遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国の「沖縄帰属論」は、日本にとどまらず米国への新たな圧力

2013-05-17 23:31:18 | 東シナ海尖閣諸島
 沖縄=琉球の帰属は未解決と、中国共産党機関紙・人民日報が研究者の論文を掲載し、従来民間での議論を黙認していた姿勢を転じて、党が積極的に容認する方向に転じたことは、諸兄がご承知のことで、このblogでも触れてきました。
 中国のこの転換は、米国のアジア重視政策、尖閣への日米同盟適用という姿勢への中国のいらだち・焦りが基にあり、米国がポツダム宣言に反して、基地の永続使用を目指す為勝手に日本に渡したと、日米に圧力をかけていると評論している記事がありました。
 米中は戦勝国同志、日本は敗戦国にもかかわらず秩序を再び乱そうとしているとの論法で日米分断を計ろうとしていると最近の中国の戦略を読んでいましたが、米国に対抗し圧力をかけようとしているとの分析は意外な視点なので、備忘録として取り上げさせていただきました。
 

中国「沖縄帰属」論文 尖閣で焦り日米に圧力 (5/17 読売朝刊)

 中国共産党機関紙・人民日報が8日、沖縄の帰属は「未解決」で中国に領有権があると示唆する研究者の論文を掲載した。尖閣諸島をめぐり中国の主張を認めない日本や米国に、沖縄を使って新たな圧力を加えようという習近平政権の意向を反映しており、警戒が必要
だ。

 「中国は沖縄まで自分のものだと言い出すのか」と驚き、あきれた人も多いのではないか。
 論文は、「
明清時代、中国の属国だった琉球(沖縄)」が、日本に武力などで併合されたと主張。日清戦争を終結させた下関条約(1895年)では、「(敗れた)清に琉球を問題にする力はなく、台湾と付属諸島、澎湖諸島、琉球は日本に奪い去られ
た」と記した。
 その上で、日本が第2次大戦終戦時、「日本国が清国人より盗取した一切の地域を中華・民国に返還する」とした
カイロ宣言の履行をうたうポツダム宣言を受諾
したのを根拠に、「未解決の琉球間題を再び議論できる時が来た」と訴えた。
 沖縄への日本の主権に疑義を呈する論調は、以前から学者らの間でくすぶっていたが、中国政府が日本側に正面から疑義をぶつけてきたことはない。「戦後中日関係文献集(1945ー1970)」(中国社会科学出版社)には、米中が対立した1960年代、
毛沢東主席が米国の沖縄統治に反対し、沖縄を「日本の領土」だと発言
したとの記録さえある。
 だが、昨年9月の日本政府の尖閣諸島国有化を機に対日強硬論が強まり、
「沖縄も中国のもの」とする論調が、反日デモのスローガンから、外務省傘下の外交專門誌・世界知識の論文まで広がり、ついに共産党・政府見解の代弁役となる党機関紙にも登場
した。
 共産党は、沖縄を安倍政権への圧力を強める新たな材料とみているのだろう。
 
中国は現在、米国が「アジア太平洋重視」戦略を進め、尖閣は日米安全保障条約の適用範囲としていることに、いらだちを強めている。沖縄の帰属が「未解決」という主張には、米軍の沖縄駐留の正当性に疑問
を投げかけて、日本の世論や日米同盟を揺さぶり、分断する狙いもあるようだ。
 清華大学現代国際関係研究院の金徳湘兼職教授は、中国紙・環球時報への寄稿で、人民日報論文に関して、「
米国は琉球の主権を勝手に日本に渡し、基地の継続占有という目的を達成
した」と主張した。中国軍少将で軍事評論家の羅援氏は14日のネット討論会で「琉球復活運動はくすぶっている」と発言。中国メディアは、米軍の新型輸送機MV22オスプレイの沖縄配備や、4月に安倍政権が開催した「主権回復の日」に対する沖縄県民の反発を熱心に取り上げている。
 中国は尖閣諸島をめぐり、周辺に石油資源があることがわかった1970年代に主権を主張し始め、92年の領海法制定で同諸島を自国領とし、最近は挑発行動をエスカレートさせている。「沖縄」でも、攻勢を強める可能性は否定できない。
 
環球時報は10日付社説で、?沖縄の帰属に関する民間レベルの研究や討論を中国政府が容認?日本の対中姿勢を見極め、政府が沖縄に対する立場を正式に変更?最終的には「琉球国復活」に向けた勢力を育成ーーという3段階論
を展開した。「20~30年を経て中国の実力が強大になれば幻想ではない」とも強調した。
 
日本政府は中国の危険な兆候を軽視せず、しっかり反論することが肝要
だ。
 不当な言い分は、中国自身に跳ね返る。習政権は日本の主権を認めれば国内で批判され、主権を主張すれば、日本だけでなく米国との関係も緊張するというジレンマを自ら抱え込んだ。

 環球時報の「3段階論」は既に実行に移されていて、③の「琉球王国復活」については、沖縄の中に、沖縄独立を唱える人々が存在しています。
 
社民・照屋議員「沖縄は独立した方がいい」中国紙に同調、県民からは危惧の声 - MSN産経ニュース

 米国のアジア回帰、軸足移動、ピボット政策と様々な呼び方をされる政策は、クリントン国務長官の後任、中国包囲網に反対するケリー長官に代わってから、政策転換された様に見えていましたが、ラッセル国務次官補の就任で、方針が変わりないことが確認出来ています。クリントン長官が先頭に立ったのと、国務次官補とでは差が出て来る懸念はあります。
 
米国務次官補に知日派のラッセル氏 「アジア重視戦略」牽引 (産経新聞) - Yahoo!ニュース

 世界の覇権を争う(中国が一方的に仕掛けているのですが。)米中の外交は、素人の遊爺には一筋縄では理解出来るものではないのですが、戦勝国同志と近づきながら、東シナ海、いえ、アジアに手出しをするなと圧力をかける、硬軟織り交ぜた展開をする中国は、敵ながらあっぱれと言えます。

 火の気のないところに煙を立て、様子を見ながら炎に変え、やがて炎上させる中国の手口。民間の行動容認から、おかかえメディアでの報道へステップアップは、煙の勢いを強め、炎に移行する前兆でしょう。
 「理解できない」とか「ありえない」とかの口先の反論ではなく、きちんと論理立てた反論をすべきだし、沖縄の民意をくみ上げる行動が政府に求められます。

 記事の最後に書かれている、習近平の国内世論と世界の世論との板挟みのジレンマは、全て習近平の国内基盤の弱さが原因ですね。
 歴史認識でクレームを付けられ、米国の覚えが良いとは言えない安倍政権ですが、日米同盟をしっかり固めてこその、中国周辺国外交なのですから、よろしくお願いしますと言ったところですね。


 「釣魚島の次は琉球だ」 中国当局黙認の元で「沖縄領有論」がじわりと広がり始めている - 遊爺雑記帳


 # 冒頭の画像は、ラッセル国務次官補




 三井物産・カモ池の親子


↓よろしかったら、お願いします。




中国は日本を併合する



コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月16日(木)のつぶやき | トップ | 5月17日(金)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (RYU)
2013-05-19 20:51:29
はじめまして。

敢えて琉球王国というのは、清代の版図を根拠に、チベット・ウイグルを含む植民地支配の正統性を主張していて、柵封体制時代への復古を目指しているのでしょう。日本を標的にするのは老獪としかいいようがないですが、共産化体制にありながら、根底には中華思想があって、時間軸を江戸時代に回帰させる事によって、日本の保守的な精神性に対しても何らかの働きかけをしようとしているように見えます。宗主国となるのも、属国となるのも、近代国家からの後退で、中国の支配願望には、国際感覚が欠如している、としか言いようがありません。アジアの中小国家には儒教支配を敷こうとしているのか、日本への執心にはそれ以上の野望も見え、脅威は高まっていると思います。
返信する
琉球 (遊爺)
2013-05-19 23:02:10
RYU様 コメントをありがとうございます。

 北岡教授によると、「がんらい沖縄ないし琉球は、日清両属とよぶべき位置にあった。その名称自体、二つの起源を持っている。すなわち、沖縄(ウチナー)とは、広義の日本語・かな文化を共有する沖縄の人々が、大和(ヤマト)に対して自らを呼んだ言葉である。他方で、琉球とは、14 世紀に明が倭寇対策として当時の中山王に朝貢を促し、その見返りに与えた国号である」とのことで、沖縄を既に見下げている中華の発想ですね。多くの国や人々は今日、沖縄と呼びます。
 http://www16.atwiki.jp/pipopipo555jp/pages/2563.html

 その中華思想は、世界の頂点に立つというものですから、日本どころか、いずれは米国を凌駕したいというものでしょう。
 
> 中国の支配願望には、国際感覚が欠如している、としか言いようがありません。

 ご指摘の通りで、帝国主義華やかなりし時代ならいざしらず、いまどきこんな古典的発想をするのは珍しい政府ですね。
 13億の安価な労働力や内需を産み出す潜在力が老成した先進国との相対的優位性で今日の先進国の後追いの成長を推進してきました。
 しかし、少子高齢化、賃金の上昇が進み早くも老成化も追いつき始めた中国。一党独裁での人権無視の圧政は、反日で国民の眼を逸らす政治手法も限界に達するのはそう遠くないでしょう。
 灯が消える直前に火勢を一瞬増しますが、反日や周辺国への武力の圧力増大は、その命運が尽きそうな体制内部の鏡でしょうか。ご指摘の様に、そのぶん脅威が高まりますね。

 抑止力の備えを厚くすると同時に、一党独裁の圧政から国民が解放される支援=国際世論の高まりに、米国がさかんに人権問題の指摘で攻勢をかけていますが、日本もひと肌脱ぐのも一策かと考えます。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

東シナ海尖閣諸島」カテゴリの最新記事