エジプトのデモで、ムバラク大統領の退陣は決定的となり、退陣の時期と、退陣後の新たな政権の受け皿に焦点が移ってきました。
デモは無党派の若者主体の「4月6日運動」が起こし、エルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長が呼応し、更に、最大野党でイスラム原理主義のムスリム同胞団がのったという流れですね。他に、イスラエルへの批判で国民の人気高くなり閣僚を首になった、元外相でアラブ連盟事務局長のアムル・ムーサ氏も名乗りを上げています。
ムバラク退陣では一致していた運動も、退陣後が焦点となった今、それぞれの相違点が浮き彫りになり始め、現政権の仕掛けもあってか、市民の厭戦気分の広がりもみられ、行方が混とんとしてきましたね。
朝日新聞の記事では、最大の野党勢力ムスリム同胞団幹部のエリヤン氏は「憲法の規定上、移行政権の大統領代行は憲法裁判所長官であるべきだ。スレイマン氏を受け入れるつもりはない。我々は今、エルバラダイ氏と連携しているが、将来的に大統領に推すかどうかは未定」と話したとのことで、具体的な次期大統領候補の支持・擁立は未明ですが、現状で想定される受け皿となる次期大統領候補は以下の 3氏が想定されます。
◆スレイマン副大統領(74)
陛車出身。1995年、情報長官に就任し、中東和平交渉ではムバラク大統領の側近としてイスラエルとパレスチナの仲介役を担った。今年1月29日、反政権派デモの拡大を受けて副大統領に就任
。 陸軍出身。情報機関を率いてイスラム過激派の封じ込めを行い、中東和平交渉などで大統領の名代として各国を飛び回った。ワシントンでも顔が広く、エジプト軍の支持を受けているとされる。国民の知名度も高い。汚職話もなく、クリーンな軍人とみられている。
◆エルバラダイ前IAEA事務局長(68)
国際原子力機関(IAEA)事務局長時代は、イラクの大量破壊兵器保有を主張する米英に抗して慎重姿勢を堅持。05年にノーベル平和賞受賞。昨年、民主化組織「変革のための国民団体」を設立。
「4月6日運動」はエルバラダイ氏を軸とする政権を考えている。
ノーベル平和賞受賞者のエルバラダイ氏は国際的な知名度は抜群だが、国内で市民の前に姿を現すことが極端に少ない。デモが激化してから公の場で演説したのは1回だけで、わずか数分。「政治家に向かない」との声もある。
◆ムーサ元外相
国連大使などを経て外相となり、10年前にアラブ連盟事務局長に転身。イスラエルへの厳しい姿勢で国民の人気が高く、05年大統領選では立候補の期待が高まった
スレイマン副大統領の呼びかけで、ムスリム同胞団など野党との対話が始まっていますが、エルバラダイ氏は呼ばれていないとのことで、以下の提案をしています。
【カイロ=末続哲也】エジプト野党勢力の有力指導者とされる国際原子力機関(IAEA)前事務局長のムハンマド・エルバラダイ氏(68)は8日、カイロ郊外の自宅で読売新聞との単独会見に応じ、軍出身のスレイマン副大統領が主導する現体制について、「革命を起こした民衆を代表していない。古い体制が運営し、軍が先導している」と述べ、対話を拒否する考えを示した。ムバラク大統領の即時辞任を改めて要求し、次期大統領選への出馬に前向きな姿勢を示した。
スレイマン副大統領が6日以降、野党勢力と行っている対話について、自身は招かれていないことを明らかにした。「人々はなお、(反体制デモの会場)タハリール広場にいる。それが答えだ」と述べ、批判した。
その上で、次期大統領選まで、政権外の各界代表に軍代表1人を交えたメンバーで構成する機関「大統領評議会」を設け、大統領権限を担うよう提案、構想実現に自信を示した。
一方、現政権の流れを汲むスレイマン副大統領側は、以下の提案をしています。
【カイロ=貫洞欣寛、玉川透】大規模デモが相次ぐエジプトのスレイマン副大統領は8日、国営テレビを通じ、ムバラク大統領が憲法改正案の検討などに関する三つの委員会設置を命じる大統領令を出したと発表した。開始から15日目を迎えたデモは収束のメドが立たず、即時辞任を求める声が収まっていない。政権側には改革への取り組みをアピールし、事態の沈静化を図る狙いがあるとみられる。
大統領令で発足させるのは、(1)憲法改正(2)野党勢力との合意事項の履行を監視(3)ムバラク支持派と反政権デモ隊の衝突についての原因究明と責任追及――の3委員会。憲法改正と合意履行に関する委員会は「即日活動を開始する」と表明。衝突に関する委員会はメンバー選考を終え次第、活動を始めるとした。
国営中東通信によると、憲法改正委は、判事や憲法専門家ら約10人で構成。与党以外からの大統領選出馬をほぼ不可能にしている現行憲法の改正などを検討し、今月末までに勧告をまとめるという。
一方、カイロ中心部のタハリール広場には8日もムバラク政権の即時退陣を求める数万人が集まった。金曜礼拝のある11日にも大規模なデモが計画されている。
無党派層が起こした、自由と貧富の格差是正を要求したデモが、反イラク&反米へ、更に、穏健派とはいえイスラム原理主義へと移行する流れなのか、スレイマン副大統領または軍による現状(親欧米?)での自由化の政権交代となるのか、綱引きの最中で先が見えません。
スエズ運河への依存度の高いヨーロッパの各国にとっても、中東で親米政策をとりアラブ諸国との懸け橋となったエジプトの変遷の影響を受ける米国を筆頭として、日本を含む世界の自由主義各国にとっても、受ける影響は少なくなく、行方が注目されます。
政権交代で一致して風にのって成し遂げたが、政権交代が目的の集団だったので、いざ政権をもったら、中身が空っぽで、歴史的大失政ばかりで、国を滅ぼしそうになっている。
どこか似たような状況の国があります。良くも悪くも、国民が選ぶことで、最終責任も国民にあるのですが...。
騙される情報、伝えられ難い正しい情報をどう取捨選択して選べるのか。国民の質が問われているのでしょう。カンカラ菅政権&民主党の支持率が下がり続けている日本国民の選択は、次に選ぶものを模索しています。でも、それが見つからない!
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