過去の話ですが、へぇ~って感じです。一筋縄ではいかない外交の凌ぎあいに、麻生政権も、さらに低レベルの民主党も、子供扱い以下ですね。
(朝日新聞朝刊の見出し=北方領土交渉「指導力ない」 米公電麻生政権を酷評)
米外交当局が、自民党政権末期の北方領土問題への取り組みを、「指導力に欠けている」などと、非常に厳しく評価していたことがわかった。朝日新聞が内部告発サイトのウィキリークスから提供を受けた外交公電を分析した。
在日米大使館はロシアのプーチン首相の訪日を翌月に控えた2009年4月、日ロ関係全般についての分析を国務省に報告。「日本には、北方領土返還交渉のための計画も、計画を策定して最後までやり遂げる指導者も欠けている」と、当時の麻生政権を酷評していた。
同年2月、麻生太郎首相とメドベージェフ大統領は「独創的なアプローチ」で解決を目指すことで合意。日本側では進展への期待が高まっていた。だが、公電は、麻生首相について複数の情報源の見方として「北方領土問題について信頼できる助言者がほとんどいない。彼の指導スタイルが他人に耳を傾けることを妨げている」と指摘した。
野党・民主党についても見方は厳しく、北方領土問題では「政策の真空状態」に置かれていると指摘。新しい発想が出てこない理由として、「(02年にロシアに柔軟姿勢を示したと批判された)鈴木宗男前衆院議員を巡るスキャンダルの後遺症」を挙げた。
問題解決への日本の「本気度」を疑う記述もある。「日本は、エネルギー供給を、領土問題の速やかな解決よりもはるかに切実に必要としている」と分析。経済関係が深まる日ロ双方にとって「現状維持は受け入れ可能。それどころか好都合」と指摘している。
米側が日本の楽観的な見通しを一貫して冷ややかに見ていた様子は、他の複数の公電からもうかがえる。
たとえば、06年末に石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」をめぐってロシア側が三井物産、三菱商事などから権益の過半数の譲渡を受ける妥協案がまとまったが、07年1月の公電は「日本外務省は、この結果が北方領土交渉を促進すると信じている」と指摘し、「驚くべきことだ」とした。
同年2月には、在モスクワ米大使館発の公電が、前月に始まった外務次官級の「日ロ戦略対話」について、「ロシア側は領土問題解決のためのチャンネルとは見ていない」のに「日本側は領土問題が『隠れたテーマ』になると主張している」と報告していた。
09年4月の公電は、日本の外務官僚が、「メドベージェフ大統領にはやる気がある。交渉が進まないのは、部下が大統領に適切な情報を上げていないからだ」と信じていると指摘した上で、「おそらく、ナイーブ(世間知らず)な評価だ」との見方を示している。 こうした分析の背景には、米側がロシア側から得ていた情報があったようだ。「ロシア指導部は北方領土について、第2次大戦でヒトラーを支持した結果日本が払った代償で、対独戦でロシアが失った数百万の命の補償の一部だと考えている」とし、譲歩は望めないとの見通しを繰り返し伝えている。(文中の肩書は当時)
ネットの表題と新聞の見出しが異なっています。(よくあることですが)自民党全体を差すのではなく、麻生政権を差す新聞の見出しが的を得ていて、朝日にも良識のある記者がいると感じさせられます。
北方領土返還交渉の計画も指導者も日本にはないとの指摘は、その後の今日までの現実が証明している正しいものですね。そしてそれは、麻生政権から、当時野党として評価された民主党政権になって、重なる失政(尖閣、メドベージェフ大統領北方領土訪問)で、更に悪化しています。
「サハリン2」でのロシアのやり口に懲りない日本政府や産業界については、遊爺も再三指摘してきていますが、むしろ北方領土交渉を促進するとの真逆の日本政府の判断に、米国は驚いていたとのことですが、当然の話です。ロシアが自国の利益のためには約束を反故にする国であることは、北方領土問題の発生原因でもあり、「サハリン2」でも「サハリン1」でも繰り返されている事なのです。
ロシア政府の考えを、全く逆の形で日本政府が認識する現象は、今回のメドベージェフ大統領の北方領土訪問でも発生しています。外務省・駐露大使館の収集情報が違っているのです。外務省のロシア組がガタガタになったのは、ムネオが食い散らかしたことが原因であることは、指摘通りですね。
日本の情報収集・分析能力を、「世間知らず」と切り捨てています。
「ロシア指導部は北方領土について、第2次大戦でヒトラーを支持した結果日本が払った代償で、対独戦でロシアが失った数百万の命の補償の一部だと考えている」と言う話は初耳です。戦勝国同士の会話では、そんな話があるのでしょうか?米国の収集情報の真偽、WikiLeaksの公電の信頼性に負うところです。
朝日新聞の、下斗米教授の「外交の言葉と歴史の真実は別物だ」という解説が重く感じられます。
これより前の安倍内閣の時のロシア外交に関する公電も紹介されています。
台頭する中国を、日米露で牽制しようとしたというのです。
日本外務省は自民党政権末期、米国と協力してロシアのアジア太平洋地域への進出を促すことで、北方領土問題打開の糸口をつかむ戦略を描いていた。ウィキリークスが入手した米外交公電でわかった。力をつける中国への警戒感が、日米ロ3国を結びつける接着剤になると考えたようだ。
07年6月の在日米大使館の公電は、直前に行われた安倍晋三首相とプーチン大統領の首脳会談の内容とともに、日本の対ロ外交方針について日本外務省幹部から説明された内容を、本国に報告していた。
外務省幹部は米側に「ロシアがアジア太平洋地域へのより大きな関心を示すようになっている」との分析を披露。ロシアの姿勢がアジア重視に変化してきた理由として「中国の発展に対する懸念がある」と指摘。その上で、「建設的な形でロシアを地域に統合させることに失敗すれば、ロシアが中国と戦略的関係を深める危険が高まる」という危機感を表明、助力を求めていた。
この幹部は、端的に「日本は、ロシアと中国の間にくさびを打ち込みたい」とも語っていた。この当時、中国の急速な発展を背景に、知的財産権や人民元レートを巡って米中間がぎくしゃくしていた。
日本外務省の狙いは、日米にロシアも加えた3国で、中国への懸念に取り組む形を作ることにあったと見られる。そうすれば、地域の不安定要因となっている北方領土問題は3国が協力して解決しなければならない課題として位置づけられ、米国からの支援を得やすくなると考えたようだ。
ただ、米側が前向きに応じたとする公電は残っていない。
朝日新聞がウィキリークスから提供を受けた日本関係の米外交公電は10年2月まで。一連の公電からは、09年9月の政権交代後の日本の対ロ外交を米側がどう見ていたかは不明だ。(文中の肩書は当時)
手前味噌というか、自分勝手というか、発想が素人レベルというか、安倍氏本人の考えなのか、外務省の考えなのか、拙速な話の運びで、米国に無視された様ですね。
公電は、過去の話で、政権交代後の新政権への評価などは見られませんが、明らかな不信の態度を露骨に示されていますから、公電ではどれだけ酷評がとびかっていることか...。
ロシア政府の情報については、大使が交代したことで精度が上がる、少なくとも真逆の情報分析が生じないことを願っていますが、米国に情報を貰うなり、摺合せするなりした方がよいでしょうね。もちろんその答えも、「外交のことば」としての認識が必要ですが。
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