中国の高度経済成長が、低成長時代に変化したことは、3月の全国人民代表大会で、李克強首相が「新常態宣言」をし、自ら認めている通りです。それは、分母が巨大化してきた経済がいつまでも同じ成長率を保てないと言うしごく当然な話と、経済活動の実態が飽和点に達してきたという、これもいつかは先進諸国が辿ったと同じ道を辿るという、経済の法則と言ってよい話です。
つまり、高度成長を続けてきた中国経済が、転換点にたどり着いたということですね。
前回「深まるチャイナリスク懸念」として、高度成長によって隠されていたリスクが顕在化してきているとして、チベットの民族差別と、今、遊爺が最も興味を持っている財政状況の一端について書かせていただきましたが、今回、引き続き財政状況についてと、国内の権力闘争と習近平への海外の評価について触れさせていただきます。
中国の財政状況の記事が増えてきたのは、そこに着目する人々が増えてきているということですね。
先ずは財政について、日経の滝田洋一編集委員の記事。
同様の着目で、武者リサーチの武者陵司氏の記事
中国の財政は火の車で、外貨準備額の減少にその内情が顕れている。国内経済への支えの投資、海外での札束外交への無尽蔵に見える資金は、限界に達してきている。
なので、AIIB等で他国からの投資資金調達を試みているということになるのですね。
【続】深まるチャイナリスク懸念 (2)へ続く
# 冒頭の画像は、中国人民銀行本店
つまり、高度成長を続けてきた中国経済が、転換点にたどり着いたということですね。
前回「深まるチャイナリスク懸念」として、高度成長によって隠されていたリスクが顕在化してきているとして、チベットの民族差別と、今、遊爺が最も興味を持っている財政状況の一端について書かせていただきましたが、今回、引き続き財政状況についてと、国内の権力闘争と習近平への海外の評価について触れさせていただきます。
中国の財政状況の記事が増えてきたのは、そこに着目する人々が増えてきているということですね。
先ずは財政について、日経の滝田洋一編集委員の記事。
中国3.6兆ドルの外準マネーは張り子の虎か 編集委員 滝田洋一 :日本経済新聞
中国当局が米国債を売りに出ている。そんな話が世界の金融市場を駆け巡っている。中国の資金繰りはきついのだろうか。案の定、中国人民銀行は人民元の先物売りの規制に乗り出した。
■資本流出に音を上げた人民銀
中国人民銀行は8月25日、利下げと預金準備率の引き下げに踏み切った。その直後に、「人民日報(電子版)」が載せた、金融緩和の理由のひとつが興味深い。
「外貨買い取り専用資金の減少、近ごろの元安と資本流出という背景の下、預金準備率の引き下げは流動性供給につながり、市場の金利上昇圧力を和らげるのに役立つ」
8月11日の人民元の切り下げを機に、資本流出が膨らみ、国内金融市場の資金繰りがきつくなっている。かくて9月1日には人民銀が資本流出の加速を防止すべく、銀行に対し元売りの規制を通知した。
外貨買い取り専用資金が減少したのは、資金の国外流出に伴うドルなどの外貨需要に、当局として応える必要があったからだ。そのためには、外貨準備として保有する米国債を売却せざるを得ない。8月28日の米ブルームバーグの記事は、「過去2週間の売却額は少なくとも1060億ドル相当」との市場推計を紹介する。
ここまでは自然な成り行きである。ところが、奇妙なことに中国が保有する米国債の残高は、これまでのところ余り減っておらず、日本を上回りナンバーワンの座を維持している。
謎を解くカギは、ベルギーやスイスが保有する米国債残高の減少にある。市場関係者はそんな推理を働かせる。証券決済機関であるユーロクリアなどに預けていた米国債を、中国が処分している、というわけだ。
中国の外貨準備は昨年6月末時点で3.99兆ドルと4兆ドルに迫っていたが、その後は徐々に減少し今年7月末時点では3.65兆ドルに。その間に外貨準備は3400億ドル減った。外貨準備の残高を国威の発揚と考える中国当局にとって、その減少は好ましい話ではない。少なくとも、米国債の保有額を維持してみせることで、メンツを保ちたいのだろう。
一理ある見立てだが、中国の外貨準備は依然として断トツである。それなのに、資金繰りのきつさが取り沙汰されるのは、なぜなのだろうか。この問いの答えを得るには、外貨準備の中身を知るほかない。
中国当局は開示していないものの、ヒントはある。米財務省統計によれば、中国自身が保有する米国債の残高は、外貨準備の残高がピークだった昨年6月末時点でも1.82兆ドルと、外準全体の約45%にとどまっていたということだ。ユーロクリアでの保管分などを合わせれば、もう少し多いだろうが、それでも米国債は外貨準備全体の半分程度だろう。
■拡大した開発投資に焦げ付き
ユーロ債や日本国債、日米欧の株式も一定部分はあるにせよ、「外準のうち、運用先の見当がつかない分が、少なく見積もっても1兆ドル程度はある」と、ベテランの市場エコノミストはいう。
もうひとつ不思議なのは、7月末の外準残高が3.65兆ドルなのに、人民銀行が保有する外貨資産は27.4兆元つまり4.40兆ドルあるということだ。外準を上回るおカネがあるように見えるが、実は4.40兆ドルと3.65兆ドルの差額は「過去の元高に伴う為替差損分」だろう。
市場関係者が気をもむのは、ソブリン・ウエルス・ファンドなどに、使途不明の外準マネーが流れていることだ。直近ではシルクロード基金(SRF)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の元手ともなっている。
ここ10年ばかり、中国はアフリカや中南米で資源開発投資のアクセルを踏んできた。外貨準備がこうした開発投資に振り向けられているとしたら、どうだろう。
ただでさえ開発・採掘コストの高いこれらの案件は、最近の国際商品相場の崩落で火を噴いているはずだ。投入した資金も、相当額が焦げ付いていると思われる。こうみると、中国の外貨準備や人民銀行の外貨資産も、水増しされた張り子の虎ということになる。
欧州の政府債務危機の発端は、ギリシャの財政赤字の粉飾が発覚したことだった。中国の外貨準備の中身をめぐる疑惑が、新たな金融危機の火種になりはすまいか。中国による米国債売りの情報に、市場が敏感になるのもむべなるかな。
中国当局が米国債を売りに出ている。そんな話が世界の金融市場を駆け巡っている。中国の資金繰りはきついのだろうか。案の定、中国人民銀行は人民元の先物売りの規制に乗り出した。
■資本流出に音を上げた人民銀
中国人民銀行は8月25日、利下げと預金準備率の引き下げに踏み切った。その直後に、「人民日報(電子版)」が載せた、金融緩和の理由のひとつが興味深い。
「外貨買い取り専用資金の減少、近ごろの元安と資本流出という背景の下、預金準備率の引き下げは流動性供給につながり、市場の金利上昇圧力を和らげるのに役立つ」
8月11日の人民元の切り下げを機に、資本流出が膨らみ、国内金融市場の資金繰りがきつくなっている。かくて9月1日には人民銀が資本流出の加速を防止すべく、銀行に対し元売りの規制を通知した。
外貨買い取り専用資金が減少したのは、資金の国外流出に伴うドルなどの外貨需要に、当局として応える必要があったからだ。そのためには、外貨準備として保有する米国債を売却せざるを得ない。8月28日の米ブルームバーグの記事は、「過去2週間の売却額は少なくとも1060億ドル相当」との市場推計を紹介する。
ここまでは自然な成り行きである。ところが、奇妙なことに中国が保有する米国債の残高は、これまでのところ余り減っておらず、日本を上回りナンバーワンの座を維持している。
謎を解くカギは、ベルギーやスイスが保有する米国債残高の減少にある。市場関係者はそんな推理を働かせる。証券決済機関であるユーロクリアなどに預けていた米国債を、中国が処分している、というわけだ。
中国の外貨準備は昨年6月末時点で3.99兆ドルと4兆ドルに迫っていたが、その後は徐々に減少し今年7月末時点では3.65兆ドルに。その間に外貨準備は3400億ドル減った。外貨準備の残高を国威の発揚と考える中国当局にとって、その減少は好ましい話ではない。少なくとも、米国債の保有額を維持してみせることで、メンツを保ちたいのだろう。
一理ある見立てだが、中国の外貨準備は依然として断トツである。それなのに、資金繰りのきつさが取り沙汰されるのは、なぜなのだろうか。この問いの答えを得るには、外貨準備の中身を知るほかない。
中国当局は開示していないものの、ヒントはある。米財務省統計によれば、中国自身が保有する米国債の残高は、外貨準備の残高がピークだった昨年6月末時点でも1.82兆ドルと、外準全体の約45%にとどまっていたということだ。ユーロクリアでの保管分などを合わせれば、もう少し多いだろうが、それでも米国債は外貨準備全体の半分程度だろう。
■拡大した開発投資に焦げ付き
ユーロ債や日本国債、日米欧の株式も一定部分はあるにせよ、「外準のうち、運用先の見当がつかない分が、少なく見積もっても1兆ドル程度はある」と、ベテランの市場エコノミストはいう。
もうひとつ不思議なのは、7月末の外準残高が3.65兆ドルなのに、人民銀行が保有する外貨資産は27.4兆元つまり4.40兆ドルあるということだ。外準を上回るおカネがあるように見えるが、実は4.40兆ドルと3.65兆ドルの差額は「過去の元高に伴う為替差損分」だろう。
市場関係者が気をもむのは、ソブリン・ウエルス・ファンドなどに、使途不明の外準マネーが流れていることだ。直近ではシルクロード基金(SRF)やアジアインフラ投資銀行(AIIB)の元手ともなっている。
ここ10年ばかり、中国はアフリカや中南米で資源開発投資のアクセルを踏んできた。外貨準備がこうした開発投資に振り向けられているとしたら、どうだろう。
ただでさえ開発・採掘コストの高いこれらの案件は、最近の国際商品相場の崩落で火を噴いているはずだ。投入した資金も、相当額が焦げ付いていると思われる。こうみると、中国の外貨準備や人民銀行の外貨資産も、水増しされた張り子の虎ということになる。
欧州の政府債務危機の発端は、ギリシャの財政赤字の粉飾が発覚したことだった。中国の外貨準備の中身をめぐる疑惑が、新たな金融危機の火種になりはすまいか。中国による米国債売りの情報に、市場が敏感になるのもむべなるかな。
同様の着目で、武者リサーチの武者陵司氏の記事
外貨逼迫する中国、脆弱な対外金融力、再元安不可避に | JBpress(日本ビジネスプレス)
■(1) 世界市場のアキレス腱、中国
バンピーな世界株式
世界経済と金融市場のアキレス腱が中国であることがはっきりしてきた。国際金融市場を不安にしている資源国やアセアン、アジアNIES諸国の通貨下落、経済悪化はひとえに中国経済の急減速を原因としている。
<中略>
■(2) 資本逃避激増を示唆する外貨準備と対外純資産の減少
中国外貨逼迫の進行、外貨準備、対外純資産ともに急減
中国のアキレス腱はどこにあるかと言えば、それは対外資本収支であろう。中国の絶大な競争力に基づく貿易黒字・経常黒字が中国経済を牽引したのは2009年までであり、それ以降中国経済成長を牽引したのはもっぱら投資であったが、その投資を可能にしたのは巨額の対外純資本流入であった。この資本流入に大いなる変調が起きている、ここに中国のアキレス腱があると言える。
対外純資本流入の変調は、外貨準備高の減少に現われている。一貫して増加してきた中国の外貨準備高が、2014年6月の3.99兆ドルをピークに、12月末3.84兆ドル、2015年3月末3.73兆ドル、7月末では3.65兆ドルと大きく減少している。
<中略>
地下での資金逃避が急増している可能性
外貨準備高と同様に対外純資産残高も2013年末の1兆9960億ドルをピークに2015年3月末には1兆4038億ドルと5922億ドルの激減していることが判明した。本来、対外純資産残高は経常収支差額分だけ増加する計算であるはずなのに逆に減っている。この5四半期(2014年1Qから2015年1Q)合計の経常黒字は2952億ドルなので、純資産減少額と合わせて合計8874億ドルの対外資産価値が消失したことになる。為替換算損などがあり得るとしても、この差額は極めて大きい。
その原因として、?簿外の資金流出(=資本逃避)が起こっている、?帳簿上の資金流入が架空である、?対外資産において巨額の損失が発生した、?統計そのものが信用できない、の4つの可能性があるが、消失した金額の巨額さを説明できるのは(統計を信頼するとすれば)、?の資本逃避だけであろう。それは深刻な通貨信認に対する懸念と言える。
■(3) 逼迫する中国の外貨事情、資本逃避、野放図の対外投資と流入資金の質の劣化
能力を超える対外投資
推測される資本逃避に加えて中国の外貨事情逼迫に拍車をかけているのが、?野放図の対外直接投資・融資と、?国際金融システム経由の資金流出、である。
中国企業の旺盛な海外投資と企業買収、「一帯一路」構想の下での巨額の対外投資、対外融資は止まらない。中国の直接投資残高は2013年末6605億ドルから2015年3月末9858億ドルと、15カ月で5割の急増となり、中国の対外プレゼンスを大きく高めている。また中国による対外ローンも同期間に3089億ドルから4319億ドルへと4割増となっている。
対中与信に懸念強まる
しかし他方中国への国際金融システムを経由した資金流入は大きく減少に転じている。中国に対するローン残高は2014年6月末6775億ドルをピークに2015年3月には4581億ドルへと急減している。海外金融機関がバブルの崩壊や企業収益悪化などの懸念を強め、対中国与信に警戒を強め新規融資を減らし既存ローンの回収を強化しているとも考えられる。
<中略>
■(4) 中国外貨事情の特徴、巨額の対外資金依存体質
実は借金に依存している中国の外貨準備
なぜ突如中国の対外資金不安が高まったのだろうか。それは「中国は世界最大の貿易黒字国でありその結果外貨準備高は世界最大の4兆ドル弱、第2位の日本の3倍という巨額の規模となり、中国は世界最強の金融力を持っている」というコンセンサスの誤りが、露呈したからである。
新たに発表されたIMF準拠の国際収支統計、対外資産統計により実態が白日の下にさらされた。そもそも中国の成長に貿易が大きく寄与したのは2007年までで、それ以降はもっぱら投資が成長をけん引してきたが、その投資資金は巨額の外貨流入、対外借り入れによって賄われた。その対外借入資金の増加が外貨準備の急増をもたらし、それを裏づけとしてなされたマネーの供給が空前の投資を可能にしたと言える。対外金融力の象徴とされている外貨準備高も実は過半が他国資本に依存したものであるとすれば、中国の対外金融力は相当に脆弱であると言わねばなるまい。
<中略>
このように見てくると、中国の外貨準備高は対外金融力や外貨介入余力を示すものとは到底言えないことが分かる。真の金融力は対外純資産額なのであり、2015年3月末の対外純資産が日本は2.9兆ドル(349兆円)であるのに対して中国が1.4兆ドルと半分しかないということは、中国の対外金融余力は日本の半分に過ぎないというのが実態なのである。
日本の外貨準備はひも付きのない自由な資金だが、中国の外貨準備の過半は多大なる債務を負っている資金、つまり他国資本なのであり介入には投入できない。故に中国に投融資している華僑系の膨大な資本が回収に転じ始めたら、上げ底の過大表示されている外貨準備高では到底足りなくなるという事態もあり得るのである。
■(1) 世界市場のアキレス腱、中国
バンピーな世界株式
世界経済と金融市場のアキレス腱が中国であることがはっきりしてきた。国際金融市場を不安にしている資源国やアセアン、アジアNIES諸国の通貨下落、経済悪化はひとえに中国経済の急減速を原因としている。
<中略>
■(2) 資本逃避激増を示唆する外貨準備と対外純資産の減少
中国外貨逼迫の進行、外貨準備、対外純資産ともに急減
中国のアキレス腱はどこにあるかと言えば、それは対外資本収支であろう。中国の絶大な競争力に基づく貿易黒字・経常黒字が中国経済を牽引したのは2009年までであり、それ以降中国経済成長を牽引したのはもっぱら投資であったが、その投資を可能にしたのは巨額の対外純資本流入であった。この資本流入に大いなる変調が起きている、ここに中国のアキレス腱があると言える。
対外純資本流入の変調は、外貨準備高の減少に現われている。一貫して増加してきた中国の外貨準備高が、2014年6月の3.99兆ドルをピークに、12月末3.84兆ドル、2015年3月末3.73兆ドル、7月末では3.65兆ドルと大きく減少している。
<中略>
地下での資金逃避が急増している可能性
外貨準備高と同様に対外純資産残高も2013年末の1兆9960億ドルをピークに2015年3月末には1兆4038億ドルと5922億ドルの激減していることが判明した。本来、対外純資産残高は経常収支差額分だけ増加する計算であるはずなのに逆に減っている。この5四半期(2014年1Qから2015年1Q)合計の経常黒字は2952億ドルなので、純資産減少額と合わせて合計8874億ドルの対外資産価値が消失したことになる。為替換算損などがあり得るとしても、この差額は極めて大きい。
その原因として、?簿外の資金流出(=資本逃避)が起こっている、?帳簿上の資金流入が架空である、?対外資産において巨額の損失が発生した、?統計そのものが信用できない、の4つの可能性があるが、消失した金額の巨額さを説明できるのは(統計を信頼するとすれば)、?の資本逃避だけであろう。それは深刻な通貨信認に対する懸念と言える。
■(3) 逼迫する中国の外貨事情、資本逃避、野放図の対外投資と流入資金の質の劣化
能力を超える対外投資
推測される資本逃避に加えて中国の外貨事情逼迫に拍車をかけているのが、?野放図の対外直接投資・融資と、?国際金融システム経由の資金流出、である。
中国企業の旺盛な海外投資と企業買収、「一帯一路」構想の下での巨額の対外投資、対外融資は止まらない。中国の直接投資残高は2013年末6605億ドルから2015年3月末9858億ドルと、15カ月で5割の急増となり、中国の対外プレゼンスを大きく高めている。また中国による対外ローンも同期間に3089億ドルから4319億ドルへと4割増となっている。
対中与信に懸念強まる
しかし他方中国への国際金融システムを経由した資金流入は大きく減少に転じている。中国に対するローン残高は2014年6月末6775億ドルをピークに2015年3月には4581億ドルへと急減している。海外金融機関がバブルの崩壊や企業収益悪化などの懸念を強め、対中国与信に警戒を強め新規融資を減らし既存ローンの回収を強化しているとも考えられる。
<中略>
■(4) 中国外貨事情の特徴、巨額の対外資金依存体質
実は借金に依存している中国の外貨準備
なぜ突如中国の対外資金不安が高まったのだろうか。それは「中国は世界最大の貿易黒字国でありその結果外貨準備高は世界最大の4兆ドル弱、第2位の日本の3倍という巨額の規模となり、中国は世界最強の金融力を持っている」というコンセンサスの誤りが、露呈したからである。
新たに発表されたIMF準拠の国際収支統計、対外資産統計により実態が白日の下にさらされた。そもそも中国の成長に貿易が大きく寄与したのは2007年までで、それ以降はもっぱら投資が成長をけん引してきたが、その投資資金は巨額の外貨流入、対外借り入れによって賄われた。その対外借入資金の増加が外貨準備の急増をもたらし、それを裏づけとしてなされたマネーの供給が空前の投資を可能にしたと言える。対外金融力の象徴とされている外貨準備高も実は過半が他国資本に依存したものであるとすれば、中国の対外金融力は相当に脆弱であると言わねばなるまい。
<中略>
このように見てくると、中国の外貨準備高は対外金融力や外貨介入余力を示すものとは到底言えないことが分かる。真の金融力は対外純資産額なのであり、2015年3月末の対外純資産が日本は2.9兆ドル(349兆円)であるのに対して中国が1.4兆ドルと半分しかないということは、中国の対外金融余力は日本の半分に過ぎないというのが実態なのである。
日本の外貨準備はひも付きのない自由な資金だが、中国の外貨準備の過半は多大なる債務を負っている資金、つまり他国資本なのであり介入には投入できない。故に中国に投融資している華僑系の膨大な資本が回収に転じ始めたら、上げ底の過大表示されている外貨準備高では到底足りなくなるという事態もあり得るのである。
中国の財政は火の車で、外貨準備額の減少にその内情が顕れている。国内経済への支えの投資、海外での札束外交への無尽蔵に見える資金は、限界に達してきている。
なので、AIIB等で他国からの投資資金調達を試みているということになるのですね。
【続】深まるチャイナリスク懸念 (2)へ続く
# 冒頭の画像は、中国人民銀行本店