遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

尖閣諸島をめぐる中国の姿勢への世界の目

2010-10-03 01:16:34 | 東シナ海尖閣諸島

 尖閣諸島の海域での、中国漁船逮捕と釈放に関する各国の主要紙の論調を、いつものgooの「ニュースな英語」でコンパクトにまとめていただいています。
 当事者は日中でも、話の主題はどうしても「JAPAN」ではなく「CHINA」になってしまっているとのことで、それ自体が話の本質を象徴していると書かれています。時流ですね。
 中国と日本のどちらが勝ったかといえば、中国でもなく、勿論日本でもない。
 日本を筆頭にアジア各国が対中不信感を高めたことで、アメリカが存在感を増した、漁夫の利を得たというのが、今回の顛末なのかもしれません。「日本の外交力は経済力を遙かに下回る」ことを改めて世界に示し、そして中国は相変わらず「独自ルールで動く傲慢な全体主義国家」という対外イメージを補強してしまったと書かれています。
 確かに、米国各紙の論調からは、そのように読み取れます。

 外交戦術でも、安全保障戦略でも筋の通った定見を持たない無為無策な民主党政府ですから、今回の大失政の挽回には国際世論にすがるしか方策が無い状況ですので、その動向と、日本のPRが注目されます。
 
日本と中国、漁船衝突は勝ち負けで言えばどこの漁夫の利か(gooニュース・JAPANなニュース) - goo ニュース

 中国の国内世論について英『フィナンシャル・タイムズ(FT)』紙は、国内世論ばかり注目すると中国政府の姿勢を見誤ると指摘し、当局にとって都合がいい間は感情的なナショナリズムの文脈で話を続けるけれども、本当に大事なのは資源権益や外交力・覇権力の問題なのだと述べているのだそうです。
 中国のネットの情報コントロール力の強さは、諸兄もご承知の通りで、かつてとは異なり今日では当局の意向で蛇口のコントロールがなされていると考えたほうがよさそうですね。
 各紙の論調は以下に転載させていただきます。


英 フィナンシャル・タイムズ(FT)
 24日付のこちらの記事で、「中国の戦術は裏目に出る危険性も(China’s tactics risk backfiring)」と見出しにとり、「今回の強硬姿勢は中国政府にとって裏目に出る恐れもある。世界第2位の経済大国として日本を追い抜いたばかりの中国は、アジアで影響力を増している。その中国に対してアジア各国の懸念はただでさえ高まりつつあるのだ」と指摘。東南アジア各国は日本と同じように中国と領有権をめぐり争い、韓国は北朝鮮による哨戒艦撃沈をめぐり中国に怒り、インドは(国境紛争から経済上の利害対立まで)様々な対中案件を抱えている。そういう状況で、経済力を背景に強硬姿勢外交に出てくる中国に対してアジア諸国が不満を募らせる現状は、「アジアの外交と安全保障でアメリカが存在感を取り戻す、恰好の機会となった」と書いています。

英 ロイター通信
 「アメリカの存在感が以前ほどではなくなる中、中国がますます大きく大胆で、おそらく威張った国に変わっていこうとしている。その変化を前に、アジアが調整を始めた」と書いています。増大する国内総生産(GDP)を背景に中国が軍備を増強し、資源や、国際的な尊敬をますます要求してくるだろうと。「その驚異的な台頭をリングサイドで眺めながら、アジア各国は中国の力に対してどこで境界線を引くか(時には実際の境界線をどう引くか)」慌てて検討しているが、「自分たちがどこまで力を発揮したいのか、中国政府そのものがまだ決断しかねているようで、それがさらに地域の不安感を煽っているのだ」と。

米 ニューヨーク・タイムズ
 船長釈放を受けて「中国と日本は、東シナ海における対決からお互いに一歩引き下がった。賢明なことだ。今回のこの件を通じて、領土紛争があっという間にエスカレートしうる危険性があらわになったし、なぜ当事者同士が紛争解決に向けてもっと努力すべきなのかも浮き彫りにした」と論評。「どちらに非があったのかは分からない」と中立を保ちつつも、「水産資源、石油、天然ガスの豊富な水域にある」尖閣諸島について、領有権を主張する中国の声はここ数カ月「けたたましさを増している(increasingly shrill)」と書いています。「中国政府は、ベトナムや南北朝鮮も領有権を主張する南シナ海を『根幹的な国家利益』だとまで言い始めている。外交の世界では、これは戦闘的な言葉(fighting words)だ」とも。
 さらに同紙は、「中国は日本に無理矢理撤退させたが、それは自分たちのためにはならなかった。強引で高圧的なふるまいは、中国政府はどういうつもりなのかと近隣諸国の不安を高めるだけだ」とも書きます。「強引で高圧的なふるまい」と訳したのは「bullying behavior」で、これは普通に訳すなら「いじめ行為」です。
 日本に対しても、普段は領海侵犯の中国漁船は警告して追い返すだけなのに、
なぜ今回は逮捕したのかが不透明だと指摘。その上で同紙は、日本と強い同盟関係にあるアメリカは、中国にもっと責任ある地域のプレイヤー(当事国)になるよう促すべきで、直接衝突を防ぐようアメリカが仲介するべきだと主張しています。

米 ワシントン・ポスト
 そもそも、アメリカが中国と正常にやりとりすればするほど、中国の繁栄を促進し、国際機関にも参加するよう促せば促すほど、「中国は平和と安定の勢力になるだろう」という目算が、アメリカの対中外交の大前提だったと。
 確かにこれまでの中国の「驚くべき台頭は相対的に平和なものだった」ので、日韓を含む多くのアジア諸国が、地域安定を保障する存在として、アメリカより中国の方が頼りになるのではないかと思い始めていたと。あるいは今後は米中が「G2」のパートナーとなり世界を動かすのではないかと期待されていたと。
 しかし、と『ワシントン・ポスト』は書きます。「ここ数週間のふるまいから中国が依然、全体主義国家なのだと世界は思い出した」、「自分たちの経済力をどうやって政治や軍事に使うかについて、中国は独自の考え方を持っていることも、改めて世界は知った」と。
 日本とのやりとりから浮かび上がった中国の姿は、「規律のとれた国際システムに順応していこうという穏やかな大国のそれではない。むしろ中国の最近の行動は、19世紀の重商主義的なふるまいに見える」と。そして「日本や韓国などアジアにおけるアメリカの同盟諸国は、中国のふるまいに照らし合わせて、アメリカとの関係性を保つことが賢明だと再発見したようだ。アメリカ政府はそうした諸国をしっかりと支えなくてはならない」と。

カタール アルジャジーラ
 「中日紛争の勝者は……」という見出しの25日付記事を書いています。前半では、日本が漁船船長をいきなり釈放したのは「ugly」だったと論評。元々は「醜い」という意味のこの単語をどう訳すのかで迷っています。文脈だけでいくと「みっともない」かなとも思うのですが、そういう意味であまり「ugly」は使わないので。むしろ「ひどい展開」という意味で使うのが普通ですが、チャン記者がどちらの意味で使っているのかちょっと分かりません。
 いずれにしろ、船長釈放によって「日本は、中国との対決から引き下がることを世界に告げたのだ」とチャン記者は書きます。「アジアの勢力バランスが(日本から中国へと)変化しつつあるのは両国もかねてから承知していたが、現時点での力関係がどうなっているのかはっきりとは分からなかった。2010年9月のこの時までは」と。
 「だからこの戦いは、中国が勝ったのだ……ですよね?」と記事は続きます。「帰国する船長を英雄のように出迎えて、国を挙げてのお祝い騒ぎになったという意味では、確かに勝った。中国の思う通りになった。国内的には、共産党にとって実にありがたい展開だ。しかし、アジアの他の国々はどう思っているのだろう」と指摘し、「誰かレフェリーになってくれないかと誰もがいきなり思い始めている。アメリカがもっとこの辺にしょっちゅういてくれても嫌じゃないのにと」と結んでいます。

加藤祐子氏(記事筆者)の見解
 『ワシントン・ポスト』が、今の中国のふるまいは19世紀の重商主義時代のようだと書いているのが、当を得ているような気がします。国家というのはそれぞれに近代化のペースが違うので、近代化の遅れた国はどうしても、先に近代を迎えた英米などからすると「時代遅れ」、もっと言えば「野蛮」に見えてしまう。

<中略>

 高圧的に力まかせで時には大嘘をついてまでも他国の領土をぶんどるのは、かつては英米仏のお家芸でした(ペリー准将が大ウソだと承知しながらも「小笠原諸島はアメリカ領である」と主張し、それを徳川幕府がどう論破したかのくだりは、みなもと太郎さんの『風雲児たち』の一大名場面です)。
 領土を主張し、海外に資源を求めて力でゴリ押しするのも、かつての米英仏のお家芸でした。それを日独伊が数周遅れでやろうとしたら(やり方が強引すぎたせいもあり)叩きのめされた。そこから半世紀以上たって、国際システムがぎしぎしと音を立てながら変わりつつある今、新たな覇権国・中国がさらに何周も遅れて(というか、レースのルールがすっかり変わってしまっているのに)150年前と大して変わらない態度に出ている。

 それを覇権国・アメリカが「やりすぎですよ」と諫めるのは、必要なことだろうと思います。「お前が言うな」と言いたい気持ちを飲み込んででも。覇権国とは力を頼みにやりたい放題できるから覇権国なのではなく、国際システムにバランスをもたらすという役割を担って初めて、まともな覇権国たり得るのですから。


 英の両紙は第三者の立場で見ていて、米の両紙は、日米同盟があり近い立場ですから突っ込んだ見方をしているように思えますが、米国を中心とした発想で米国の復権による役割を説いていますね。
 ニューヨーク・タイムスが、いつもは追い返しているだけなのに、今回逮捕に至った理由が不明としているのは、政府の国内や国際世論への説明不足によるもので、猛反省し、今後に活かしていかねばならないところですね。

 筆者の加藤氏が賛同しておられますが、遊爺もワシントン・ポストの「19世紀の重商主義的なふるまい」論が事態のわかりやすい説明だし、広く浸透してほしい理解方法だと考えます。
 表現は異なりますが、他紙も触れているように今回の事件は一過性のものではなく、中国の中華思想に基づく覇権拡大の流れの中の一段階であり、ここでの歯止めいかんでは更に覇権拡大に拍車がかかるとの理解がなされるかどうかなのです。
 そこで、危機感を世界世論が共有できれば、今回の大失政による日本の歴史に残る失地は回復の可能性が出てきます。

 自民党が独自に米国の各党と接触を進めるといっていますが、与野党共に民主党への政権交代が招いた、G2たる米・中の世界の2大国家との関係破壊からの復興へむけ全力を傾けるべきでしょう。
 他でも書きましたが、今は、蒙古来襲以来の国難に面している、国家の存続の危機の時なのですから。




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 日本は国境を守れるか 

中国人民解放軍の正体―平和ボケ日本人への警告!!


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Unknown (一般人)
2010-10-07 00:00:40
こんばんは。 今日は休みだったので、尖閣のマトメしましたが、なかなか上手く書けず。。。

ところで国会ってどんなタイミングで開催されるんですかねえ。
今日は偶然生で見れましたけど。
そこで、自民党 稲田朋美議員が民主党に、「友愛の海などと、寝とぼけたことを・・・」なんて素敵なことをおっしゃっていました。

惚れました。 笑
返信する
稲田朋美議員 (遊爺)
2010-10-07 09:58:36
一般人さん、こんにちは。

> 惚れました。 笑

 私も偶然見ました。解りやすく、ズバッと切り込んでいて、すっきりしました。思わず、以下のURLの様ににアップしました。今朝の各紙やテレビでも取り上げて、谷垣氏よりはインパクトがあり、国民の気持ちをよく反映していると好評で、責められて「イラ菅」復活との評価が多いですね。
 yuujii-iza.iza.ne.jp/blog/entry/1831536/
(不正リンク防止のため http:// を省略しています。)

 国会中継は、衆議院であれば以下の「衆議院TV」(参議院もリンクがあります)で、ネット上の中継や、録画をみることが出来ますね。
 本会議や委員会の予定も見ることができます。
 shugiintv.go.jp/jp/index.php
(不正リンク防止のため http://www. を省略しています。)
返信する
Unknown (一般人)
2010-10-07 22:00:27
こんばんは。
>自民党のお爺ちゃん連中も、中堅・若手も満面の笑みと野次・喝采を贈っていました。

良かったですね  石原Jr.も爆笑してましたね。
尖閣の件にて 都知事の意見を取り上げたのですが、石原一族はカルト宗教と仲が良いのですが、
その部分は信用できるはずがありませんが、国防に対する意見は普通に良いと思います。

しかし、衆議院議長に横路 参議院議長に輿石ですか。 これは与党が抜擢するんですよね?
ここに何らかの意義は在るのでしょうか。

岡崎トミコ氏 山谷えり子氏 に関しては全く知りません。

>最近の谷垣氏は当初に比べると熱弁がうまくなり、国難の今の時期、
>国会議員がひとりひとり国民に選ばれた役割をまっとうしようと結んでいました。

まだ全部みていないので良く分かりませんが、とにかくこの人は揚げ足取りばかりでみっともない。 「迫力に欠ける」と言われているそうですが、
それは、声の大きさや態度を指しているのではなく、
その指摘内容がしょうもないからですよね? こりゃ駄目だ、と思っています。

安倍氏が良いと思いますが、人が良すぎて気が弱いので総裁不向きでしょうか。
国会の動画サイトをお教えいただいたので、今見ています。

返信する
国会中継 (遊爺)
2010-10-09 10:40:07
一般人さん、こんにちは。

 議員さんには、はいろいろな個性(国益への貢献、国のあるべき姿へのビジョン等)を期待しますが、中堅、若手の中から育ってきてほしいです。小粒ではなく、スケールの大きな人物。
 去日の「カンカラ菅」の国会答弁で、騎兵隊について、高杉は大風呂敷を広げていたと発言していました。自分の口先だけの施政をジョークでかわそうとしたのかも知れませんが、大失笑と野次でしたね。内閣を騎兵隊内閣というのは、侍ではない庶民集団(鳩を含む世襲内閣を批判)だと言う為のイントロでしたが...。

元エリート大蔵官僚の片山さつき氏が質問に立って、経済政策を詰めていました。仙石氏は、総理が応えたのと同じとか、大臣が応えたのと同じとか言って、応えなかったり、ひとつだけ一言付け加えるとして答えたものも、大声での棒読みで議会を冒瀆する姿勢でした。相変わらずです。

来週からは委員会となり、「カンカラ菅」も官僚の原稿をつっかえそうになりながらの棒読みでは済まなくなります。ステルス作戦、逃げ作戦がいつまでもつのか。その正体が露呈してくることでしょう。

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