ロシアのメドベージェフ首相が北方領土・択捉島訪問を強行しました。民主党・菅政権が、大統領時代のメドベージェフに国後島上陸を許す大失政を犯しました。尖閣の衝突漁船への対処で、日本は国家の主権認識が薄いと印象づけてしまったことが、きっかけで、その後、韓国・李明博大統領の竹島上陸も誘発させました。
民主党の失政を繰り返さない為に、領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきであると主張しておられるのは、ロシア問題に詳しい、木村汎北海道大学名誉教授。
北方四島の領土返還について、プーチン大統領は、1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名した「日ソ共同宣言」の、歯舞、色丹の二島返還の意志と言われていることは、諸兄がご承知の通りです。
今回、択捉島を訪問したメドベージェフ首相も、国後、択捉の開発の話をしましたが、歯舞、色丹の名は触れていません。
時事ドットコム:ロシア首相、択捉島の愛国集会に参加=「日本は隣人、中韓は友人」とけん制
北方領土については、主力ガス田の枯渇が迫り、欧州でのエネルギー安全保障の動きによる需要減が進む中、極東や北極圏の新規開発と、アジアへの販路開拓が求められるロシアの苦しい台所事情の中、日本は焦らず、機が熟すのを待てと、遊爺は唱えてきました。
そうした背景が近年続いていた中で、新たにウクライナ侵略に伴う、G7等からの経済制裁、原油価格下落という外圧が追い打ちをかけています。
苦し紛れで、しかたなく中国向け輸出で、足元を見透かされ、大幅譲歩しての契約をしましたが、実現には至っていない混迷も見せています。
八方塞がりのロシアなのです。
ロシア経済は、1998年のロシア危機当時より深刻 - 遊爺雑記帳
木村名誉教授も、最近日本に有利な状況が巡ってきているとして、米ソの「冷たい平和」状態と、G7の経済制裁による「国際的孤立」と、「経済上の三重苦(経済制裁、原油価格暴落、ルーブル安)」をあげておられます。
そして、今回は日本がプーチン大統領を招聘する順番であることも好都合で、こちらのペースで会談が行えるとし、「領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきである。」と結論付けておられるのです。
ロシアという国際法原則や常識が通用しない相手との交渉においては、「天の利」を待って、それを最大限に利用する必要があるのだと。ロシアが日本に接近せざるを得なくなる状況が発生するのを待てということです。ロシア経済の窮状。国際的孤立。中国に依存せざるを得ない屈辱(中共が政権を得たのは、国共内戦でソ連が支援したからこそで、ソ連は中共の生みの親の立場だったのが、逆転してしまった)。と、環境は整ってきているのです。
そうした日本接近の必要性が高まっているロシア。プーチン大統領は、訪日前に、民主党が見せた国家の主権意識の薄弱な日本、強気で押せば引く日本のイメージに付け込んで、強行姿勢を示していると考えられます。
木村名誉教授の主張に大賛成です。中国が足元を見透かして、それまで頑強に拒否していた天然ガスの取引条件を屈しさせた通りです。安全保障面でも、中国への抑止力として日露の関係を繋いでおきたいロシア。ここは、ロシアが折れて来るのを待つ時です。木村名誉教授が提言される通り、「領土問題で譲歩しないのならば来日不要とのカードをきるべきでしょう。G7との歩調、日米関係に逆行して会談するのですから、当然の要求ですね。
# 冒頭の画像は、22日に択捉島に上陸したメドベージェフ首相
この花の名前は、イカリソウ
↓よろしかったら、お願いします。
民主党の失政を繰り返さない為に、領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきであると主張しておられるのは、ロシア問題に詳しい、木村汎北海道大学名誉教授。
北方領土返還の「天の利」を待て 北海道大学名誉教授・木村汎 (8/25 産経 【正論】)
ロシアのメドベージェフ首相が北方領土・択捉島訪問を強行した。問題は、安倍晋三首相の対応である。
≪プーチン氏の対日戦略≫
メドベージェフ氏が2010年に旧ソ連・ロシアの国家元首として初めて国後島に上陸したとき、当時の菅直人首相は直後に横浜で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)への同氏の出席を受け入れ、首脳会談まで行った。メドベージェフ氏が12年に首相として同島を再訪した直後、玄葉光一郎外相は秋田犬を土産にプーチン大統領をソチにまで訪ねた。
メドベージェフ氏の北方領土訪問は、彼を対日強硬派へと仕立てあげることによって、柔道愛好家のプーチン氏を対日宥和(ゆうわ)派に見せかける、すなわち「悪い警官」と「良い警官」の分担戦術という解釈も可能だったかもしれない。だが同じ手口を3度も繰り返されると、そのような戦術を決定しているプーチン氏の存在に否(いや)が応でも気づかざるをえない。では、プーチン氏の対日戦略とは、何か?
プーチン大統領が現在狙っているのは、次の3つである。
(1)日本国民をして次のように考えるよう誘導すること。ロシアと交渉しない限り領土が日本へ戻ってくる可能性はゼロであり、しかも日露間領土交渉は、後になればなるほど日本側に不利に傾く。四島の実効支配や「ロシア化」がますます進行していくからだ。
(2)したがって、安倍政権は、プーチン大統領訪日の早期実現を図らねばならない。
(3)だが、同大統領が来日しても、2島引き渡し以上の譲歩を行う考えはない。他方、訪日した大統領に対して安倍首相は、ロシア極東での日露経済協力合意などの土産を持たせなければならない。
交渉学の国際的権威、W・ザートマン(ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)は、交渉過程を3つの段階に分ける。すなわち(1)交渉に入るまでの予備折衝(2)交渉本番(3)交渉後の詰め(合意の文章など)。同教授が強調するのは、ややもすると軽視されがちな第1段階の重要性に他ならない。なぜならば、このステージで既に交渉本体、すなわち第2段階の方向やトーン、内容すらもが規定されてしまうケースが多いからである。
≪チャンス逃した歴代指導者≫
谷内正太郎・国家安全保障局長や岸田文雄外相は、このような交渉段階の通則について百も承知で、プーチン訪日の下準備を行っているに違いない。ならば、日本国民も改めて留意すべきである。
ロシア首相らによる相次ぐ北方領土訪問、北海道漁民いじめ、中露連携のジェスチャーなどロシアが実施中の一連の動きが、専ら交渉第2段階での立場を有利にせんがためのロシア側による第1段階のキャンペーンであることを。
ロシアという国際法原則や常識が通用しない相手との交渉においては、残念ながら「天の利」を待って、それを最大限に利用する必要がある。「天の利」とは、国際政治における地殻変動発生の結果として、ロシアといえども日本に接近せざるをえなくなる状況の発生を指す。
例えば、1970年代はじめの米中接近、80年代後半のゴルバチョフ氏の登場、91年前後の冷戦の終焉(しゅうえん)やソ連邦の崩壊が、そうだった。ただし誠に残念なことに、わが国の歴代指導者たちにはそのような千載一遇のチャンスが到来している事実についての認識が十分でなく、したがってそれらの機会を全く生かしえなかった。
≪「来日不要」を通告すべきだ≫
ところが最近、日本有利の状況が再び生まれている。まずウクライナ危機によって米露間で「新しい冷戦か」と称されるまでの「冷たい平和」状態が発生した。ロシアは主要8カ国(G8)から事実上追放され、先進7カ国(G7)から経済制裁を蒙(こうむ)り、国際的孤立へと追い込まれた。加えて昨年7月以降、経済上の「三重苦」に苦しめられている。G7による経済制裁に加えて、国際原油価格の下落、ルーブル安である。
日露2国間に目を転じても、日本有利の要因がある。日露首脳による相互訪問で今回は安倍首相がプーチン大統領を招待する順番に当たっていることだ。招待主は招請の是非、時期、その他の決定で優先権をもつ。ところが次回は、安倍首相が招聘(しょうへい)を受ける順番になり、立場は逆転する。招待主となるプーチン大統領は安倍訪露にさまざまな注文をつけ、領土問題での進展はむずかしくなろう。
以上述べてきたことから、私の結論は明快になる。領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきである。
「私の首相在任中にぜひとも領土問題の解決を図りたい」。安倍首相の口癖である。だが、この発言は、首相が交渉のデッドラインを自ら設定しているかのようにロシア側に誤解されかねない。実際、同様の言葉を述べていた鳩山由紀夫元首相は、ロシア側に完全に足元を見透かされる結果を招いた。現首相が民主党政権の二の舞いにならないよう望む。(きむら ひろし)
ロシアのメドベージェフ首相が北方領土・択捉島訪問を強行した。問題は、安倍晋三首相の対応である。
≪プーチン氏の対日戦略≫
メドベージェフ氏が2010年に旧ソ連・ロシアの国家元首として初めて国後島に上陸したとき、当時の菅直人首相は直後に横浜で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)への同氏の出席を受け入れ、首脳会談まで行った。メドベージェフ氏が12年に首相として同島を再訪した直後、玄葉光一郎外相は秋田犬を土産にプーチン大統領をソチにまで訪ねた。
メドベージェフ氏の北方領土訪問は、彼を対日強硬派へと仕立てあげることによって、柔道愛好家のプーチン氏を対日宥和(ゆうわ)派に見せかける、すなわち「悪い警官」と「良い警官」の分担戦術という解釈も可能だったかもしれない。だが同じ手口を3度も繰り返されると、そのような戦術を決定しているプーチン氏の存在に否(いや)が応でも気づかざるをえない。では、プーチン氏の対日戦略とは、何か?
プーチン大統領が現在狙っているのは、次の3つである。
(1)日本国民をして次のように考えるよう誘導すること。ロシアと交渉しない限り領土が日本へ戻ってくる可能性はゼロであり、しかも日露間領土交渉は、後になればなるほど日本側に不利に傾く。四島の実効支配や「ロシア化」がますます進行していくからだ。
(2)したがって、安倍政権は、プーチン大統領訪日の早期実現を図らねばならない。
(3)だが、同大統領が来日しても、2島引き渡し以上の譲歩を行う考えはない。他方、訪日した大統領に対して安倍首相は、ロシア極東での日露経済協力合意などの土産を持たせなければならない。
交渉学の国際的権威、W・ザートマン(ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授)は、交渉過程を3つの段階に分ける。すなわち(1)交渉に入るまでの予備折衝(2)交渉本番(3)交渉後の詰め(合意の文章など)。同教授が強調するのは、ややもすると軽視されがちな第1段階の重要性に他ならない。なぜならば、このステージで既に交渉本体、すなわち第2段階の方向やトーン、内容すらもが規定されてしまうケースが多いからである。
≪チャンス逃した歴代指導者≫
谷内正太郎・国家安全保障局長や岸田文雄外相は、このような交渉段階の通則について百も承知で、プーチン訪日の下準備を行っているに違いない。ならば、日本国民も改めて留意すべきである。
ロシア首相らによる相次ぐ北方領土訪問、北海道漁民いじめ、中露連携のジェスチャーなどロシアが実施中の一連の動きが、専ら交渉第2段階での立場を有利にせんがためのロシア側による第1段階のキャンペーンであることを。
ロシアという国際法原則や常識が通用しない相手との交渉においては、残念ながら「天の利」を待って、それを最大限に利用する必要がある。「天の利」とは、国際政治における地殻変動発生の結果として、ロシアといえども日本に接近せざるをえなくなる状況の発生を指す。
例えば、1970年代はじめの米中接近、80年代後半のゴルバチョフ氏の登場、91年前後の冷戦の終焉(しゅうえん)やソ連邦の崩壊が、そうだった。ただし誠に残念なことに、わが国の歴代指導者たちにはそのような千載一遇のチャンスが到来している事実についての認識が十分でなく、したがってそれらの機会を全く生かしえなかった。
≪「来日不要」を通告すべきだ≫
ところが最近、日本有利の状況が再び生まれている。まずウクライナ危機によって米露間で「新しい冷戦か」と称されるまでの「冷たい平和」状態が発生した。ロシアは主要8カ国(G8)から事実上追放され、先進7カ国(G7)から経済制裁を蒙(こうむ)り、国際的孤立へと追い込まれた。加えて昨年7月以降、経済上の「三重苦」に苦しめられている。G7による経済制裁に加えて、国際原油価格の下落、ルーブル安である。
日露2国間に目を転じても、日本有利の要因がある。日露首脳による相互訪問で今回は安倍首相がプーチン大統領を招待する順番に当たっていることだ。招待主は招請の是非、時期、その他の決定で優先権をもつ。ところが次回は、安倍首相が招聘(しょうへい)を受ける順番になり、立場は逆転する。招待主となるプーチン大統領は安倍訪露にさまざまな注文をつけ、領土問題での進展はむずかしくなろう。
以上述べてきたことから、私の結論は明快になる。領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきである。
「私の首相在任中にぜひとも領土問題の解決を図りたい」。安倍首相の口癖である。だが、この発言は、首相が交渉のデッドラインを自ら設定しているかのようにロシア側に誤解されかねない。実際、同様の言葉を述べていた鳩山由紀夫元首相は、ロシア側に完全に足元を見透かされる結果を招いた。現首相が民主党政権の二の舞いにならないよう望む。(きむら ひろし)
北方四島の領土返還について、プーチン大統領は、1956年10月19日 鳩山首相とソ連のブルガーニン首相がモスクワで署名した「日ソ共同宣言」の、歯舞、色丹の二島返還の意志と言われていることは、諸兄がご承知の通りです。
今回、択捉島を訪問したメドベージェフ首相も、国後、択捉の開発の話をしましたが、歯舞、色丹の名は触れていません。
時事ドットコム:ロシア首相、択捉島の愛国集会に参加=「日本は隣人、中韓は友人」とけん制
北方領土については、主力ガス田の枯渇が迫り、欧州でのエネルギー安全保障の動きによる需要減が進む中、極東や北極圏の新規開発と、アジアへの販路開拓が求められるロシアの苦しい台所事情の中、日本は焦らず、機が熟すのを待てと、遊爺は唱えてきました。
そうした背景が近年続いていた中で、新たにウクライナ侵略に伴う、G7等からの経済制裁、原油価格下落という外圧が追い打ちをかけています。
苦し紛れで、しかたなく中国向け輸出で、足元を見透かされ、大幅譲歩しての契約をしましたが、実現には至っていない混迷も見せています。
八方塞がりのロシアなのです。
ロシア経済は、1998年のロシア危機当時より深刻 - 遊爺雑記帳
木村名誉教授も、最近日本に有利な状況が巡ってきているとして、米ソの「冷たい平和」状態と、G7の経済制裁による「国際的孤立」と、「経済上の三重苦(経済制裁、原油価格暴落、ルーブル安)」をあげておられます。
そして、今回は日本がプーチン大統領を招聘する順番であることも好都合で、こちらのペースで会談が行えるとし、「領土問題で譲歩しないのならば来日不要との方針を、安倍首相はロシア側に通告すべきである。」と結論付けておられるのです。
ロシアという国際法原則や常識が通用しない相手との交渉においては、「天の利」を待って、それを最大限に利用する必要があるのだと。ロシアが日本に接近せざるを得なくなる状況が発生するのを待てということです。ロシア経済の窮状。国際的孤立。中国に依存せざるを得ない屈辱(中共が政権を得たのは、国共内戦でソ連が支援したからこそで、ソ連は中共の生みの親の立場だったのが、逆転してしまった)。と、環境は整ってきているのです。
そうした日本接近の必要性が高まっているロシア。プーチン大統領は、訪日前に、民主党が見せた国家の主権意識の薄弱な日本、強気で押せば引く日本のイメージに付け込んで、強行姿勢を示していると考えられます。
木村名誉教授の主張に大賛成です。中国が足元を見透かして、それまで頑強に拒否していた天然ガスの取引条件を屈しさせた通りです。安全保障面でも、中国への抑止力として日露の関係を繋いでおきたいロシア。ここは、ロシアが折れて来るのを待つ時です。木村名誉教授が提言される通り、「領土問題で譲歩しないのならば来日不要とのカードをきるべきでしょう。G7との歩調、日米関係に逆行して会談するのですから、当然の要求ですね。
# 冒頭の画像は、22日に択捉島に上陸したメドベージェフ首相
この花の名前は、イカリソウ
↓よろしかったら、お願いします。