トランプ米大統領が中国製モバイル向けショートムービープラットフォームアプリTikTokについて、9月15日までに国際事業を米国企業に売却するか、さもなくば米国市場から完全撤退するか、の選択を迫ったことで、話題が沸騰していますね。
この話は、米中新冷戦に伴う、ソフトのユーザー情報が中国政府に渡ることの防止の為の米中バトルと漫然と見ていましたが、どうやら違う様ですね。
情報漏洩の危険を防止するのなら、ファーウェイへの制裁の様に、使用禁止(撤退)にすればよいのに、米国企業が買収する方向で進んでいる違いがあります。
しかも米国側の企業は、マイクロソフトとオラクルの二社が天秤にかけられている。つまり、中国側企業のバイトダンスは、売る気(または投資受入れ)なのです。
これは、単なる「テックウォー」ではないと福島氏。
これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになったと福島さん。
本来、娯楽アプリであるはずが、使いようによっては洗脳や世論誘導のツールとなりうるとも。
中国バイトダンスの創始者、張一鳴氏は、強い不満をのべつつも、米国に逆らえないとも言っているのだそうですが、同社がTikTokの株式の大多数を保有した状態を維持しつつ米政府の承認を得ようとも試みているのだそうです。
OracleとByteDance、米財務省のTikTok買収契約を承認 - iPhone Mania
もともと米国がTikTokを問題視し始めたのは昨年初めごろ。
児童オンラインプライバシー保護法に違反しているとして、児童法保護団体などが米連邦取引委員会(FTC)に訴えを起こし、2019年2月、TikTokはFTCから、罰金570万ドルの支払いを命じられていたのだそうですね。
2019年12月、米国防省は初めて、軍部に対しTikTokに安全リスクがあると警告し今年1月から軍関係者の使用を禁止。7月に,米上院国土安全保障・政府活動委員会で米連邦政府官僚のTikTokダウンロードの禁止を求める法案が可決されたのだと。
大西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)のグラハム・ブルーキー主任はTikTokがもたらす米国の国家安全上の脅威を3つ挙げていると福島さん。
その3つとは、
(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。
(2)ユーザーは個人情報をどのように利用されるか知るすべがない。
(3)投稿内容に対し中国が検閲できる。
中国に国家情報法と国防動員法がある限り、中国と対立を深める米国とってあらゆる中国企業は国家安全上のリスクがある、ということになり、あらゆるアプリも、Eコマース企業、旅行サイトも、ゲーム企業も個人情報を中国政府に渡すリスクはあり、スパイ企業になりうると福島さん。
トランプ大統領は、数ある中国アプリの中で、なぜTikTokを真っ先にターゲットにしたのか。
TikTokの世論誘導力も、情報漏洩以上に脅威なのではないかと福島さん。
トランプ大統領のオクラホマ州タルサ集会(6月20日)に100万人の参加申し込みがありながら、実際は6000人ほどしか出席しなかった例を挙げておられます。
中国政府が検閲を行使できる圧倒的な世論誘導力をもつアプリが米国の若年層に広がることの怖さを考えると、大統領選前にこのアプリを何とかしたいと思うトランプの気持ちもわかるだろうと。
これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになったと。
世論戦の新たなツールですね。
ただ、張一鳴氏は、思想的には必ずしも共産党一党独裁体制には染まっていない。むしろ傾向としては自由主義的な考えの持ち主で、真のグローバリストと評する声も出ているのだと福島さん。
中国習近平体制の昨今の民営企業に対する締め付け、「民営企業いじめ」の現状を見れば、TikTokをマイクロソフトなどに相応の値段で譲渡することは、張一鳴氏にとっても決して悪い選択ではないかもしれないと。
福島さんはむしろ、優秀な中国民営企業が共産党体制からうまく脱出する一つの先例になればよいのではないか、と張一鳴の決断とTikTokの今後を注視しているとのこと。
米中冷戦時代への突入で、中国の富裕層や共産党幹部は、資産や家族を米国に退避させているという話はよく聞きます。
民間企業も、活躍の拠点を中国国外に求める時代が到来するのでしょうか。
#冒頭の画像は、中国への強硬路線を強めるトランプ大統領
この花の名前は、ダリア
↓よろしかったら、お願いします。
この話は、米中新冷戦に伴う、ソフトのユーザー情報が中国政府に渡ることの防止の為の米中バトルと漫然と見ていましたが、どうやら違う様ですね。
情報漏洩の危険を防止するのなら、ファーウェイへの制裁の様に、使用禁止(撤退)にすればよいのに、米国企業が買収する方向で進んでいる違いがあります。
しかも米国側の企業は、マイクロソフトとオラクルの二社が天秤にかけられている。つまり、中国側企業のバイトダンスは、売る気(または投資受入れ)なのです。
これは、単なる「テックウォー」ではないと福島氏。
習近平は知らない…アメリカがまっ先に「TikTok」を狙った本当のワケ! | 講談社 2020.08.22 福島香織 ジャーナリスト
■単なる「テックウォー」では…ない!
トランプ米大統領が中国製モバイル向けショートムービープラットフォームアプリTikTokについて、9月15日までに国際事業を米国企業に売却するか、さもなくば米国市場から完全撤退するか、の選択を迫った宣言は、TikTokやその運営会社バイトダンスの問題にとどまらず、ファーウェイ問題から続く「テックウォー」(技術戦争)の新たなフェーズの幕開けととらえられている。
億単位のユーザーを抱える「アプリ」が、単なる技術覇権の争い以上に、個人情報データ漏洩やイデオロギーの影響力の問題として警戒されるからだ。
トランプ大統領は、7月31日に、バイトダンスが運営するTikTok国際版の米国内の使用を翌日から禁止する行政命令を出し、世間は騒然とした。
バイトダンスは若きエンジニア、張一鳴氏が2012年に北京で設立したアプリ開発企業で、ニュースアプリ「今日頭条」や「TikTok(斗音)」といった人気アプリを次々生み出して業界の話題をさらったメガユニコーン企業だ。2017年に欧米で6000万人ユーザーを抱える、音楽ビデオアプリの「Musical.ly」を8~10億ドルで買収し、その後1年も経たないうちに、Musical.lyをTikTokに統合して、米国市場に正式に参入したあと、さらに急成長し、今や1億人ユーザーを抱える。
ヘビーユーザーの6割は16-24歳で、米国でもっとも若者に影響力のあるアプリとなった。日本でも、人気ドラマとコラボしたりしてシェアを拡大、行政や政治家までが若者への浸透力を期待して公式アカウントをもつなどしていた。
■米国には逆らえない、と…
米国サイドは8月3日、やや態度を軟化しTikTok国際版を9月15日までに米企業に譲渡しなければTikTokの米国事業を封鎖する、とした。だが、それでも、あまりに突然かつ一方的だと、海外のエコノミストや業界からも非難の声もあがっている。
中国外交部の汪文斌報道官は8月4日の記者会見で、米国のこの措置について、国家による企業いじめだと断罪して、以下のように語った。
「米国が国家安全を理由に関連企業を弾圧しているが、これは根本的に根拠がなく、口実にしているに過ぎない。関連の企業は市場原則と国際ルールにのっとって米国で商業活動を展開しており、米国の法律を遵守している。しかし、米国側がいいかげんな罪名でこれを制限し弾圧するのであれば、これは完全に政治をもてあそぶ所業だ」
さらに、中国バイトダンスの創始者、張一鳴氏は8月4日、社員に対して公開書簡を出した。それには「米国対外投資委員会(CFIUS)からの強制的なTikTok米国事業の譲渡に同意しない」「企業はグローバル化の過程で、文化的衝突、反中感情の挑戦に直面しており、米国の真の目的は“TikTokの全目的封鎖とそれ以上封じ込めとそれ以上…”」と強い不満をのべつつも、米国に逆らえないとも言っている。
マイクロソフトなどと売却に向けた交渉に入っていると一時報道されたときには、中国国内の愛国的ネットユーザーは、張一鳴氏を売国奴と批判する声も上がった(目下、売却よりも、独立・分離の方向性を検討中との報道も出ている)。
もともと米国がTikTokを問題視し始めたのは昨年初めごろだ。
■「言いがかり」とは言えない事情
TikTokが米国の児童オンラインプライバシー保護法に違反しているとして、児童法保護団体などが米連邦取引委員会(FTC)に訴えを起こし、2019年2月、TikTokはFTCから、罰金570万ドルの支払いを命じられていた。
このころから、米国議会の議員たちが次々とTikTokの情報安全問題について言及し始め、CFIUSは2019年11月1日からTikTokの調査を開始。またCFIUSは、米国を代表する医療情報共有コミュニティPatientsLikeMeやゲイ専用出会い系アプリのグリンドルに対し、CFIUSの審査を経ずに、北京ゲノム研究所の元CEO王俊氏が設立したバイオテック企業iCarbonXやゲーム会社・北京崑崙万維科技が巨額投資していることを問題視し、中国企業側に支配的持ち分株の売却を要請し、中国企業側もこれに同意した。
米国では当時、米国の患者のゲノムデータが中国に流れたり、出会い系アプリを利用しているゲイの政治家や高官の個人情報が中国側に漏れることで、脅されてスパイ行為を働いたりするリスクなど、中国製アプリの具体的な危険性に言及されはじめた。
2019年12月、米国防省は初めて、軍部に対しTikTokに安全リスクがあると警告し今年1月から軍関係者の使用を禁止。7月に,米上院国土安全保障・政府活動委員会で米連邦政府官僚のTikTokダウンロードの禁止を求める法案が可決された。
こうした懸念はあながち米国側の言いがかりとは言えないのも事実だ。
ウォールストリートジャーナルによれば、 TikuTokはグーグルのOS「アンドロイド」の個人情報保護をすり抜け、何百万もの携帯端末から個別の識別番号を収集し、グーグルの規約に違反してユーザー追跡をしていたことが12日までに判明している。
元ホワイトハウス国家安全保障委員会の官僚で、大西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)のグラハム・ブルーキー主任はTikTokがもたらす米国の国家安全上の脅威を3つ挙げている。
その3つとは、
(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。
(2)ユーザーは個人情報をどのように利用されるか知るすべがない。
(3)投稿内容に対し中国が検閲できる。
である。
(1)については、張一鳴氏は、過去に個人情報を中国政府に提供したことはない、と否定しているが、2017 年に施行された国家情報法では、中国政府は企業に対し国家の諜報活動を支持し協力することを義務付けている。今までなくても、今後ないとは保障できないのだ。
また(3)については、2019年11月、米国の17歳の女子高校生が、TikTokで、化粧をしながらウイグル人権問題について語ったことで、一時的にアカウントが停止される事件があった。すぐに回復されたものの、国際版であっても、内容に対して中国政府の政治的検閲がありうることを示唆した。
■アプリが消えた
いずれにしても、中国に国家情報法と国防動員法がある限り、中国と対立を深める米国とってあらゆる中国企業は国家安全上のリスクがある、ということになり、TikTokだけでなく、微博、微信、百度翻訳などのあらゆるアプリも、またアリババや京東といったEコマース企業、トリップドットコムなどの旅行サイトも、ネットイースなどのゲーム企業も個人情報を中国政府に渡すリスクはあり、スパイ企業になりうる、ということになる。
実際、アップルは人気オンラインゲームも含めて3万以上のアプリをアップルストアから撤去した。
■なぜTikTokをまっ先にターゲットにしたのか…?
ところでトランプは、数ある中国アプリの中で、なぜTikTokを真っ先にターゲットにしたのだろう。ニューヨークのデジタル戦略のアナリスト、アナリサ・ナッシュ・フェルナンデスがBBCの取材で興味深い発言をしていた。
「TikTokは地政的な格闘において、新しい戦場として突出している」「貿易紛争、国境紛争のように、技術紛争がますます注目を浴びている。これは本質的に、ことなるイデオロギーの地政学的紛争でもある」……。
思うに、価値観、イデオロギーの異なる米中の戦において、TikTokの世論誘導力も、情報漏洩以上に脅威なのではないか。たとえば、トランプ大統領のオクラホマ州タルサ集会(6月20日)に100万人の参加申し込みがありながら、実際は6000人ほどしか出席せず、トランプのメンツ丸つぶれとなる事件があったが、これはTikTokユーザーの「ステージ上でトランプを一人ぼっちにさせよう」と呼び掛ける動画が広がったことが一因として挙げられていた。
それほどまでにTikTokの動員力、若者への世論誘導力が大きいとみられており、TiKTokを使わなければ選挙に勝てないといわれているからこそ、日本でも政治家の利用が増えていた背景がある。
中国アプリの中でTikTokを真っ先にターゲットにしたのはトランプの個人的恨み、という見方も一部で流れていたが、中国政府が検閲を行使できる圧倒的な世論誘導力をもつアプリが米国の若年層に広がることの怖さを考えると、大統領選前にこのアプリを何とかしたいと思うトランプの気持ちもわかるだろう。
この種のアプリは、その国の人間の価値観にコミットしうる怖さがあり、だからこそ、今の米中対立が自由主義国家と全体主義国家の「価値観戦争」だとすると、こうしたアプリもデカップリングせざるを得ない、となるのだ。
■注目される「張一鳴の決断」
技術戦争、テックウォーといえば、機密漏洩の懸念と知財権問題の対立を建前に、これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになった。
本来政治とは関係ない、若者の娯楽アプリであるはずが、使いようによっては洗脳や世論誘導のツールとなりうる。もちろん、映画やテレビ、音楽、ファッションのあらゆる文化産物に、そうした世論誘導効果、中国の言うところの「宣伝効果」はあるのだが、スマートフォンとアプリの登場によって、その伝播力、影響力、そして低年齢層化が格段にレベルアップした以上、こうしたハイテクソフトのナショナリズム化は避けられまい。
張一鳴氏は、思想的には必ずしも共産党一党独裁体制には染まっていない。むしろ傾向としては自由主義的な考えの持ち主で、真のグローバリストと評する声も出ている。だからこそ、国内で売国奴と批判する声もあるのだろう。中国習近平体制の昨今の民営企業に対する締め付け、「民営企業いじめ」の現状を見れば、TikTokをマイクロソフトなどに相応の値段で譲渡することは、張一鳴氏にとっても決して悪い選択ではないかもしれない。
少なくとも共産党体制と決別したほうが、企業も社員もハッピーに違いない。中国ではすでに習近平政権に敵視されて、経済犯として逮捕されたり失脚したりしたうえ、資産接収された民営企業がいくつか存在し、今後増えていきそうな気配なのだ。
この動きを米国の「危険なテックナショナリズム」とトランプに批判的、TikTokに同情的に受け止める声も日本のエコノミストたちから聞こえてくる。だが、私はむしろ、優秀な中国民営企業が共産党体制からうまく脱出する一つの先例になればよいのではないか、と張一鳴の決断とTikTokの今後を注視している。
■単なる「テックウォー」では…ない!
トランプ米大統領が中国製モバイル向けショートムービープラットフォームアプリTikTokについて、9月15日までに国際事業を米国企業に売却するか、さもなくば米国市場から完全撤退するか、の選択を迫った宣言は、TikTokやその運営会社バイトダンスの問題にとどまらず、ファーウェイ問題から続く「テックウォー」(技術戦争)の新たなフェーズの幕開けととらえられている。
億単位のユーザーを抱える「アプリ」が、単なる技術覇権の争い以上に、個人情報データ漏洩やイデオロギーの影響力の問題として警戒されるからだ。
トランプ大統領は、7月31日に、バイトダンスが運営するTikTok国際版の米国内の使用を翌日から禁止する行政命令を出し、世間は騒然とした。
バイトダンスは若きエンジニア、張一鳴氏が2012年に北京で設立したアプリ開発企業で、ニュースアプリ「今日頭条」や「TikTok(斗音)」といった人気アプリを次々生み出して業界の話題をさらったメガユニコーン企業だ。2017年に欧米で6000万人ユーザーを抱える、音楽ビデオアプリの「Musical.ly」を8~10億ドルで買収し、その後1年も経たないうちに、Musical.lyをTikTokに統合して、米国市場に正式に参入したあと、さらに急成長し、今や1億人ユーザーを抱える。
ヘビーユーザーの6割は16-24歳で、米国でもっとも若者に影響力のあるアプリとなった。日本でも、人気ドラマとコラボしたりしてシェアを拡大、行政や政治家までが若者への浸透力を期待して公式アカウントをもつなどしていた。
■米国には逆らえない、と…
米国サイドは8月3日、やや態度を軟化しTikTok国際版を9月15日までに米企業に譲渡しなければTikTokの米国事業を封鎖する、とした。だが、それでも、あまりに突然かつ一方的だと、海外のエコノミストや業界からも非難の声もあがっている。
中国外交部の汪文斌報道官は8月4日の記者会見で、米国のこの措置について、国家による企業いじめだと断罪して、以下のように語った。
「米国が国家安全を理由に関連企業を弾圧しているが、これは根本的に根拠がなく、口実にしているに過ぎない。関連の企業は市場原則と国際ルールにのっとって米国で商業活動を展開しており、米国の法律を遵守している。しかし、米国側がいいかげんな罪名でこれを制限し弾圧するのであれば、これは完全に政治をもてあそぶ所業だ」
さらに、中国バイトダンスの創始者、張一鳴氏は8月4日、社員に対して公開書簡を出した。それには「米国対外投資委員会(CFIUS)からの強制的なTikTok米国事業の譲渡に同意しない」「企業はグローバル化の過程で、文化的衝突、反中感情の挑戦に直面しており、米国の真の目的は“TikTokの全目的封鎖とそれ以上封じ込めとそれ以上…”」と強い不満をのべつつも、米国に逆らえないとも言っている。
マイクロソフトなどと売却に向けた交渉に入っていると一時報道されたときには、中国国内の愛国的ネットユーザーは、張一鳴氏を売国奴と批判する声も上がった(目下、売却よりも、独立・分離の方向性を検討中との報道も出ている)。
もともと米国がTikTokを問題視し始めたのは昨年初めごろだ。
■「言いがかり」とは言えない事情
TikTokが米国の児童オンラインプライバシー保護法に違反しているとして、児童法保護団体などが米連邦取引委員会(FTC)に訴えを起こし、2019年2月、TikTokはFTCから、罰金570万ドルの支払いを命じられていた。
このころから、米国議会の議員たちが次々とTikTokの情報安全問題について言及し始め、CFIUSは2019年11月1日からTikTokの調査を開始。またCFIUSは、米国を代表する医療情報共有コミュニティPatientsLikeMeやゲイ専用出会い系アプリのグリンドルに対し、CFIUSの審査を経ずに、北京ゲノム研究所の元CEO王俊氏が設立したバイオテック企業iCarbonXやゲーム会社・北京崑崙万維科技が巨額投資していることを問題視し、中国企業側に支配的持ち分株の売却を要請し、中国企業側もこれに同意した。
米国では当時、米国の患者のゲノムデータが中国に流れたり、出会い系アプリを利用しているゲイの政治家や高官の個人情報が中国側に漏れることで、脅されてスパイ行為を働いたりするリスクなど、中国製アプリの具体的な危険性に言及されはじめた。
2019年12月、米国防省は初めて、軍部に対しTikTokに安全リスクがあると警告し今年1月から軍関係者の使用を禁止。7月に,米上院国土安全保障・政府活動委員会で米連邦政府官僚のTikTokダウンロードの禁止を求める法案が可決された。
こうした懸念はあながち米国側の言いがかりとは言えないのも事実だ。
ウォールストリートジャーナルによれば、 TikuTokはグーグルのOS「アンドロイド」の個人情報保護をすり抜け、何百万もの携帯端末から個別の識別番号を収集し、グーグルの規約に違反してユーザー追跡をしていたことが12日までに判明している。
元ホワイトハウス国家安全保障委員会の官僚で、大西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)のグラハム・ブルーキー主任はTikTokがもたらす米国の国家安全上の脅威を3つ挙げている。
その3つとは、
(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。
(2)ユーザーは個人情報をどのように利用されるか知るすべがない。
(3)投稿内容に対し中国が検閲できる。
である。
(1)については、張一鳴氏は、過去に個人情報を中国政府に提供したことはない、と否定しているが、2017 年に施行された国家情報法では、中国政府は企業に対し国家の諜報活動を支持し協力することを義務付けている。今までなくても、今後ないとは保障できないのだ。
また(3)については、2019年11月、米国の17歳の女子高校生が、TikTokで、化粧をしながらウイグル人権問題について語ったことで、一時的にアカウントが停止される事件があった。すぐに回復されたものの、国際版であっても、内容に対して中国政府の政治的検閲がありうることを示唆した。
■アプリが消えた
いずれにしても、中国に国家情報法と国防動員法がある限り、中国と対立を深める米国とってあらゆる中国企業は国家安全上のリスクがある、ということになり、TikTokだけでなく、微博、微信、百度翻訳などのあらゆるアプリも、またアリババや京東といったEコマース企業、トリップドットコムなどの旅行サイトも、ネットイースなどのゲーム企業も個人情報を中国政府に渡すリスクはあり、スパイ企業になりうる、ということになる。
実際、アップルは人気オンラインゲームも含めて3万以上のアプリをアップルストアから撤去した。
■なぜTikTokをまっ先にターゲットにしたのか…?
ところでトランプは、数ある中国アプリの中で、なぜTikTokを真っ先にターゲットにしたのだろう。ニューヨークのデジタル戦略のアナリスト、アナリサ・ナッシュ・フェルナンデスがBBCの取材で興味深い発言をしていた。
「TikTokは地政的な格闘において、新しい戦場として突出している」「貿易紛争、国境紛争のように、技術紛争がますます注目を浴びている。これは本質的に、ことなるイデオロギーの地政学的紛争でもある」……。
思うに、価値観、イデオロギーの異なる米中の戦において、TikTokの世論誘導力も、情報漏洩以上に脅威なのではないか。たとえば、トランプ大統領のオクラホマ州タルサ集会(6月20日)に100万人の参加申し込みがありながら、実際は6000人ほどしか出席せず、トランプのメンツ丸つぶれとなる事件があったが、これはTikTokユーザーの「ステージ上でトランプを一人ぼっちにさせよう」と呼び掛ける動画が広がったことが一因として挙げられていた。
それほどまでにTikTokの動員力、若者への世論誘導力が大きいとみられており、TiKTokを使わなければ選挙に勝てないといわれているからこそ、日本でも政治家の利用が増えていた背景がある。
中国アプリの中でTikTokを真っ先にターゲットにしたのはトランプの個人的恨み、という見方も一部で流れていたが、中国政府が検閲を行使できる圧倒的な世論誘導力をもつアプリが米国の若年層に広がることの怖さを考えると、大統領選前にこのアプリを何とかしたいと思うトランプの気持ちもわかるだろう。
この種のアプリは、その国の人間の価値観にコミットしうる怖さがあり、だからこそ、今の米中対立が自由主義国家と全体主義国家の「価値観戦争」だとすると、こうしたアプリもデカップリングせざるを得ない、となるのだ。
■注目される「張一鳴の決断」
技術戦争、テックウォーといえば、機密漏洩の懸念と知財権問題の対立を建前に、これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになった。
本来政治とは関係ない、若者の娯楽アプリであるはずが、使いようによっては洗脳や世論誘導のツールとなりうる。もちろん、映画やテレビ、音楽、ファッションのあらゆる文化産物に、そうした世論誘導効果、中国の言うところの「宣伝効果」はあるのだが、スマートフォンとアプリの登場によって、その伝播力、影響力、そして低年齢層化が格段にレベルアップした以上、こうしたハイテクソフトのナショナリズム化は避けられまい。
張一鳴氏は、思想的には必ずしも共産党一党独裁体制には染まっていない。むしろ傾向としては自由主義的な考えの持ち主で、真のグローバリストと評する声も出ている。だからこそ、国内で売国奴と批判する声もあるのだろう。中国習近平体制の昨今の民営企業に対する締め付け、「民営企業いじめ」の現状を見れば、TikTokをマイクロソフトなどに相応の値段で譲渡することは、張一鳴氏にとっても決して悪い選択ではないかもしれない。
少なくとも共産党体制と決別したほうが、企業も社員もハッピーに違いない。中国ではすでに習近平政権に敵視されて、経済犯として逮捕されたり失脚したりしたうえ、資産接収された民営企業がいくつか存在し、今後増えていきそうな気配なのだ。
この動きを米国の「危険なテックナショナリズム」とトランプに批判的、TikTokに同情的に受け止める声も日本のエコノミストたちから聞こえてくる。だが、私はむしろ、優秀な中国民営企業が共産党体制からうまく脱出する一つの先例になればよいのではないか、と張一鳴の決断とTikTokの今後を注視している。
これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになったと福島さん。
本来、娯楽アプリであるはずが、使いようによっては洗脳や世論誘導のツールとなりうるとも。
中国バイトダンスの創始者、張一鳴氏は、強い不満をのべつつも、米国に逆らえないとも言っているのだそうですが、同社がTikTokの株式の大多数を保有した状態を維持しつつ米政府の承認を得ようとも試みているのだそうです。
OracleとByteDance、米財務省のTikTok買収契約を承認 - iPhone Mania
もともと米国がTikTokを問題視し始めたのは昨年初めごろ。
児童オンラインプライバシー保護法に違反しているとして、児童法保護団体などが米連邦取引委員会(FTC)に訴えを起こし、2019年2月、TikTokはFTCから、罰金570万ドルの支払いを命じられていたのだそうですね。
2019年12月、米国防省は初めて、軍部に対しTikTokに安全リスクがあると警告し今年1月から軍関係者の使用を禁止。7月に,米上院国土安全保障・政府活動委員会で米連邦政府官僚のTikTokダウンロードの禁止を求める法案が可決されたのだと。
大西洋評議会デジタル・フォレンジック・リサーチラボ(DFRLab)のグラハム・ブルーキー主任はTikTokがもたらす米国の国家安全上の脅威を3つ挙げていると福島さん。
その3つとは、
(1)中国政府にはTikTokからユーザーの個人情報提供を直接要請する能力がある。
(2)ユーザーは個人情報をどのように利用されるか知るすべがない。
(3)投稿内容に対し中国が検閲できる。
中国に国家情報法と国防動員法がある限り、中国と対立を深める米国とってあらゆる中国企業は国家安全上のリスクがある、ということになり、あらゆるアプリも、Eコマース企業、旅行サイトも、ゲーム企業も個人情報を中国政府に渡すリスクはあり、スパイ企業になりうると福島さん。
トランプ大統領は、数ある中国アプリの中で、なぜTikTokを真っ先にターゲットにしたのか。
TikTokの世論誘導力も、情報漏洩以上に脅威なのではないかと福島さん。
トランプ大統領のオクラホマ州タルサ集会(6月20日)に100万人の参加申し込みがありながら、実際は6000人ほどしか出席しなかった例を挙げておられます。
中国政府が検閲を行使できる圧倒的な世論誘導力をもつアプリが米国の若年層に広がることの怖さを考えると、大統領選前にこのアプリを何とかしたいと思うトランプの気持ちもわかるだろうと。
これまではファーウェイ問題に象徴される5G技術覇権争いの側面が注目されてきたが、TikTok問題は、それが「アプリ」といった娯楽ソフトを通じたイデオロギー戦争のフェーズの幕を開けることになったと。
世論戦の新たなツールですね。
ただ、張一鳴氏は、思想的には必ずしも共産党一党独裁体制には染まっていない。むしろ傾向としては自由主義的な考えの持ち主で、真のグローバリストと評する声も出ているのだと福島さん。
中国習近平体制の昨今の民営企業に対する締め付け、「民営企業いじめ」の現状を見れば、TikTokをマイクロソフトなどに相応の値段で譲渡することは、張一鳴氏にとっても決して悪い選択ではないかもしれないと。
福島さんはむしろ、優秀な中国民営企業が共産党体制からうまく脱出する一つの先例になればよいのではないか、と張一鳴の決断とTikTokの今後を注視しているとのこと。
米中冷戦時代への突入で、中国の富裕層や共産党幹部は、資産や家族を米国に退避させているという話はよく聞きます。
民間企業も、活躍の拠点を中国国外に求める時代が到来するのでしょうか。
#冒頭の画像は、中国への強硬路線を強めるトランプ大統領
この花の名前は、ダリア
↓よろしかったら、お願いします。