遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国本土で初の債券デフォルト

2014-03-08 23:46:33 | 中国 全般
 中国の太陽光電池メーカー、上海超日太陽能科技が7日に予定していた社債に対する8,980万元(約15億円)の金利支払いの大半が同日実行されず、中国本土の債券市場で初のデフォルト案件となることが明らかになったのだそうです。
 全人代開催の最中で、李克強首相が経済政策を謳い上た直後のニュース。面子を重んじる中国では、李克強首相の面子丸つぶれと言えます。もっとも、改革の司令塔「全面改革指導小組」の組長には李克強首相ではなく習近平自らが就任しましたから、習近平のメンツも潰されたことになるとも言えます。

 このニュースには、次の注目点があります。本土の債券市場初のデフォルトであること。サンテックに続いての大手太陽光発電関連企業であること。裏金融の理財商品で出始めていてなんとか抑えていたデフォルトが表にもまわってきたこと。全人代の会期中であるにも関わらず救済しないこと。

 今年に入って理財商品のデフォルトが連発したのは以下。
 
HSBCに飛び火? 中国の「理財商品」ついにデフォルトへ (週刊文春) - Yahoo!ニュース

 裏から表に及んできたデフォルトを危惧するのが以下。
 
中国の債務不履行リスク、「裏」から「表」に波及 :豊島逸夫の金のつぶやき :金 :マネー :日本経済新聞
 
中国、初の債券デフォルトの可能性 400兆円規模債券市場がクラッシュも - 政治・社会 - ZAKZAK

 「影の銀行」問題が懸念される中国で新たに深刻な金融問題が浮上した。大手太陽光発電関連企業が社債の利払いができず、中国本土で初の債券デフォルト(債務不履行)の可能性が強まった。これが蟻の一穴となり、400兆円規模の債券市場がクラッシュに至る懸念もある

 5日に始まった全国人民代表大会(全人代)で李克強首相は、経済成長率7・5%の目標を掲げる一方、名指しこそしなかったものの安倍政権を声高に批判した。そのウラには
「反日」に国民の目をそらせたい要因
を抱えている。
 太陽光電池・パネルメーカーの上海超日太陽能科技は、7日に予定していた8980万元(約14億9000万円)にのぼる社債の利払いが実行できなくなったことを明らかにした。社債は総額10億元で年利8・98%の高利回りだが、同社は、甘い格付けで知られる中国系格付け会社からも信用格付けを最低レベルに引き下げられていた。
 
中国の太陽光発電関連企業は生産過剰により経営が悪化
しており、昨年には世界最大手だったサンテックパワーが事実上破綻している。
 これまで中国の国内市場で発行された社債については、救済措置がとられデフォルトが回避されてきたが、利息に加え元本の償還も難しい同社は社債そのものもデフォルトとなる可能性がある。
 「業績が悪化した企業の社債がデフォルトするのは市場原理としては正常だが、中国経済が失速する現状では国内外の投資家がパニックとなる恐れもある」と企業文化研究所理事長の勝又壽良氏は指摘する。
社債で150兆円、債券全体では400兆円規模の市場から資金が流出すれば、中国企業の資金調達が難しくなり、破綻ラッシュとなる事態もありうる

 同社の社債よりも
高利回りで透明性の低い「影の銀行」の理財商品も含め、デフォルト問題は中国全体に延焼しそうだ


 サンテックに続いての大手太陽光発電関連企業であることに注目するのは、諸兄がご承知の様に、中国は国策として太陽光発電産業での世界シェアを早々に抑えようと、安値輸出を援助促進し、欧米や日本企業を追い詰めていました。欧米では国を挙げてその中国の不当な安価輸出援助姿勢を指摘していました。ただ、EUにおいては、EU各国が指摘していたにもかかわらず、メルケル氏が自国の中国輸出欲しさの為に中国の圧力に屈して、EUへの中国の不当安価進出阻止の動きを消させてしまいましたが...。
 中国は、サンテックの事実上の破綻は、無錫市の支援や江蘇順風光電科技による買収といったかたちで再生を進めました。世界市場制覇の国策は変えていないということでしょう。ところが、その安売り競争が自国企業の首を絞めるかたちで跳ね返ってきています。つまり、安売りで世界市場を席巻する中国のこれまでのビジネスモデルの破綻の兆が見えてきたと言えます。

 更に今回は、中国本土の債券市場で初のデフォルト案件となるもので、しかも全人代の開催中にもかかわらず救済していません。
 その理由を、産経は以下の様に報じています。
 

中国初の債券デフォルト 太陽光電池大手 当局、救済せず (3/8 産経)

<前略>
 中国ではこれまで、デフォルト懸念が生じた債券は市場の動揺や反発を避けるため、国有商業銀行などが救済の手をさしのべてきたが、このことが、投資家らの間に、「最後は当局が救ってくれる」とのモラルハザード(倫理の欠如)を広げる結果を生んでいた

 モラルハザードは社債よりもさらに高利回りで透明性の低い「影の銀行」の金融商品でも浸透。市場関係者は「影の銀行」に類する金融商品のうち、「年内に償還期限を迎える約5千億元にデフォルト懸念がある」と警戒している。
 今回の問題で証券管理当局は債券のデフォルトを初めて認めた格好だが、「今回のデフォルトが今後、金融システムリスクにつながらないよう監視する」と強調している。
 ただ、「海外を含む債券市場が週明け以降どう反応を示すかは不透明」(市場関係者)だ。


  つまり、「最後は当局が救ってくれるというモラルハザード」に対する引き締めのためのスケープゴートとの分析です。
 ただ、それは記事でも指摘されている通り、市場の反応がどのような動きをするのか未明なところがあり、リスクもある判断です。が、影の銀行の破綻のすべてを救うことは困難で、いつかは破綻処理をせねばならない時がくるのですから、不良債権が更に拡大しない為にも、そろそろメスを入れねばならない時期がきていて、リスクを最小限に抑えながらも、全部を救済することはないと、無謀投資家に知らしめる時が来ているのですね。

 全人代の会期中に曝したもう一つの理由を、遊爺の考えすぎの蛇足としてもうひとつ。
 習近平と胡錦濤・共青団との政治権力闘争が続いていることは、これまでにも触れてきました。
 習近平は、李克強首相の権限を削ぐことや、団派の切り崩しをして、権力の集中と乏しい政治基盤の強化を続けています。

 
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 経済の李克強首相が、全人代で経済を語る。そしてその直後に中国本土の債券市場で初のデフォルト発生情報公開。7日の利息支払い期限は事前に判っているはずですから、最低でも全人代期間中の破綻を回避する策はいろいろあるはず。
 冒頭で、李克強首相の面子も潰れるが、「全面改革指導小組」の組長にしゃしゃり出た習近平の面子も潰れると書きましたが、誰の眼で見ても、あるいは全人代の李克強の演説からも、経済は李克強とは明らかな認識です。習近平・李克強体制の基本が「政左経右」と言う表現も引用させていただいていました。 たたけばいくらでも出て来る今日のバブル崩壊危機をはらんだ中国の経済状況の不具合。これを積み重ねることで、李克強首相の力を削いでいく。それが、習近平への権力集中に繋がり、政権の安定と延命に繋がるのです。 党常務委員の椅子争いで、土俵際の大逆転で胡錦濤に勝った習近平が考えそうなことだと邪推するのは、遊爺の考えすぎでしょうか。





  この花の名前は、ツリガネニンジン  撮影場所;六甲高山植物園 (2013年 9月 撮影)


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