遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国優位の中露関係 米の制止を振り切って露に接近する安倍政権

2015-05-16 23:58:58 | ロシア全般
 ウクライナ侵攻でG7から制裁を受け、孤立する露・プーチン政権の弱みにつけ込んで接近し、優位な二国関係を構築する習近平。それが判っていて従属的条件に耐えながらも接近せざるを得ないプーチン政権。中露関係のこの現状は、いつまで続くのでしょうか。
 先の大戦後70年を経た今、力で現状変更を進めているこの両国の接近は、日米欧各国とのそれぞれの微妙な距離感の違いの中で、めいめいが国益を追求しようとし、世界の混迷に拍車をかけています。
 今回は、中露の接近の現状と、その中で米国の制止を振り切ってプーチンに近づこうとする安倍首相のニュースを取り上げてみました。

 
プーチンさん そこまで誇りを捨てざるを得ないのは自業自得と反省し反転する時でしょう - 遊爺雑記帳
 
ロシアと中国:気まずい友人関係 | JBpress(日本ビジネスプレス) (英エコノミスト誌 2015年5月8日号)

 
ウクライナ危機はロシアを中国に接近させている。だが、両国の関係は対等とはほど遠い。

 70年前のナチスドイツ降伏を記念する5月9日のモスクワでの戦勝式典は、今日の地政学について多くのことを物語る。ロシアのウクライナ侵略(および第2次世界大戦後初の欧州での主権領土の併合)に抗議して西側の指導者が欠席する中、中国の習近平国家主席は、友人であるウラジーミル・プーチン氏の主賓になった。
 ウクライナを巡る西側の制裁や、確実視される欧米との関係の長期的な冷え込みによって、
ロシアには、中国をできるだけしっかりと抱え込むこと以外に選択肢がなくなっている


拡大する戦略的パートナーシップ
 両国の戦略的パートナーシップ拡大の象徴はまだある。5月第3週には、
中国の海軍艦艇3~4隻とロシアの海軍艦艇6隻が集まり、東地中海で実弾演習
を行う。2013年以降太平洋で数回行われた同様の演習に続く今回の演習は、米国とその同盟国に明確なメッセージを送ることを狙っている。
 
ロシアにとっては、この演習は、自国に強い友人と地理的範囲が拡大する軍事関係があることを示すものだ。一方、中国にとっては、この種の小規模な演習でさえ(中国の艦艇はアデン湾での海賊対策任務から振り向けられる)、「強軍の夢」を含むと習氏が言う「中国の夢」に関するスローガンに沿ったグローバルな野心の高まりを物語る。
<中略>


 中国とロシアの関係は、冷戦終結以降、緊密さを増してきている。両国とも、異なる理由で米国の「ヘゲモニー(覇権)」に憤慨しており、より多極的な世界秩序を望む気持ちを共有している。
 
衰退する大国のロシアは、少なくとも失った地位の一部を取り戻す方法を探している。
 一方、
台頭する大国の中国は、中国を抑制しようとする米国の試みと見なすものに対して反感
を抱いている。
 ともに独裁的な政権を持つ国連安全保障理事会の常任理事国として、ロシアと中国は西側のリベラルな干渉主義をけなすことに共通の利害を見いだしている。
 両国は2008年、ロシアが演出したグルジアでの戦争のわずか1カ月前に、長年にわたる国境紛争をすべて解決した。ロシアはこの取り決めを、北大西洋条約機構(NATO)のさらなる拡大に対する抑止力として、より多くの軍事力をロシア西部に集中させる手段と見なしていた。

■中国の技術盗用で緊張も
 だが、時折緊張はあった。ロシアは1990年代、中国の軍事力近代化を支援するうえで重要な役割を果たした。ロシアはおかげで、さもなくば国内での受注不足から衰退していただろう軍需産業の基盤を守ることができた。
 だが、2000年代半ば以降、
自国の軍事技術を中国に盗まれ、その結果、兵器市場で中国がライバルとして台頭したことに苛立ち、ロシアの対中武器売却は減速
している。
 
ロシアは、中国の産業マシンに対する天然資源のサプライヤーに過ぎない存在――最近まで中国を後進国と見なしていた国にとっては屈辱的な立場――になることも警戒
している。
 ロシアは、自国経済を成長させ続けるのに必要なだけのガスをすべて欧州に販売できる間は、中国との取引を保留することができた。そうした取引の1つが、2006年に発表され、両国が価格を巡って口論になったためにその後密かに取り下げられた、シベリアから中国へ至る2本のガスパイプラインの計画だ。

■アジアへの「ピボット」を余儀なくされるロシア
 ところが、そうした状況が一変した。ロシアメディアの言葉を借りれば、ウクライナ危機によって、
ロシアは代替的な市場と資金源を見つけることで西側の制裁の影響を弱めることを目指し、自国経済をアジアに「ピボット」することを余儀なくされている

 
中国にとっては、これは有利な価格でロシアの天然資源への大きなアクセスを手に入れる絶好のチャンス
だ。
 また、西側の競争企業に取られていたかもしれない大型インフラ契約へのアクセスを確保し、中国企業の利益になるプロジェクトに資金を提供する千載一遇のチャンスでもある。
 理論的には、ロシアのウクライナ侵略とクリミア占領は、中国が最も一貫して保持している2つの外交政策の教義に反している。すなわち、他国への不干渉とあらゆる種類の分離主義の否定だ。だが、中国はロシアを非難する国連安保理決議で投票を棄権する一方、中国のメディアはロシアに強い支持を与えた。
 
中国は、米国が宣言したアジアへの「リバランス」から米国の気をそらせるかもしれない欧州での新たな冷戦を密かに歓迎
した。

■有利に交渉進める中国
 中ロの新たな緊密さを示す特筆すべき証拠は、昨年5月に調印された4000億ドルのガス契約だ。この契約では、ロシアが2018年から30年間、中国に年間38BCM (10億立方メートル)のガスを供給することになっている。
 中国の強い主張に応じ、ガスは東シベリアの新たなガス田から、まだ建設されていないパイプラインを通って供給される――他国へ流用されないことを確実にするための手段だ。
 他の契約も後に続いた。最大のものは11月に調印された仮契約で、この契約では、ロシアがさらに年間30BCMのガスを提案された西シベリアからのパイプラインを通じて売る。どの場合でも、恐らく
中国は、価格面で自国に有利に交渉できただろう。
<中略>


■行く手に待ち受ける問題
 だが、前途に控える問題が認識できる。1つは、
両国がかつてロシアの裏庭だった中央アジアで影響力を競い合うことだ(習氏はモスクワに向かう前に中央アジアに立ち寄った)。
 
プーチン氏は、中央アジアで拡大する中国の経済力に対抗する意図もあって、ユーラシア経済連合(EEU)を確立したいと思っている。中国は、その中央アジアを通ってシルクロード経済ベルト
と呼ぶものを発展させたいと思っている。
 また、中国は、この地域で安全保障関係を強化するために、ロシアや中央アジア諸国もメンバーになっている上海協力機構(SCO)を利用している。SCOのパートナー諸国としばしばテロ対策訓練を実施している。

 もう1つの困難は、ともに
中国のライバルであるインドやベトナムといった国々とロシアの軍事、エネルギー面でのつながり
だ。

 だが、
最大の問題は、中国との関係でますます従属的な役割へと追い込まれることに対するロシアの苛立ちかもしれない。ロシアにとっては、中国とのパートナーシップは痛切に必要なものになった。中国にとっては、あれば便利だが、決して不可欠なものではないのだ。

 ロシアの窮状に付け込んで、有利な国交を展開し、上に立つ中国。悔しい苛立ちがあっても、従わざるを得ないプーチン。面従腹背で当面はひたすら耐えるしかないのが現状ですね。
 
 一方の安倍首相。北方領土問題の解決と平和条約の締結、対中牽制といった必要性からプーチン大統領との関係構築に努めていましたが、ウクライナ侵攻の力による現状変更を進めるプーチン大統領には距離を置かざるを得なくなりました。
 しかし、大成功とされたオバマ大統領との会談の中で、課題解決に向け、プーチン大統領との接近を進めることを、オバマ大統領に告げ、オバマ大統領からは、慎重な検討を要請されたのだそうですね。
 
露に圧力 米「結束弱める」 : 読売プレミアム
 
首相 北方領「前進」狙う 露大統領来日協議 ウクライナ情勢 G7協調は維持 (5/16 読売朝刊)

 
安倍首相がオバマ米大統領に日露間の対話を続ける意向を伝えたのは、北方領土問題という日本固有の課題を抱えているためだ。ウクライナ情勢を巡って対露制裁を科す先進7か国(G7)の協調を踏まえつつ日露関係を進めるには、難しいバランス感覚が問われる。
 首相がオバマ氏に伝えた「岸田外相の訪露とプーチン露大統領の年内来日」は、昨年11月の日露首脳会談で合意済みだ。しかし、米側は日本側に、対露関係で慎重な対応を取るよう求めてきた。モスクワで18日行われる日露外務次官級協議にも懸念を伝えてきたという。
 それでも首相が日露外交を継続するのは、プーチン氏との信頼関係をテコに領土交渉を進める狙いがある。首相はオバマ氏に「戦後70年がたつが、ロシアとの関係は清算できていない。ロシアと平和条約が交わされていないことが不安定材料になっている」と指摘した。同盟強化が最大の眼目だった今回の日米首脳会談で、あえて対露関係が日本の国益に直結することを強調してみせた。
 
首相は、制裁をきっかけに米欧と対立するロシアが、中国との連携に傾くことを懸念
している。中露接近を放置すれば、日本の安全保障にとって懸念材料となる。首相は自衛隊機が中国、ロシア機の領空侵犯に備えて緊急発進(スクランブル)した回数が増えている現状をオバマ氏に説明した。
 日本が抱える未解決の大きな外交案件としては、北朝鮮による日本人拉致問題と北方領土問題がある。拉致問題で進展が見られない中で、対露関係はより重要性を増している。
 首相は今後、米欧と意思疎通を図りながら、念入りに対露外交を展開する構えだ。G7の協調を示すため、6月7~8日にドイツで開かれる
G7首脳会議前にウクライナを訪れ、ポロシェンコ大統領と会談することを検討している。8月の中央アジア・カザフスタン訪問に合わせ、現地でプーチン氏との会談も模索している。

 安倍首相はかつて、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官(当時)が来日し、靖国参拝を牽制したのを無視して参拝を実施し、今回訪米して米国に与えた歴史修正主義者のレッテル剥がしの作業をしなくてはならなくなりました。
 勿論、米国に箸の上げ下げまで支持されたり、それに従う必要はないのですが、TPOのわきまえは必要です。
 プーチン大統領の中国接近は、孤立したロシアの一時しのぎで、屈辱に耐えながら口惜しさを我慢しての接近です。
 未だ、その屈辱に耐えてでも振り上げた拳を下ろす気はない様です。しかし、外交駆け引きでは屈指のプーチン大統領。どこかでは拳を下ろすはずです。下ろさないでこのままだと、最も警戒している中国の属国になってしまうか、経済破綻してしまいます。

 メルケル氏が懐柔に訪露しても、拳を下ろす気配は未だありませんでした。しかし、遅からず、屈辱に耐えきれなくなるか、中国の属国化の危機が増すか、国家経済危機が増すかしますので、拳を下ろす時が来ます。
 日米同盟の新局面へのスタートをする今ではなく、プーチン大統領が拳を下ろす時を待って動いた方が、大きな戦果を得られます。
 その時に動くことは伝えて、今は機が熟すのを待つべきだと考えますがいかがでしょう。





  この鳥は、ツグミ


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ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)




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