遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

日本は、EU離脱後の英国と対話と協力を深めるべき

2019-10-30 01:53:05 | 英国全般
 英国のEU離脱については、一進一退なのか、堂々めぐりなのか、英国内の政局争いが混沌とするなか、先行きは観えたような気配が出ては消えの状況でよくわかりません。
 しかし、合意無き離脱になるのか、一定の合意がなされるのかは別として離脱の方向に進んでいる形勢には変わりない様子。

 離脱した後の英国は、どんな方向へ進むのか。
 日米との自由貿易協定(FTA)締結や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入も真剣な検討課題となりうるし、中東、アフリカ、インド洋地域の重要性が増している中で、英国がヨーロッパ外の世界により大きな関心と資源を振り向けることは、「自由で開かれたインド太平洋構想」を掲げる日本にとっても好ましいことだと、京都大学大学院中西教授。
 
【正論】EU離脱後の日英協力深化を 京都大学大学院教授・中西寛 - 産経ニュース 2019.10.29

≪トンネル出口見えてきた≫
 長らく混迷してきた
英国の欧州連合(EU)からの離脱だが、ようやくトンネルの先の出口がほの見えてきたようだ。ジョンソン首相が希望した10月末離脱の可能性はなくなったが、EUとの間で合意された新たな離脱協定が英国とEU双方の議会承認を得て成立する可能性は見えてきた。何時(いつ)になるかは分からないが、年末から年初にかけて合意による離脱が実現するのではないか

 
メイ前首相の時からの変化は、ジョンソン首相がEUとの再交渉を実現し、議会の膠着(こうちゃく)状態の原因となっていたバックストップ(安全策)条項の削除に成功した点である。安全策は、アイルランド国と英国北アイルランドとの国境問題が解決しない限り、英国全体がEUの関税同盟にとどまり続ける内容であり、EU離脱を無効化しかねないものであった

 しかしアイルランド内に国境を設ければ、アイルランド紛争の再燃をもたらしかねない。
新合意ではアイルランド内に物理的国境を設けず、アイルランド島とブリテン島の間で関税措置を実行して北アイルランドをアイルランド国と同じEU関税ルールを適用しつつ、ブリテン島から輸送され、北アイルランド内で消費される物品については関税分を返還するという形で英国市場の一体性も担保した。複雑だが巧妙な策であろう。

 
この方策が導入できた理由は、北アイルランドの切り離しにつながる内容に反対してきた民主統一党(DUP)の与党内での地位が低下したことが背景にある。総選挙で過半数を失ったメイ政権はDUPの10票で過半数を維持していたが、ジョンソン政権は造反した保守党議員を除名したため、少数与党に転落し、DUPとの連立の重要性が低下したのである。そのためジョンソン首相は北アイルランドを「別扱い」する合意案を推進することができた

 新合意案の詳細は分からないが、
貿易面では北アイルランドにEU関税ルールと英国市場両方に属する地位を与える一方で、政治的にはブリテン島との間に線引きをして北アイルランドをアイルランド寄りにしたEUとしても英国の合意なき離脱は望むところでなく、議会閉会までして今月末の離脱に突き進もうとしたジョンソン首相の姿勢が最高裁で覆されたことで、ジョンソン首相との妥協の余地を見いだしたのであろう。細部は別として当事者がそれぞれ「一両損」する形での合意となったように見える。

≪日本などとの協定課題≫
 
もちろん問題が片づいたわけではない。まず今後の議会審議の推移はまだ不透明である。協定が実施された場合にアイルランドの平和が保たれるかどうかも注目点である。加えて、北アイルランドの別扱いは、スコットランドの独立志向勢力を勢いづけ、EU残留を理由とした住民投票を後押しするかもしれない。支持率の高いジョンソン首相としては早期に解散総選挙をして過半数を獲得したいところだろうが、傷ついた保守党が再結集できるか、世論調査で劣勢の野党、特に労働党がどのタイミングで解散に応じるかどうかは分からない。

 
とはいえ最悪の混乱状態が続いていたEU離脱問題に収束機運が見えてきたことは確かである。英国が円滑にEUから離脱すれば、英国は日米との自由貿易協定(FTA)締結や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入も真剣な検討課題となりうるだろう。

 EUから離脱すればかつての大英帝国の栄光が取り戻せるかのような言説は幻想であろう。とはいえ、世界政治の中での
中東、アフリカ、インド洋地域の重要性が増している中で、英国がヨーロッパ外の世界により大きな関心と資源を振り向けることは、「自由で開かれたインド太平洋構想」を掲げる日本にとっても好ましいことである。

 特に、英国に加えてEU内に残る仏独とも連携を深める必要が高まっている理由は、後退が明白になりつつある米国の対外コミットメントをどのように埋めるかが、共通の課題になりつつあるからである。

≪西側秩序どう再建するか≫
 北朝鮮への軍事力行使の威嚇やイランとの核合意離脱、中国との経済対立など
強腰の政策をとってきたトランプ政権の姿勢は、強硬派のボルトン国家安全保障問題担当補佐官を解任した前後から明らかに転換し、宥和(ゆうわ)的姿勢を強めているシリアからの唐突な米軍撤退の決定はその象徴的事例である。イスラム国(IS)との闘争のために協力してきたクルド人勢力を見捨てる形での米軍撤退に対しては、マティス元国防長官はじめ政府内で強い反対があったがトランプ大統領は強行した。

 しかし
米世論は大統領の決定に対してほぼ無反応であった。「世界の警察官」としての軍事的コミットメントを縮小するトランプ大統領の姿勢を米世論は支持している。この状況で西側秩序をどう立て直すかについて日英両国は対話と協力を深めるべきである。(なかにし ひろし)

 EUから離脱すればかつての大英帝国の栄光が取り戻せるかのような言説は幻想であろうと中西教授。
 とはいえ、中東、アフリカ、インド洋地域の重要性が増している昨今、英国がヨーロッパ外の世界により大きな関心と資源を振り向けることは明らか。

 大英帝国圏の豪、加が参画する「CPTPP」、印、豪が参画する「自由で開かれたインド太平洋構想」といった、日本がリーダーシップを発揮して推進する、成長市場への参画は、メイ首相時代には示し始めていましたね。

 米国がアメリカファーストで自国優先に転換をすすめていくなかで、日、豪、印が主体となって進める成長市場の「CPTPP」や「インド太平洋構想」。勿論、経済面では米国も注力して来ていますが、自由主義陣営として、米国以外の国々の連携強化が望まれる中に、英国の参画があれば、相互にメリットが生じることになるでしょう。

 自称イスラム国(IS)との闘争では、大きく貢献したクルド人勢力を見捨てる形での米軍撤退を決めたトランプ大統領には、対米同盟国や友好国に衝撃を与えました。
 トランプ氏の決断への評価は、こもごもで定まってはいませんね。

 CNN.co.jp : 「クルドを裏切った」 米軍内から怒りの声、トランプ政権のシリア政策巡り

 【社説】それでも友人か クルド人見捨てる米国 - WSJ

 中西教授は、米世論は大統領の決定に対してほぼ無反応との評価。
 「世界の警察官」としての軍事的コミットメントを縮小するトランプ大統領の姿勢を米世論は支持している。この状況で西側秩序をどう立て直すかについて日英両国は対話と協力を深めるべきであると。

 メイ前首相はアジアへの関与を深める姿勢をのぞかせていましたが、ジョンソン首相はどうなのでしょう。



 # 冒頭の画像は、ボリス・ジョンソン首相




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