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中国が軍事力と札束外交を巧みに織り交ぜて、海洋覇権を強めていることは既知のことですが、南シナ海での覇権拡大に対する国々では、「恭順」する国と、「抵抗」する国とに分かれていて、その分岐点を決めているのは、中国からの距離だと唱えている記事があります。
遊爺は、各国とも自国の国益の最適化を優先し、中国と日米豪印との両陣営をバランス良く牽制させていると感心していました。お金の為には「恭順」し、安全保障(主権の維持)の為には、日米豪印との連携を保ち抑止力とする巧みな外交術での使い分けです。
中国と米国との両大国が、経済発展するアジアに注力するなかで、アジアの諸国が生き抜くには、一方への傾斜ではなく、両大国の牽制を巧みに利用し自国の国益を追求することは必然と言えます。力が衰える米国、一方豊富に札束をばら撒く中国といった環境のなかでは、両国を使い分けることは悪いことと断じることは出来ません。
両国を競わせて、最適な利益を得ることは、自国民の為になることです。
更に、アジア回帰を強く打ち出したり、貿易拡大の為に中国へ接近したりして、腰の定まらないオバマ政権だけでは心もとないところがあり、アジアの一方の雄である日本にも対中牽制の勢力として期待されています。
覇権拡大の為のばら撒きと解っていても、自国の経済振興のために中国向け輸出を増やし、中国からの投資を呼び込みたい各国。しかし、中国依存度を高め、属国化すると利益を吸い上げられるだけとなり、チベットやウクライナの様な運命をたどることになる。
そこで歯止めとなる第三国の牽制力が求められるのです。
日本に対する期待が大きいのです。日本にとっても、チャイナリスクがある中国投資から脱して、成長市場のアジア諸国との連携を強化したいところですから、利害は一致します。
国家の主権侵害の脅威を秘めた中国には、「抵抗」が本音で、「恭順」は方便です。それは、中国との距離が近く、脅威が高いほどに「恭順」姿勢が高まることから推し量ることが出来るというのですね。
もうひとつの物指として遊爺が提示したいのは、貿易(特に輸出)の中国依存度が上げられます。国の経済の依存度と言い換えることができます。依存度が高ければ、「恭順」度合いを高めざるを得ないのです。
領土争いで攻防を繰り返しているフィリピンも、バナナの禁輸の制裁を受けながらも抵抗していますが、AIIBへは加盟しました。禁輸制裁が効いている証でしょう。
単純に、距離で「恭順」の度合いが左右されるのであれば、日米の割り込む余地はない事になりますが、貿易依存度となれば、工夫次第で展望は開けます。
安倍政権の「地球儀俯瞰外交」や「21世紀の防共回廊」外交の更なる展開に期待します。
# 冒頭の画像は。アジアインフラ投資銀行の調印式に参加した各国代表と記念撮影する習近平・中国国家主席 (2014年10月)
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この花の名前は、タツナミソウ
↓よろしかったら、お願いします。
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遊爺は、各国とも自国の国益の最適化を優先し、中国と日米豪印との両陣営をバランス良く牽制させていると感心していました。お金の為には「恭順」し、安全保障(主権の維持)の為には、日米豪印との連携を保ち抑止力とする巧みな外交術での使い分けです。
中国には「抵抗」か「恭順」か (12/17 産経 【湯浅博の世界読解】)
最近、中国専門家の話を聞く機会が多い。共通しているのは、いまの中国経済は足踏みしているものの、持てる経済力を武器に周辺国を巧みに抱き込んでいるという説明だ。典型例が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設であり、南シナ海で対立しているベトナムもフィリピンもインドネシアまでもが加盟すると解説する。
自信に満ちた習近平政権は、その勢いに乗って「大国外交」をいっそう強めよう。専門家らはその強さに影響されてか代弁なのか、「日米がAIIBに反対して、蚊帳の外でいいのだろうか」と問いかける。経済関係が深まれば、安全保障も確保されるとの考え方が背後にある。
対する戦略の専門家は、経済の相互依存が進んでも友好が深まるとは限らず、むしろ不安や摩擦を引き起こすと警告する。シカゴ大学のミアシャイマー教授は『大国政治の悲劇』で、第一次大戦前の英国とドイツは主要な貿易相手国だったが、経済的な結びつきが英独関係の悪化を食い止めることはなかったという。米中の経済的な結びつきも、為替相場操作の疑いや対中貿易の極端な赤字でかえって紛争のタネになる。
他方、東南アジアの国々は国益のためにどの大国を活用するかを考える傾向がある。たとえAIIBに加盟しても、主権侵害には海洋防衛力を使って阻止する意思を示し、かつ巧みな外交ですり抜けようとする。東南アジア版の「関与とヘッジ(備え)」である。
ほぼ全域を「中国の海」だとする南シナ海で、中国はとりわけ強硬な態度に出る。これに対する東南アジアの沿岸国は、中国との距離に応じて「抵抗」と「恭順」という相反する2つの政策を使い分けている。中国に近接する国ほど強い圧力を感じ、それをすり抜ける外交術で「恭順度」は高くなる。その典型例は北の国境を中国と接し、過去に中越戦争も経験しているベトナムである。
2013年憲法でパラセル諸島とスプラトリー諸島をベトナム領であると宣言し、潜水艦などの軍備増強に努め、米国など第三国を関与させようとする。同時に中国との対話を絶やさず、外交的にへりくだることも辞さない。それが何千年もの間、中国の陰で生き延びてきた外交の知恵であって本心ではない。
ところが、中国との距離が遠いインドネシアになると、逆に「抵抗度」が大きくなる。南シナ海を隔てたこの国は、治安維持に向いていた陸軍中心の軍から、海軍重視にシフトしつつある。ジョコ新大統領は就任演説で「海洋国家の栄光を取り戻す」と宣言し、中国による南シナ海の「力による現状変更」に反対する姿勢を示した。
とくに、11月の東アジア首脳会議の演説では、同国がインド洋と太平洋の結節点にあると位置づけ、「航海と貿易の自由を守るため、インドネシアが海軍力を大幅に増強する」と表明した。南シナ海のスカボロー礁で中国と対峙(たいじ)するフィリピンの「抵抗度」はいうまでもなく高い。
英誌エコノミストは、中国がAIIBを主導して恣意(しい)的にインフラ投資に振り向ける可能性があり、周辺国には「大きな利益を受けるのは中国だけ」との不満がくすぶっているという。中国の狙いは、まさに市場拡大による「勢力圏の拡大」と受け取られているのである。(東京特派員)
最近、中国専門家の話を聞く機会が多い。共通しているのは、いまの中国経済は足踏みしているものの、持てる経済力を武器に周辺国を巧みに抱き込んでいるという説明だ。典型例が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設であり、南シナ海で対立しているベトナムもフィリピンもインドネシアまでもが加盟すると解説する。
自信に満ちた習近平政権は、その勢いに乗って「大国外交」をいっそう強めよう。専門家らはその強さに影響されてか代弁なのか、「日米がAIIBに反対して、蚊帳の外でいいのだろうか」と問いかける。経済関係が深まれば、安全保障も確保されるとの考え方が背後にある。
対する戦略の専門家は、経済の相互依存が進んでも友好が深まるとは限らず、むしろ不安や摩擦を引き起こすと警告する。シカゴ大学のミアシャイマー教授は『大国政治の悲劇』で、第一次大戦前の英国とドイツは主要な貿易相手国だったが、経済的な結びつきが英独関係の悪化を食い止めることはなかったという。米中の経済的な結びつきも、為替相場操作の疑いや対中貿易の極端な赤字でかえって紛争のタネになる。
他方、東南アジアの国々は国益のためにどの大国を活用するかを考える傾向がある。たとえAIIBに加盟しても、主権侵害には海洋防衛力を使って阻止する意思を示し、かつ巧みな外交ですり抜けようとする。東南アジア版の「関与とヘッジ(備え)」である。
ほぼ全域を「中国の海」だとする南シナ海で、中国はとりわけ強硬な態度に出る。これに対する東南アジアの沿岸国は、中国との距離に応じて「抵抗」と「恭順」という相反する2つの政策を使い分けている。中国に近接する国ほど強い圧力を感じ、それをすり抜ける外交術で「恭順度」は高くなる。その典型例は北の国境を中国と接し、過去に中越戦争も経験しているベトナムである。
2013年憲法でパラセル諸島とスプラトリー諸島をベトナム領であると宣言し、潜水艦などの軍備増強に努め、米国など第三国を関与させようとする。同時に中国との対話を絶やさず、外交的にへりくだることも辞さない。それが何千年もの間、中国の陰で生き延びてきた外交の知恵であって本心ではない。
ところが、中国との距離が遠いインドネシアになると、逆に「抵抗度」が大きくなる。南シナ海を隔てたこの国は、治安維持に向いていた陸軍中心の軍から、海軍重視にシフトしつつある。ジョコ新大統領は就任演説で「海洋国家の栄光を取り戻す」と宣言し、中国による南シナ海の「力による現状変更」に反対する姿勢を示した。
とくに、11月の東アジア首脳会議の演説では、同国がインド洋と太平洋の結節点にあると位置づけ、「航海と貿易の自由を守るため、インドネシアが海軍力を大幅に増強する」と表明した。南シナ海のスカボロー礁で中国と対峙(たいじ)するフィリピンの「抵抗度」はいうまでもなく高い。
英誌エコノミストは、中国がAIIBを主導して恣意(しい)的にインフラ投資に振り向ける可能性があり、周辺国には「大きな利益を受けるのは中国だけ」との不満がくすぶっているという。中国の狙いは、まさに市場拡大による「勢力圏の拡大」と受け取られているのである。(東京特派員)
中国と米国との両大国が、経済発展するアジアに注力するなかで、アジアの諸国が生き抜くには、一方への傾斜ではなく、両大国の牽制を巧みに利用し自国の国益を追求することは必然と言えます。力が衰える米国、一方豊富に札束をばら撒く中国といった環境のなかでは、両国を使い分けることは悪いことと断じることは出来ません。
両国を競わせて、最適な利益を得ることは、自国民の為になることです。
更に、アジア回帰を強く打ち出したり、貿易拡大の為に中国へ接近したりして、腰の定まらないオバマ政権だけでは心もとないところがあり、アジアの一方の雄である日本にも対中牽制の勢力として期待されています。
覇権拡大の為のばら撒きと解っていても、自国の経済振興のために中国向け輸出を増やし、中国からの投資を呼び込みたい各国。しかし、中国依存度を高め、属国化すると利益を吸い上げられるだけとなり、チベットやウクライナの様な運命をたどることになる。
そこで歯止めとなる第三国の牽制力が求められるのです。
日本に対する期待が大きいのです。日本にとっても、チャイナリスクがある中国投資から脱して、成長市場のアジア諸国との連携を強化したいところですから、利害は一致します。
国家の主権侵害の脅威を秘めた中国には、「抵抗」が本音で、「恭順」は方便です。それは、中国との距離が近く、脅威が高いほどに「恭順」姿勢が高まることから推し量ることが出来るというのですね。
もうひとつの物指として遊爺が提示したいのは、貿易(特に輸出)の中国依存度が上げられます。国の経済の依存度と言い換えることができます。依存度が高ければ、「恭順」度合いを高めざるを得ないのです。
領土争いで攻防を繰り返しているフィリピンも、バナナの禁輸の制裁を受けながらも抵抗していますが、AIIBへは加盟しました。禁輸制裁が効いている証でしょう。
単純に、距離で「恭順」の度合いが左右されるのであれば、日米の割り込む余地はない事になりますが、貿易依存度となれば、工夫次第で展望は開けます。
安倍政権の「地球儀俯瞰外交」や「21世紀の防共回廊」外交の更なる展開に期待します。
# 冒頭の画像は。アジアインフラ投資銀行の調印式に参加した各国代表と記念撮影する習近平・中国国家主席 (2014年10月)
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この花の名前は、タツナミソウ
↓よろしかったら、お願いします。
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