日本のバブル崩壊は、不動産と株価のバブルが崩壊したことによるものでした。中国のバブル崩壊が唱えられていますが、こちらも不動産や金融商品のバブル崩壊が指摘されています。中国も日本と同じバブル崩壊の道を辿るのでしょうか。
当然日本の経験を知る中国はその轍を踏まない様にすべく、習近平は中国共産党中央党校の学者たちにこの問題を研究するよう要請したのだそうです。
まとめられた報告書には、日本のバブルから得られる教訓として、中国政府は金融リスクに対する意識を高め、「経済的主権」を維持し、為替政策の変更を求める圧力に屈しないようにする必要がある、などと説かれていたのだそうです。
果たして中国は日本と同じ道を辿るのか、日本から得た教訓を生かして回避できるのか、両国の類似点、異なる点を比較した記事がありました。
似通っている点のひとつは、「財テク」。日本では投機的な株式投資で、中国では、官製株価バブル崩壊がありましたが、根深いのは「理財商品」や「信託商品」。
異なっている環境としては、日本のバブル始まりの契機が米国の圧力もあった「プラザ合意」による為替の自由化に対し、中国は為替の自由化は行わず管理下においている所。一党独裁政治の中国が、計画経済体制を採っているところも大きな違い。
中国の債務は、政府系の企業が別の政府系の企業に負っているものが圧倒的に多いので、政府はシステムの内部で債務を再編できる点も大きな違いですね。
ただ、債務残高の増加速度は、日本より中国が短期間に増大している。
中国がその独裁政治体制を活かして、日本から学んで採れる対処方があるのですね。
自由経済の日本では、銀行の破綻整理が遅れたが、中国では早期に整理が可能。
人口動態について、その変化が経済に及ぼす影響を、日本での結果から中国は学ぶことができていて、対策の必要性を知り得た。記事では指摘されていませんが、「一人っ子政策」の変更という日本にはない対策余地も持っていますね。
この記事の肝と言えるのは、不動産バブルで、消費者の住居価格が高騰し、通勤時間が長くなったことへの対応の指摘。
日本では、就任早々の三重野日銀総裁が不動産価格の上昇と長い通勤時間を強く非難したことで、その後の株式市場暴落の引き金を引いた。
中国は三重野氏の経験を肝に銘じたようで、数千万人の都市部住民を億万長者に変えたバブルをしぼませるのではなく、バブル拡大を「封じ込める」策を採っているのだそうです。
人口動態、外的経済要因もさることながら、その対処政策が結果を左右するとの指摘です。
少子・高齢化で人口減に対策が取れていない日本。
是非や成功の見通しは別として、「一帯一路」政策で、成長の止まった経済対策として、国外の需要喚起と取り込みの長期政策に取り組む習近平。アベノミクスで、民主党(当時)が沈没させかけた日本経済を立て直したとはいえ、経済基盤改革をして成長を支えるべき第三の矢に苦悩する現状の日本。バブル崩壊後のデフレスパイラルからの脱出が未だ出来ていません。
日本から学んで、財政出動でなんとかバブル崩壊を踏ん張って留めている中国経済。アベノミクス・第三の矢が見いだせず、デフレ脱却に苦戦している日本経済。これから先は、お互いに未知の道を切り開いて進まねばなりません。「一帯一路」を掲げる習近平。「第三の矢」の一つの柱に、「TPP」から転じて「TPP11」を掲げる安倍政権。両国がどんな展開となっていくのか、注目されます。
# 冒頭の画像は、上海の夜景
夏みかん
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当然日本の経験を知る中国はその轍を踏まない様にすべく、習近平は中国共産党中央党校の学者たちにこの問題を研究するよう要請したのだそうです。
まとめられた報告書には、日本のバブルから得られる教訓として、中国政府は金融リスクに対する意識を高め、「経済的主権」を維持し、為替政策の変更を求める圧力に屈しないようにする必要がある、などと説かれていたのだそうです。
果たして中国は日本と同じ道を辿るのか、日本から得た教訓を生かして回避できるのか、両国の類似点、異なる点を比較した記事がありました。
中国は日本化しつつあるのか? 日本の株式・不動産バブル崩壊と同じ運命をたどる恐れ | JBpress(日本ビジネスプレス) 2017.6.6(火) Financial Times
<前略>
中国政府にとって、バブルは新しい懸念材料ではない。事情をよく知る2人の中国人研究者によれば、中国の総債務残高が国内総生産(GDP)比で200%に達しつつあった2010年に、国家副主席だった習氏は中国共産党中央党校の学者たちにこの問題を研究するよう要請した。
その後まとめられた報告書には、日本のバブルから得られる教訓の概要がいくつか列挙されていた。中国政府は金融リスクに対する意識を高め、「経済的主権」を維持し、為替政策の変更を求める圧力に屈しないようにする必要がある、などと説かれていたという。
それから7年。中国の総債務残高はGDP比250%に達し、なお増え続けている。政府当局は、天井知らずの不動産価格を抑制しようとする一方で、2015年に破裂した株式バブルの余震にも対応している。習氏は4月、中国の指導者たちに、「金融の安全性を維持する」ことが必要だと警鐘を鳴らした。
だが、中国が日本化するリスクは果たしてどれほどあるのだろうか。2017年の世界第2位の経済大国である中国は、1989年の世界第2位の経済大国と同じ道――日本式の「失われた二十数年」――をたどるリスクを冒しているのだろうか。
<中略>
■よく似たパターン
バブル的な経済行動の比較ならいつでも簡単にできるように思えた、という人は多い。日本も中国も、同じように膨れあがってから破裂する株価チャートを描き、急激にしぼみがちな資産インフレが生じていることを示してきた。
外国の資産にも気前よく大金を支払ってきた。三菱地所は1989年に、ニューヨークの名所であるロックフェラー・センターの持ち分51%を9億ドルで購入し、中国の中渝置地(CCランド)は今年、ロンドンの「チーズグレーター(チーズのおろし金)」というあだ名を持つ高層ビルに11億5000万ポンドという大金を支払った。後者のロンドンの取引は、中国の企業グループが外国で行っている記録的な額の買い物の目立つ一例にすぎない。
アナリストが特に興味を示しているのは、両国のいわゆる「財テク」が似通っていることだ。バブル期の日本では、非金融企業が営業外利益を押し上げるために金融工学のテクニックを用い、投機的な投資をあおる結果になったが、今日の中国にもそれに相当する「理財商品」や「信託商品」が存在する。
<中略>
「中国では過去8年間で経済成長率が半分になり、債務残高が2倍になった」。中国の金融システムの専門家、フレーザー・ハウイー氏はこう指摘する。「これは良い相関関係ではない」
■異なるアプローチ
だが、両国が似ているとは言えない非常に具体的な点もある。経済史の研究者に言わせれば、日本のバブル経済の始まりは1985年9月のあの協定、すなわち米ドルの下落にゴーサインを出し、市場が支配権を握る時代に道を開いたプラザ合意に求められる。ニューヨークで成立したこの合意を受けて、円相場は3年間で1ドル=240円から同120円に上昇した。
対照的に中国は為替レートを注意深く管理しており、投機的な行動もしばしば取り締まっている。2015年7月の株価急落を介入で食い止めようとして物議を醸したことからも分かるように、中国政府は相場に介入するための弾薬をかなり多く保有している。この状況はまだ変わりそうにない。
不動産価格暴落からの回復力も大きく異なる。1990年代前半の日本で生じた不動産価格の急落は壊滅的だった。日本には、その苦境から抜け出す成長エンジンがなかったからだ。しかし、今の中国にはそれがあるかもしれない。また、投資銀行CLSAの株式ストラテジスト、クリストファー・ウッド氏によれば、トップダウンの計画経済体制を採用している中国は日本が意識的に手を出さなかったこと、すなわち輸出主導の経済モデルから消費主導の経済モデルへの移行を試みている最中だという。
今日の中国とかつての日本との間には、もう1つ、一党独裁国家ゆえの独特な性質を中国は備えているという大きな違いがある。中国企業の債務残高の3分の2は、国有企業が国有銀行に対して負っているものだ。投資銀行マッコーリーのアナリスト、ラリー・フー、ジェリー・ペン両氏が昨年指摘したように、「中国の債務は、政府系の企業が別の政府系の企業に負っているものが圧倒的に多い。従って、政府はシステムの内部で債務を再編できるため、この文脈では普通の信用分析は役に立たない」。
しかし、中国の債務残高は日本をはるかに上回る速度で増加している。英キングストン大学のスティーブ・キーン教授の集計によれば、日本では、民間部門の対GDP債務残高が1970年の125%から1995年の220%超に増えていた。ほぼ2倍になるのに四半世紀かかったことになる。ところが中国では、民間の対GDP債務残高が過去9年間で115%から210%超へと急上昇している。
「中国といえども、経済学のあらゆる法則から逃れられるわけではない。ただ、この国には独特な点が多い」。米コーネル大学に籍を置く中国金融の専門家、エスワー・プラサド氏はこう語る。
■北京の眠れぬ夜
<中略>
投資家は絶えず、日本と似たような危険信号に目を光らせている。特に、1980年代後半の日本の不動産・株式投機があれだけはっきりと日本の高度成長期の終わりを告げたからだ。
富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、日本のバブルはひどい終わり方をしただけではなく、四半世紀経った今もなお目に見え、「経済の一体性を保つ」ために維持されている財政赤字という形で姿を現す傷跡を残したと言う。
バブル後の日本の金融危機の後始末――企業の破綻と大量解雇を引き起こすことへの頑なな抵抗のために2000年代半ばまで先送りされた――は、自国の銀行システムで似たような危機が生じた場合、中国がやってはならないことを示す高度な教訓となる。
クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は、中国のバブル後の余波に対する当局の対応は、究極的に、バブルが膨らんでいるか否かより重要だと話している。中国が日本から学ぶことが最も多いのは、ここだ。「バブル後の最大の課題は、銀行に対する信頼を取り戻すことだ。銀行を数行退場させないと、うまくいかない」と白川氏は言う。
心理的なレベルでは、1985年から1989年にかけて株式市場の価値が3倍になるのを見た日本の経験は、近年の中国のそれと一致する。資産価値の上昇は、次第に深まる国家的興隆の感覚の回りに形成されているのだ。
「バブルというものは、長い繁栄期の甘美な終末だ」。ファンドマネジャーで日本の経済史に関する著作があるピーター・タスカ氏はこう語る。「最初は分別のある楽観論から始まり、限界はないという感覚に姿を変えていく・・・あらゆる階級の投資家が参加したがる。人々は自分の国について高揚感を抱くようになる。そして日本の場合は完全なバブルで、株式と不動産が同時に高騰した。強い高揚感は、経済、金融だけでなく、社会、政治にもからむものだった」。
白川氏は、中国でも日本でも、人々の抱く自信は当初は破滅的に思えた脅威を克服したことから来ていたと言う。日本の場合は1980年代前半の価格上昇の「オイルショック」、中国の場合は2008年の世界金融危機の悪影響がそれだ。
「だが、相違点もある。日本では、プラザ合意(および円高)のおかげで、日銀が長い間、緩和型の金融政策を維持できた。銀行は重圧にさらされ、大きなリスクを取った。中国では、『我々は国外から莫大な資金のフローを引き寄せており、これは永遠に続く』という考えから自信が生まれた」と白川氏は言う。
それにもかかわらず、ある政府顧問の言葉を借りるなら、中国政府は金融リスクが「唯一、船を沈めかねないもの」だということを重々認識している。
中国政府は、日本のように中国の貯蓄と成長を減退させる恐れがある厄介な人口動態についても心配している。両国とも15~54歳の生産年齢人口が減り始め、人口ボーナスの段階を通り越えて人口の足かせの段階に入っている。日本では、この転換が1990年に起きた。中国では2012年にそれが起き、人口ボーナスの終わりを告げた。
「中国人が人口動態に目を向けているのは、日本が当時知らなかったことを彼らは今知っているからだ――当時は誰も認識していなかった。人口動態が変わったときに、どれほど急に成長が止まり得るか、我々は日本から学んだ」とシュルツ氏は言う。
日本と中国では、株価バリュエーションは国の人口ボーナスとほぼ同時にピークをつけた。ゴールドマンの馬場氏は、これは「株式市場はバブルのピークに向けて、後々のボーナス期の好況を過剰に推定する傾向がある」ことを示唆しているかもしれないと言う。
日本のバブルの拡大と中国の現状に説得力のある類似点を見いだす人がいることについて言えば、中国は果たして日本が1990年代初めに直面した転換点に近づいているのかどうかに焦点が移っている。格付け機関ムーディーズは5月下旬、大きく、なお拡大している債務負担を引き合いに出し、中国の国債格付けを日本と同じ「A1」に引き下げた。
だが、ムーディーズは一方で、中国経済の見通しを引き上げ、中国の潜在成長率は2022年までに5%に鈍化すると予想した。これは日本が経験した唐突な暴落と長年の停滞よりはるかにましな結果だ。
どちらの国でも、バブルのような行動が何百万人の国民の生活に著しい変化をもたらした。日本の不動産・株式バブルがピークに近づくにつれ、都市部に暮らす生活費は一般の「サラリーマン」の手に届かない水準に跳ね上がった。
1989年になると、東京中心部まで通勤に90分かかる場所の75平米のマンションは、ホワイトカラー労働者の平均給与の8.5倍の値段がついていた。それから30年経った今、中国は首都でそれ以上に劇的な力学が働いているのを目の当たりにしている。北京市内の100平米のマンションの値段は平均で500万人民元。地元住民の平均年収の50倍以上に達しているのだ。
この問題に対する両国政府のアプローチのために、この比較は特に重要だとアナリストらは言う。1989年、日経平均が3万8915円の史上最高値をつける2週間前に日銀総裁に就任した際、三重野康氏は不動産価格の上昇と長い通勤時間を強く非難した。そうすることで、その後の市場暴落の引き金を引いたと、多くの人は今考えている。 あるレベルでは、中国は三重野氏の経験を肝に銘じたようで、数千万人の都市部住民を億万長者に変えたバブルをしぼませるのではなく、バブル拡大を「封じ込める」ことについて語っている。だが、これは微妙なバランスの上に成り立っているものだ。習氏が最近、「家は住むためのもので、投機するものではない」と警鐘を鳴らしたように、この脆弱性に対する中国政府の認識ははっきりしている。
<前略>
中国政府にとって、バブルは新しい懸念材料ではない。事情をよく知る2人の中国人研究者によれば、中国の総債務残高が国内総生産(GDP)比で200%に達しつつあった2010年に、国家副主席だった習氏は中国共産党中央党校の学者たちにこの問題を研究するよう要請した。
その後まとめられた報告書には、日本のバブルから得られる教訓の概要がいくつか列挙されていた。中国政府は金融リスクに対する意識を高め、「経済的主権」を維持し、為替政策の変更を求める圧力に屈しないようにする必要がある、などと説かれていたという。
それから7年。中国の総債務残高はGDP比250%に達し、なお増え続けている。政府当局は、天井知らずの不動産価格を抑制しようとする一方で、2015年に破裂した株式バブルの余震にも対応している。習氏は4月、中国の指導者たちに、「金融の安全性を維持する」ことが必要だと警鐘を鳴らした。
だが、中国が日本化するリスクは果たしてどれほどあるのだろうか。2017年の世界第2位の経済大国である中国は、1989年の世界第2位の経済大国と同じ道――日本式の「失われた二十数年」――をたどるリスクを冒しているのだろうか。
<中略>
■よく似たパターン
バブル的な経済行動の比較ならいつでも簡単にできるように思えた、という人は多い。日本も中国も、同じように膨れあがってから破裂する株価チャートを描き、急激にしぼみがちな資産インフレが生じていることを示してきた。
外国の資産にも気前よく大金を支払ってきた。三菱地所は1989年に、ニューヨークの名所であるロックフェラー・センターの持ち分51%を9億ドルで購入し、中国の中渝置地(CCランド)は今年、ロンドンの「チーズグレーター(チーズのおろし金)」というあだ名を持つ高層ビルに11億5000万ポンドという大金を支払った。後者のロンドンの取引は、中国の企業グループが外国で行っている記録的な額の買い物の目立つ一例にすぎない。
アナリストが特に興味を示しているのは、両国のいわゆる「財テク」が似通っていることだ。バブル期の日本では、非金融企業が営業外利益を押し上げるために金融工学のテクニックを用い、投機的な投資をあおる結果になったが、今日の中国にもそれに相当する「理財商品」や「信託商品」が存在する。
<中略>
「中国では過去8年間で経済成長率が半分になり、債務残高が2倍になった」。中国の金融システムの専門家、フレーザー・ハウイー氏はこう指摘する。「これは良い相関関係ではない」
■異なるアプローチ
だが、両国が似ているとは言えない非常に具体的な点もある。経済史の研究者に言わせれば、日本のバブル経済の始まりは1985年9月のあの協定、すなわち米ドルの下落にゴーサインを出し、市場が支配権を握る時代に道を開いたプラザ合意に求められる。ニューヨークで成立したこの合意を受けて、円相場は3年間で1ドル=240円から同120円に上昇した。
対照的に中国は為替レートを注意深く管理しており、投機的な行動もしばしば取り締まっている。2015年7月の株価急落を介入で食い止めようとして物議を醸したことからも分かるように、中国政府は相場に介入するための弾薬をかなり多く保有している。この状況はまだ変わりそうにない。
不動産価格暴落からの回復力も大きく異なる。1990年代前半の日本で生じた不動産価格の急落は壊滅的だった。日本には、その苦境から抜け出す成長エンジンがなかったからだ。しかし、今の中国にはそれがあるかもしれない。また、投資銀行CLSAの株式ストラテジスト、クリストファー・ウッド氏によれば、トップダウンの計画経済体制を採用している中国は日本が意識的に手を出さなかったこと、すなわち輸出主導の経済モデルから消費主導の経済モデルへの移行を試みている最中だという。
今日の中国とかつての日本との間には、もう1つ、一党独裁国家ゆえの独特な性質を中国は備えているという大きな違いがある。中国企業の債務残高の3分の2は、国有企業が国有銀行に対して負っているものだ。投資銀行マッコーリーのアナリスト、ラリー・フー、ジェリー・ペン両氏が昨年指摘したように、「中国の債務は、政府系の企業が別の政府系の企業に負っているものが圧倒的に多い。従って、政府はシステムの内部で債務を再編できるため、この文脈では普通の信用分析は役に立たない」。
しかし、中国の債務残高は日本をはるかに上回る速度で増加している。英キングストン大学のスティーブ・キーン教授の集計によれば、日本では、民間部門の対GDP債務残高が1970年の125%から1995年の220%超に増えていた。ほぼ2倍になるのに四半世紀かかったことになる。ところが中国では、民間の対GDP債務残高が過去9年間で115%から210%超へと急上昇している。
「中国といえども、経済学のあらゆる法則から逃れられるわけではない。ただ、この国には独特な点が多い」。米コーネル大学に籍を置く中国金融の専門家、エスワー・プラサド氏はこう語る。
■北京の眠れぬ夜
<中略>
投資家は絶えず、日本と似たような危険信号に目を光らせている。特に、1980年代後半の日本の不動産・株式投機があれだけはっきりと日本の高度成長期の終わりを告げたからだ。
富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、日本のバブルはひどい終わり方をしただけではなく、四半世紀経った今もなお目に見え、「経済の一体性を保つ」ために維持されている財政赤字という形で姿を現す傷跡を残したと言う。
バブル後の日本の金融危機の後始末――企業の破綻と大量解雇を引き起こすことへの頑なな抵抗のために2000年代半ばまで先送りされた――は、自国の銀行システムで似たような危機が生じた場合、中国がやってはならないことを示す高度な教訓となる。
クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は、中国のバブル後の余波に対する当局の対応は、究極的に、バブルが膨らんでいるか否かより重要だと話している。中国が日本から学ぶことが最も多いのは、ここだ。「バブル後の最大の課題は、銀行に対する信頼を取り戻すことだ。銀行を数行退場させないと、うまくいかない」と白川氏は言う。
心理的なレベルでは、1985年から1989年にかけて株式市場の価値が3倍になるのを見た日本の経験は、近年の中国のそれと一致する。資産価値の上昇は、次第に深まる国家的興隆の感覚の回りに形成されているのだ。
「バブルというものは、長い繁栄期の甘美な終末だ」。ファンドマネジャーで日本の経済史に関する著作があるピーター・タスカ氏はこう語る。「最初は分別のある楽観論から始まり、限界はないという感覚に姿を変えていく・・・あらゆる階級の投資家が参加したがる。人々は自分の国について高揚感を抱くようになる。そして日本の場合は完全なバブルで、株式と不動産が同時に高騰した。強い高揚感は、経済、金融だけでなく、社会、政治にもからむものだった」。
白川氏は、中国でも日本でも、人々の抱く自信は当初は破滅的に思えた脅威を克服したことから来ていたと言う。日本の場合は1980年代前半の価格上昇の「オイルショック」、中国の場合は2008年の世界金融危機の悪影響がそれだ。
「だが、相違点もある。日本では、プラザ合意(および円高)のおかげで、日銀が長い間、緩和型の金融政策を維持できた。銀行は重圧にさらされ、大きなリスクを取った。中国では、『我々は国外から莫大な資金のフローを引き寄せており、これは永遠に続く』という考えから自信が生まれた」と白川氏は言う。
それにもかかわらず、ある政府顧問の言葉を借りるなら、中国政府は金融リスクが「唯一、船を沈めかねないもの」だということを重々認識している。
中国政府は、日本のように中国の貯蓄と成長を減退させる恐れがある厄介な人口動態についても心配している。両国とも15~54歳の生産年齢人口が減り始め、人口ボーナスの段階を通り越えて人口の足かせの段階に入っている。日本では、この転換が1990年に起きた。中国では2012年にそれが起き、人口ボーナスの終わりを告げた。
「中国人が人口動態に目を向けているのは、日本が当時知らなかったことを彼らは今知っているからだ――当時は誰も認識していなかった。人口動態が変わったときに、どれほど急に成長が止まり得るか、我々は日本から学んだ」とシュルツ氏は言う。
日本と中国では、株価バリュエーションは国の人口ボーナスとほぼ同時にピークをつけた。ゴールドマンの馬場氏は、これは「株式市場はバブルのピークに向けて、後々のボーナス期の好況を過剰に推定する傾向がある」ことを示唆しているかもしれないと言う。
日本のバブルの拡大と中国の現状に説得力のある類似点を見いだす人がいることについて言えば、中国は果たして日本が1990年代初めに直面した転換点に近づいているのかどうかに焦点が移っている。格付け機関ムーディーズは5月下旬、大きく、なお拡大している債務負担を引き合いに出し、中国の国債格付けを日本と同じ「A1」に引き下げた。
だが、ムーディーズは一方で、中国経済の見通しを引き上げ、中国の潜在成長率は2022年までに5%に鈍化すると予想した。これは日本が経験した唐突な暴落と長年の停滞よりはるかにましな結果だ。
どちらの国でも、バブルのような行動が何百万人の国民の生活に著しい変化をもたらした。日本の不動産・株式バブルがピークに近づくにつれ、都市部に暮らす生活費は一般の「サラリーマン」の手に届かない水準に跳ね上がった。
1989年になると、東京中心部まで通勤に90分かかる場所の75平米のマンションは、ホワイトカラー労働者の平均給与の8.5倍の値段がついていた。それから30年経った今、中国は首都でそれ以上に劇的な力学が働いているのを目の当たりにしている。北京市内の100平米のマンションの値段は平均で500万人民元。地元住民の平均年収の50倍以上に達しているのだ。
この問題に対する両国政府のアプローチのために、この比較は特に重要だとアナリストらは言う。1989年、日経平均が3万8915円の史上最高値をつける2週間前に日銀総裁に就任した際、三重野康氏は不動産価格の上昇と長い通勤時間を強く非難した。そうすることで、その後の市場暴落の引き金を引いたと、多くの人は今考えている。 あるレベルでは、中国は三重野氏の経験を肝に銘じたようで、数千万人の都市部住民を億万長者に変えたバブルをしぼませるのではなく、バブル拡大を「封じ込める」ことについて語っている。だが、これは微妙なバランスの上に成り立っているものだ。習氏が最近、「家は住むためのもので、投機するものではない」と警鐘を鳴らしたように、この脆弱性に対する中国政府の認識ははっきりしている。
似通っている点のひとつは、「財テク」。日本では投機的な株式投資で、中国では、官製株価バブル崩壊がありましたが、根深いのは「理財商品」や「信託商品」。
異なっている環境としては、日本のバブル始まりの契機が米国の圧力もあった「プラザ合意」による為替の自由化に対し、中国は為替の自由化は行わず管理下においている所。一党独裁政治の中国が、計画経済体制を採っているところも大きな違い。
中国の債務は、政府系の企業が別の政府系の企業に負っているものが圧倒的に多いので、政府はシステムの内部で債務を再編できる点も大きな違いですね。
ただ、債務残高の増加速度は、日本より中国が短期間に増大している。
中国がその独裁政治体制を活かして、日本から学んで採れる対処方があるのですね。
自由経済の日本では、銀行の破綻整理が遅れたが、中国では早期に整理が可能。
人口動態について、その変化が経済に及ぼす影響を、日本での結果から中国は学ぶことができていて、対策の必要性を知り得た。記事では指摘されていませんが、「一人っ子政策」の変更という日本にはない対策余地も持っていますね。
この記事の肝と言えるのは、不動産バブルで、消費者の住居価格が高騰し、通勤時間が長くなったことへの対応の指摘。
日本では、就任早々の三重野日銀総裁が不動産価格の上昇と長い通勤時間を強く非難したことで、その後の株式市場暴落の引き金を引いた。
中国は三重野氏の経験を肝に銘じたようで、数千万人の都市部住民を億万長者に変えたバブルをしぼませるのではなく、バブル拡大を「封じ込める」策を採っているのだそうです。
人口動態、外的経済要因もさることながら、その対処政策が結果を左右するとの指摘です。
少子・高齢化で人口減に対策が取れていない日本。
是非や成功の見通しは別として、「一帯一路」政策で、成長の止まった経済対策として、国外の需要喚起と取り込みの長期政策に取り組む習近平。アベノミクスで、民主党(当時)が沈没させかけた日本経済を立て直したとはいえ、経済基盤改革をして成長を支えるべき第三の矢に苦悩する現状の日本。バブル崩壊後のデフレスパイラルからの脱出が未だ出来ていません。
日本から学んで、財政出動でなんとかバブル崩壊を踏ん張って留めている中国経済。アベノミクス・第三の矢が見いだせず、デフレ脱却に苦戦している日本経済。これから先は、お互いに未知の道を切り開いて進まねばなりません。「一帯一路」を掲げる習近平。「第三の矢」の一つの柱に、「TPP」から転じて「TPP11」を掲げる安倍政権。両国がどんな展開となっていくのか、注目されます。
# 冒頭の画像は、上海の夜景
夏みかん
↓よろしかったら、お願いします。