうすると、ハマスには永遠に反乱を続ける目的を与えることになると指摘。
イスラエルとハマスのどちらがそれぞれの大局的な目標を達成するかは、戦争の意義付け次第の面もある。イスラエルは、ハマスが10月7日にイスラエル南部で約1200人を惨殺。イスラエルの歴史において最も多くの血が流された日となった。ガザでの戦争は自衛のために必要だと考えている。
ただ、イスラエルは最も緊密な同盟国である米国を含め、他国との関係が悪化している。ジョー・バイデン米大統領は最近、イスラエル軍による攻撃を「行き過ぎだ」と語ったと、WSJ。
イスラエルには、軍がハマスに十分な打撃を与えて自国の安全保障を確保することは、世界中で非難を浴びるという外交的コストを上回るとの読みがある。
一方、ハマスは、ハマスを根絶しようとするイスラエルの取り組みをしのぎ、組織の再生と政治的勝利に道を開くことができるとみている。
ヤヒヤ・シンワル氏は10月7日の奇襲後にエジプト当局者に送ったメッセージで、「われわれはパレスチナの大義に光を当てた。現状を変えたのだ」と述べたのだそうです。
シンワル氏を含めハマス指導者らは当初、中東で反イスラエルの広域戦争のきっかけになることを期待。
ところが、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラとイラン自体はイスラエルとの全面的な衝突を望まず、ガザに侵攻するイスラエルに対してはハマスがほぼ単独で戦うことになったと、WSJ。
ハマスは当初、最大30人程度の小隊規模のグループでイスラエル軍に対抗しようとした。
ただ、こうした戦術では戦闘員や司令官の戦死者数が拡大。
ハマスは11月に実施された一時的な停戦を利用し、教訓を生かした。2、3人で構成する小グループが攻撃後にすぐ退散するという戦術に切り替え、攻撃を行うのは1人だけの時もあったのだそうです。
新たに用いたこうしたゲリラ戦術はガザ全域で見られたと語るのは、ヘブライ大学のベレロビッチ氏。
戦術の変更によってハマスの損失は減少したが、ハマスが殺傷するイスラエル兵の数も減少した。ベレロビッチ氏はこうした戦術変更について、ハマスの「生き残りの必要性がイスラエルを制圧する必要性を上回ったことを示している」と。
ガザ南部の最大都市ハンユニスでの戦いでは、イスラエル軍が大規模な配備で地上と上空を支配しているため、ハマス戦闘員は姿を現すたびに攻撃の対象になりやすい。
イスラエル軍第98師団のダン・ゴールドファス司令官はハンユニスでのハマス戦闘員との戦いについて、「彼らがいったん地上に出れば大して難しいことではない。難しいのは、彼らを地下からあぶり出すことだ」と語っている。
ただし、イスラエル軍はハマスの膨大なトンネル網を発見し、破壊する取り組みを続けているが部分的な進展しかみられていないと、WSJ。
シンワル氏は61歳で、2017年にガザでハマスの指導者になる前にはイスラエルの刑務所に22年間収監されていた。イスラエルはシンワル氏を殺害するか拘束することを優先事項の一つに掲げている。
イスラエルのアナリストによると、シンワル氏は大義のために死ぬ覚悟ができており、ハマスの存続を確信しているという。
シンワル氏からガザでの戦争について前向きなメッセージを受け取ったエジプト情報当局者の一部は、同氏は数カ月にわたり地下に潜伏している間に現実から乖離(かいり)したと考えているのだそうです。
ガザのハマスの指導者のシンワル氏が、潜伏での情報不足で、現状から乖離。
イスラエルとハマスの交渉も、現状から乖離!?
イスラエルの報復の攻撃が非人道的と、世界の世論がイスラエル批判をするとのシンワル氏の戦術は現状では的中。
しかし、一般市民や、イスラエルに越境侵攻し殺戮を行った時に拉致した人質を盾に籠るハマスの戦術は、テロ行為でこちらも卑劣な非人道行為。
喧嘩両成敗であたるべきですが、現状はハマスのシンワル氏の戦術に嵌められ、イスラエル批難が多い様な世界世論が残念。
米国は大統領選が本格化。両党の候補者選が闌ですが、バイデン vs トランプの闘いになる雲行き。
もしトラ議論が姦しくなってきていますね。
政治パーティ券のキックバックの不透明政治資金で揺れている日本の政界。
世界の激変への備えが危惧されます。
# 冒頭の画像は、ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏
この花の名前は、ヒメリュウキンカ
↓よろしかったら、お願いします。
ガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏から届いたメッセージは、「心配するな、イスラエルはわれわれが望むところにいる」
会合の内容を知る複数の関係者によると、シンワル氏はメッセージで、多数の民間人が犠牲になれば、イスラエルに戦争の終結を迫る国際的な圧力が強まるとの見方を示したのだそうです。
テロのハマスが一般市民を盾にして戦っている由縁で、世界の世論もイスラエルは非人道的との批難の声が姦しい。
ガザで劣勢のハマス、それでも「勝利」見据える - WSJ
ガザ地区トップのシンワル氏は、ハマスがイスラエルの攻撃から生き残り、政治的な勝利を達成することができると考えている By Marcus Walker, Anat Peled and Summer Said (WSJと総称)
2024年3月1日
イスラム組織ハマスの亡命中の幹部らが今月、カタールの首都ドーハで会合を開いた。パレスチナ自治区ガザではイスラエルの軍事作戦によってハマスの戦闘員が大きな打撃を被っており、懸念が深まっていた。イスラエル軍はハマスの拠点をしらみつぶしに制圧し、毎日数十人の戦闘員を殺害していた。
ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏のメッセージを託した使者が到着したのはそんな時だった。同氏は実質的にこう言っていた。「心配するな、イスラエルはわれわれが望むところにいる」
ハマス軍事部門「カッサム旅団」の戦闘員はうまくやっていると伝えるなど、メッセージの内容は前向きだった。イスラエルによるガザ最南部ラファへの地上侵攻開始が予想される中、ハマスは準備を整えていた。会合の内容を知る複数の関係者によると、シンワル氏はメッセージで、多数の民間人が犠牲になれば、イスラエルに戦争の終結を迫る国際的な圧力が強まるとの見方を示した。
中東で最強の軍隊を持つイスラエルに対し、ガザのハマス軍事部門は不利な戦いを続けている。戦争のきっかけは、米国がテロ組織に指定するハマスが昨年10月7日に仕掛けたイスラエルへの奇襲だった。一方、イスラエル奇襲の首謀者であり、イスラエルが作戦での標的の一つに定めるシンワル氏は別の次元の戦いを行っている。同氏の目標は、ハマスが戦争終結後にガザのがれきの中から立ち上がり、イスラエルの攻撃を耐え抜いたとして歴史的な勝利を宣言し、パレスチナ国家樹立の大義における指導的立場を確立することだ。
シンワル氏の弟、ムハンマド・シンワル氏が日々の作戦を指揮するハマスは11月の一時的な停戦以降、戦術を変えてきた。戦闘員は現在、大規模な銃撃戦は避け、小規模な待ち伏せ作戦に重点を置く。使用するのは携行型ロケット弾発射機のほか、イスラエル兵をわなに誘い込むための人質の音声録音などだ。
イスラエルの機甲戦に対し、ハマスが待ち伏せ作戦によって拠点を防衛できる見込みはほとんどない。だが、ハマスの限られた軍事力やシンワル氏の戦争目的に見合ったものといえる。
イスラエル軍の民間アナリストであり、エルサレムのヘブライ大学の軍事史家であるエヤル・ベレロビッチ氏は「非常に理にかなった戦術的論理だ」と指摘する。「彼らの戦略的目標は生き残ることだ」
イスラエル軍ではウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に応じた上級司令官から下位の兵士に至るまで、多くが現場での戦術的な勝利の積み重ねが恒久的な戦略的勝利につながらない可能性を懸念している。イスラエルは5カ月近くにわたり激しい戦闘を続けてきたが、軍事・政治組織としてのハマスの影響力を排除するという目的達成には程遠い。
イスラエル軍の第98師団に所属するガザ南部ハンユニスの予備兵は「敵との戦いはモグラたたきのようなものだ」と話す。多くの兵士が計画の不備を感じており、何のために努力しているのか迷いが生じているという。「ハマスを滅ぼすことは非常に難しいだろう」
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスを根絶する「完全な勝利」を達成すると誓う。イスラエル軍はそれよりも慎重な姿勢を示し、10月7日のような攻撃を二度と仕掛けられない水準にまでハマスを弱体化させることを目指す。 ただ、イスラエル軍では、ハマスが去った後のガザ統治を巡る計画を具体化することに政府が消極的なために政治的空白が生じ、ハマスが息を吹き返す可能性があるとの見方が多い。
戦争によって、ガザの住民は犠牲を強いられている。パレスチナ保健当局によると、イスラエルの軍事作戦により約3万人の住民が死亡し、女性と子どもが大半を占める。イスラエル当局者は死者の総数はほぼ正確であると非公式に認めているものの、その内訳には異議を唱え、死者の3分の1以上はハマスの戦闘員だとしている。
ガザのハマス指導者らはエジプトの政府高官や亡命中のハマス政治部門の幹部に対し、カッサム旅団は少なくとも6000人の戦闘員を失ったと語っている。戦争前の総数は推定3万人だった。イスラエルによると、ガザではこれまでに約1万2000人のハマス戦闘員を殺害した。これとは別に、10月7日にイスラエルでの戦闘で約1000人を殺害したとしている。
米国とエジプトの情報当局者は、死者の実数はイスラエルとハマスが主張する数の中間あたりだとみている。軍事アナリストは、ハマスは一般の戦闘員は新規募集で補充できるものの、経験豊富な司令官の補充は難しいと指摘する。
イスラエルは10月7日に300人超の兵士を失い、ガザではこれまでに242人の兵士が殺害された。
米首都ワシントンにあるシンクタンク、アラブ湾岸諸国研究所のフセイン・イビシュ氏は、ハマスを弱体化させることはイスラエル軍にとって現実的な目標だと語る。ただ、そうした状況を継続するにはガザを全面的に占領する必要があり、そうすると、ハマスには永遠に反乱を続ける目的を与えることになると指摘する。
イスラエルとハマスのどちらがそれぞれの大局的な目標を達成するかは、戦争の意義付け次第の面もある。イスラエルは、ハマスが10月7日にイスラエル南部で約1200人を惨殺し、イスラエルの歴史において最も多くの血が流された日となったとし、ガザでの戦争は自衛のために必要だと考えている。
ただ、ガザでの深刻化する人道危機と大規模な破壊によって、イスラエルは最も緊密な同盟国である米国を含め、他国との関係が悪化している。ジョー・バイデン米大統領は最近、イスラエル軍による攻撃を「行き過ぎだ」と語った。
米国は一時的な停戦を訴えている。バイデン氏は26日、休戦と人質解放に向けた合意について楽観的な見方を示したものの、イスラエルとハマスは交渉での双方の隔たりは依然として大きいとして、けん制した。
イスラエルには、軍がハマスに十分な打撃を与えて自国の安全保障を確保することは、世界中で非難を浴びるという外交的コストを上回るとの読みがある。
ハマスは一方、全力でハマスを根絶しようとするイスラエルの取り組みをしのぎ、組織の再生と政治的勝利に道を開くことができるとみている。
ヤヒヤ・シンワル氏は10月7日の奇襲後にエジプト当局者に送ったメッセージで、「われわれはパレスチナの大義に光を当てた。現状を変えたのだ」と述べた。
シンワル氏を含めハマス指導者らは当初、中東で反イスラエルの広域戦争のきっかけになることを期待していた。ところが、関係が深いレバノンの親イラン武装組織ヒズボラとイラン自体はイスラエルとの全面的な衝突を望まず、ガザに侵攻するイスラエルに対してはハマスがほぼ単独で戦うことになった。
イスラエル軍幹部や軍事アナリストによると、ハマスは当初、最大30人程度の小隊規模のグループでイスラエル軍に対抗しようとした。
ガザ市内の密集地では、ハマス戦闘員は連携して攻撃を行った。あるグループは、前進するイスラエル部隊の阻止に回り、別のグループは側面から攻撃した。ハマスは攻撃を仕掛けては、廃虚と化した建物や地下に張り巡らされた迷路のようなトンネルに姿を隠した。ただ、こうした戦術では戦闘員や司令官の戦死者数が拡大した。
イスラエル軍司令官やアナリストによると、ハマスは11月に実施された一時的な停戦を利用し、教訓を生かした。2、3人で構成する小グループが攻撃後にすぐ退散するという戦術に切り替え、攻撃を行うのは1人だけの時もあった。
新たに用いたこうしたゲリラ戦術はガザ全域で見られたと語るのは、ヘブライ大学のベレロビッチ氏だ。当時、ハマスでは指揮・通信体制がまだ機能していたことを物語る。
戦術の変更によってハマスの損失は減少したが、ハマスが殺傷するイスラエル兵の数も減少した。ベレロビッチ氏はこうした戦術変更について、ハマスの「生き残りの必要性がイスラエルを制圧する必要性を上回ったことを示している」と語る。
イスラエル軍は1月にガザ北部のガザ市から撤退し、ハマスが待ち伏せ攻撃を行う機会を少なくした。だが、ハマスはイスラエル軍が撤退した地域にすぐに戻り始めた。イスラエル軍はガザ市周辺で再びハマス掃討作戦を実施した。
ガザ南部の最大都市ハンユニスでの戦いでは、イスラエル軍が大規模な配備で地上と上空を支配しているため、ハマス戦闘員は姿を現すたびに攻撃の対象になりやすい。
イスラエル軍第98師団のダン・ゴールドファス司令官はハンユニスでのハマス戦闘員との戦いについて、「彼らがいったん地上に出れば大して難しいことではない。難しいのは、彼らを地下からあぶり出すことだ」と語る。
イスラエル軍はハマスの膨大なトンネル網を発見し、破壊する取り組みを続けているが部分的な進展しかみられていない。イスラエル当局者は、ハマスがガザの地下に構築したトンネルは全長約560キロメートルに及ぶと推定している。ハンユニスだけでも数百本のトンネルがあると考えられている。
シンワル氏は故郷であるハンユニス地下のトンネルに一時期潜伏し、人質を周囲に配置していたとみられているが、イスラエル当局者は現在、こうした情報には確信が持てないとしている。同氏は61歳で、2017年にガザでハマスの指導者になる前にはイスラエルの刑務所に22年間収監されていた。イスラエルはシンワル氏を殺害するか拘束することを優先事項の一つに掲げている。
イスラエルのアナリストによると、シンワル氏は大義のために死ぬ覚悟ができており、ハマスの存続を確信しているという。亡命中のハマス幹部らと同様にシンワル氏からガザでの戦争について前向きなメッセージを受け取ったエジプト情報当局者の一部は、同氏は数カ月にわたり地下に潜伏している間に現実から乖離(かいり)したと考えている。
ガザ地区トップのシンワル氏は、ハマスがイスラエルの攻撃から生き残り、政治的な勝利を達成することができると考えている By Marcus Walker, Anat Peled and Summer Said (WSJと総称)
2024年3月1日
イスラム組織ハマスの亡命中の幹部らが今月、カタールの首都ドーハで会合を開いた。パレスチナ自治区ガザではイスラエルの軍事作戦によってハマスの戦闘員が大きな打撃を被っており、懸念が深まっていた。イスラエル軍はハマスの拠点をしらみつぶしに制圧し、毎日数十人の戦闘員を殺害していた。
ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏のメッセージを託した使者が到着したのはそんな時だった。同氏は実質的にこう言っていた。「心配するな、イスラエルはわれわれが望むところにいる」
ハマス軍事部門「カッサム旅団」の戦闘員はうまくやっていると伝えるなど、メッセージの内容は前向きだった。イスラエルによるガザ最南部ラファへの地上侵攻開始が予想される中、ハマスは準備を整えていた。会合の内容を知る複数の関係者によると、シンワル氏はメッセージで、多数の民間人が犠牲になれば、イスラエルに戦争の終結を迫る国際的な圧力が強まるとの見方を示した。
中東で最強の軍隊を持つイスラエルに対し、ガザのハマス軍事部門は不利な戦いを続けている。戦争のきっかけは、米国がテロ組織に指定するハマスが昨年10月7日に仕掛けたイスラエルへの奇襲だった。一方、イスラエル奇襲の首謀者であり、イスラエルが作戦での標的の一つに定めるシンワル氏は別の次元の戦いを行っている。同氏の目標は、ハマスが戦争終結後にガザのがれきの中から立ち上がり、イスラエルの攻撃を耐え抜いたとして歴史的な勝利を宣言し、パレスチナ国家樹立の大義における指導的立場を確立することだ。
シンワル氏の弟、ムハンマド・シンワル氏が日々の作戦を指揮するハマスは11月の一時的な停戦以降、戦術を変えてきた。戦闘員は現在、大規模な銃撃戦は避け、小規模な待ち伏せ作戦に重点を置く。使用するのは携行型ロケット弾発射機のほか、イスラエル兵をわなに誘い込むための人質の音声録音などだ。
イスラエルの機甲戦に対し、ハマスが待ち伏せ作戦によって拠点を防衛できる見込みはほとんどない。だが、ハマスの限られた軍事力やシンワル氏の戦争目的に見合ったものといえる。
イスラエル軍の民間アナリストであり、エルサレムのヘブライ大学の軍事史家であるエヤル・ベレロビッチ氏は「非常に理にかなった戦術的論理だ」と指摘する。「彼らの戦略的目標は生き残ることだ」
イスラエル軍ではウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に応じた上級司令官から下位の兵士に至るまで、多くが現場での戦術的な勝利の積み重ねが恒久的な戦略的勝利につながらない可能性を懸念している。イスラエルは5カ月近くにわたり激しい戦闘を続けてきたが、軍事・政治組織としてのハマスの影響力を排除するという目的達成には程遠い。
イスラエル軍の第98師団に所属するガザ南部ハンユニスの予備兵は「敵との戦いはモグラたたきのようなものだ」と話す。多くの兵士が計画の不備を感じており、何のために努力しているのか迷いが生じているという。「ハマスを滅ぼすことは非常に難しいだろう」
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ハマスを根絶する「完全な勝利」を達成すると誓う。イスラエル軍はそれよりも慎重な姿勢を示し、10月7日のような攻撃を二度と仕掛けられない水準にまでハマスを弱体化させることを目指す。 ただ、イスラエル軍では、ハマスが去った後のガザ統治を巡る計画を具体化することに政府が消極的なために政治的空白が生じ、ハマスが息を吹き返す可能性があるとの見方が多い。
戦争によって、ガザの住民は犠牲を強いられている。パレスチナ保健当局によると、イスラエルの軍事作戦により約3万人の住民が死亡し、女性と子どもが大半を占める。イスラエル当局者は死者の総数はほぼ正確であると非公式に認めているものの、その内訳には異議を唱え、死者の3分の1以上はハマスの戦闘員だとしている。
ガザのハマス指導者らはエジプトの政府高官や亡命中のハマス政治部門の幹部に対し、カッサム旅団は少なくとも6000人の戦闘員を失ったと語っている。戦争前の総数は推定3万人だった。イスラエルによると、ガザではこれまでに約1万2000人のハマス戦闘員を殺害した。これとは別に、10月7日にイスラエルでの戦闘で約1000人を殺害したとしている。
米国とエジプトの情報当局者は、死者の実数はイスラエルとハマスが主張する数の中間あたりだとみている。軍事アナリストは、ハマスは一般の戦闘員は新規募集で補充できるものの、経験豊富な司令官の補充は難しいと指摘する。
イスラエルは10月7日に300人超の兵士を失い、ガザではこれまでに242人の兵士が殺害された。
米首都ワシントンにあるシンクタンク、アラブ湾岸諸国研究所のフセイン・イビシュ氏は、ハマスを弱体化させることはイスラエル軍にとって現実的な目標だと語る。ただ、そうした状況を継続するにはガザを全面的に占領する必要があり、そうすると、ハマスには永遠に反乱を続ける目的を与えることになると指摘する。
イスラエルとハマスのどちらがそれぞれの大局的な目標を達成するかは、戦争の意義付け次第の面もある。イスラエルは、ハマスが10月7日にイスラエル南部で約1200人を惨殺し、イスラエルの歴史において最も多くの血が流された日となったとし、ガザでの戦争は自衛のために必要だと考えている。
ただ、ガザでの深刻化する人道危機と大規模な破壊によって、イスラエルは最も緊密な同盟国である米国を含め、他国との関係が悪化している。ジョー・バイデン米大統領は最近、イスラエル軍による攻撃を「行き過ぎだ」と語った。
米国は一時的な停戦を訴えている。バイデン氏は26日、休戦と人質解放に向けた合意について楽観的な見方を示したものの、イスラエルとハマスは交渉での双方の隔たりは依然として大きいとして、けん制した。
イスラエルには、軍がハマスに十分な打撃を与えて自国の安全保障を確保することは、世界中で非難を浴びるという外交的コストを上回るとの読みがある。
ハマスは一方、全力でハマスを根絶しようとするイスラエルの取り組みをしのぎ、組織の再生と政治的勝利に道を開くことができるとみている。
ヤヒヤ・シンワル氏は10月7日の奇襲後にエジプト当局者に送ったメッセージで、「われわれはパレスチナの大義に光を当てた。現状を変えたのだ」と述べた。
シンワル氏を含めハマス指導者らは当初、中東で反イスラエルの広域戦争のきっかけになることを期待していた。ところが、関係が深いレバノンの親イラン武装組織ヒズボラとイラン自体はイスラエルとの全面的な衝突を望まず、ガザに侵攻するイスラエルに対してはハマスがほぼ単独で戦うことになった。
イスラエル軍幹部や軍事アナリストによると、ハマスは当初、最大30人程度の小隊規模のグループでイスラエル軍に対抗しようとした。
ガザ市内の密集地では、ハマス戦闘員は連携して攻撃を行った。あるグループは、前進するイスラエル部隊の阻止に回り、別のグループは側面から攻撃した。ハマスは攻撃を仕掛けては、廃虚と化した建物や地下に張り巡らされた迷路のようなトンネルに姿を隠した。ただ、こうした戦術では戦闘員や司令官の戦死者数が拡大した。
イスラエル軍司令官やアナリストによると、ハマスは11月に実施された一時的な停戦を利用し、教訓を生かした。2、3人で構成する小グループが攻撃後にすぐ退散するという戦術に切り替え、攻撃を行うのは1人だけの時もあった。
新たに用いたこうしたゲリラ戦術はガザ全域で見られたと語るのは、ヘブライ大学のベレロビッチ氏だ。当時、ハマスでは指揮・通信体制がまだ機能していたことを物語る。
戦術の変更によってハマスの損失は減少したが、ハマスが殺傷するイスラエル兵の数も減少した。ベレロビッチ氏はこうした戦術変更について、ハマスの「生き残りの必要性がイスラエルを制圧する必要性を上回ったことを示している」と語る。
イスラエル軍は1月にガザ北部のガザ市から撤退し、ハマスが待ち伏せ攻撃を行う機会を少なくした。だが、ハマスはイスラエル軍が撤退した地域にすぐに戻り始めた。イスラエル軍はガザ市周辺で再びハマス掃討作戦を実施した。
ガザ南部の最大都市ハンユニスでの戦いでは、イスラエル軍が大規模な配備で地上と上空を支配しているため、ハマス戦闘員は姿を現すたびに攻撃の対象になりやすい。
イスラエル軍第98師団のダン・ゴールドファス司令官はハンユニスでのハマス戦闘員との戦いについて、「彼らがいったん地上に出れば大して難しいことではない。難しいのは、彼らを地下からあぶり出すことだ」と語る。
イスラエル軍はハマスの膨大なトンネル網を発見し、破壊する取り組みを続けているが部分的な進展しかみられていない。イスラエル当局者は、ハマスがガザの地下に構築したトンネルは全長約560キロメートルに及ぶと推定している。ハンユニスだけでも数百本のトンネルがあると考えられている。
シンワル氏は故郷であるハンユニス地下のトンネルに一時期潜伏し、人質を周囲に配置していたとみられているが、イスラエル当局者は現在、こうした情報には確信が持てないとしている。同氏は61歳で、2017年にガザでハマスの指導者になる前にはイスラエルの刑務所に22年間収監されていた。イスラエルはシンワル氏を殺害するか拘束することを優先事項の一つに掲げている。
イスラエルのアナリストによると、シンワル氏は大義のために死ぬ覚悟ができており、ハマスの存続を確信しているという。亡命中のハマス幹部らと同様にシンワル氏からガザでの戦争について前向きなメッセージを受け取ったエジプト情報当局者の一部は、同氏は数カ月にわたり地下に潜伏している間に現実から乖離(かいり)したと考えている。
中東で最強の軍隊を持つイスラエルに対し、ガザのハマス軍事部門は不利な戦いを続けている。戦争のきっかけは、米国がテロ組織に指定するハマスが昨年10月7日に仕掛けたイスラエルへの奇襲だったと、WSJ。
一方、イスラエル奇襲の首謀者であり、イスラエルが作戦での標的の一つに定めるシンワル氏は別の次元の戦いを行っている。同氏の目標は、ハマスが戦争終結後にガザのがれきの中から立ち上がり、歴史的な勝利を宣言し、パレスチナ国家樹立の大義における指導的立場を確立することだと、WSJ。
シンワル氏の弟、ムハンマド・シンワル氏が日々の作戦を指揮するハマスは11月の一時的な停戦以降、戦術を変えてきた。戦闘員は現在、大規模な銃撃戦は避け、小規模な待ち伏せ作戦に重点を置いているのだそうです。
イスラエルの機甲戦に対し、ハマスが待ち伏せ作戦によって拠点を防衛できる見込みはほとんどない。だが、ハマスの限られた軍事力やシンワル氏の戦争目的に見合ったものといえると、WSJ。
イスラエル軍ではウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の取材に応じた上級司令官から下位の兵士に至るまで、多くが現場での戦術的な勝利の積み重ねが恒久的な戦略的勝利につながらない可能性を懸念している。イスラエルは5カ月近くにわたり激しい戦闘を続けてきたが、軍事・政治組織としてのハマスの影響力を排除するという目的達成には程遠いと、WSJ。
ネタニヤフ首相は、ハマスを根絶する「完全な勝利」を達成すると誓う。
しかし、イスラエル軍はそれよりも慎重な姿勢を示し、10月7日のような攻撃を二度と仕掛けられない水準にまでハマスを弱体化させることを目指すと、WSJ。
戦争によって、ガザの住民は犠牲を強いられている。
ガザのハマス指導者らはエジプトの政府高官や亡命中のハマス政治部門の幹部に対し、カッサム旅団は少なくとも6000人の戦闘員を失ったと語っている。戦争前の総数は推定3万人だった。イスラエルによると、ガザではこれまでに約1万2000人のハマス戦闘員を殺害した。これとは別に、10月7日にイスラエルでの戦闘で約1000人を殺害したとしている。
米首都ワシントンにあるシンクタンク、アラブ湾岸諸国研究所のフセイン・イビシュ氏は、ハマスを弱体化させることはイスラエル軍にとって現実的な目標だと語る。ただ、そうした状況を継続するにはガザを全面的に占領する必要があり、そうすると、ハマスには永遠に反乱を続ける目的を与えることになると指摘。
イスラエルとハマスのどちらがそれぞれの大局的な目標を達成するかは、戦争の意義付け次第の面もある。イスラエルは、ハマスが10月7日にイスラエル南部で約1200人を惨殺。イスラエルの歴史において最も多くの血が流された日となった。ガザでの戦争は自衛のために必要だと考えている。
ただ、イスラエルは最も緊密な同盟国である米国を含め、他国との関係が悪化している。ジョー・バイデン米大統領は最近、イスラエル軍による攻撃を「行き過ぎだ」と語ったと、WSJ。
イスラエルには、軍がハマスに十分な打撃を与えて自国の安全保障を確保することは、世界中で非難を浴びるという外交的コストを上回るとの読みがある。
一方、ハマスは、ハマスを根絶しようとするイスラエルの取り組みをしのぎ、組織の再生と政治的勝利に道を開くことができるとみている。
ヤヒヤ・シンワル氏は10月7日の奇襲後にエジプト当局者に送ったメッセージで、「われわれはパレスチナの大義に光を当てた。現状を変えたのだ」と述べたのだそうです。
シンワル氏を含めハマス指導者らは当初、中東で反イスラエルの広域戦争のきっかけになることを期待。
ところが、レバノンの親イラン武装組織ヒズボラとイラン自体はイスラエルとの全面的な衝突を望まず、ガザに侵攻するイスラエルに対してはハマスがほぼ単独で戦うことになったと、WSJ。
ハマスは当初、最大30人程度の小隊規模のグループでイスラエル軍に対抗しようとした。
ただ、こうした戦術では戦闘員や司令官の戦死者数が拡大。
ハマスは11月に実施された一時的な停戦を利用し、教訓を生かした。2、3人で構成する小グループが攻撃後にすぐ退散するという戦術に切り替え、攻撃を行うのは1人だけの時もあったのだそうです。
新たに用いたこうしたゲリラ戦術はガザ全域で見られたと語るのは、ヘブライ大学のベレロビッチ氏。
戦術の変更によってハマスの損失は減少したが、ハマスが殺傷するイスラエル兵の数も減少した。ベレロビッチ氏はこうした戦術変更について、ハマスの「生き残りの必要性がイスラエルを制圧する必要性を上回ったことを示している」と。
ガザ南部の最大都市ハンユニスでの戦いでは、イスラエル軍が大規模な配備で地上と上空を支配しているため、ハマス戦闘員は姿を現すたびに攻撃の対象になりやすい。
イスラエル軍第98師団のダン・ゴールドファス司令官はハンユニスでのハマス戦闘員との戦いについて、「彼らがいったん地上に出れば大して難しいことではない。難しいのは、彼らを地下からあぶり出すことだ」と語っている。
ただし、イスラエル軍はハマスの膨大なトンネル網を発見し、破壊する取り組みを続けているが部分的な進展しかみられていないと、WSJ。
シンワル氏は61歳で、2017年にガザでハマスの指導者になる前にはイスラエルの刑務所に22年間収監されていた。イスラエルはシンワル氏を殺害するか拘束することを優先事項の一つに掲げている。
イスラエルのアナリストによると、シンワル氏は大義のために死ぬ覚悟ができており、ハマスの存続を確信しているという。
シンワル氏からガザでの戦争について前向きなメッセージを受け取ったエジプト情報当局者の一部は、同氏は数カ月にわたり地下に潜伏している間に現実から乖離(かいり)したと考えているのだそうです。
ガザのハマスの指導者のシンワル氏が、潜伏での情報不足で、現状から乖離。
イスラエルとハマスの交渉も、現状から乖離!?
イスラエルの報復の攻撃が非人道的と、世界の世論がイスラエル批判をするとのシンワル氏の戦術は現状では的中。
しかし、一般市民や、イスラエルに越境侵攻し殺戮を行った時に拉致した人質を盾に籠るハマスの戦術は、テロ行為でこちらも卑劣な非人道行為。
喧嘩両成敗であたるべきですが、現状はハマスのシンワル氏の戦術に嵌められ、イスラエル批難が多い様な世界世論が残念。
米国は大統領選が本格化。両党の候補者選が闌ですが、バイデン vs トランプの闘いになる雲行き。
もしトラ議論が姦しくなってきていますね。
政治パーティ券のキックバックの不透明政治資金で揺れている日本の政界。
世界の激変への備えが危惧されます。
# 冒頭の画像は、ハマスのガザ地区トップ、ヤヒヤ・シンワル氏
この花の名前は、ヒメリュウキンカ
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