日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査(5月27~29日に実施)で、内閣支持率が66%に達し、4月に記録した昨年10月発足以来の最高値を、更に上回る記録となったのだそうです。
聞く耳が売りですが、聴くだけでなにもはない「検討使」と揶揄される岸田氏の内閣支持率が上がり続けているのは不思議でならず、原因に注目しているのですが、朝比奈氏が解説いただいている記事がありました。
結論から言うと、売りの「聞く耳」が日本人気質にマッチしているからだと。
首相就任から8カ月ほどの期間で、これといった成果も見えてきていません。
岸田政権の功績というのはよくわからないと、朝比奈氏。
この現象は、「隠れ岸田現象」だと。「隠れトランプ」の“パクリ”で、岸田支持者とトランプ支持者には似たような心理が働いていると感じると。
何故か。
結論から言えば、それは日本の社会とアメリカの社会とで、求められるものが真逆になっているからです。トランプ氏と岸田首相が正反対のタイプでも、社会そのものも正反対だから、現象としては同じことが現れると、朝比奈氏。
日本は、「互いの意見をぶつけ合って白黒つけよう」というよりは、「みんなの意見をよく聞いたうえで、みんながまあまあ納得できる線でまとめていこう」ということが好きな国民性。
そう考えると、「聞く力」の岸田首相のスタイルは、中長期的にみた日本の社会的あり方に非常にマッチしていると言えます。これが高支持率の要因だと思いますと。
何もしないから、失点が少ないのも一因だと。
北京冬季五輪で、バイデン大統領が提唱した「外交的ボイコット」に対し、主要自由主義各国が素早い協力を表明、国内でも安倍氏や自民党内からの早期対応要請があるなか、米中二股外交で逡巡し、支持表明が遅れ、バイデン氏に不審を抱かれ、岸田氏の就任に伴う面談が一時保留され、オンラインに格下げし開催に至ったという、日米首脳の長い間に築かれてきた関係にヒビを生じさせる、重大失政は、報道しない自由を駆使する日本のオールドメディアは取り上げないことは、諸兄がご承知の通りです。
対露経済制裁で、サハリン1,2からの撤退についても、主軸支援の米エクソンモービル(エクソン)とイギリス&オランダの「ロイヤル・ダッチ・シェル」(シェル)が撤退を早々に発表したにも関わらず、岸田氏は、商工会議所会頭や経団連会長の日本企業の利益保持優先発言を聞き入れ、不撤退を表明し、各国による包囲網に逆行しています。
にもかかわらず、ロシアからは、非友好国にリストアップ。
外交下手の本領発揮。
また、安倍政権や菅政権では、日本の改革に向けて、諸政策を積極的に推進。改革には当然反発も起こる。つまり、批判もある。
しかし、そのゴリゴリぶりに国民はどうやら疲れていたようです。だからマイルドで穏やかな感じの岸田政権に、なんとなくほっとしたものを感じているのだと思うのですと、朝比奈氏。
しかし、安倍政権や菅政権が「実績」を上げたのに比べて、岸田首相は、何をやっているのかわかりません。はっきり言えば、何もしていません。それでも、野党から大々的に攻撃されたり、国民が「いいかげんにしろ」と言い出したりしないのはなぜでしょうかとも。
「聞く耳」が売りの岸田氏。政府が出した案に『そうじゃなくて、こうしたほうがいいんじゃないか』と言われたりすると「わかりました。検討します」と言ってすぐひっこめちゃう。
『検討使』などと揶揄されているが、批判を受けにくいのは強みだと朝比奈氏。
果たして、ほとんどなにもしない、「聞く力」だけで日本は中長期的に大丈夫なのでしょうか。その不安はぬぐえませんとも。
課題はたくさんあります。イーロン・マスクから「出生率が上がらなければ日本は消滅する」と指摘されたように、日本の少子高齢化の改善には一刻の猶予もありません。
経済安保法制についても、何も手を打たなかったら、今まで当たり前のように存在していた日本の地域、産業体制、文化、自然環境や資源が失われてしまうのは目に見えていますと。
日本流の改革例として、朝比奈氏は明治維新を挙げておられます。
「日本が変わらないために頑張ろうぜ」と言ってエネルギーを結集させておきながら、結局、そのパワーは日本を大きく変えることに貢献。
日本人にとっては、「変える、変える」「改革だ、改革だ」といって進める欧米的な意味での改革はなじみませんが、「復元」「保守」「保全」的な意味を持った改革は受け入れやすいと。
「聞く耳」の岸田政権は、日本人の心性にマッチしたキャラクターを備えている。
「改革待ったなし」のこの時期に、「私たちが大切にしてきたこの日本を守るために」と言って参院選後の3年間、日本の変革に取り組めば大きな成果を成し遂げられる可能性がありますと、朝比奈氏。
そう願いたいのですが、そこは「検討使」。明治維新の志士は、行動し実現させるちからがありました。
国民の所得を増やすと総裁選で唱えていた岸田氏。「骨太の方針」では、個人所得ではなく、NISA拡充など「資産所得倍増プラン」に方向変更。資産を持つなど、投資(リスク込)が出来る人を優遇する政策に様変わり。しかも、そこでリスクを負って動くのは、政府ではなく国民。
骨太の方針 NISA拡充など「資産所得倍増プラン」盛り込みへ | NHK | 経済安全保障
これで、激変の世界情勢のなかで日本は生き残れるのでしょうか!
# 冒頭の画像は、ロンドンで金融投資促進の講演をした岸田氏
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
聞く耳が売りですが、聴くだけでなにもはない「検討使」と揶揄される岸田氏の内閣支持率が上がり続けているのは不思議でならず、原因に注目しているのですが、朝比奈氏が解説いただいている記事がありました。
結論から言うと、売りの「聞く耳」が日本人気質にマッチしているからだと。
「何もしていない」岸田内閣、なぜ高支持率を維持できているのか 「改革疲れ」の日本、でも改革は待ったなし、岸田首相は二枚舌作戦で改革を(1/8) | JBpress (ジェイビープレス) 2022.6.6(月) 朝比奈 一郎:青山社中筆頭代表・CEO
岸田内閣の支持率が異常事態になっています。
5月27~29日に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査で、岸田内閣を支持すると回答した人が全体の66%にも達したというのです。4月に実施した同じ調査では支持率が64%で、昨年10月発足以来の最高値を記録していたのですが、それをさらに上回ったのです。政党支持率では「自民党」がトップで51%でした。
内閣支持率というのは一般的には内閣発足直後に高い数字が出て、その後は徐々に下降する傾向にあります。もちろん、途中で大きな功績があれば上昇しますし、失敗があれば下落しますが、概して徐々に下がるものです。ところが岸田政権は発足当初は期待値が高くなかったせいか、お世辞にも「高支持率」でスタートしたわけではありませんでした。ところが支持率はその後、じわじわと伸びてきて、約8カ月後に最高値を更新するというイレギュラーな動きを見せているのです。いったい何が起きているのでしょうか。
「岸田フィーバー」が起きているわけでもないのに
国内政治における支持率に関して、政界関係者が広く信じているある法則があります。竹下登元首相の秘書を長く務めた後、参院議員となった「参院のドン」青木幹夫氏が唱えた「青木の法則」です。これは「内閣の支持率と政権与党の支持率の和が50を切るとその政権は危ない」というものです。前述の日経新聞・テレビ東京の世論調査に基づけば、内閣支持率:66(%)+自民党支持率:51(%)=117となります。
青木の法則にしたがえば、岸田内閣は「超安泰政権」なのです。
しかし、「体感」として、世の中がそれほど岸田フィーバーに沸いているようには思えません。岸田文雄首相が、最近になって何か大きな業績を上げたということもありません。失礼ながら、冒頭で「異常事態」と書いたのはそのためです。
では、この高支持率の原因とは何なのでしょうか。
「隠れ岸田」と「隠れトランプ」
私はこの現象を「隠れ岸田現象」ではないかと睨んでいます。
「隠れ岸田」とは、アメリカで前大統領のドナルド・トランプ氏のことを密かに支持していた人のことを指す「隠れトランプ」の“パクリ”です。岸田支持者とトランプ支持者には似たような心理が働いていると感じるのです。
そんなことを言うと「トランプと岸田さんって全然タイプが違うじゃない」と感じる人もい(る)のではないかと思います。確かにそうです。トランプ氏は激しい言動をするタイプ、岸田首相は理性的で真逆のタイプに見えます。
それなのに、なぜ「隠れトランプ」と「隠れ岸田」が同じ現象だと私は考えたのでしょうか。
結論から言えば、それは日本の社会とアメリカの社会とで、求められるものが真逆になっているからです。トランプ氏と岸田首相が正反対のタイプでも、社会そのものも正反対だから、現象としては同じことが現れるのです。
私はリーダーシップについて各地で講演をすることが多いのですが、その際に聴衆に「岸田さんをどう思いますか、リーダーシップがあると思いますか」と聞くこともあります(私のリーダーシップの定義は、指し示す「指導力」ではなく、自ら動き始める「始動力」なので、そのイメージギャップを勘案する必要はありますが)。するとだいたいみんなポカンとしているのです。返ってくる反応も「う~ん、岸田さんって、なんか顔が見えないよね」などというものがほとんどです。
首相就任から8カ月ほどの期間で、これといった成果も見えてきていません。これまた「岸田さんが政権に就いてから成し遂げた印象的なことありますか」と聴衆に聞くと、みんなシーンとしてしまいます。「経済安保法案ですか」、「子ども家庭庁を作るって言っていたかな」などという反応があることもありますが、それらは全部、岸田さんが首相になる前から出ていた話です。結局、岸田政権の功績というのはよくわからないのです。
こんな調子ですから、面と向かって、「あなたは岸田内閣を支持しますか、岸田首相を支持しますか」と聞かれると、みな「うーん」という顔をするのですが、その実、世論調査の対象になると「支持する」と答えているのです。私は、このなんとなく支持している人たちを「隠れ岸田」と呼んでいるのです。
トランプ氏の場合はどうでしょうか。アメリカで「あなたはトランプ氏を支持しますか」と尋ねられれば、はっきり「支持しない」と断言する人や、言葉を濁す人が多いはずです。下品だし、差別的発言は多いし、政治的主張も偏っている。大っぴらに「支持している」と公言するのは常識人として憚られる、と思っている人が多いからです。でも実は「隠れトランプ」と言われている、本音ではトランプ氏に共鳴している層がそれなりにいるのです。
大統領だった当時、コアな支持者たちからなる岩盤支持層があり、そこに少なからぬ「隠れトランプ」がいた。そのため、およそ半数の国民からは明確に「嫌い」と言われながらもトランプ氏は大統領の座に座り続けることが出来ました。私は、コロナがなければ、再選されていた可能性もかなり高いとみています。
失点少ない岸田首相
このようにアメリカの社会全体で見れば、「(多少下品ではあっても)はっきり物事を言って実行してほしい」と本音のところで望んでいる人たちが多いのです。日本はそうではありません。「徹底的にやらなくていい」「ほどほどでいい」「多くの人の意見を聞いて、ちょうどいい塩梅の落としどころをみつけてほしい」。そんな本音を持っている人が多いのです。
日本という社会は、それこそ聖徳太子の時代の十七条の憲法の中で「和を以て貴しとなす」と書かれているように、大昔から、「互いの意見をぶつけ合って白黒つけよう」というよりは、「みんなの意見をよく聞いたうえで、みんながまあまあ納得できる線でまとめていこう」ということが好きな国民性だと思われます。
そう考えると、「聞く力」の岸田首相のスタイルは、中長期的にみた日本の社会的あり方に非常にマッチしていると言えます。これが高支持率の要因だと思います。
失点が少ないのも岸田政権の高支持率の原因でしょう。これまで岸田内閣が何か失敗したかと言えば、大きな失敗はありません。実は岸田政権は「官邸官僚」がかなりしっかりしています。首席秘書官の嶋田隆氏は元経産事務次官の切れ者ですし、財務省出身の秘書官・宇波弘貴氏は、財務省の本流・主計局の次長からの起用です。他のメンバーを見ても、各省のエース級が起用されています。
岸田首相と同じ開成高校出身者のネットワークも政権をしっかり支えています。こうした陣立てがしっかりしているので、岸田内閣にはあまり失敗がありません。知床沖で遊覧船が消息を絶った時にも、その日のうちに訪問先の熊本から自衛隊機で帰京しています。本当にそこまでの対応が必要かはともかく、国民に向けての安心感の提供にはなっています。過去には、大きな事故が発生したとの連絡を受けながら、ゴルフを続けていたことが発覚して批判を受けた首相もいましたが、こういう危機管理面で岸田首相は実にそつがないのです。
ロシアやウクライナへの対応についても、大きく得点を稼いでいるわけではありませんが、ちゃんと国際社会と歩調を合わせて、それなりのことをやっています。
「改革疲れ」したところに登場したホッとできる政権
高支持率の背景をもう少し短期的な面から分析すれば、安倍政権や菅政権で、日本人全体が「改革疲れ」をしてしまったという面もあると考えられます。安倍晋三首相の時代は、華々しくアベノミクスや安保法制をぶち上げましたが、反面、それを批判する野党や一部社会との対決姿勢を隠そうとせず、力ずくで改革していこうという匂いをぷんぷん漂わせていました。
菅義偉首相の場合は、政権についていたのはわずか一年でしたが、この間に、「ワクチン接種は一日100万回だ」といって河野太郎さんのように激しい人をワクチン担当相に起用してゴリゴリ推し進め、さらに携帯電話の料金引き下げや、少子化対策の一環として不妊治療の保険適用実現や子ども家庭庁の創設、デジタル庁の創設など、ガンガンガンガンと続けざまに改革を打ち出していきました。そして、それによって敵も次々登場するという中でまさに奮闘していました。
その方向性について賛否はあるでしょうが、安倍元首相や菅前首相は、社会の課題を解決し、日本を前進させようと努力したのは確かです。時には「強引」とも言える方法で、「剛腕ぶり」を発揮してきました。
しかし、そのゴリゴリぶりに国民はどうやら疲れていたようです。だからマイルドで穏やかな感じの岸田政権に、なんとなくほっとしたものを感じているのだと思うのです。
恐るべき「戦意喪失促進力」
しかし、安倍政権や菅政権が「実績」を上げたのに比べて、岸田首相は、何をやっているのかわかりません。はっきり言えば、何もしていません。それでも、野党から大々的に攻撃されたり、国民が「いいかげんにしろ」と言い出したりしないのはなぜでしょうか。
ある元国会議員が解説してくれました。
「岸田さんがすごいのは『戦意喪失促進力』だ。野党の立場からすると、安倍さんや菅さんはこちらに向かってファイティングポーズをとってくるから、こっちもついつい戦意に火がついて殴り合いがおこりやすい。
だけど岸田さんは違う。例えば首相就任直後、コロナ対策として10万円の給付案をぶち上げていたが、内外から『そんなバラマキはさすがにダメだろう』と言われたらさっさとひっこめた。戦うという感じじゃない。柔軟と言えば柔軟だけど、政府が出した案に『そうじゃなくて、こうしたほうがいいんじゃないか』と言われたりすると「わかりました。検討します」と言ってすぐひっこめちゃう。こちらとしては戦意を喪失してしまう。逆に言えばかなり手ごわい相手だ。『検討使』などと揶揄されているが、批判を受けにくいのは強みだ」
他にも、今のところ目立ったスキャンダルがないのも強みです。例えば安倍元首相の時には、桜を見る会やモリカケ問題というスキャンダルが浮上し、野党や世論の猛批判を浴びました。岸田首相には現状、それがありません。つまり野党に攻撃の糸口を与えていないのです。
このように予想以上に強固で、国民からの隠れた支持も集めている岸田政権ですが、果たして、ほとんどなにもしない、「聞く力」だけで日本は中長期的に大丈夫なのでしょうか。その不安はぬぐえません。
高支持率でも党内は一枚岩に非ず
現在の岸田政権は、かつての海部政権の姿と重なって見えます。海部俊樹首相はクリーンなイメージがあり弁舌もさわやかなこともあって国民の支持率は高かったのですが、党内基盤が弱かったために海部さん自身に実行力がなく、実際に政権を裏で仕切っているのは自民党幹事長の小沢一郎さんでした。
そんな海部さんでしたが、政治改革関連法案の取り扱いを巡り党内をまとめることが出来ず、小沢さんら党内の実力者たちから見放されるような形で「海部おろし」にあって総理を辞任するという結果になってしまいました。
岸田首相も支持率を見る限り、現時点では盤石なようですが、党内に不満がないわけではありません。
例えば、菅前首相などは、自身が推し進めてきた改革路線がすっかり停滞してしまっていることに、内心不満を持っていても不思議ではありません。小石河連合と称される、小泉進次郎さん、石破茂さん、河野太郎さんたちも、「もっと改革していかなくちゃだめじゃないか」と苛立ちを感じているのではないでしょうか。
来月7月には参院選があります。衆院選は昨年10月にありました。高い支持率を保ち、参院選に勝利すれば、次の参院選まで3年あります。衆院も解散がなければ任期満了まで3年少々あります。つまりこの7月の参院選を順調に乗り切れば、およそ3年間も国政選挙がない期間になり得ます。政権をあずかる立場の人にとっては、選挙のことを考えず、改革に集中できる黄金期間となります。
課題はたくさんあります。イーロン・マスクから「出生率が上がらなければ日本は消滅する」と指摘されたように、日本の少子高齢化の改善には一刻の猶予もありません。2021年の出生率がついに1.3になり、出生数が81万人という共に過去最低という衝撃の数字も出てきました。経済安保法制についても取り組みは始まっていますが、より本質的なしっかりした対策を取らないと、外国資本に利益も資源も持っていかれてしまいます。何も手を打たなかったら、今まで当たり前のように存在していた日本の地域、産業体制、文化、自然環境や資源が失われてしまうのは目に見えています。日本人にとって大事なこれらのものを「守る」ためにも、様々な改革が必要ですし、参議院選後はまさにその絶好のタイミングとなるのです。
明治維新の「二枚舌的」変革
実は、この「守るために変える」というのが、日本を変えていくためには重要なアプローチになるのではないかと私は睨んでいます。
明治維新もこのアプローチによって達成された事象でした。明治維新というものを、少々乱暴にまとめさせてもらえば、次のようになります。
幕末に突然、黒船に代表される異国船が多数やってきて日本に開国を迫りました。それ以来、日本は「外国が襲ってくる、外国に日本を占領・改造させられてしまう」という恐怖に包まれました。それに対して生まれたのが、「このまま日本という国を変わらずに保とうじゃないか」という機運です。そして「変わらないためには、何よりもまず外国を追い払うことだ。攘夷だ」ということで、日本各地に「攘夷ムーブメント」が発生します。その担い手が、いわゆる維新の志士です。
ところが外国に対して弱腰の徳川幕府では攘夷が出来そうもない、ということに多くの志士が気付いた。「ならば」と政権をひっくり返してしまったのが明治維新でした。
そうやって明治新政府が誕生したわけですが、では肝心の攘夷はどうなったか。「幕府じゃ攘夷できないじゃないか」といって大改革をしておきながら、結局日本は開国したわけです。正確に言えば徳川幕府の時代に開国はなされていましたが、新政府設立以降は、それ以上に開国し、西洋文明をどんどん吸収していったのです。
つまり「日本が変わらないために頑張ろうぜ」と言ってエネルギーを結集させておきながら、結局、そのパワーは日本を大きく変えることに利用されました。しかもその担い手の中心となったコアとなる維新の志士は、数え方にもよりますが、3000人とか1万人とか言われています。いずれにしても、当時の日本の人口3300万人からしてみれば、ごくわずかな人数です。ごく少ない人たち――薩摩藩や長州藩の若者や坂本龍馬のような脱藩浪士たち――が、うまくネットワークを構築し、「変えないために」と言ってムーブメントを作り、結局は、大きな変革を達成してしまったのです。
「日本を変えないために」と言って進めた運動が大変革になったわけです。ある意味で明治維新は「二枚舌」的な運動でした。ただ、確かに当初目指していた方向とは違った結果になったかもしれませんが、それは日本にとっては好ましい結果だったと言えるでしょう。
付け加えるならば、英語では明治維新を「メイジ・レボリューション」とは言いません「メイジ・レストレーション」と言います。Restorationとは「復元・回復」です。あの大変革は、大規模な復元だったということです。
ここから分かることは、日本人にとっては、「変える、変える」「改革だ、改革だ」といって進める欧米的な意味での改革はなじみませんが、「復元」「保守」「保全」的な意味を持った改革は受け入れやすいということです。
日本の命運を左右するこれから3年間
岸田首相は、「聞く力」を自身の強みとすることから分かるように、じっくりと全体の合意を作り上げようとする日本人の心性にマッチしたキャラクターを備えています。ある意味で明治天皇「的」存在になり得るともいえます。大きな派閥の後ろ盾はありませんが、少数精鋭ながら、岸田首相を支えようという人材のネットワークも持っています。その岸田首相が、「改革待ったなし」のこの時期に、「私たちが大切にしてきたこの日本を守るために」と言って参院選後の3年間、日本の変革に取り組めば大きな成果を成し遂げられる可能性があります。
たとえ「二枚舌」的な行動になったとしても、この3年間は日本の将来を左右する大事な3年間です。参院選後の岸田首相は、そこを十分に理解して、行動を起こしてほしいと願います。
岸田内閣の支持率が異常事態になっています。
5月27~29日に日本経済新聞社とテレビ東京が実施した世論調査で、岸田内閣を支持すると回答した人が全体の66%にも達したというのです。4月に実施した同じ調査では支持率が64%で、昨年10月発足以来の最高値を記録していたのですが、それをさらに上回ったのです。政党支持率では「自民党」がトップで51%でした。
内閣支持率というのは一般的には内閣発足直後に高い数字が出て、その後は徐々に下降する傾向にあります。もちろん、途中で大きな功績があれば上昇しますし、失敗があれば下落しますが、概して徐々に下がるものです。ところが岸田政権は発足当初は期待値が高くなかったせいか、お世辞にも「高支持率」でスタートしたわけではありませんでした。ところが支持率はその後、じわじわと伸びてきて、約8カ月後に最高値を更新するというイレギュラーな動きを見せているのです。いったい何が起きているのでしょうか。
「岸田フィーバー」が起きているわけでもないのに
国内政治における支持率に関して、政界関係者が広く信じているある法則があります。竹下登元首相の秘書を長く務めた後、参院議員となった「参院のドン」青木幹夫氏が唱えた「青木の法則」です。これは「内閣の支持率と政権与党の支持率の和が50を切るとその政権は危ない」というものです。前述の日経新聞・テレビ東京の世論調査に基づけば、内閣支持率:66(%)+自民党支持率:51(%)=117となります。
青木の法則にしたがえば、岸田内閣は「超安泰政権」なのです。
しかし、「体感」として、世の中がそれほど岸田フィーバーに沸いているようには思えません。岸田文雄首相が、最近になって何か大きな業績を上げたということもありません。失礼ながら、冒頭で「異常事態」と書いたのはそのためです。
では、この高支持率の原因とは何なのでしょうか。
「隠れ岸田」と「隠れトランプ」
私はこの現象を「隠れ岸田現象」ではないかと睨んでいます。
「隠れ岸田」とは、アメリカで前大統領のドナルド・トランプ氏のことを密かに支持していた人のことを指す「隠れトランプ」の“パクリ”です。岸田支持者とトランプ支持者には似たような心理が働いていると感じるのです。
そんなことを言うと「トランプと岸田さんって全然タイプが違うじゃない」と感じる人もい(る)のではないかと思います。確かにそうです。トランプ氏は激しい言動をするタイプ、岸田首相は理性的で真逆のタイプに見えます。
それなのに、なぜ「隠れトランプ」と「隠れ岸田」が同じ現象だと私は考えたのでしょうか。
結論から言えば、それは日本の社会とアメリカの社会とで、求められるものが真逆になっているからです。トランプ氏と岸田首相が正反対のタイプでも、社会そのものも正反対だから、現象としては同じことが現れるのです。
私はリーダーシップについて各地で講演をすることが多いのですが、その際に聴衆に「岸田さんをどう思いますか、リーダーシップがあると思いますか」と聞くこともあります(私のリーダーシップの定義は、指し示す「指導力」ではなく、自ら動き始める「始動力」なので、そのイメージギャップを勘案する必要はありますが)。するとだいたいみんなポカンとしているのです。返ってくる反応も「う~ん、岸田さんって、なんか顔が見えないよね」などというものがほとんどです。
首相就任から8カ月ほどの期間で、これといった成果も見えてきていません。これまた「岸田さんが政権に就いてから成し遂げた印象的なことありますか」と聴衆に聞くと、みんなシーンとしてしまいます。「経済安保法案ですか」、「子ども家庭庁を作るって言っていたかな」などという反応があることもありますが、それらは全部、岸田さんが首相になる前から出ていた話です。結局、岸田政権の功績というのはよくわからないのです。
こんな調子ですから、面と向かって、「あなたは岸田内閣を支持しますか、岸田首相を支持しますか」と聞かれると、みな「うーん」という顔をするのですが、その実、世論調査の対象になると「支持する」と答えているのです。私は、このなんとなく支持している人たちを「隠れ岸田」と呼んでいるのです。
トランプ氏の場合はどうでしょうか。アメリカで「あなたはトランプ氏を支持しますか」と尋ねられれば、はっきり「支持しない」と断言する人や、言葉を濁す人が多いはずです。下品だし、差別的発言は多いし、政治的主張も偏っている。大っぴらに「支持している」と公言するのは常識人として憚られる、と思っている人が多いからです。でも実は「隠れトランプ」と言われている、本音ではトランプ氏に共鳴している層がそれなりにいるのです。
大統領だった当時、コアな支持者たちからなる岩盤支持層があり、そこに少なからぬ「隠れトランプ」がいた。そのため、およそ半数の国民からは明確に「嫌い」と言われながらもトランプ氏は大統領の座に座り続けることが出来ました。私は、コロナがなければ、再選されていた可能性もかなり高いとみています。
失点少ない岸田首相
このようにアメリカの社会全体で見れば、「(多少下品ではあっても)はっきり物事を言って実行してほしい」と本音のところで望んでいる人たちが多いのです。日本はそうではありません。「徹底的にやらなくていい」「ほどほどでいい」「多くの人の意見を聞いて、ちょうどいい塩梅の落としどころをみつけてほしい」。そんな本音を持っている人が多いのです。
日本という社会は、それこそ聖徳太子の時代の十七条の憲法の中で「和を以て貴しとなす」と書かれているように、大昔から、「互いの意見をぶつけ合って白黒つけよう」というよりは、「みんなの意見をよく聞いたうえで、みんながまあまあ納得できる線でまとめていこう」ということが好きな国民性だと思われます。
そう考えると、「聞く力」の岸田首相のスタイルは、中長期的にみた日本の社会的あり方に非常にマッチしていると言えます。これが高支持率の要因だと思います。
失点が少ないのも岸田政権の高支持率の原因でしょう。これまで岸田内閣が何か失敗したかと言えば、大きな失敗はありません。実は岸田政権は「官邸官僚」がかなりしっかりしています。首席秘書官の嶋田隆氏は元経産事務次官の切れ者ですし、財務省出身の秘書官・宇波弘貴氏は、財務省の本流・主計局の次長からの起用です。他のメンバーを見ても、各省のエース級が起用されています。
岸田首相と同じ開成高校出身者のネットワークも政権をしっかり支えています。こうした陣立てがしっかりしているので、岸田内閣にはあまり失敗がありません。知床沖で遊覧船が消息を絶った時にも、その日のうちに訪問先の熊本から自衛隊機で帰京しています。本当にそこまでの対応が必要かはともかく、国民に向けての安心感の提供にはなっています。過去には、大きな事故が発生したとの連絡を受けながら、ゴルフを続けていたことが発覚して批判を受けた首相もいましたが、こういう危機管理面で岸田首相は実にそつがないのです。
ロシアやウクライナへの対応についても、大きく得点を稼いでいるわけではありませんが、ちゃんと国際社会と歩調を合わせて、それなりのことをやっています。
「改革疲れ」したところに登場したホッとできる政権
高支持率の背景をもう少し短期的な面から分析すれば、安倍政権や菅政権で、日本人全体が「改革疲れ」をしてしまったという面もあると考えられます。安倍晋三首相の時代は、華々しくアベノミクスや安保法制をぶち上げましたが、反面、それを批判する野党や一部社会との対決姿勢を隠そうとせず、力ずくで改革していこうという匂いをぷんぷん漂わせていました。
菅義偉首相の場合は、政権についていたのはわずか一年でしたが、この間に、「ワクチン接種は一日100万回だ」といって河野太郎さんのように激しい人をワクチン担当相に起用してゴリゴリ推し進め、さらに携帯電話の料金引き下げや、少子化対策の一環として不妊治療の保険適用実現や子ども家庭庁の創設、デジタル庁の創設など、ガンガンガンガンと続けざまに改革を打ち出していきました。そして、それによって敵も次々登場するという中でまさに奮闘していました。
その方向性について賛否はあるでしょうが、安倍元首相や菅前首相は、社会の課題を解決し、日本を前進させようと努力したのは確かです。時には「強引」とも言える方法で、「剛腕ぶり」を発揮してきました。
しかし、そのゴリゴリぶりに国民はどうやら疲れていたようです。だからマイルドで穏やかな感じの岸田政権に、なんとなくほっとしたものを感じているのだと思うのです。
恐るべき「戦意喪失促進力」
しかし、安倍政権や菅政権が「実績」を上げたのに比べて、岸田首相は、何をやっているのかわかりません。はっきり言えば、何もしていません。それでも、野党から大々的に攻撃されたり、国民が「いいかげんにしろ」と言い出したりしないのはなぜでしょうか。
ある元国会議員が解説してくれました。
「岸田さんがすごいのは『戦意喪失促進力』だ。野党の立場からすると、安倍さんや菅さんはこちらに向かってファイティングポーズをとってくるから、こっちもついつい戦意に火がついて殴り合いがおこりやすい。
だけど岸田さんは違う。例えば首相就任直後、コロナ対策として10万円の給付案をぶち上げていたが、内外から『そんなバラマキはさすがにダメだろう』と言われたらさっさとひっこめた。戦うという感じじゃない。柔軟と言えば柔軟だけど、政府が出した案に『そうじゃなくて、こうしたほうがいいんじゃないか』と言われたりすると「わかりました。検討します」と言ってすぐひっこめちゃう。こちらとしては戦意を喪失してしまう。逆に言えばかなり手ごわい相手だ。『検討使』などと揶揄されているが、批判を受けにくいのは強みだ」
他にも、今のところ目立ったスキャンダルがないのも強みです。例えば安倍元首相の時には、桜を見る会やモリカケ問題というスキャンダルが浮上し、野党や世論の猛批判を浴びました。岸田首相には現状、それがありません。つまり野党に攻撃の糸口を与えていないのです。
このように予想以上に強固で、国民からの隠れた支持も集めている岸田政権ですが、果たして、ほとんどなにもしない、「聞く力」だけで日本は中長期的に大丈夫なのでしょうか。その不安はぬぐえません。
高支持率でも党内は一枚岩に非ず
現在の岸田政権は、かつての海部政権の姿と重なって見えます。海部俊樹首相はクリーンなイメージがあり弁舌もさわやかなこともあって国民の支持率は高かったのですが、党内基盤が弱かったために海部さん自身に実行力がなく、実際に政権を裏で仕切っているのは自民党幹事長の小沢一郎さんでした。
そんな海部さんでしたが、政治改革関連法案の取り扱いを巡り党内をまとめることが出来ず、小沢さんら党内の実力者たちから見放されるような形で「海部おろし」にあって総理を辞任するという結果になってしまいました。
岸田首相も支持率を見る限り、現時点では盤石なようですが、党内に不満がないわけではありません。
例えば、菅前首相などは、自身が推し進めてきた改革路線がすっかり停滞してしまっていることに、内心不満を持っていても不思議ではありません。小石河連合と称される、小泉進次郎さん、石破茂さん、河野太郎さんたちも、「もっと改革していかなくちゃだめじゃないか」と苛立ちを感じているのではないでしょうか。
来月7月には参院選があります。衆院選は昨年10月にありました。高い支持率を保ち、参院選に勝利すれば、次の参院選まで3年あります。衆院も解散がなければ任期満了まで3年少々あります。つまりこの7月の参院選を順調に乗り切れば、およそ3年間も国政選挙がない期間になり得ます。政権をあずかる立場の人にとっては、選挙のことを考えず、改革に集中できる黄金期間となります。
課題はたくさんあります。イーロン・マスクから「出生率が上がらなければ日本は消滅する」と指摘されたように、日本の少子高齢化の改善には一刻の猶予もありません。2021年の出生率がついに1.3になり、出生数が81万人という共に過去最低という衝撃の数字も出てきました。経済安保法制についても取り組みは始まっていますが、より本質的なしっかりした対策を取らないと、外国資本に利益も資源も持っていかれてしまいます。何も手を打たなかったら、今まで当たり前のように存在していた日本の地域、産業体制、文化、自然環境や資源が失われてしまうのは目に見えています。日本人にとって大事なこれらのものを「守る」ためにも、様々な改革が必要ですし、参議院選後はまさにその絶好のタイミングとなるのです。
明治維新の「二枚舌的」変革
実は、この「守るために変える」というのが、日本を変えていくためには重要なアプローチになるのではないかと私は睨んでいます。
明治維新もこのアプローチによって達成された事象でした。明治維新というものを、少々乱暴にまとめさせてもらえば、次のようになります。
幕末に突然、黒船に代表される異国船が多数やってきて日本に開国を迫りました。それ以来、日本は「外国が襲ってくる、外国に日本を占領・改造させられてしまう」という恐怖に包まれました。それに対して生まれたのが、「このまま日本という国を変わらずに保とうじゃないか」という機運です。そして「変わらないためには、何よりもまず外国を追い払うことだ。攘夷だ」ということで、日本各地に「攘夷ムーブメント」が発生します。その担い手が、いわゆる維新の志士です。
ところが外国に対して弱腰の徳川幕府では攘夷が出来そうもない、ということに多くの志士が気付いた。「ならば」と政権をひっくり返してしまったのが明治維新でした。
そうやって明治新政府が誕生したわけですが、では肝心の攘夷はどうなったか。「幕府じゃ攘夷できないじゃないか」といって大改革をしておきながら、結局日本は開国したわけです。正確に言えば徳川幕府の時代に開国はなされていましたが、新政府設立以降は、それ以上に開国し、西洋文明をどんどん吸収していったのです。
つまり「日本が変わらないために頑張ろうぜ」と言ってエネルギーを結集させておきながら、結局、そのパワーは日本を大きく変えることに利用されました。しかもその担い手の中心となったコアとなる維新の志士は、数え方にもよりますが、3000人とか1万人とか言われています。いずれにしても、当時の日本の人口3300万人からしてみれば、ごくわずかな人数です。ごく少ない人たち――薩摩藩や長州藩の若者や坂本龍馬のような脱藩浪士たち――が、うまくネットワークを構築し、「変えないために」と言ってムーブメントを作り、結局は、大きな変革を達成してしまったのです。
「日本を変えないために」と言って進めた運動が大変革になったわけです。ある意味で明治維新は「二枚舌」的な運動でした。ただ、確かに当初目指していた方向とは違った結果になったかもしれませんが、それは日本にとっては好ましい結果だったと言えるでしょう。
付け加えるならば、英語では明治維新を「メイジ・レボリューション」とは言いません「メイジ・レストレーション」と言います。Restorationとは「復元・回復」です。あの大変革は、大規模な復元だったということです。
ここから分かることは、日本人にとっては、「変える、変える」「改革だ、改革だ」といって進める欧米的な意味での改革はなじみませんが、「復元」「保守」「保全」的な意味を持った改革は受け入れやすいということです。
日本の命運を左右するこれから3年間
岸田首相は、「聞く力」を自身の強みとすることから分かるように、じっくりと全体の合意を作り上げようとする日本人の心性にマッチしたキャラクターを備えています。ある意味で明治天皇「的」存在になり得るともいえます。大きな派閥の後ろ盾はありませんが、少数精鋭ながら、岸田首相を支えようという人材のネットワークも持っています。その岸田首相が、「改革待ったなし」のこの時期に、「私たちが大切にしてきたこの日本を守るために」と言って参院選後の3年間、日本の変革に取り組めば大きな成果を成し遂げられる可能性があります。
たとえ「二枚舌」的な行動になったとしても、この3年間は日本の将来を左右する大事な3年間です。参院選後の岸田首相は、そこを十分に理解して、行動を起こしてほしいと願います。
首相就任から8カ月ほどの期間で、これといった成果も見えてきていません。
岸田政権の功績というのはよくわからないと、朝比奈氏。
この現象は、「隠れ岸田現象」だと。「隠れトランプ」の“パクリ”で、岸田支持者とトランプ支持者には似たような心理が働いていると感じると。
何故か。
結論から言えば、それは日本の社会とアメリカの社会とで、求められるものが真逆になっているからです。トランプ氏と岸田首相が正反対のタイプでも、社会そのものも正反対だから、現象としては同じことが現れると、朝比奈氏。
日本は、「互いの意見をぶつけ合って白黒つけよう」というよりは、「みんなの意見をよく聞いたうえで、みんながまあまあ納得できる線でまとめていこう」ということが好きな国民性。
そう考えると、「聞く力」の岸田首相のスタイルは、中長期的にみた日本の社会的あり方に非常にマッチしていると言えます。これが高支持率の要因だと思いますと。
何もしないから、失点が少ないのも一因だと。
北京冬季五輪で、バイデン大統領が提唱した「外交的ボイコット」に対し、主要自由主義各国が素早い協力を表明、国内でも安倍氏や自民党内からの早期対応要請があるなか、米中二股外交で逡巡し、支持表明が遅れ、バイデン氏に不審を抱かれ、岸田氏の就任に伴う面談が一時保留され、オンラインに格下げし開催に至ったという、日米首脳の長い間に築かれてきた関係にヒビを生じさせる、重大失政は、報道しない自由を駆使する日本のオールドメディアは取り上げないことは、諸兄がご承知の通りです。
対露経済制裁で、サハリン1,2からの撤退についても、主軸支援の米エクソンモービル(エクソン)とイギリス&オランダの「ロイヤル・ダッチ・シェル」(シェル)が撤退を早々に発表したにも関わらず、岸田氏は、商工会議所会頭や経団連会長の日本企業の利益保持優先発言を聞き入れ、不撤退を表明し、各国による包囲網に逆行しています。
にもかかわらず、ロシアからは、非友好国にリストアップ。
外交下手の本領発揮。
また、安倍政権や菅政権では、日本の改革に向けて、諸政策を積極的に推進。改革には当然反発も起こる。つまり、批判もある。
しかし、そのゴリゴリぶりに国民はどうやら疲れていたようです。だからマイルドで穏やかな感じの岸田政権に、なんとなくほっとしたものを感じているのだと思うのですと、朝比奈氏。
しかし、安倍政権や菅政権が「実績」を上げたのに比べて、岸田首相は、何をやっているのかわかりません。はっきり言えば、何もしていません。それでも、野党から大々的に攻撃されたり、国民が「いいかげんにしろ」と言い出したりしないのはなぜでしょうかとも。
「聞く耳」が売りの岸田氏。政府が出した案に『そうじゃなくて、こうしたほうがいいんじゃないか』と言われたりすると「わかりました。検討します」と言ってすぐひっこめちゃう。
『検討使』などと揶揄されているが、批判を受けにくいのは強みだと朝比奈氏。
果たして、ほとんどなにもしない、「聞く力」だけで日本は中長期的に大丈夫なのでしょうか。その不安はぬぐえませんとも。
課題はたくさんあります。イーロン・マスクから「出生率が上がらなければ日本は消滅する」と指摘されたように、日本の少子高齢化の改善には一刻の猶予もありません。
経済安保法制についても、何も手を打たなかったら、今まで当たり前のように存在していた日本の地域、産業体制、文化、自然環境や資源が失われてしまうのは目に見えていますと。
日本流の改革例として、朝比奈氏は明治維新を挙げておられます。
「日本が変わらないために頑張ろうぜ」と言ってエネルギーを結集させておきながら、結局、そのパワーは日本を大きく変えることに貢献。
日本人にとっては、「変える、変える」「改革だ、改革だ」といって進める欧米的な意味での改革はなじみませんが、「復元」「保守」「保全」的な意味を持った改革は受け入れやすいと。
「聞く耳」の岸田政権は、日本人の心性にマッチしたキャラクターを備えている。
「改革待ったなし」のこの時期に、「私たちが大切にしてきたこの日本を守るために」と言って参院選後の3年間、日本の変革に取り組めば大きな成果を成し遂げられる可能性がありますと、朝比奈氏。
そう願いたいのですが、そこは「検討使」。明治維新の志士は、行動し実現させるちからがありました。
国民の所得を増やすと総裁選で唱えていた岸田氏。「骨太の方針」では、個人所得ではなく、NISA拡充など「資産所得倍増プラン」に方向変更。資産を持つなど、投資(リスク込)が出来る人を優遇する政策に様変わり。しかも、そこでリスクを負って動くのは、政府ではなく国民。
骨太の方針 NISA拡充など「資産所得倍増プラン」盛り込みへ | NHK | 経済安全保障
これで、激変の世界情勢のなかで日本は生き残れるのでしょうか!
# 冒頭の画像は、ロンドンで金融投資促進の講演をした岸田氏
遊爺さんの写真素材 - PIXTA
これ、総裁選での約束違反。
個人の年間所得の順位は'97年の14位から、'20年には22位まで没落し韓国にも抜かれた。(失業率は?)
https://news.yahoo.co.jp/articles/fc59e3342bc93d99b834056beb6b7029c42d5e69?page=1
それでもなを、個人所得増を約束していた岸田内閣は、その約束は反故にして、投資出来る層に特化した所得増の「新自由主義」に。
総裁選の約束を反故にした岸田氏。投票した自民党員さんは、許すの?
衆院選は、予想に反して善戦した。今も世論調査では何故か高支持率だが、聞く耳でフラフラして実績がない現実が見え始めた現状。このままでは、参院選は危ないのでは!