「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードでは、習近平の隣に江沢民、胡錦濤の順で並んでいる写真を観て驚きました。周永康を追い落とすなど、江沢民・上海グループの勢力への攻撃を続けていて、隣に立たせ笑顔で会話しているのです。そして、その隣は、胡錦濤氏。
このシーンについて触れさせていただきましたが、情報に接することがなく、詳報を待っていましたが、ようやく日経が報じていました。
<前略>
■周永康を除く15長老が勢ぞろい
<中略>
注目すべきは、1年ぶりとなった江沢民の公式の場への登場とともに、ただ一人、欠けていた最高指導部経験者だ。習近平が牢(ろう)に送った周永康である。彼は江沢民グループの重鎮だった。周永康の欠席までの経緯は、習近平がトップに就いてから1000日強にわたる「反腐敗」と言う名の権力闘争そのものだ。
習近平は、江沢民ら長老による「院政」を封じ込めるため必死に戦ってきた。これはあくまで党内部の暗闘だ。表舞台では、習近平と江沢民がパレードを見ながら、にこやかに会話を交わす。
<中略>
軍事パレードは習近平の独り舞台――。その演出は手が込んでいた。
「老江(江沢民)が現れたのは見たけど、習大大(習近平)の隣にいたなんて知らなかった」
北京の庶民の感想だ。国営中央テレビの生中継にくぎ付けとなった多くの国民は、江沢民の出席は映像で確認したが、習近平の左隣にいることが分からない。「ツーショット」がないのである。
「習・江の確執にも配慮した上での報道上の操作だった」
関係者の声だ。そもそも江沢民は一般国民に人気がない。周囲の人物が汚職まみれなのは、江沢民自身の問題でもある、と見られている。「反腐敗」や「虎退治」で大衆の支持を得た習近平が、“悪役”の江沢民と談笑する映像は習人気を冷やしかねない。つまり一般国民向けには「ツーショット」は不要だった。
一方、習・江の確執は、中国政治の不安定の象徴として世界の視線を集めている。海外からの目を考えれば、習・江の談笑は報道すべき事象だ。だからこそ、海外、華僑向けの通信社は2人が談笑し、隣に胡錦濤もいる写真を配信した。事実上、共産党宣伝部の管轄下にある中国系香港メディアもこれを使った。非常にわかりやすい。
江沢民の健康状態はどうなのか。天安門上の席に着く前、階段を下る際は左脇から抱えられたものの、歩くのには支障がない。高齢でも健康に大きな問題があるようには見えなかった。左隣の胡錦濤に向けて親指を立てるポーズまでとったのが話題になった。
胡錦濤は終始、表情が硬かった。いや、表情がなかったと言ってもよい。そして、気になる映像がインターネット上に出回った。欄干の間から見える胡錦濤の左手先が絶え間なく小刻みに震えているのだ。意図的なズームアップ映像だ。
「不仲だった隣の江沢民の振る舞いに我慢ならない怒りの表明」「側近の令計画を追い落とした習近平が気に入らないのでは……」。少し不真面目な解説も流れたが、健康になんらかの問題があると見るのが一般的だろう。「パーキンソン病を患っている」。そんな噂もある。
胡錦濤は9000万人近い共産党の青年組織、共産主義青年団のボスだった。12年の習近平への権力委譲では、中央軍事委員会主席を含めて全て引退した。江沢民の院政に悩まされた経験から「口出ししない」スタイルを取った。
しかし、17年の党大会での最高指導部人事は別だ。共青団のホープで広東省トップの胡春華(52)らを押し上げたい。だが、もし健康が優れないなら政治力も衰えるのがこの国の常だ。
他の長老らの様子はどうか。中央規律検査委員会が「慶親王批判」の文章を発表したことで、次ぎに習が狙う標的と噂された曽慶紅(76)。無表情の胡錦濤の後方で元気に動き回り、健康をアピールした。一族が電力業界に多大な影響力を持つ元首相、李鵬(86)の姿もあった。この二人は、習近平と同様に党高級幹部を親に持つ「太子党」の重鎮である。
国有企業改革の断行などで評価の高い元首相、朱鎔基(86)には、やや衰えが見えた。脇に控える秘書役は声も発せず天安門の欄干の手すりをたたく動作をした。「ここに両手を置きなさい」というサインだった。
長時間、日差しの強い壇上に立つ老人が体力を消耗して倒れないよう、両手による支えを促したのだ。とはいえ、重鎮に対し、子供を諭すようなしぐさをするのは違和感があった。朱鎔基は一瞬戸惑いつつ指示に従った。
■後継者を決めるのは俺だ
めったに姿を現さない最高齢98歳の元老、宋平は、習近平と同じ中山服姿だった。小平から信頼された宋平は、胡錦濤や温家宝を見出し、最高指導部メンバーにまで押し上げた。
07年、習近平がいきなり次期最高指導者候補の最右翼に躍り出る際も影の立役者だった。当時は、共青団を基盤とする李克強が有力と見られていた。だが、長老らの反対が多く、まとまらない。内情を知る党関係者はこう述懐する。
「長老の意見取りまとめに向けて宋平は習近平を強く押した。キーマンの一人だった」
ここでは習近平の父で元副首相の習仲勲と宋平の良好な関係も功を奏した。宋平が名伯楽だとすれば、2年後の最高指導部人事では、なお発言力を持つかもしれない。
「後継者を決めるのは俺だ」。軍を掌握した習近平は、17年の最高指導部人事を見据え、こう思っているに違いない。だが、共産党の伝統では、今回、天安門上に並んだ15長老の力は無視できない。
だからこそ毎年、「北戴河会議」が注目される。今夏、北戴河には15長老が皆、いたわけではない。だが、長老それぞれが習近平に対してなんらかの形で見解を提出している。テーマは今回の軍事パレードのあり方、経済運営、そして今後の重要人事だ。習近平と江沢民ら長老との綱引きはまだ終わらない。(北京にて、敬称略)
汚職撲滅の御旗の下に、対立する派閥の虎退治を進め、政治基盤の強化を成し得て、独裁体制を確立してかに見えていた習近平でしたが、パレードの長老参加はしきたりに従ったことで、まだまだ長老パワーの勢力は健在だと認識させられたパレードでした。
「抗日戦争勝利70年」の軍事パレード 江沢民、胡錦濤他長老参列 - 遊爺雑記帳
それを証明したのが、上記記事で、習近平と江沢民の談笑場面はおろか、ツーショットの画像すらも中国国内では報じられていないのだそうです。他方、海外向けには談笑シーンを、江沢民の隣の胡錦濤も含めて報道させているのです。
しきたりに従わざるをえなかったのか、手摺で体を支える長老達の姿を報じることで、習近平の健在を強調しようとしたのかは不明ですが、国内向けには報道されていないのであれば、しきたりに従わざるをえず、虎退治で基盤を確立した姿勢の強調が出来なかったということですね。
記事は今年の「北戴河会議」の議題にも触れていますが、「今回の軍事パレードのあり方、経済運営、そして今後の重要人事」が議題だったのですね。
虎退治について反発する長老との攻防があったとされる「北戴河会議」で、軍事パレードも議題になった様ですから、長老の檀上の席順も話題になったと推測できますね。
苦しい国内経済状況。それを露呈させた、株価暴落(不動産バブル崩壊懸念対策での、官制の株価パブルの破綻)や、人民元切り下げ(4~5%と言う中途半端な数値で、国際世論の圧力で中断に追い込まれた)でしたが、G20で集中攻撃されるほどに、中華のお国の面目が潰れるまでに至ってしまっている現状です。
軍事パレードで、強い中華のお国をアピールしようとしたのですが、逆効果を産んでしまった様ですね。
英・エコノミスト誌で、表紙に習主席がライフルとペンとが一緒になった銃(軍事力で歴史を書き換えようとしている)を持って立つ写真とともに、「習の歴史の教訓」「中国はいかに将来を支配するために過去を修正するか」という記事の見出しを載せ、巻頭論文で「中国共産党は現在の野心を正当化するために歴史を悪用している」という見出しの主張と解説を掲載し、(中共の軍事力を背景とした)野心を報じられてしまい、中共の脅威の宣伝になったのですね。
更に、エコノミスト誌では、「日本と戦争をしたのは共産党ではなく国民党」「日本を悪魔化することは不公正であるだけでなく危険」「習近平主席は歴史から本当の教訓を学び、歴史を改ざんして自国の有利な方法でのみ利用することを止めて」とも論評しているのだそうですね。
[古森義久]【習近平主席は日本を不当に悪魔化している】~英「エコノミスト」巻頭論文に載った批判~ (Japan In-depth) - Yahoo!ニュース
中国の戦勝記念式典:軍事パレードの真の目的 押しも押されもせぬ指導者の姿、軍事力とともに世界に誇示 | JBpress(日本ビジネスプレス)
株価や為替対策に追われ、更にその根本原因である、国内経済の低迷対策が急務の習近平政権。
虎退治(最近はキツネ退治)に熱中していると、2017年の党政治局常務委員の椅子取り争いに負けることになりかねませんね。
2017年に中国共産党最高幹部が一新、驚きのメンバーになると...:レコードチャイナ
# 冒頭の画像は、「抗日戦争勝利70年」の軍事パレードで談笑する、習近平と江沢民
この花の名前は、ダイリントキワソウ
↓よろしかったら、お願いします。