遊爺雑記帳

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中国経済は良好な状態。GDP 7.5%成長は居心地のいい状態と言う説があるが?

2013-08-08 23:59:51 | 中国 全般

 中国経済は良好な状態。GDP 7.5%成長は居心地のいい状態と言う説をみかけました。影の銀行が高利回りを唱って集めた理財商品を資金源として、主に地方政府が進めた都市化の投資がバブルを産み、それが破綻するというのが今ささやかれる中国経済のバブル崩壊論であり、その懸念を払拭しようとして中国政府が金融を絞り込もうとし、金利が上昇して混乱が生じたのでした。政府があわてて金融緩和をして一旦はおちつきを取り戻したのが現状で、危険性への対策が打たれれ安定した平静を取り戻したのではないというのが大勢の観方だとおもっていますが、異なる見解なので興味を持ったのでした。

 日経ビジネスがキヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之・研究主幹にインタビューした記事です。
 
中国経済は良好な状態~まずは価格改革の実行に着手か:日経ビジネスオンライン

 GDP成長率が、8%を超えるとインフレ警戒の施策が必要となるが、7.5%の現在の中国経済の状況は、コントロール可能な位置で居心地のいい状態だと言うのです。
 現在は雇用への需要が高く、成長率が高まると賃金の上昇を招き、コスト高による値上げのインフレが生じる。また、賃上げで消費が増えると、需給の市場圧力でインフレが生じることになるというのです。
 日本は、2%のインフレを目指していますが、急成長の道を駆け上がった中国では、貧富の格差が広がっていて、更なる成長でインフレが進むと、格差社会への不満が爆発しかねないのですね。
 それに、賃上げは、すでに始まっているのですが、国際競争力を削ぐ方向に進み、中国への投資の撤退を産み始めていますが、それを加速させることになります。
 また、雇用の需要が高いと言う説は、就職難が社会問題化している現状と相いれない情報で、納得しがたい話です。

 そもそも、8%以上の成長を続けた原因(国や地方政府による公共投資への財政出動)と、7.5%(実際にはそれ以下とも言われる)に減った理由(財政出動が実態を乖離、バブル化し限界が来た)が考察されていません。

 陰の銀行による金融破たんについては、その理由をあげて、その理由を否定する独自の世界でのマッチポンプ理論で否定されています。
 第一番目の理由は、経済が減速から失速に向かっている前提があれば、金融破たん理論が成り立つが、失速はしていないから金融破綻には繋がらないというもの。
 (減速で)失業が増えれば景気刺激策が打てるとされていますが、財政出動を限界までしてしまった現在では、これ以上の財政出動に限界が生じているのが現状で、だからこそ影の銀行が出現したのであって、楽観的現状の認識の根拠が不明。

 二番目は、バブルが起きていれば金融破綻に繋がるがバブルは生じていないというものです。当然、明らかにバブルが生じていれば専門知識で言うまでもなく金融危機です。ただ、バブルの懸念があるから金融危機がくるのではと議論が高まったり、金利や株価が動いているのです。
 バブルが起きていない証拠としては、不動産価格の上昇は、10%前後で、2013年の名目GDP成長も10%だから、バランスがとれている。日本のバブルは住宅地価格で300%、商業地で340%だったと比較して、否定しておられます。
 繰り返しますが、バブルが明らかに生じてしまっては誰ても判る話で、バブルの兆候の話をしているわけですから、上記の理由だけでバブルは起きないと否定されても、他の諸々の情報(入居者のいないマンション群、資金難で開発を中止・放棄されて都市化施設等)からは、信じがたい話です。

 三番目は、金利上昇などによる銀行破綻があれば金融危機があるとの条件設定をして、中国の金利は人民銀行が設定するが、金利を上げていないから金利上昇による破綻はないとされています。
 これは、今回の騒動で混乱を収めるための配慮もあるもので、決め手とは言えません。つまり、単なるマッチポンプの話。
 むしろ重要なのは、記事でも触れられている不良債権の回収の話。
 不動産投資は監視されているので、焦げ付いても少額。鉄鋼、造船の過剰投資は景気が好調なので回収可能な範囲とされています。鉄鋼や造船の景気が好調???
 理財商品の焦げ付きは、根拠なく多くて10%と"仮定"して、実際はそれよりも更に少ないと...。
 焦げ付きの影響がないの結論から逆算されている様にしか、文面からは説明がないので、受け止めれません。

 つまり、読めば読むほど、中国経済は大丈夫と言う理由の根拠が薄弱になり、大丈夫じゃあないのではと疑念が湧いてしまいました。

 ただ、小平時代に始まり、胡錦濤が引き継いできた成長路線を、習近平は、「生活の質」と「社会の安定」を重視する改革に切り替えると述べておられるのは注目に値します。(胡錦濤、温家宝も終盤は格差の是正に注力していましたが、それは成長の中で行うというものでした。)
 その改革が実行されないと、共産党政権の存在が危うくなるほど、人心は共産党から離れているとも。
 

中国経済は良好な状態~まずは価格改革の実行に着手か:日経ビジネスオンライン
<前略>

30年ぶりの政策転換へ

━━習政権がこのようにマクロ経済をうまく運営できているキーパーソンは誰なのでしょう。

瀬口:習近平と李克強です。この2人の意見が一致していることが、マクロ経済政策全体の良好な運営を可能にしています。
 経済政策に関する両氏の判断力・決断力について、やや不安視されていました。しかし、この3カ月間の2人の動きを見て、政府内の行政官上層部に安心感が生まれています。
 この2人の下で、現場のキーパーソンとなっているのが、国家発展改革委員会で副主任を務めている劉鶴だと見ています。同氏を中心に、同委員会と中国人民銀行、財政部が緊密に連携している。
 
習政権は今の状況を維持して、次の段階に歩みを進める
と見ています。

━━次の段階ですか。

瀬口:はい。
胡錦濤政権は取り組むべき改革をすべて先送りしてきました。これに着手するでしょう。具体的には小平が改革・開放を始めて以来30年間続けてきた「成長」路線を改め、「生活の質」と「社会の安定」を重視する改革
です。
 
この改革を実行しないと、習政権、いや共産党政権の基盤が危うくなるでしょう。中国の人心は共産党からかなり離れています


━━これまで共産党政権は高度経済成長を実現することで、その正統性を何とか保持してきました。その経済成長がこれまでのように「2ケタ」というわけにはいかなくなる。安定成長を実現するためには「量から質への転換」が必要というわけですね。

瀬口:その通りです。中国はこれからミドルインカム・トラップ(中所得国の罠)に挑戦しなければなりません 。このためにも国内市場を安定的に成長させることが必要になります。
 この30年ぶりの大改革の最初の山は、秋に予定されている第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)になるでしょう 。ちょうど今頃、習近平、李克強をはじめとする幹部の間で方針転換に関する大激論が戦わされていることでしょう。その結果が3中全会で表われると思います。

━━具体的にはどんな施策が進められるのでしょう。

瀬口
重要課題は国有企業改革、所得格差の縮小
などです。これらの改革は、既得権益層、富裕層の抵抗が強く実行は容易ではありません。比較的取組みやすいのは価格改革だと思います。対象は電力、ガソリン、液化天然ガス(LNG)、水などです。
 電力を例に説明しましょう。中国は電力の70%を、石炭をエネルギーとする火力発電で賄っています。石炭の国際価格は上昇しています。しかし、中国政府は電力料金を政策的に抑えています。電力会社は発電すればするほど赤字になる状況に陥っています。これでは安定的な供給は望めません。供給が滞れば、当然のことながら、経済にネガティブな影響が出る。同様のことがLNGでも水でも起きています。
 もう1つ、ガソリンについてお話ししましょう。中国のガソリンの質は良くありません。この状態を続ければ、環境に対して深刻な悪影響を与えることになります。これを避けるためガソリンの質を上げなければならない。そのコストは当然、価格に転嫁されます。

━━なるほど。安定成長を続けるために、現在はいびつな形で形成されている「低い価格」を適正な水準に引き上げていかなければならない。

瀬口:中国の場合、物価上昇率が4%に達したら「インフレ懸念」。5%になったら「警戒」、そしてすぐに「引き締め」でしょう。ですから4~5%になったら怖くて価格改革はできません。現在の物価上昇率は2%台です。この状態で安定させることができれば、価格改革に取り組むための素地ができるわけです。

━━習近平国家主席は一連の構造改革をどのくらいの期間で進める考えでしょう。任期である10年いっぱいでしょうか? それとも前半の5年で?

瀬口:5年では変えられないものも多いでしょう。1つの目安は2020年頃ではないでしょうか。2020年頃を機に、中国経済は成長エンジンが弱まります。それまでに改革を実行し、備える必要がある。
 2020年頃に3つの大きな動きが見込まれます。第1に都市化のテンポが顕著に鈍化します。そうなると、住宅はもちろん、消費にもネガティブな影響が出ます。
 第2に、高速道路や高速鉄道などの大規模インフラ整備がほぼ終わります。内陸部の主要都市である西安、重慶、成都、武漢を結ぶ高速鉄道が2018年までにほぼ完成する予定です。これ以降は内陸部の成長もスローダウンするでしょう。
 第3として、労働人口の減少が加速します。雇用の需給が逼迫すると、成長率を4~5%に抑えないとインフレに陥ってしまいます。

━━労働人口の減少を生産性の向上で補うことはできませんか。

瀬口:難しいと思います。中国企業の中心は国有企業です。その改革が急速に進んで生産性を向上させるインセンティブが働くとは思えません。

 ただし、だからといって中国経済の将来を悲観する必要はありません。私は日本企業をはじめとする外国企業の活躍に期待しています。製造業なら日本企業とドイツ企業。サービス分野ではやはり日本企業です。不動産や医療、外食などの分野に日本企業が進出することで、中国の生産性向上が図れると思います。汪洋副総理も日本の訪中団を前に「中国の発展は日本のおかげである。日中両国は手を携えれば共に発展し、争えば共に倒れる」と言っています。

━━最後に、今後の中国経済における注目点は何でしょう?

瀬口:習政権が進める構造改革の行方ですね。3中全会でどのような政策を打ち出すのか。そして、どれだけそれを実行できるのかです。


 改革の重要課題は、国有企業改革と所得格差の縮小とあげて、電力価格を上げる、環境対策でガソリンの質を上げてコストを転嫁すると言っておられます。
 コストアップを販売価格に転嫁できなかったものを値上げすると、国有企業の赤字負担軽減にはなるのでしょうが、所得格差の縮小にどうつながるのかは理解できません。
 改革で目指す「生活の質」「社会の安定」には、環境改善では繋がりますが、値上げがどう繋がるのでしょう。

 2020年頃に大きな動きが三つあるとされていますが、これ、もう始まっているものでしょう。
 労働人口が減ると雇用の需給がひっ迫して物価が上がる?
 労働人口の減少で、デフレスパイラルにはまり国力を落した先輩は日本です。中国は、先進国が進んだ道を、猛スピードで追いかけ、後進性(賃金、固定費安。諸規制の緩さ)を活かして輸出大国になったのですね。そして、追いついてきたら、負の部分も追いついてきた。これからは、負の部分の手当をせねばならなくなるので、社会コストが上昇し、先進国とのコスト格差はなくなっていく。ひとりっこ政策が招く少子高齢化も深刻化するのでしたね。

 改革には、既得権益集団の抵抗が壁として立ちはだかります。胡錦濤、温家宝はこの障害に苦労しました。
 習近平を支えているのは、この既得権保有層です。どうして、改革が出来るのでしょう。

 汪洋副首相の言葉を引用されていますが、汪洋副首相は胡錦濤の共青団派です。つまり、改革派です。「中国の発展は日本のおかげである。日中両国は手を携えれば共に発展し、争えば共に倒れる」とは、習近平の現行政策とは相いれません。

 読み進んだ結論は、中国経済は良好な状況にあるとは言えない。人心は共産党から離れようとしていて改革が必要。
 習近平にそれは出来ない。今後、共青団派の巻き返しで実現されるのかに注目。ということになりますね。



 # 冒頭の画像は、汪洋副首相




  この椿の名前は、師人


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1 コメント

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Unknown (ぷよぷよ)
2013-09-16 21:55:43
 この人の話が分からん?
格差は既得権益集団の抵抗で
難しいから、今できるのはこれぐらいと
説明しているのだよ。
相当先が読める人だ。(さすが、東大)
早稲田、除籍の痴ほう症、宮崎正弘とは
だいぶ違う。
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