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1月22日にモスクワで行われた日露首脳会談。今の両国の交渉状況の下では、変な「成果」をあげるよりも、成果らしきものが何もなかったことは、却って良かったと評価されているのは、北海道大学の木村名誉教授と共に、対露政策では信頼する新潟県立大学の袴田教授。
その理由は、今の官邸の対露政策は、露ペースに巻き込まれ過ぎていると懸念するからだと
全く同感です。
露ペースとは、これまでは日露(日ソ)で合意していた日ソ共同宣言と東京宣言を基礎にした領土交渉を、昨年11月の首脳会談で、東京宣言を外して、日ソ共同宣言のみを基礎として交渉すると合意したことを指すと、袴田教授。
現在の露指導部は、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」と両国首脳が合意した東京宣言を、対日政策における最大の失敗だと悔やんでいる。換言すれば、日本の長年の平和条約交渉の最大の成果の一つ。
1998年4月、橋本総理と来日したエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致した、川奈合意が最も4島返還の機運が高まった時とされていますが、2005年のプーチン氏来日時に、過去の両国の交渉経緯が否定されました。
「 プーチン来日で惨敗の日本外交 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト
更に、2016年12月のブーチン氏の来日で、日ソ共同宣言のみを基礎にして平和条約交渉を加速させる方向転換がなされ始めたのでした。
そして、日露首脳会談の前の1月14日に行われた、外相会談でのラブロフ氏の、「第二次大戦の結果、南クリール諸島は露領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は期待できない」との強硬発言。
2島返還さえもプーチン政権下では極めて可能性が小さいと判断していると袴田教授。
東京宣言を無視して「日ソ共同宣言を基礎」にする限り、両国が自国に都合よく解釈できる曖昧な合意か「2島マイナスα」、あるいは単に日本の協力を引き出すためだけの日ソ共同宣言を基礎とした「交渉継続の合意」になる可能性が高いと。
袴田教授は、2島にのみ焦点を当てた「成果」は、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すと懸念している。島の数は問題ではない。日本が国際的に、主権侵害問題に真剣に対応する国と見なされるか否かが、国際政治的にはきわめて重要だと。
プーチン政権下で国後、択捉の返還は全く現実性がない事には同意するが、激動する国際情勢の中において20年、50年、100年先もこの問題に関する情勢が変化しないと誰が言い得るのか。国家主権の問題とは、まさにそのように長期の対応を必要とする問題なのである。「せいては事を仕損じる」を忘れるべきでないと。
安倍政権は、残り3年の期限を切っています。プーチン氏はその足元を見透かしての強気の交渉。
大統領選が済めば地位が安定するので領土交渉が進められると期待していた日本側。
しかし、プーチン大統領の支持率は選挙時こそ高かったものの、欧米による経済制裁の効果は進み低迷する経済状況で、支持率は下降し台所が苦しいことに変わりはありません。
不法占拠されている竹島、侵略行為がエスカレートしている尖閣=沖縄を抱える日本。
2島返還すら危うくなっているロシアと平和条約を先行させて締結することで得られる国益は有りません。
袴田教授が指摘される通り、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すことになります。
島の数よりも重要なのは、竹島や尖閣の領土問題をを抱える日本の、国家の主権に対する姿勢。安倍政権の期限ではなく、国家数十年、百年の計が求められます。
# 冒頭の画像は、日露首脳会談に臨んだ両国首脳
「北方領土は合法的にロシアに移った」ラブロフ発言は正当か。ソ連もかつて旧敵国条項の無効を認めていた | ハフポスト
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その理由は、今の官邸の対露政策は、露ペースに巻き込まれ過ぎていると懸念するからだと
全く同感です。
【正論】性急な対露交渉は禍根を残す 新潟県立大学教授・袴田茂樹 - 産経ニュース 2019.1.25
1月22日にモスクワで日露首脳会談が行われ、領土交渉の行方に関心が集まった。深夜にテレビ放送された共同記者発表の様子を見ただけで、拍子抜けするほど成果らしきものは感じられなかった。
安倍晋三首相の発言や表情からは、困難な交渉で確実に成果をあげたという満足感や高揚感、喜びの感情はくみ取れなかった。またプーチン大統領からも、一応首脳会談は行いましたよ、といった雰囲気しか感じなかった。首相や大統領の共同記者発表文や野上浩太郎官房副長官のブリーフを熟読しても、この印象は変わらない。
≪「成果」なしは却って良かった≫
ただ私は率直に言うと、今の両国の交渉状況の下では、変な「成果」をあげるよりも、成果らしきものが何もなかったことは、却(かえ)って良かったとさえ思っている。その理由は、安倍首相の平和条約締結に対する、歴代のどの首相よりも強い熱意には大いに敬意を払うものの、今の官邸の対露政策は、露ペースに巻き込まれ過ぎていると懸念するからだ。
露ペースとは、これまでは日露(日ソ)で合意していた日ソ共同宣言と東京宣言を基礎にした領土交渉を-そのことを明記した2001年のイルクーツク声明と03年の日露行動計画にプーチン大統領も署名している-昨年11月の首脳会談で、東京宣言を外して、日ソ共同宣言のみを基礎として交渉すると合意したことを指す。
現在の露指導部は、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」と両国首脳が合意した東京宣言を、対日政策における最大の失敗だと悔やんでいる。換言すれば、日本の長年の平和条約交渉の最大の成果の一つでもある。
その理由は、東京宣言は4島の帰属先を明記していないという点で中立的だが-つまり日本にとってもリスクがある-4島が未解決の領土問題であることを両国がはっきりと認めているからだ。プーチン氏は05年9月に初めて「第二次世界大戦の結果南クリール(北方四島)はロシア領となり国際法的にも認められている」と主張し始めた。これは明らかに東京宣言を否定する歴史の強引な修正だ。
≪血の滲む努力を否定するのか≫
ちなみに、1998年11月の日露のモスクワ宣言のときもエリツィン大統領と小渕恵三首相は「国境画定委員会」を設立した。また、プーチン政権下の2002年3月にイワノフ外相は下院で、日露間には国際法的に認められた国境が存在しないことを認めていた。これらも、領土問題が未解決であることを露側が認めていたことを示す。プーチン氏はこれら日露両国がともに認めていた事実を、05年に否定した。
1月14日の河野太郎外相とラブロフ外相の会談で後者が「第二次大戦の結果、南クリール諸島は露領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は期待できない」との強硬発言をした。これはプーチン氏による歴史の修正を忠実になぞるものである。ラブロフ氏が柔軟なプーチン路線に反して、対日強硬路線を遂行しているというのは明らかに誤解である。
私が露ペースと呼んだ事態、つまり日ソ共同宣言のみを基礎にして平和条約交渉を加速させるという露との合意に首相官邸は合意したが、これはこれまでの日本政府の長年の血の滲(にじ)むような対露交渉の成果を自ら否定するものではないか。私が、成果らしきものが何もなかったのは却って良かったとさえ思っている、と述べた意味も読者にはご理解頂けると思う。
≪主権問題は長期の対応が必要≫
ある新聞は「首相、実質2島に絞り交渉」との見出しも付けた。私は2島返還さえもプーチン政権下では極めて可能性が小さいと判断している。したがって「2島プラスα」論とか「2島プラス継続協議」論でさえも、これまでのプーチン発言から考えると、現実性はないと考えている。
となると、東京宣言を無視して「日ソ共同宣言を基礎」にする限り、「成果」を得たというとすれば何か玉虫色の、つまり両国が自国に都合よく解釈できる曖昧な合意か「2島マイナスα」、あるいは単に日本の協力を引き出すためだけの日ソ共同宣言を基礎とした「交渉継続の合意」になる可能性が高い。
私は、2島にのみ焦点を当てた「成果」は、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すと懸念している。本音を言えば、交渉となる島の数は問題ではない。日本が国際的に、主権侵害問題に真剣に対応する国と見なされるか否かが、国際政治的にはきわめて重要なのである。
日ソ共同宣言だけ認める人の多くは、国後、択捉の返還は全く現実性がないからだと述べる。私もプーチン政権下では現実性はないと考える。しかしそれは現状を基礎とした発想だ。激動する国際情勢の中において20年、50年、100年先もこの問題に関する情勢が変化しないと誰が言い得るのか。国家主権の問題とは、まさにそのように長期の対応を必要とする問題なのである。「せいては事を仕損じる」を忘れるべきでない。(新潟県立大学教授・袴田茂樹 はかまだ しげき)
1月22日にモスクワで日露首脳会談が行われ、領土交渉の行方に関心が集まった。深夜にテレビ放送された共同記者発表の様子を見ただけで、拍子抜けするほど成果らしきものは感じられなかった。
安倍晋三首相の発言や表情からは、困難な交渉で確実に成果をあげたという満足感や高揚感、喜びの感情はくみ取れなかった。またプーチン大統領からも、一応首脳会談は行いましたよ、といった雰囲気しか感じなかった。首相や大統領の共同記者発表文や野上浩太郎官房副長官のブリーフを熟読しても、この印象は変わらない。
≪「成果」なしは却って良かった≫
ただ私は率直に言うと、今の両国の交渉状況の下では、変な「成果」をあげるよりも、成果らしきものが何もなかったことは、却(かえ)って良かったとさえ思っている。その理由は、安倍首相の平和条約締結に対する、歴代のどの首相よりも強い熱意には大いに敬意を払うものの、今の官邸の対露政策は、露ペースに巻き込まれ過ぎていると懸念するからだ。
露ペースとは、これまでは日露(日ソ)で合意していた日ソ共同宣言と東京宣言を基礎にした領土交渉を-そのことを明記した2001年のイルクーツク声明と03年の日露行動計画にプーチン大統領も署名している-昨年11月の首脳会談で、東京宣言を外して、日ソ共同宣言のみを基礎として交渉すると合意したことを指す。
現在の露指導部は、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」と両国首脳が合意した東京宣言を、対日政策における最大の失敗だと悔やんでいる。換言すれば、日本の長年の平和条約交渉の最大の成果の一つでもある。
その理由は、東京宣言は4島の帰属先を明記していないという点で中立的だが-つまり日本にとってもリスクがある-4島が未解決の領土問題であることを両国がはっきりと認めているからだ。プーチン氏は05年9月に初めて「第二次世界大戦の結果南クリール(北方四島)はロシア領となり国際法的にも認められている」と主張し始めた。これは明らかに東京宣言を否定する歴史の強引な修正だ。
≪血の滲む努力を否定するのか≫
ちなみに、1998年11月の日露のモスクワ宣言のときもエリツィン大統領と小渕恵三首相は「国境画定委員会」を設立した。また、プーチン政権下の2002年3月にイワノフ外相は下院で、日露間には国際法的に認められた国境が存在しないことを認めていた。これらも、領土問題が未解決であることを露側が認めていたことを示す。プーチン氏はこれら日露両国がともに認めていた事実を、05年に否定した。
1月14日の河野太郎外相とラブロフ外相の会談で後者が「第二次大戦の結果、南クリール諸島は露領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は期待できない」との強硬発言をした。これはプーチン氏による歴史の修正を忠実になぞるものである。ラブロフ氏が柔軟なプーチン路線に反して、対日強硬路線を遂行しているというのは明らかに誤解である。
私が露ペースと呼んだ事態、つまり日ソ共同宣言のみを基礎にして平和条約交渉を加速させるという露との合意に首相官邸は合意したが、これはこれまでの日本政府の長年の血の滲(にじ)むような対露交渉の成果を自ら否定するものではないか。私が、成果らしきものが何もなかったのは却って良かったとさえ思っている、と述べた意味も読者にはご理解頂けると思う。
≪主権問題は長期の対応が必要≫
ある新聞は「首相、実質2島に絞り交渉」との見出しも付けた。私は2島返還さえもプーチン政権下では極めて可能性が小さいと判断している。したがって「2島プラスα」論とか「2島プラス継続協議」論でさえも、これまでのプーチン発言から考えると、現実性はないと考えている。
となると、東京宣言を無視して「日ソ共同宣言を基礎」にする限り、「成果」を得たというとすれば何か玉虫色の、つまり両国が自国に都合よく解釈できる曖昧な合意か「2島マイナスα」、あるいは単に日本の協力を引き出すためだけの日ソ共同宣言を基礎とした「交渉継続の合意」になる可能性が高い。
私は、2島にのみ焦点を当てた「成果」は、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すと懸念している。本音を言えば、交渉となる島の数は問題ではない。日本が国際的に、主権侵害問題に真剣に対応する国と見なされるか否かが、国際政治的にはきわめて重要なのである。
日ソ共同宣言だけ認める人の多くは、国後、択捉の返還は全く現実性がないからだと述べる。私もプーチン政権下では現実性はないと考える。しかしそれは現状を基礎とした発想だ。激動する国際情勢の中において20年、50年、100年先もこの問題に関する情勢が変化しないと誰が言い得るのか。国家主権の問題とは、まさにそのように長期の対応を必要とする問題なのである。「せいては事を仕損じる」を忘れるべきでない。(新潟県立大学教授・袴田茂樹 はかまだ しげき)
北方領土交渉経緯
プーチン次期大統領が北方領土問題の最終解決を目指したいと - 遊爺雑記帳
<前略>
<追記挿入>
■日ソ共同宣言
1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名
北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて平和条約の交渉を行うという合意
<追記挿入 ここまで>
■日ソ共同声明(1991年)
1991年4月海部総理とゴルバチョフ大統領により署名された。
日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。
■東京宣言(1993年)
1993年10月、細川総理とエリツィン大統領により署名された。
領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題と位置づけるとともに、領土問題解決のための交渉指針が示された。
また、日ソ間のすべての国際約束が、日露間で引き続き適用されることを確認した。
■クラスノヤルスク合意(1997年)
1997年11月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致。
■川奈合意(1998年)
1998年4月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致。
■イルクーツク声明(2001年)
2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された。
日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認した。
■日露行動計画(2003年)
2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された。日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認した。
<後略>
<追記>
▽山口での首脳会談(2016年12月15日)
北方4島で「特別な制度」の下での共同経済活動実現へ協議。
▽シンガポールでの首脳会談(2018年11月14日)
1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速。
プーチン次期大統領が北方領土問題の最終解決を目指したいと - 遊爺雑記帳
<前略>
<追記挿入>
■日ソ共同宣言
1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名
北方領土問題は、まず国交回復を先行させ、平和条約締結後にソ連が歯舞群島と色丹島を引き渡すという前提で、改めて平和条約の交渉を行うという合意
<追記挿入 ここまで>
■日ソ共同声明(1991年)
1991年4月海部総理とゴルバチョフ大統領により署名された。
日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す。
■東京宣言(1993年)
1993年10月、細川総理とエリツィン大統領により署名された。
領土問題を、北方四島の島名を列挙して、その帰属に関する問題と位置づけるとともに、領土問題解決のための交渉指針が示された。
また、日ソ間のすべての国際約束が、日露間で引き続き適用されることを確認した。
■クラスノヤルスク合意(1997年)
1997年11月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致。
■川奈合意(1998年)
1998年4月、橋本総理とエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致。
■イルクーツク声明(2001年)
2001年3月、森総理とプーチン大統領により署名された。
日ソ共同宣言が交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。その上で、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべきことを再確認した。
■日露行動計画(2003年)
2003年1月、小泉総理とプーチン大統領により採択された。日ソ共同宣言、東京宣言、イルクーツク声明及びその他の諸合意が、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結し、両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉における基礎と認識し、交渉を加速することを確認した。
<後略>
<追記>
▽山口での首脳会談(2016年12月15日)
北方4島で「特別な制度」の下での共同経済活動実現へ協議。
▽シンガポールでの首脳会談(2018年11月14日)
1956年の日ソ共同宣言を基礎に、平和条約交渉を加速。
露ペースとは、これまでは日露(日ソ)で合意していた日ソ共同宣言と東京宣言を基礎にした領土交渉を、昨年11月の首脳会談で、東京宣言を外して、日ソ共同宣言のみを基礎として交渉すると合意したことを指すと、袴田教授。
現在の露指導部は、「4島の帰属問題を解決して平和条約を締結する」と両国首脳が合意した東京宣言を、対日政策における最大の失敗だと悔やんでいる。換言すれば、日本の長年の平和条約交渉の最大の成果の一つ。
1998年4月、橋本総理と来日したエリツィン大統領の間で、平和条約に関し、東京宣言に基づいて四島の帰属の問題を解決することを内容とし、21世紀に向けた日露の友好協力に関する原則等を盛り込むことで一致した、川奈合意が最も4島返還の機運が高まった時とされていますが、2005年のプーチン氏来日時に、過去の両国の交渉経緯が否定されました。
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更に、2016年12月のブーチン氏の来日で、日ソ共同宣言のみを基礎にして平和条約交渉を加速させる方向転換がなされ始めたのでした。
そして、日露首脳会談の前の1月14日に行われた、外相会談でのラブロフ氏の、「第二次大戦の結果、南クリール諸島は露領になったことを日本が認めない限り、領土交渉の進展は期待できない」との強硬発言。
2島返還さえもプーチン政権下では極めて可能性が小さいと判断していると袴田教授。
東京宣言を無視して「日ソ共同宣言を基礎」にする限り、両国が自国に都合よく解釈できる曖昧な合意か「2島マイナスα」、あるいは単に日本の協力を引き出すためだけの日ソ共同宣言を基礎とした「交渉継続の合意」になる可能性が高いと。
袴田教授は、2島にのみ焦点を当てた「成果」は、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すと懸念している。島の数は問題ではない。日本が国際的に、主権侵害問題に真剣に対応する国と見なされるか否かが、国際政治的にはきわめて重要だと。
プーチン政権下で国後、択捉の返還は全く現実性がない事には同意するが、激動する国際情勢の中において20年、50年、100年先もこの問題に関する情勢が変化しないと誰が言い得るのか。国家主権の問題とは、まさにそのように長期の対応を必要とする問題なのである。「せいては事を仕損じる」を忘れるべきでないと。
安倍政権は、残り3年の期限を切っています。プーチン氏はその足元を見透かしての強気の交渉。
大統領選が済めば地位が安定するので領土交渉が進められると期待していた日本側。
しかし、プーチン大統領の支持率は選挙時こそ高かったものの、欧米による経済制裁の効果は進み低迷する経済状況で、支持率は下降し台所が苦しいことに変わりはありません。
不法占拠されている竹島、侵略行為がエスカレートしている尖閣=沖縄を抱える日本。
2島返還すら危うくなっているロシアと平和条約を先行させて締結することで得られる国益は有りません。
袴田教授が指摘される通り、主権国家としての日本歴史の将来に禍根を残すことになります。
島の数よりも重要なのは、竹島や尖閣の領土問題をを抱える日本の、国家の主権に対する姿勢。安倍政権の期限ではなく、国家数十年、百年の計が求められます。
# 冒頭の画像は、日露首脳会談に臨んだ両国首脳
「北方領土は合法的にロシアに移った」ラブロフ発言は正当か。ソ連もかつて旧敵国条項の無効を認めていた | ハフポスト
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