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ロシア軍のウクライナ・ハルキュウ州への攻撃情報が錯そうしています。
5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始したが、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ているという情報と、23日のロシア軍の攻撃では被害が発生、セレンスキー大統領は世界の支援不足に弱音!
ロシア軍は5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始した。
その兵力は3万~5万人という。概ね10日ほど経過したが、国境から5~10キロを前進したものの、ウクライナ軍の陣地を突破できずにいると、西村氏。
とはいえ、ウクライナ軍の主陣地は、国境よりも5~10キロほど後方にあるので、陣前までは前進されている。
ウクライナ軍は予備戦力をこの正面に転用せざるを得なくなっているとも。
ロシア軍がハルキウ正面の攻撃を開始する前、どの地域を重点に攻撃していたかというと、アウディウカからオチャレティネ、バフムトからチャシフヤールの地域だ。
特に、アウディウカからオチャレティネへの攻撃では、アウディウカの要塞を奪取し、その後ウクライナ軍の防御の一線を破り、陣内戦闘に入っていたのだそうです。
ロシア軍がハルキウに投入している3万~5万人という強大な戦力を投入して戦えば、ウクライナ軍の武器弾薬不足を突いて、この地での作戦は上手くいったはずだ。
この地で突破口を形成し、それを拡大し、ウクライナ軍の防御の一つを突き破れたかもしれなかったのだ。
しかし、ロシア軍は3万~5万人の戦力をアウディウカ方面に投入せずに、ハルキウ攻撃に投入してしまった。
このため、アウディウカ方面は大きく進展することはなく、ハルキウ正面もウクライナ軍防御を突き破る戦果を出してはいない。
ロシア軍は、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ている状況だったと、西村氏。
ロシア軍は侵攻当初、ウクライナに全正面同時侵攻を行った。
この時、ロシアからウクライナを占拠することが目的であれば、2つの案、
①全正面から攻撃するもののキーウを重点にしてその他の正面の戦力は減らして攻撃する案
②すべての戦力を全正面から攻撃するという案
があった。
①の案を採用すべきであった。
ところが、ロシアは最も優先すべきであったキーウ占拠をあとわずかというところで攻撃続行を放棄して撤退してしまった。
最も優先すべきであったキーウ占拠を途中で諦めた。
第1の目的を達成するためには、そこに全戦力を集中して、攻撃衝力(攻撃を継続する力)を維持し、あらゆる犠牲を払ってでも占拠すべきであった。
それを途中で諦めた。ロシアにとって、この作戦からの撤退がウクライナ侵攻の最大の失敗であったと、西村氏。
ロシア軍は2022年4月頃、キーウ正面から撤退し、戦線をハルキウ州~ルハンスク州~ドネツク州~ザポリージャ州~ヘルソン州に縮小した。
そうして、最小限の目標を達成しようとしたと。
ところが、2022年6~9月頃、ウクライナ軍の反撃を受けて、ハルキウ州・ヘルソン州の一部からも早々に撤退。
しかし、今頃になって、ハルキウ正面の攻撃を開始した。つまり、アウディウカ攻勢も中途半端になったと、西村氏。
近代戦の戦理から考えれば、突破が成功しそうであれば、攻勢側はあらゆる戦力を投入して、多くの犠牲を払ってでも突破し、その拡大を図り、ウクライナの防御線を突き破るべきであったと、西村氏。
だが、ロシア軍は使用できる残りの全戦力をドネツク正面に投入せずに、ハルキウに投入。
ロシアは、攻撃目標達成にあと一歩か二歩というところで、大きな抵抗を受けたり、あるいは自軍に問題が生じたりすると、後退するか、または敵の新たな弱点を求めて、攻撃正面を変える戦闘を行う。
本来の目的を変えるという決心が速いようだと、西村氏。
ロシアは、多くの戦力をすり潰してきた。
最近では、使える戦車や装甲歩兵戦闘車も減少してきているとも。
米国によるウクライナへの軍事緊急支援が4月26日に決定され、米国務長官は、ロシア領内への攻撃については奨励してはいないとの米政府の立場を示したものの、その上で「この戦争の遂行方法は最終的にウクライナが決めることだ」とも付け加えた。
つまり、「供与した武器をどこに使おうが、ウクライナの判断による」と言及したものとみられる。
英国も、贈与した武力をロシア領への攻撃に使用するかは、ウクライナ側が決めることだと容認。
“ウクライナに武器支援”英国が新たな段階へ 仏大統領も派兵に言及 欧州の危機感(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
これからは、ロシア軍の継戦能力を削ぐために射程300キロのATACMS(Army Tactical Missile System=陸軍戦術ミサイルシステム)で、クリミア半島やウクライナに隣接する地域の空軍・海軍基地、弾薬庫、石油施設を徹底的に潰しにかかる
長射程精密誘導ロケットや砲で、前線で攻撃してくるロシア軍の砲兵陣地や兵站施設を叩く。
ウクライナ軍の今後の反攻については、ウクライナの兵員の増加にもよるが、クリミアへの上陸侵攻が可能かどうかが、注目されるところであると、西村氏。
ところが、ハルキウ州で23日、ロシア軍の攻撃があり、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷。
ハルキウ州では、ロシア軍が新たな地上作戦を進めるなど攻撃を強めている。
ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日のロシア軍による攻撃について、「ロシアはウクライナの防衛システムの欠如を利用している。この弱点は私たちのものではなく、3年間、テロリストに対して適切に対処する勇気を持たなかった世界の弱点だ」と自身のテレグラムで述べたのだそうです。
米国議会のウクライナ支援予算が成立し、英仏もウクライナ支援を、一歩踏み込んだ進展へ!
ロシアも曲折はあるものの攻勢を強化。
収まる気配のないパレスチナの紛争共々、対立が深まる両地域。
治めるにはどうすればいいのでしょう?
# 冒頭の画像は、ロシアに脅威を与えるHIMARS
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この花の名前は、シャリンバイ
↓よろしかったら、お願いします。
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
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5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始したが、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ているという情報と、23日のロシア軍の攻撃では被害が発生、セレンスキー大統領は世界の支援不足に弱音!
ハルキウ正面侵攻でロシア軍が墓穴、勝機逃し敗色濃厚に アウディウカ突破作戦の戦果生かせず、もはや本格攻勢の余力なし | JBpress (ジェイビープレス) 2024.5.23(木) 西村 金一
■ 1.ハルキウ正面ウクライナ軍陣地突破できず
ロシア軍は5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始した。
その兵力は3万~5万人という。概ね10日ほど経過したが、国境から5~10キロを前進したものの、ウクライナ軍の陣地を突破できずにいる。
ロシア軍は、戦闘に慣れていない不十分な戦力で戦っている。ロシア軍の力不足という印象だ。
とはいえ、ウクライナ軍は予備戦力をこの正面に転用せざるを得なかった。
ウクライナ軍は、事前に準備した前方陣地と主陣地で、防御戦闘をほぼ計画通り実施している。
ウクライナ軍の主陣地は、国境よりも5~10キロほど後方にあるので、陣前までは前進されている。
これは、侵攻を止めるためには、当然の戦術である。ウクライナ軍にとっては、ほぼ、予期した通りの戦いであると判断できる。
■ 2.ハルキウ正面攻撃は「戦力分散」で失敗
ロシア軍がハルキウ正面の攻撃を開始する前、どの地域を重点に攻撃していたかというと、アウディウカからオチャレティネ、バフムトからチャシフヤールの地域だ。
特に、アウディウカからオチャレティネへの攻撃では、アウディウカの要塞を奪取し、その後ウクライナ軍の防御の一線を破り、陣内戦闘に入っていたところである。
この戦闘については、JBpress『武器弾薬が届くまでの隙をついたロシア軍の猛攻、ウクライナ地上軍に危機迫る(2024.5.9)』に、「ウクライナ軍がアウディウカの地域で、ロシア軍の攻撃を止められるか、突き抜けられて、戦果拡張されるかで、今後の戦況は大きく変わる。ウクライナ軍は今、その瀬戸際にきている」と書いた。
ロシア軍がハルキウに投入している3万~5万人という強大な戦力を投入して戦えば、ウクライナ軍の武器弾薬不足を突いて、この地での作戦は上手くいったはずだ。
この地で突破口を形成し、それを拡大し、ウクライナ軍の防御の一つを突き破れたかもしれなかったのだ。
しかし、ロシア軍は3万~5万人の戦力をアウディウカ方面に投入せずに、ハルキウ攻撃に投入してしまった。
このため、アウディウカ方面は大きく進展することはなく、ハルキウ正面もウクライナ軍防御を突き破る戦果を出してはいない。
ロシア軍は、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ている状況だ。
■ 3.中途半端な攻勢で自滅に向かうロシア軍
(1)キーウ占拠を途中で諦めた
ロシア軍は侵攻当初、ウクライナに全正面同時侵攻を行った。
この時、ロシアからウクライナを占拠することが目的であれば、2つの案、
①全正面から攻撃するもののキーウを重点にしてその他の正面の戦力は減らして攻撃する案
②すべての戦力を全正面から攻撃するという案
があったかと思う。
この時、ほかの作戦がうまくいかなかったとしても、①の案を採用すべきであった。
ところが、ロシアは最も優先すべきであったキーウ占拠をあとわずかというところで攻撃続行を放棄して撤退してしまった。
最も優先すべきであったキーウ占拠を途中で諦めたのだ。
キーウ近郊の空港への空挺・ヘリボーン作戦の失敗、兵站上の問題や侵攻経路が水没で塞がれたという障害が発生したからだというが、途中で諦めてしまった。
第1の目的を達成するためには、そこに全戦力を集中して、攻撃衝力(攻撃を継続する力)を維持し、あらゆる犠牲を払ってでも占拠すべきであったのだ。
それを途中で諦めた。ロシアにとって、この作戦からの撤退がウクライナ侵攻の最大の失敗であった。
(2)ハルキウやヘルソンの北半分から早々の撤退
ロシア軍は2022年4月頃、ウクライナ軍の強い抵抗を受けて、キーウ正面から撤退し、戦線をハルキウ州~ルハンスク州~ドネツク州~ザポリージャ州~ヘルソン州に縮小した。
そうして、最小限の目標を達成しようとした。
ところが、2022年6~9月頃、ウクライナ軍の反撃を受けて、ハルキウ州・ヘルソン州の一部から早々に撤退してしまったのだ。
この地を防御できる戦力が足りず、準備もできていなかったというのも一理ある。
しかし、戦線を縮小したのだから、火力と戦力を投入して、この地を死守するべきであった。
(3)ハルキウの戦線を拡大、ドネツク北部の突破促進を無駄にした
アウディウカ方面からの攻勢は、うまくいけばドネツク州の境界まで突進していく計画であった。
しかし、今頃になって、ハルキウ正面の攻撃を開始した。つまり、アウディウカ攻勢も中途半端になった。
近代戦の戦理から考えれば、突破が成功しそうであれば、攻勢側はあらゆる戦力を投入して、多くの犠牲を払ってでも突破し、その拡大を図り、ウクライナの防御線を突き破るべきであったのだ。
だが、ロシア軍は使用できる残りの全戦力をドネツク正面に投入せずに、ハルキウに投入してしまった。
勝敗の境目であった戦局で、そこに防御を突き破る戦力を投入しなかったのだ。
結局、ここでもロシア軍は中途半端な攻撃をしてしまった。
■ 4.ロシアには困難な突破追求の概念がない
ロシアは、攻撃目標達成にあと一歩か二歩というところで、大きな抵抗を受けたり、あるいは自軍に問題が生じたりすると、後退するか、または敵の新たな弱点を求めて、攻撃正面を変える戦闘を行う。
本来の目的を変えるという決心が速いようだ。
当初は巨大な軍事力を持っていた。それを重要な地域に、最大限に投入することなく戦ってきた。
つまり、突破の形成、突破口の拡大、戦果拡張という概念、すなわち困難であってもあらゆる戦力を一点に集めて敵を突き破るという「突破攻撃」成功の概念がないのかもしれない。
攻撃してみて、早い段階でダメであれば、それをいったんやめて別の方策を追い求めるやり方を追求しているようだ。
■ 5.ロシアの中途半端な攻勢後に来るもの
ロシアは、多くの戦力をすり潰してきた。
約50万の兵、7600両の戦車、1万5000両の装甲戦闘車、1万3000門の火砲類が破壊されている。
最近では、使える戦車や装甲歩兵戦闘車も減少してきている。
米国によるウクライナへの軍事緊急支援が4月26日に決定され、米国務長官は、ロシア領内への攻撃については奨励してはいないとの米政府の立場を示したものの、その上で「この戦争の遂行方法は最終的にウクライナが決めることだ」とも付け加えた。
つまり、「供与した武器をどこに使おうが、ウクライナの判断による」と言及したものとみられる。
これからは、ロシア軍の継戦能力を削ぐために射程300キロのATACMS(Army Tactical Missile System=陸軍戦術ミサイルシステム)。で、クリミア半島やウクライナに隣接する地域の空軍・海軍基地、弾薬庫、石油施設を徹底的に潰しにかかる
長射程精密誘導ロケットや砲で、前線で攻撃してくるロシア軍の砲兵陣地や兵站施設を叩く。
地上軍攻撃兵器が減少しているロシア軍の疲弊は目に見えてきている。
キーウを制圧し、ドニエプル川東岸に到達できるだけの本格的な攻勢作戦を実施する戦力はもうないようだ。
もしできても小さな局地的な地域だけだろう。
ウクライナ軍の今後の反攻については、ウクライナの兵員の増加にもよるが、クリミアへの上陸侵攻が可能かどうかが、注目されるところである。
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西村 金一(にしむら・きんいち)のプロフィール
1952年生まれ。法政大学卒業、第1空挺団、幹部学校指揮幕僚課程(CGS)修了、防衛省・統合幕僚監部・情報本部等の情報分析官、防衛研究所研究員、第12師団第2部長、幹部学校戦略教官室副室長等として勤務した。定年後、三菱総合研究所専門研究員、2012年から軍事・情報戦略研究所長(軍事アナリスト)として独立。
執筆活動(週刊エコノミスト、月間HANADA、月刊正論、日経新聞創論)、テレビ出演(新報道2001、橋下×羽鳥番組、ほんまでっかTV、TBSひるおび、バイキング、テレビタックル、日本の過去問、日テレスッキリ、特ダネ、目覚ましテレビ、BS深層ニュース、BS朝日世界はいま、言論テレビ)などで活動中。
■ 1.ハルキウ正面ウクライナ軍陣地突破できず
ロシア軍は5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始した。
その兵力は3万~5万人という。概ね10日ほど経過したが、国境から5~10キロを前進したものの、ウクライナ軍の陣地を突破できずにいる。
ロシア軍は、戦闘に慣れていない不十分な戦力で戦っている。ロシア軍の力不足という印象だ。
とはいえ、ウクライナ軍は予備戦力をこの正面に転用せざるを得なかった。
ウクライナ軍は、事前に準備した前方陣地と主陣地で、防御戦闘をほぼ計画通り実施している。
ウクライナ軍の主陣地は、国境よりも5~10キロほど後方にあるので、陣前までは前進されている。
これは、侵攻を止めるためには、当然の戦術である。ウクライナ軍にとっては、ほぼ、予期した通りの戦いであると判断できる。
■ 2.ハルキウ正面攻撃は「戦力分散」で失敗
ロシア軍がハルキウ正面の攻撃を開始する前、どの地域を重点に攻撃していたかというと、アウディウカからオチャレティネ、バフムトからチャシフヤールの地域だ。
特に、アウディウカからオチャレティネへの攻撃では、アウディウカの要塞を奪取し、その後ウクライナ軍の防御の一線を破り、陣内戦闘に入っていたところである。
この戦闘については、JBpress『武器弾薬が届くまでの隙をついたロシア軍の猛攻、ウクライナ地上軍に危機迫る(2024.5.9)』に、「ウクライナ軍がアウディウカの地域で、ロシア軍の攻撃を止められるか、突き抜けられて、戦果拡張されるかで、今後の戦況は大きく変わる。ウクライナ軍は今、その瀬戸際にきている」と書いた。
ロシア軍がハルキウに投入している3万~5万人という強大な戦力を投入して戦えば、ウクライナ軍の武器弾薬不足を突いて、この地での作戦は上手くいったはずだ。
この地で突破口を形成し、それを拡大し、ウクライナ軍の防御の一つを突き破れたかもしれなかったのだ。
しかし、ロシア軍は3万~5万人の戦力をアウディウカ方面に投入せずに、ハルキウ攻撃に投入してしまった。
このため、アウディウカ方面は大きく進展することはなく、ハルキウ正面もウクライナ軍防御を突き破る戦果を出してはいない。
ロシア軍は、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ている状況だ。
■ 3.中途半端な攻勢で自滅に向かうロシア軍
(1)キーウ占拠を途中で諦めた
ロシア軍は侵攻当初、ウクライナに全正面同時侵攻を行った。
この時、ロシアからウクライナを占拠することが目的であれば、2つの案、
①全正面から攻撃するもののキーウを重点にしてその他の正面の戦力は減らして攻撃する案
②すべての戦力を全正面から攻撃するという案
があったかと思う。
この時、ほかの作戦がうまくいかなかったとしても、①の案を採用すべきであった。
ところが、ロシアは最も優先すべきであったキーウ占拠をあとわずかというところで攻撃続行を放棄して撤退してしまった。
最も優先すべきであったキーウ占拠を途中で諦めたのだ。
キーウ近郊の空港への空挺・ヘリボーン作戦の失敗、兵站上の問題や侵攻経路が水没で塞がれたという障害が発生したからだというが、途中で諦めてしまった。
第1の目的を達成するためには、そこに全戦力を集中して、攻撃衝力(攻撃を継続する力)を維持し、あらゆる犠牲を払ってでも占拠すべきであったのだ。
それを途中で諦めた。ロシアにとって、この作戦からの撤退がウクライナ侵攻の最大の失敗であった。
(2)ハルキウやヘルソンの北半分から早々の撤退
ロシア軍は2022年4月頃、ウクライナ軍の強い抵抗を受けて、キーウ正面から撤退し、戦線をハルキウ州~ルハンスク州~ドネツク州~ザポリージャ州~ヘルソン州に縮小した。
そうして、最小限の目標を達成しようとした。
ところが、2022年6~9月頃、ウクライナ軍の反撃を受けて、ハルキウ州・ヘルソン州の一部から早々に撤退してしまったのだ。
この地を防御できる戦力が足りず、準備もできていなかったというのも一理ある。
しかし、戦線を縮小したのだから、火力と戦力を投入して、この地を死守するべきであった。
(3)ハルキウの戦線を拡大、ドネツク北部の突破促進を無駄にした
アウディウカ方面からの攻勢は、うまくいけばドネツク州の境界まで突進していく計画であった。
しかし、今頃になって、ハルキウ正面の攻撃を開始した。つまり、アウディウカ攻勢も中途半端になった。
近代戦の戦理から考えれば、突破が成功しそうであれば、攻勢側はあらゆる戦力を投入して、多くの犠牲を払ってでも突破し、その拡大を図り、ウクライナの防御線を突き破るべきであったのだ。
だが、ロシア軍は使用できる残りの全戦力をドネツク正面に投入せずに、ハルキウに投入してしまった。
勝敗の境目であった戦局で、そこに防御を突き破る戦力を投入しなかったのだ。
結局、ここでもロシア軍は中途半端な攻撃をしてしまった。
■ 4.ロシアには困難な突破追求の概念がない
ロシアは、攻撃目標達成にあと一歩か二歩というところで、大きな抵抗を受けたり、あるいは自軍に問題が生じたりすると、後退するか、または敵の新たな弱点を求めて、攻撃正面を変える戦闘を行う。
本来の目的を変えるという決心が速いようだ。
当初は巨大な軍事力を持っていた。それを重要な地域に、最大限に投入することなく戦ってきた。
つまり、突破の形成、突破口の拡大、戦果拡張という概念、すなわち困難であってもあらゆる戦力を一点に集めて敵を突き破るという「突破攻撃」成功の概念がないのかもしれない。
攻撃してみて、早い段階でダメであれば、それをいったんやめて別の方策を追い求めるやり方を追求しているようだ。
■ 5.ロシアの中途半端な攻勢後に来るもの
ロシアは、多くの戦力をすり潰してきた。
約50万の兵、7600両の戦車、1万5000両の装甲戦闘車、1万3000門の火砲類が破壊されている。
最近では、使える戦車や装甲歩兵戦闘車も減少してきている。
米国によるウクライナへの軍事緊急支援が4月26日に決定され、米国務長官は、ロシア領内への攻撃については奨励してはいないとの米政府の立場を示したものの、その上で「この戦争の遂行方法は最終的にウクライナが決めることだ」とも付け加えた。
つまり、「供与した武器をどこに使おうが、ウクライナの判断による」と言及したものとみられる。
これからは、ロシア軍の継戦能力を削ぐために射程300キロのATACMS(Army Tactical Missile System=陸軍戦術ミサイルシステム)。で、クリミア半島やウクライナに隣接する地域の空軍・海軍基地、弾薬庫、石油施設を徹底的に潰しにかかる
長射程精密誘導ロケットや砲で、前線で攻撃してくるロシア軍の砲兵陣地や兵站施設を叩く。
地上軍攻撃兵器が減少しているロシア軍の疲弊は目に見えてきている。
キーウを制圧し、ドニエプル川東岸に到達できるだけの本格的な攻勢作戦を実施する戦力はもうないようだ。
もしできても小さな局地的な地域だけだろう。
ウクライナ軍の今後の反攻については、ウクライナの兵員の増加にもよるが、クリミアへの上陸侵攻が可能かどうかが、注目されるところである。
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西村 金一(にしむら・きんいち)のプロフィール
1952年生まれ。法政大学卒業、第1空挺団、幹部学校指揮幕僚課程(CGS)修了、防衛省・統合幕僚監部・情報本部等の情報分析官、防衛研究所研究員、第12師団第2部長、幹部学校戦略教官室副室長等として勤務した。定年後、三菱総合研究所専門研究員、2012年から軍事・情報戦略研究所長(軍事アナリスト)として独立。
執筆活動(週刊エコノミスト、月間HANADA、月刊正論、日経新聞創論)、テレビ出演(新報道2001、橋下×羽鳥番組、ほんまでっかTV、TBSひるおび、バイキング、テレビタックル、日本の過去問、日テレスッキリ、特ダネ、目覚ましテレビ、BS深層ニュース、BS朝日世界はいま、言論テレビ)などで活動中。
ロシア軍は5月10日、ハルキウ正面から攻撃を開始した。
その兵力は3万~5万人という。概ね10日ほど経過したが、国境から5~10キロを前進したものの、ウクライナ軍の陣地を突破できずにいると、西村氏。
とはいえ、ウクライナ軍の主陣地は、国境よりも5~10キロほど後方にあるので、陣前までは前進されている。
ウクライナ軍は予備戦力をこの正面に転用せざるを得なくなっているとも。
ロシア軍がハルキウ正面の攻撃を開始する前、どの地域を重点に攻撃していたかというと、アウディウカからオチャレティネ、バフムトからチャシフヤールの地域だ。
特に、アウディウカからオチャレティネへの攻撃では、アウディウカの要塞を奪取し、その後ウクライナ軍の防御の一線を破り、陣内戦闘に入っていたのだそうです。
ロシア軍がハルキウに投入している3万~5万人という強大な戦力を投入して戦えば、ウクライナ軍の武器弾薬不足を突いて、この地での作戦は上手くいったはずだ。
この地で突破口を形成し、それを拡大し、ウクライナ軍の防御の一つを突き破れたかもしれなかったのだ。
しかし、ロシア軍は3万~5万人の戦力をアウディウカ方面に投入せずに、ハルキウ攻撃に投入してしまった。
このため、アウディウカ方面は大きく進展することはなく、ハルキウ正面もウクライナ軍防御を突き破る戦果を出してはいない。
ロシア軍は、中途半端な攻撃で、自滅の兆候が出ている状況だったと、西村氏。
ロシア軍は侵攻当初、ウクライナに全正面同時侵攻を行った。
この時、ロシアからウクライナを占拠することが目的であれば、2つの案、
①全正面から攻撃するもののキーウを重点にしてその他の正面の戦力は減らして攻撃する案
②すべての戦力を全正面から攻撃するという案
があった。
①の案を採用すべきであった。
ところが、ロシアは最も優先すべきであったキーウ占拠をあとわずかというところで攻撃続行を放棄して撤退してしまった。
最も優先すべきであったキーウ占拠を途中で諦めた。
第1の目的を達成するためには、そこに全戦力を集中して、攻撃衝力(攻撃を継続する力)を維持し、あらゆる犠牲を払ってでも占拠すべきであった。
それを途中で諦めた。ロシアにとって、この作戦からの撤退がウクライナ侵攻の最大の失敗であったと、西村氏。
ロシア軍は2022年4月頃、キーウ正面から撤退し、戦線をハルキウ州~ルハンスク州~ドネツク州~ザポリージャ州~ヘルソン州に縮小した。
そうして、最小限の目標を達成しようとしたと。
ところが、2022年6~9月頃、ウクライナ軍の反撃を受けて、ハルキウ州・ヘルソン州の一部からも早々に撤退。
しかし、今頃になって、ハルキウ正面の攻撃を開始した。つまり、アウディウカ攻勢も中途半端になったと、西村氏。
近代戦の戦理から考えれば、突破が成功しそうであれば、攻勢側はあらゆる戦力を投入して、多くの犠牲を払ってでも突破し、その拡大を図り、ウクライナの防御線を突き破るべきであったと、西村氏。
だが、ロシア軍は使用できる残りの全戦力をドネツク正面に投入せずに、ハルキウに投入。
ロシアは、攻撃目標達成にあと一歩か二歩というところで、大きな抵抗を受けたり、あるいは自軍に問題が生じたりすると、後退するか、または敵の新たな弱点を求めて、攻撃正面を変える戦闘を行う。
本来の目的を変えるという決心が速いようだと、西村氏。
ロシアは、多くの戦力をすり潰してきた。
最近では、使える戦車や装甲歩兵戦闘車も減少してきているとも。
米国によるウクライナへの軍事緊急支援が4月26日に決定され、米国務長官は、ロシア領内への攻撃については奨励してはいないとの米政府の立場を示したものの、その上で「この戦争の遂行方法は最終的にウクライナが決めることだ」とも付け加えた。
つまり、「供与した武器をどこに使おうが、ウクライナの判断による」と言及したものとみられる。
英国も、贈与した武力をロシア領への攻撃に使用するかは、ウクライナ側が決めることだと容認。
“ウクライナに武器支援”英国が新たな段階へ 仏大統領も派兵に言及 欧州の危機感(テレビ朝日系(ANN)) - Yahoo!ニュース
これからは、ロシア軍の継戦能力を削ぐために射程300キロのATACMS(Army Tactical Missile System=陸軍戦術ミサイルシステム)で、クリミア半島やウクライナに隣接する地域の空軍・海軍基地、弾薬庫、石油施設を徹底的に潰しにかかる
長射程精密誘導ロケットや砲で、前線で攻撃してくるロシア軍の砲兵陣地や兵站施設を叩く。
ウクライナ軍の今後の反攻については、ウクライナの兵員の増加にもよるが、クリミアへの上陸侵攻が可能かどうかが、注目されるところであると、西村氏。
ところが、ハルキウ州で23日、ロシア軍の攻撃があり、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷。
ハルキウで6人死亡、20人以上負傷 ロシア軍が交通インフラ攻撃 [ウクライナ情勢]:朝日新聞デジタル 村上友里 2024年5月23日
ウクライナ北東部ハルキウ州で23日、ロシア軍の攻撃を受け、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷した。地元メディア「キーウ・インディペンデント」などが、現地の知事の話などとして伝えた。
シネフボウ知事らによると、州都ハルキウ市内で約10回の爆発音が聞こえたという。市内の交通インフラや公共サービス会社の建物が攻撃を受け、印刷店では火災が発生した。
また、国営ウクライナ鉄道は23日、ハルキウ市や周辺の地域へのロシア軍によるミサイル攻撃で、同社の複数の施設が被害を受け、6人の従業員が負傷したと発表した。
ハルキウ州では、ロシア軍が新たな地上作戦を進めるなど攻撃を強めている。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日のロシア軍による攻撃について、「ロシアはウクライナの防衛システムの欠如を利用している。この弱点は私たちのものではなく、3年間、テロリストに対して適切に対処する勇気を持たなかった世界の弱点だ」と自身のテレグラムで述べた。(村上友里)
ウクライナ北東部ハルキウ州で23日、ロシア軍の攻撃を受け、少なくとも6人が死亡、20人以上が負傷した。地元メディア「キーウ・インディペンデント」などが、現地の知事の話などとして伝えた。
シネフボウ知事らによると、州都ハルキウ市内で約10回の爆発音が聞こえたという。市内の交通インフラや公共サービス会社の建物が攻撃を受け、印刷店では火災が発生した。
また、国営ウクライナ鉄道は23日、ハルキウ市や周辺の地域へのロシア軍によるミサイル攻撃で、同社の複数の施設が被害を受け、6人の従業員が負傷したと発表した。
ハルキウ州では、ロシア軍が新たな地上作戦を進めるなど攻撃を強めている。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日のロシア軍による攻撃について、「ロシアはウクライナの防衛システムの欠如を利用している。この弱点は私たちのものではなく、3年間、テロリストに対して適切に対処する勇気を持たなかった世界の弱点だ」と自身のテレグラムで述べた。(村上友里)
ハルキウ州では、ロシア軍が新たな地上作戦を進めるなど攻撃を強めている。
ウクライナのゼレンスキー大統領はこの日のロシア軍による攻撃について、「ロシアはウクライナの防衛システムの欠如を利用している。この弱点は私たちのものではなく、3年間、テロリストに対して適切に対処する勇気を持たなかった世界の弱点だ」と自身のテレグラムで述べたのだそうです。
米国議会のウクライナ支援予算が成立し、英仏もウクライナ支援を、一歩踏み込んだ進展へ!
ロシアも曲折はあるものの攻勢を強化。
収まる気配のないパレスチナの紛争共々、対立が深まる両地域。
治めるにはどうすればいいのでしょう?
# 冒頭の画像は、ロシアに脅威を与えるHIMARS
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この花の名前は、シャリンバイ
↓よろしかったら、お願いします。
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA