遊爺雑記帳

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南シナ海問題 ASEAN諸国からようやく発言が出た

2015-11-24 02:11:37 | EEZ 全般
 ASEAN国防相会議で始まり、ASEAN首脳会議、ASEANプラス3首脳会議、APEC、EASと続いた一連の会議が終わりました。
 主要テーマは、南シナ海の中国の覇権拡大の暴挙と、ASEAN経済共同体(AEC)、東アジア地域包括的経済連携(RSEP)、TPPといった、東アジア関連の経済共同体の進展でした。AECは発足署名式が行われ、大筋合意に達したTPPについては、インドネシア、タイ、フィリピンなどが加入への意欲を示しました。
 懸念されたのは、南シナ海の安全保障の問題ですが、ASEAN諸国は、中国の圧力により発言を控え、声明に盛り込むことが出来ない状況が続いていました。
 しかし、日米の努力が実り、最後のEASでようやく各国の重い口が開き、ロシア、ラオス、カンボジア以外の国々が、「航行の自由」確保の観点から、批判的な意見を述べたのだそうです。

 
東アジア会議 南シナ海で対中圧力を強めよ : 社説 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
 
米「南シナ海」関与強調 オバマ氏歴訪 関係国支援を約束 (11/23 読売朝刊)

 【クアラルンプール=大木聖馬】オバマ米大統領は22日、フィリピンとマレーシア訪問の日程を終えた。中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて人工島を造成している問題を受け、オバマ氏は今後も地域の安全保障に積極的に関与していく姿勢を強調した。米軍は10月に行った人工島周辺の巡視を今後も続ける方針
だ。

 「米国は、フィリピンやこの地域の他のパートナーの海洋能力への支援を強化していく」。オバマ氏は22日、東アジア首脳会議(EAS)が終了した後の記者会見で、こう強調した。
 オバマ氏はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席で訪れたマニラで17日、フィリピン軍のフリゲート艦を視察し、新たな巡視船などの提供をその場で約束した。中国と南シナ海で領有権を争っているベトナム、マレーシアなどにも海洋安全保障の能力構築支援を表明した。
 オバマ政権が打ち出すアジア重視のリバランス(再均衡)政策に対しては、東南アジア諸国連合(ASEAN)側から「
米国は後ろに下がり、アジアの国々を前面に立たせているだけ。言葉ばかりの政策だ」(外交筋)などと不信感も広がっていた。オバマ氏は一連の会談で、こうした不安を払拭しようと努めた

 南シナ海に中国が造成した人工島の問題で、オバマ政権は今後も、人工島の12カイリ内で米艦船による巡視活動を定期的に行い、中国をけん制していく構えだ。米太平洋軍の
ハリー・ハリス司令官は21日にカナダで行った講演で、巡視を「再び実施する」と明言
し、「米国は国際法が認めるあらゆる場所で飛行し、航行し、活動する」と強調した。
 米国は関係国との連携も重視している。
オバマ氏は記者会見で、日本、オーストラリア、フィリピンの国名を挙げ、「同盟国が地域の安全保障の基礎だと再確認した」と指摘した。ASEAN10か国首脳を来年、米国に招待した
ことも明らかにした。

「中立国」対中姿勢変化 ASEAN「国際法尊重を」声も
 【クアラルンプール=向井ゆう子】クアラルンプールで22日まで行われた一連の東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合では、
これまで中国に配慮して中立的な立場をとってきたASEANの国からも南シナ海問題をめぐる発言が相次いだ

 東アジア首脳会議(EAS)の前に行われた21日のASEAN首脳会議で、
インドネシアのジョコ大統領「国際法は尊重されなくてはならない」と強調、マレーシアのナジブ首相も同日の開幕式で「すべての当事者に自制を求める」と述べた。ASEAN最大の人口を抱えるインドネシアは「中立」を外交の基本政策としてきた。経済成長を重視するマレーシアも、最大の貿易相手である中国に配慮してきたが、両国の対中姿勢に変化
が出ている。
 インドネシアは、南シナ海の自国領ナトゥナ諸島の排他的経済水域(EEZ)が、中国の「九段線」に含まれており、中国による資源開発を警戒しているという。マレーシアも自国のEEZ内のジェームズ礁で中国が「主権」を宣誓し、国防関係者は「脅威」と捉えている。
 
中国は、21日のASEAN首脳との会議でインフラ整備100億ドルの追加融資を表明した。経済支援をテコにASEAN切り崩しを狙うが、ASEAN外交筋は「内心では強権的な中国に不満が強い」と明かす日本は円借款の要件緩和を打ち出し、中国への対抗姿勢
を見せている。
 ASEANのレ・ルオン・ミン事務局長は22日、読売新聞などの取材に、南シナ海における行動に法的拘束力のある行動規範について「中国も含む形で、早期に結論が出ることを期待している」と述べた。

 習近平が訪米し、オバマ大統領が会談の話し合いで南シナ海の暴挙を解決できると軍の行動提言を押さえていた期待に反し、中国の領土・領海内の行為だと強硬に話し合いを拒絶しました。これで、オバマ大統領は、軍の行動を許可したという経緯は、諸兄がご承知の通りです。
 ASEAN国防省会議から始まった一連の会議では、米国は一貫して中国の覇権拡大を阻止する強い姿勢を貫き、中国とのつばぜり合いを展開した様子ですね。
 日本は、安倍首相の訪米や、安保法制の成立に伴う、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の進展、TPPでの連携強化等を背景に、米国と共同戦線を組み、対中包囲作戦を展開しました。
 ASEAN諸国は、日米と中国との間で、中立姿勢を保ち国益を追求すると予測していましたが、当初は中国の圧力に影響され、フィリピン以外は南シナ海問題には目をつぶる姿勢が目立ち、日米が浮き上がりかねない情勢に見えました。
 しかし、米国の本気度、日米の絆の強化度、日米の各国への支援強化が伝わって、本心が言えるようになったのでしょう、本音=国際常識の発言が、最後の最後、EASで出てきました。
 
 札束で口封じを狙った中国の作戦。当初は成功するかに見えましたが、国際常識の意見が多数派を占め、一連の会議が締めくくられました。
 安倍首相、オバマ大統領の奮闘に、感謝です。
 勿論、このことで中国が急激な方針転換を示すとは思えませんが、各国が求める「航行の自由」については、従わざるを得なくなりました。米国が質にとって逆襲した習近平の発言の「軍事利用はしない」の念押しも、大きな抑止力になるはずです。(防戦に回らざるを得なかった李克強首相も、習近平の訪米時の発言が圧力となったとあれば、帰国しても責任を追及されることもないでしょう。)

 ロシア、カンボジア、ラオス以外の国々による、南シナ海の中国の暴挙批難の国際世論が表面化されました。
 TPPへの関心も高まっている様子です。
 中国と、自由圏国の、日米、オーストラリアなどとの経済を含めた綱引きはこれからも続きますが、中国の札束外交に傾斜を強めざるを得ない状況のASEAN諸国に本音を公言出来る状態に戻した日米の努力は、大きく評価される一連の会議でした。

 ご参考までに、日米の努力の一端がうかがえる記事です。
 
東アジア首脳会議 南シナ海中国包囲網 (11/23 読売朝刊)

 【クアラルンプール=大木聖馬、池田慶太】22日にクアラルンプールで開かれた東アジア首脳会議(EAS)では、中国による南シナ海での人工島造成について、多くの国が「航行の自由」確保の観点から、批判的な意見を述べた。中国は防戦を迫られたが、最後まで人工島を「平和利用」するという自国の主張を曲げなかった。

李首相「平和利用」主張
 「緊張を高める行為は慎み、関係国は時勢しなければならない」。首脳が順々に発言した会議では、
人口島造成に懸念を示してきた米国や日本以外からも、中国に批判的な声が上がった。外交筋によると、南シナ海問題に触れなかったのは、ロシアのメドベージェフ首相、ラオスやカンボジアなど中国と関係が深い国の首脳だけだったという。
 これに対し、中国の李克強首相は、南シナ海で航行・飛行の自由の問題はこれまでも存在しない」とする従来の主張を繰り返した。人工島での施設建設は「航行の自由を守るのに役立ち、海上災害に対応するものだ」などと反論した。
 これに加え、
李氏は、南シナ海間題で「5項口の提案」という独自の主張を展開した。提案は「域外国は地域情勢を緊張させる行動をとらない」などと求めたが、中国の提案に賛同する国はなかったという。
 安倍首相は「海洋における航行、上空飛行の自由は基本的権利として擁護されなければならない」などとして、紛争の解決に力を用いないよう求めることなどを柱とする「海洋における法の支配3原則」の重要性を訴えた。
 首相同行筋によると、会議は、発言したい首脳が目の前のボタンを押す仕組みで行われた。
 
安倍首相は、各国が南シナ海問題に触れないことも想定し、会議序盤に発言を求める構えだったが、各国が相次いで発言したため、機会を温存した。結局、議長以外で最後に発言し、中国への批判的な意見をとりまとめる役割を担った。李氏は早めにボタンを押したが、指名されたのは安倍首相の直前で、中国に有利な形に会議の流れをつくることはできなかったという。
 交渉筋によると、
EASの議長声明をめぐる事前調整で、米中両国は南シナ海に関する文言をめぐって水面下で激しく対立した。
 米国は、人工島の軍事施設化をけん制することを狙って、議長声明に「南シナ海の非軍事化」を盛り込むように主張した。中国の習近平国家主席が9月の訪米で、人工島について「軍事化を進める意図はない」と発言したことを逆手に取った。中国は「非軍事化」の言葉に激しく抵抗し、議長声明をめぐる調整は22日夜も続いた。



 # 冒頭の画像は、第10回東アジア首脳会議(EAS)
  第10回東アジア首脳会議(EAS) | 外務省




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