米国は、議長であることもあり、大統領選に向けた国内への点数稼ぎもありますが、かねてよりシフトしてきている、安全保障体制と、経済(輸出先)のターゲットをアジア・太平洋地域に置くことをここで一段と鮮明にしてきましたね。
カナダ、メキシコのTPP参加意向表明も、オバマ支援となりました。
米国は、早速日本に対して要求事項を突き付けたり、日本は「全製品・サービスでTPP交渉」と情報をリーク(捏造?)するなどしてプレッシャーをかけてきていますが、同時に中国に対しても人民元切り上げなど要求を切り出しています。大統領選を控え、低下している支持率に、お尻に火がついているということでしょう。
時事ドットコム:新経済・安保体制構築へ=アジア太平洋に軸足-米
【ホノルル白戸圭一】オバマ米大統領は12日午後(日本時間13日午前)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため米ハワイ・ホノルル訪問中の中国の胡錦濤国家主席と会談し、米国の議会や産業界で中国の輸出超過への不満が高まっている事情を伝え、人民元を切り上げるよう要求した。来年の大統領選で再選を目指すオバマ大統領はアジア太平洋地域への輸出拡大による雇用拡大を目指しており、中国に毅然(きぜん)とした態度を示すことで米国内の要請に応えた形だ。
記者団に公開された会談の冒頭、オバマ大統領は「米中の建設的関係が継続的成長と繁栄の基礎だと域内の多くの国々がみている」と発言、中国に経済大国としての自覚を持った振る舞いを求めた。
中国外務省によると、胡主席は「米国の貿易赤字や雇用問題などの構造的な問題は人民元の為替相場によってつくられたものではない」と反論、中国向けの米ハイテク製品の輸出規制の緩和や、中国企業の米国進出に便宜を図るようオバマ大統領に求めた。
会談後に記者会見した米国のフロマン大統領副補佐官(国際経済担当)によると、会談の大半は米中間の経済問題に割かれた。オバマ大統領は胡主席に対して、米国内の中国政府に対する「いら立ち」を「極めて率直に」伝えたという。
また、大統領は中国での模造品の大量生産や著作権侵害など知的財産権の問題にも言及し、胡主席に対応を求めた。米国が主導する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については話し合われなかったという。
一方、両首脳は国際原子力機関(IAEA)の報告書で指摘されたイランの核開発について意見交換し、イランが国連安保理決議を順守する義務があるとの認識で一致した。北朝鮮の核問題や、南シナ海における「航行の自由」の問題も話し合われたという。
中国に富が集中するのは、為替管理をしてハンディをつけた競争をしているのが原因であり、人民元の自由化こそが平等な競争となり、円に集中するドルやユーロから逃げ出す資金の人民元への分散にもなり、過度な円高も回避できると遊爺は唱えてきました。
米国は、この人民元切り下げを要求し続けてきていますが、日本も底をついてきている資金での為替介入ではなく、人民元の切り下げや、自由化を求めることが国益につながります。
GDP第二位の大国と自負するのなら、ドルに代わる基軸通貨を言うのなら、中国自らが人民元の自由化をすべきでしょう。
日本のTPP交渉参加に対し、招待されていないとすねている中国。まずは、自由化が必要でしょう。しかし、突っ込まれても、(資本主義の)構造的問題で、人民元のせいではないと即座に切り返すのは、国益を守る外交としては当然のことで、敵ながらも日本が見習わねばならないところです。
日本のTPP交渉参加表明で、カナダ(事前交渉で障壁となっていた木材と乳製品の規制を勝ち取ったとの情報もあり)やメキシコも参加意向を示し、ロシアもWTO参加を表明したり、IMF拠出金増額(ラガルド専務理事の訪問での欧州向け資金要請によるものが主因ですが、日米のTPP体制に刺激された面もある)するなど、日本のTPP交渉表明は流れを湧き起こしました。
ロシア WTO加盟支援で米に謝意 NHKニュース
ロシア、欧州支援でIMFへの資金拠出拡大に前向き=IMF専務理事 | ビジネスニュース | Reuters
しかしながら、TPPの会合に、最低でも前回の日本でのAPECの時と同様のオブザーバー参加をと事前交渉したにも関わらず、今回のTPPの会合に日本の参加は拒絶されました。同時に、冒頭に述べたように、米国からは早くもプレッシャーをかけられています。が、これらはある程度予測されることでもあったはずです。問題は、そういう日本不信感で試してくるまたは、先手で抑えにかかってこられた時への対応策を準備し、中国の様にすかさず反攻できたかです。
「参加ではなく、各国との交渉開始」との姿勢を、ハワイでも貫いたとのことですが、これが、迎える側の上から目線の態度への反攻だとすれば、それなりに評価できます...。
TPP首脳会合、野田首相は出席できず : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
藤村修官房長官の発言だと、そんな戦略は含まれていない様に見えますが。
【TPP交渉参加】藤村官房長官、TPP会議不参加問題視せず「日本は今から協議する段階」 - MSN産経ニュース
米国は、国内世論や議会を盾に交渉してきています。日本も当然、国会や国内世論を盾に交渉に臨めばいいのです。もっとも、米国の主張は、規制廃止の要求で、日本は規制温存の要求というちがいがあるのですが。
アジアでの、中国の覇権拡大に、安全保障と経済で連合軍を組んで牽制しようとする米国の政策に、GDP三位の日本が組することは、その流れを大きく加速させ、関連国に影響を及ぼしています。米国やTPP参加国は、この日本の貢献を感謝すべきで、上から目線で迎えるのは筋ちがいです。日本は、堂々と大国であることの自負をもって、GDP規模に見合うリーダーシップを発揮するよう、毅然とした行動をすべきでしょう。
そのためには、国内の反対勢力が強いことをPRして利用するという論がありますが、これは同時に政府が国内をまとめきれていないという不信感を招く逆効果を生むことになり、正攻法ではないでしょう。
いよいよ始まる国益をかけた外交交渉。環太平洋諸国やアジアの諸国の発展に役立つのだという大志を掲げ、リーダーシップを発揮する高い目標を目指し、ある意味戦争に臨む気概で、政府には頑張っていただきたいですね。
この花の名前は、ツリガネニンジン (撮影場所=六甲高山植物園)
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