遊爺雑記帳

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第2回米朝会談 北朝鮮がベトナム開催を選んだ強かな理由

2019-02-28 01:48:16 | 北朝鮮 全般
 第2回米朝会談が始まりました。
 第 1回の時は、初めての外交大舞台で、しかも米国の軍事圧力下のプレッシャーもあり、緊張感があふれ、初々しさも漂わせていた金正恩。
 核実験やミサイル発射実験を中止することで、体制維持の保証を勝ち取り、中国の後ろ盾を得て自国ペースでの対米交渉が出来る状況を勝ち取りました。
 そして、2回目の会談。
 故事に習い、列車で移動することで、世界中のメディアに連日の報道をさせ、会談都市も、北主導で決定、細かなことでも、米国のメデイアセンターを直前に移動の混乱を生じさせるジャブで機先を制する攻撃。
 完全に北朝鮮ペースに巻き込んで、ディール自慢のトランプ大統領の面目は丸つぶれに見えるスタートです。
 選挙を控える足元を見透かされたトランプ大統領。果たして劣勢を挽回できるのでしょうか。
 
戦わずして北朝鮮の勝利か、第2回米朝会談 ベトナムに学べ:北朝鮮がベトナム開催を選んだ強かな理由 | JBpress(日本ビジネスプレス) 2019.2.27(水) 末永 恵
方々
 ガラス張りのモダンなレストランが人目を惹く。
 ベトナムの首都・ハノイの旧市街地から車で20分ほどにある、
北朝鮮直営の北朝鮮レストラン・ハノイ店。通称、「北レス」と呼ばれる。
 
北の重要な外貨獲得“在外基地”で知られる。
 筆者も以前、訪れたことがある。北朝鮮名物、牛骨スープベースの平壌冷麺(ピョンヤン・レンミョン)が一番人気だ。
 容姿端麗なウエイトレスは、ベトナムでも人気が高い。その写真はネット上に拡散されており、韓国ではまさにアイドル並みの人気を誇っている。
 一方、このレストランは北の諜報活動や強制売春の舞台となっていることが、最近脱北した北朝鮮女性のウエイトレスによって暴露され始めている。
 そうしたレストランの数は、中国などアジア諸国を中心に今でも80か所ほどで経営されているという。

 
このハノイのレストランに2017年、衝撃が走った。
 
ベトナム政府が突然、北レスの賃貸契約延長を認めないと一方的に北朝鮮政府に申し送り、レストランは撤退を余儀なくされたからだ。
 こ
との発端は、2年前の2月13日午前9時頃、混雑極めるマレーシアのクアラルンプール国際空港で大胆不敵にも、金正恩・朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が暗殺された事件
 正男氏の遺体からは猛毒の神経剤「VX」が検出された。
 事件では、
ベトナム人のドアン・ティ・フオン被告(今夏以降、殺人罪に問われている実行犯の同被告とインドネシア人女性被告の第1審判決が言い渡される見通し)らが北朝鮮国籍の男4人と共謀し、正男氏の顔に液体を塗りつけて殺害したとしてマレーシアで起訴されている

 マレーシア当局によると、事件直後に国外逃亡した北朝鮮国籍の男4人のうち、リ・ジヒョン容疑者は北朝鮮のリ・ホン元駐ベトナム大使の息子で、フオン被告を犯行に引き入れた張本人とされている。

 
ベトナム政府は、北朝鮮の駐ベトナム前職大使の息子が事件に関与し、ベトナム国民を包摂して起きた殺人事件を強く糾弾。北朝鮮に公式謝罪を要求した上、「国交断絶」の意思を伝えた。
 
ベトナム政府は北朝鮮に制裁を科し、「外交官を除く北朝鮮国籍者のビザの延長、さらには北朝鮮レストランの賃貸契約延長の拒否」を断行した。

 それだけではない。
事件直後にはもっと強硬な制裁が実施されていた。
 「北朝鮮外交官のビザ発給を全面停止し、北朝鮮大使館(ハノイ)の事実上縮小に追い込もうとした」
 「さらに、(スパイと見られる)ベトナムにあるIT産業で働く朝鮮人労働者に対しても、国外追放や滞在ビザの長期延長拒否といった措置を出していた」(西側外交筋)
 
ベトナム政府はマレーシアで起きた事件に北朝鮮のベトナム大使が関係していたことに怒り心頭だったのだ。
 
事件に関し、米国、マレーシア両国政府が金正男氏殺害の責任は北朝鮮にあると断定している一方、これまで北朝鮮は頑なに同事件への関与を強く否定してきた。

 しかし、ベトナムの強硬な外交圧力に、
北朝鮮は昨年12月、「ベトナムに非公式に謝罪した」(韓国メディア)と報道された。
 ベトナム政府筋もその事実をほぼ認めている。ASEAN地域フォーラム(ARF)への北朝鮮参加を強く促すなど、
アジア屈指の長年の友好国、ベトナムの後ろ盾を失う危機感が北朝鮮の異例の謝罪を引き出したともいえる。
 正式謝罪は殺害を北朝鮮が公式に認めることになることから、「非公式」という形式でベトナムは譲歩する形となったようだ。

 とはいえ、
決して大国とは言えないベトナムが、悪の枢軸、独裁国家の金政権から前代未聞の「謝罪を引き出した」わけで、日本や国際社会では、驚きをもって受け止められた。

 一方、筆者の知人の米外交筋によると、「謝罪の具体的時点は実際不明だが、金正男氏暗殺から半年以上経った、北朝鮮政権樹立70周年を記念した9・9節行事前後を機に、両国の外交関係は修復に向かった」という。
 そして、昨年6月の第1回米朝首脳会談でも開催国候補として名乗りを上げていたベトナムは、今週27~28日に行われる第2回米朝首脳会議の舞台になる。
 今回、ベトナムは北朝鮮だけでなく、米国との交渉・準備段階から、ホスト国として外交手腕を発揮。

 共産主義国でありながら1986年の改革開放路線「ドイモイ政策」後、農業国からアジアを代表する経済成長国に躍り出て、外交舞台で国際社会に、政治的にも経済的にもその存在感を示すことに成功したといえるだろう。
 米国のバラク・オバマ大統領(当時)は、2016年のG7開催前に、ベトナムへの歴史的訪問を実現。
 
ベトナムは約半世紀ぶりになる米国からの全面的な武器輸出解禁合意で、「昨日の敵は、今日の友となった」(チャン・ダイ・クアン国家主席)と、アジアの小国でありながら「米越同舟」を巧みに演出、中国への牽制を国際社会にアピールした。

 ベトナムは、ドナルド・トランプ政権直後にホワイトハウスで米国と首脳会談を開いているが、実はASEAN(東南アジア諸国連合)で初めてのことだった。

 
今回、米朝2回目の首脳会談開催国にベトナムが選ばれたのには、米国の狙いも見え隠れする。
 
ベトナム戦争で米国と戦った、北朝鮮と同じ共産国家のベトナムが、安全保障と経済分野などで、米国と強い2国間関係を構築した結果、経済成長を果たした――。
 このことを北朝鮮の
金正恩氏に具体的な形で知らしめようというわけだ。

 昨年7月には、米国のマイク・ポンペオ国務長官が「ベトナムが経験した『経済的奇跡』と米国との関係改善に、北朝鮮は学ぶことができるだろう」とも語っている。
 北朝鮮問題の専門家は「ベトナムは、食料安全保障や私有財産制度問題などですでに対応策を図り、経済特区設置などによる海外投資誘致の戦略も熟知している」と言う。
 しかし、ベトナムのような改革開放路線を金正恩政権が「最善」と認識しているかどうかは、疑い深い部分もある。

 「経済の自由化は、独裁国家の北朝鮮が、私有財産制を認可し、国内で海外からのニュースや情報も拡散することになる。金正恩政権にとっては、『北朝鮮版ドイモイ』は、火中の栗を拾う政権崩壊の混乱を招くことにもつながる」(米国の北朝鮮問題専門家)と危惧する声もある。

 韓国に亡命した北朝鮮の太永浩(テ・ヨンホ)元駐英公使も欧米メディアの取材などで「金政権が、政治的な改革開放につながる経済自由化路線を走るとは思えない。経済開放は観光産業や開城工業団地の再開など、限定的だろう」とみている。

 経済的モデルであれば、むしろ、開発独裁で世界の金融センターに成長したシンガポールの方が、今の独裁政権を維持しながら、理想の形として見ている可能性は大きいのではないか。

 今回、
金正恩委員長は第2回米朝首脳会談をベトナム開催にこだわったとされる。その理由は、「改革開放の師匠」に見習うこととは別にあるようだ
 金正男氏暗殺事件で冷え切ったかつての兄弟国家ベトナムに、国際舞台での外交デビューという経済や投資拡大の絶好の檜舞台をお膳立てする見返りに、
大国相手にしたたかに振る舞う手法の伝授を受けたかったからではないだろうか。

 「ズル賢い」「二枚舌」「したたか」――。
 中国のみならず、米国、ロシア、フランスにそう言わしめる
アジアの小国・ベトナムの「大国操縦法」の例に見合う国は地球広しといえどもほかにはない
 
1000年にもわたる中国の侵略や支配、フランスによる約70年の植民地支配に屈せず、さらには20年に及ぶ米国とのベトナム戦争に勝利した。

 その後の中越戦争でも、「中国の力は再三、ベトナムという岩の上で砕け散ってきた」(「China and Vietnam: The Politics of Asymmetry」著者の米国の中国政治外交専門家、ブラントリー・ウォマック博士)と分析されるように、
ベトナム戦争でロシア軍や米軍が置きざりにした戦闘車や兵器などを駆使し、中国に勝利した。

 
ベトナムの強さの秘訣は、強靭な忍耐力と精神力に裏づけられたべトコン戦術の「硬」と、朝貢外交で至れり尽くせりの「軟」を、まるで1枚のコインのように裏表を巧みに使い分けながら、超大国を翻弄する戦略にある

 
さらには、戦争で大国と戦う一方で、同時に別の大国を引き込むしたたかな戦術も強さの秘訣だ。
 ベトナム戦争では、中国と旧ソ連の超大国を激突させ、一方で米国との闘いのための後ろ盾として両国の支援をを引き出した。

 
中国と陸続きのベトナムは、南シナ海に面した南北に長い約3000キロの海岸線を持ち、多くの港湾を抱え、主要な海洋ルートの交差点にある。
 そのため、経済や安全保障などの観点から、
他のアジアの国より、対中戦略において、米国にとっても最も重要な拠点となり得る。

 また、
ベトナムはASEANの中でロシアの最大の貿易相手国でもある。
 2015年5月、ASEANで初めて、ロシア、ベラルーシ、カザフスタンなどが加盟するユーラシア経済連合(EEU)ともFTAを締結。結果、両国の2020年の貿易額は、2014年比で約3倍の100億ドルに達すると予測されている。
 
対中依存からの脱却を目指し、ロシアとの経済面での連携を拡大させ、安全保障の基盤強化を急ピッチで進めている

 ベトナムは武器輸出解禁を条件に、米軍がベトナム戦争時、後には2002年にロシア軍が撤退するまで使った東西冷戦時代の要衝で、長年閉鎖されていた南シナ海軍事防衛の戦略的最重要拠点、カムラン湾への米海軍寄港を認めたとみられる。
 
米国と軍事連携を進めることで中国に対抗姿勢を示す一方、社会主義体制を続ける中、かつての最大支援国で友好国のロシアにも再接近するという、「遠交近攻」を用意周到に進めている

 
膨大な貿易黒字を稼ぐ最大の輸出相手国「米国」、慢性的な貿易赤字に悩まされる最大の輸入相手国「中国」、さらには、保有武器約100%を調達する最大の軍事武器供与大国「ロシア」の複雑な3大国の狭間に立つベトナム

 ラストリゾート(最後の命綱)をいずれの超大国にも依存しないことを固く誓う、誇り高き共産国家で北朝鮮が理想とする国家像を描いているともいえるだろう。
 言い換えれば、「
古くからの兄弟国家との蜜月関係は、北朝鮮にとって有利に働く。北朝鮮は困ったときでも旧友からの助けでサバイバルできる」と米国を牽制できる。
 そんなメッセージは、北朝鮮にとっては極めて魅力的に映るに違いない。

 
ベトナムにとっても、対北朝鮮交渉で日本、中国、韓国以上に、効果的な交渉を発揮できる国として国際社会に誇示できる

 こうみると、北朝鮮による前代未聞のベトナムに対する謝罪は、”名を捨ててでも実を取る”、言わば大国を手玉に取る「最大の防御にして、最強の秘策」だったと言えるのかもしれない。

      (取材・文・撮影 末永 恵

 金正恩の異母兄、金正男氏暗殺では、ベトナム人女性が実行犯に巻き込まれ、関係が悪化したベトナムと北朝鮮。
 しかし、北朝鮮が非公式ながら謝罪することで、両国の関係は修復されていたのですね。
 ASEAN地域フォーラム(ARF)への北朝鮮参加を強く促すなど、アジア屈指の長年の友好国、ベトナムの後ろ盾を失う危機感が北朝鮮の異例の謝罪を引き出したのだそうです。

 共産主義国でありながら1986年の改革開放路線「ドイモイ政策」後、農業国からアジアを代表する経済成長国になり、日本からも多くの投資が進み、脱中国の投資先としても注目されるベトナム。
 今回の米朝会談のホスト国となり、外交面でも国際舞台にデビューすることになりました。
 
 ベトナム戦争では戦った北ベトナムと米国。しかし「昨日の敵は、今日の友となった」(チャン・ダイ・クアン国家主席)と、アジアの小国でありながら「米越同舟」を巧みに演出、中国への牽制を国際社会にアピール。
 ベトナム戦争で米国と戦った、北朝鮮と同じ共産国家のベトナムが、安全保障と経済分野などで、米国と強い2国間関係を構築した結果、経済成長を果たしたことを、金正恩に知らしめようとの米国側の狙いも。
 
 1000年にもわたる中国の侵略や支配、フランスによる約70年の植民地支配に屈せず、さらには20年に及ぶ米国とのベトナム戦争に勝利したベトナム。
 ベトナムの強さの秘訣は、強靭な忍耐力と精神力に裏づけられたべトコン戦術の「硬」と、朝貢外交で至れり尽くせりの「軟」を、まるで1枚のコインのように裏表を巧みに使い分けながら、超大国を翻弄する戦略。
 更に、大国と戦う一方で、同時に別の大国を引き込むしたたかな戦術も強さの秘訣。
 南シナ海の領海権争いなど、多くの国々が中国の軍事力と札束外交力に屈する中、堂々と渡り合っています。

 経済発展で国体強化を目指したい北朝鮮の、一つのモデルともいえるベトナム。今の独裁政権を維持しながら、理想の形として見ている可能性はシンガポールとの指摘をされていますが、大国相手にしたたかに振る舞う手法の伝授を受けたかったのではないかとも。

 初回の米朝トップ会談では、米国の軍事圧力もあり、政権存続の言質を得る事を最優先としていた金正恩。
 繰り返しになりますが、今回は、選挙を控えるトランプ大統領の足元を見透かして、主導権を握って会談に臨んでいる金正恩。
 会談の内容に、大きな変化は期待できないとの見方が大勢ですが、トランプ大統領が、なにか譲歩しないかと危惧の声が聞かれます。
 繰り返しになりますが、ディールが得意と自負するトランプ大統領。挽回が出来るのか、要注目です。



 # 冒頭の画像は、ベトナム・ドンタン駅に到着した金正恩




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