習近平の3時間半に及ぶ演説で始まった第19回中国共産党大会。時代の流れに逆行する「国進民退」化を説く習近平に危惧を抱いたのは日経の社説。国有企業を「強く、優秀に、大きく」との方針と表裏一体である共産党組織の民営企業への介入は、民間企業の活力を活かした経済発展を阻害すると憂慮しています。
新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した習近平ですが、その原動力として必要な民間の活力を殺ぐ方針を打ち出しています。
習氏は、35年までに社会主義の現代化建設を基本的に実現し、新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した。
それには新技術を持つ企業活力を生かす民間経済の飛躍的な伸びが不可欠なのですが、国有企業重視と共産党組織の民営企業への介入は逆行で、民間主導の持続可能な成長を確保できなければ不安定要素が増えると社説は指摘しています。
7~9月期の実質経済成長率は前年同期比6.8%と4~6月期より0.1ポイント減ったのだそうですが、インフラ投資が支えていてこのレベルにとどまったもので、民間投資は振るわないと。
民間経済の発展こそが中国の将来を切り開くとの社説の主張は、鄧小平の打ち出した改革開放経済を継承する、胡錦濤・共青団派の考えでもありますね。
今大会での最大の注目は次期チャイナセブンの人選。トラ退治で勢力を削がれた江沢民・上海閥は頼みのポスト習近平候補だった孫政才・重慶市党委書記も失脚させられてしまい影響力はなくなってしまいました。
その代わりに、「2階級昇進」で抜擢された、自前の「之江新軍」の陳敏爾重慶市党委書記と、胡錦濤・共青団派の胡春華広東省党委書記の二人がポスト習近平候補としてチャイナセブン入りが予測されていますが、産経の記事によれば、この二人がチャイナセブン入りしないとの報道があるのだとか。
ポスト習近平の二人がチャイナセブン入りしないということは、ポスト習近平は習近平という布石なのでしょうか。
トラ退治での習近平への権力集中に大きく貢献した王岐山の今回の定年退陣を阻止・延長することで、3期目への習近平自身の延命を狙っていましたが、どやらその目はなくなった様子と見られていますが、ポスト習近平候補のチャイナセブン入りを阻止することで、自信の延命を謀ろうとしているのでしょうか。
党大会が始まっても未だ定まらないチャイナセブンの椅子のメンバー。最終日の発表が待たれますね。
# 冒頭の画像は、北京の人民大会堂で記者の質問に答える陳敏爾重慶市党委書記
白梅
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中国の国有企業優遇と民業圧迫が心配だ :日本経済新聞 社説 2017/10/20
中国の習近平・共産党総書記(国家主席)は5年に1度の共産党大会の報告で国有企業の強化と拡大を明確に打ち出した。中国では長く「国進民退」と呼ばれる国有企業の優遇と民業経営の厳しさが問題になってきた。これを解決に導くどころか、さらに問題を複雑にする措置と言わざるえない。
これに連動して、共産党組織を通じた民営企業への管理強化もすでに動き出している。習氏は「あらゆる業務への党の指導を確保する」との原則を強調した。これでは民営企業の経営自主権を阻害しかねない。中国の企業関連法制との矛盾も指摘される。
中国は2020年を目標とした、ややゆとりのある「小康社会」づくりには、ほぼメドが付いたとする。習氏はその後、15年間を経た35年までに社会主義の現代化建設を基本的に実現し、新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した。
それには新技術を持つ企業活力を生かす民間経済の飛躍的な伸びが不可欠だ。成功すれば雇用確保にもつながる。13年の党中央委員会第3回全体会議(3中全会)では「資源配分で市場に決定的な役割を担わせる」と決めたはずだった。だが今回の報告では寡占排除などへの言及にとどまっており、国有企業の優遇は明らかだ。
一連の方針の裏には、共産党のコントロールを直接受ける国有企業を強化・拡大しなければ、経済社会の支配体制に綻びが出るとの危機感がある。これは逆だろう。民間主導の持続可能な成長を確保できなければ不安定要素が増える。中国に進出している外資系企業の間でも懸念する声は多い。
7~9月期の実質経済成長率は前年同期比6.8%と4~6月期より0.1ポイント減った。インフラ投資が下支えする一方、民間投資は振るわない。「不動産は住むもので投機対象ではない」との習氏の言葉が示すように不動産バブルは深刻だ。企業の債務比率も高い。金融危機防止、過剰設備廃棄はうたわれたが今後も注意が必要だ。
共産党が支配する中国では経済と政治を切り離せない。中国経済には常に判断が難しい政治リスクが潜む。国有企業を「強く、優秀に、大きく」との方針と表裏一体である共産党組織の民営企業への介入はその典型例だ。民間経済の発展こそが中国の将来を切り開く。それを忘れてはならない。
中国の習近平・共産党総書記(国家主席)は5年に1度の共産党大会の報告で国有企業の強化と拡大を明確に打ち出した。中国では長く「国進民退」と呼ばれる国有企業の優遇と民業経営の厳しさが問題になってきた。これを解決に導くどころか、さらに問題を複雑にする措置と言わざるえない。
これに連動して、共産党組織を通じた民営企業への管理強化もすでに動き出している。習氏は「あらゆる業務への党の指導を確保する」との原則を強調した。これでは民営企業の経営自主権を阻害しかねない。中国の企業関連法制との矛盾も指摘される。
中国は2020年を目標とした、ややゆとりのある「小康社会」づくりには、ほぼメドが付いたとする。習氏はその後、15年間を経た35年までに社会主義の現代化建設を基本的に実現し、新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した。
それには新技術を持つ企業活力を生かす民間経済の飛躍的な伸びが不可欠だ。成功すれば雇用確保にもつながる。13年の党中央委員会第3回全体会議(3中全会)では「資源配分で市場に決定的な役割を担わせる」と決めたはずだった。だが今回の報告では寡占排除などへの言及にとどまっており、国有企業の優遇は明らかだ。
一連の方針の裏には、共産党のコントロールを直接受ける国有企業を強化・拡大しなければ、経済社会の支配体制に綻びが出るとの危機感がある。これは逆だろう。民間主導の持続可能な成長を確保できなければ不安定要素が増える。中国に進出している外資系企業の間でも懸念する声は多い。
7~9月期の実質経済成長率は前年同期比6.8%と4~6月期より0.1ポイント減った。インフラ投資が下支えする一方、民間投資は振るわない。「不動産は住むもので投機対象ではない」との習氏の言葉が示すように不動産バブルは深刻だ。企業の債務比率も高い。金融危機防止、過剰設備廃棄はうたわれたが今後も注意が必要だ。
共産党が支配する中国では経済と政治を切り離せない。中国経済には常に判断が難しい政治リスクが潜む。国有企業を「強く、優秀に、大きく」との方針と表裏一体である共産党組織の民営企業への介入はその典型例だ。民間経済の発展こそが中国の将来を切り開く。それを忘れてはならない。
新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した習近平ですが、その原動力として必要な民間の活力を殺ぐ方針を打ち出しています。
習氏は、35年までに社会主義の現代化建設を基本的に実現し、新中国建国100年の21世紀半ばまでに経済、軍事、文化で米国に並ぶ強国になる長期構想を示した。
それには新技術を持つ企業活力を生かす民間経済の飛躍的な伸びが不可欠なのですが、国有企業重視と共産党組織の民営企業への介入は逆行で、民間主導の持続可能な成長を確保できなければ不安定要素が増えると社説は指摘しています。
7~9月期の実質経済成長率は前年同期比6.8%と4~6月期より0.1ポイント減ったのだそうですが、インフラ投資が支えていてこのレベルにとどまったもので、民間投資は振るわないと。
民間経済の発展こそが中国の将来を切り開くとの社説の主張は、鄧小平の打ち出した改革開放経済を継承する、胡錦濤・共青団派の考えでもありますね。
今大会での最大の注目は次期チャイナセブンの人選。トラ退治で勢力を削がれた江沢民・上海閥は頼みのポスト習近平候補だった孫政才・重慶市党委書記も失脚させられてしまい影響力はなくなってしまいました。
その代わりに、「2階級昇進」で抜擢された、自前の「之江新軍」の陳敏爾重慶市党委書記と、胡錦濤・共青団派の胡春華広東省党委書記の二人がポスト習近平候補としてチャイナセブン入りが予測されていますが、産経の記事によれば、この二人がチャイナセブン入りしないとの報道があるのだとか。
【第19回中国共産党大会】ポスト習 対照的2人 (10/20 産経)
■陳氏、忠誠を強調/胡氏、名前も言わず
中国共産党大会2日目の19日、北京の人民大会堂では、習近平総書記(国家主席)の後継候補として最高指導部に昇格するかが注目を集める2人が記者の質問に応じた。習氏の側近として破竹の勢いで出世する陳敏爾重慶市党委書記は習氏の功績を繰り返したたえて忠誠を強調したが、胡錦濤前総書記が後ろ盾となっている胡春華広東省党委書記は、習氏にほとんど言及せず淡々とした姿勢を貫いた。
同日午後に開かれた重慶市代表団の会議では、陳氏が冒頭、10分間にわたって習氏の政治報告を称賛。習指導部が「歴史的な成果と変革」を実現できた理由として「習近平同志を核心とする党中央の強力な指導を得ることができたからだ」と持ち上げた。
また自身の前任者である孫政才氏が汚職で失脚したことについて問われると「(党中央の)反腐敗闘争の石のように固い決意の表れだ」とし、孫氏の「悪影響」を徹底的に排除する決意を示した。
同日午前に開かれた広東省代表団の会議で胡氏は時折、隣の省幹部と談笑する余裕も見せた。最後に記者の質問に答えた胡氏は、習氏から今年初めに「小康社会(経済的にややゆとりのある社会)の全面的な実現」において、国内で先頭を走るよう指示されたと言及。ただ習氏の名前は言わず「総書記」とだけ述べた。
また、政治報告が示した中国の長期目標について「心を奮い立たせるものだ」と賛同したものの、習氏が提示した「新時代の中国の特色ある社会主義思想」には触れず、結局発言の中で習氏の名前を一度も言及しなかった。
胡、陳両氏は当初、今大会で政治局常務委員への昇格が有力視されていたが、一部の香港メディアなどは2人がいずれも昇格しないとの観測を伝えている。(北京 西見由章)
■陳氏、忠誠を強調/胡氏、名前も言わず
中国共産党大会2日目の19日、北京の人民大会堂では、習近平総書記(国家主席)の後継候補として最高指導部に昇格するかが注目を集める2人が記者の質問に応じた。習氏の側近として破竹の勢いで出世する陳敏爾重慶市党委書記は習氏の功績を繰り返したたえて忠誠を強調したが、胡錦濤前総書記が後ろ盾となっている胡春華広東省党委書記は、習氏にほとんど言及せず淡々とした姿勢を貫いた。
同日午後に開かれた重慶市代表団の会議では、陳氏が冒頭、10分間にわたって習氏の政治報告を称賛。習指導部が「歴史的な成果と変革」を実現できた理由として「習近平同志を核心とする党中央の強力な指導を得ることができたからだ」と持ち上げた。
また自身の前任者である孫政才氏が汚職で失脚したことについて問われると「(党中央の)反腐敗闘争の石のように固い決意の表れだ」とし、孫氏の「悪影響」を徹底的に排除する決意を示した。
同日午前に開かれた広東省代表団の会議で胡氏は時折、隣の省幹部と談笑する余裕も見せた。最後に記者の質問に答えた胡氏は、習氏から今年初めに「小康社会(経済的にややゆとりのある社会)の全面的な実現」において、国内で先頭を走るよう指示されたと言及。ただ習氏の名前は言わず「総書記」とだけ述べた。
また、政治報告が示した中国の長期目標について「心を奮い立たせるものだ」と賛同したものの、習氏が提示した「新時代の中国の特色ある社会主義思想」には触れず、結局発言の中で習氏の名前を一度も言及しなかった。
胡、陳両氏は当初、今大会で政治局常務委員への昇格が有力視されていたが、一部の香港メディアなどは2人がいずれも昇格しないとの観測を伝えている。(北京 西見由章)
ポスト習近平の二人がチャイナセブン入りしないということは、ポスト習近平は習近平という布石なのでしょうか。
トラ退治での習近平への権力集中に大きく貢献した王岐山の今回の定年退陣を阻止・延長することで、3期目への習近平自身の延命を狙っていましたが、どやらその目はなくなった様子と見られていますが、ポスト習近平候補のチャイナセブン入りを阻止することで、自信の延命を謀ろうとしているのでしょうか。
党大会が始まっても未だ定まらないチャイナセブンの椅子のメンバー。最終日の発表が待たれますね。
# 冒頭の画像は、北京の人民大会堂で記者の質問に答える陳敏爾重慶市党委書記
白梅
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