遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

中国の海洋覇権拡大が遂に地中海へも

2015-05-13 23:22:03 | 中国 全般
 中国の南シナ海、東シナ海での力による海洋覇権拡大は、習近平の富国強兵政策の下、留まるところをしらず、南シナ海の埋め立てでは、米国防省が12カイリ以内での監視行動の検討を開始するに至り、アジア、環太平洋諸国では危機感が強まっています。
 ところが、この状況は遠い東の端ての出来事としかとらえられない欧州各国は、経済の恩恵しか目に入らず、21世紀版シルクロードで世界制覇を目指す中国の野望を支えるAIIBに、のんきに加入して中国を助けています。
 ところが、中国は、爪を隠しもせず、地中海でロシアと合同の軍事演習を開始しました。習近平の「海上シルクロード」は、経済だけではなく、力による海洋覇権拡大でもあることを示したのです。
 中国にとって、せっかくAIIBで欧州の主要国からの参加を得たのに、警戒心を煽る行動は逆効果だろうと推測しますが、強気の習近平はあえて中国の軍事力を誇示したのです。

 米軍、中国主張の領海に直接対抗措置を検討-偵察機派遣も - WSJ
 

地中海で初の合同演習 中露、安保共闘を誇示 (5/13 読売朝刊)

 【モスクワ=緒方賢一、北京=五十嵐文】中国とロシアの両海軍は、11日から21日までの日程で、地中海で初の合同軍事演習「海上連合―2015」を開始した。北大西洋条約機構(NATO)の勢力圏での演習は、米欧をけん制し、安全保障で共闘する姿勢を強調
する狙いがあるとみられる。

中国 遠洋でも作戦能力/ロシア 欧米への対抗姿勢
 中露は2012年以来、「海上連合」と名付けた海上軍事演習を毎年行っており、今回が4回目。中国国防省によると、演習には計9隻が参加。ロシアは黒海艦隊の旗艦であるミサイル巡洋艦「モスクワ」やバルト艦隊の揚陸艦など6隻、中国はミサイル・フリゲート艦「臨沂」「濰坊」と補給艦「微山湖」の計3隻を派遣した。

<中略>

 今回の地中海での演習は、中露それぞれの思惑が一致して実現した。
 
ロシアにとってはウクライナ南部クリミア半島の編入をめぐり、経済制裁や軍事演習などで対露圧力を強める欧米に屈しない姿勢を示す
意味合いがある。ロシアは、シリア情勢などで欧米との対立が深まった11年頃から、ロシア海軍の補給基地があるシリア・タルトゥスに大型軍用艦を派遣するなど、中東での米軍の動きをけん制してきた。
 ロシアのタス通信によると、
地中海での演習を提案したのは中国だという。中国にとっては、地中海での演習は「海外の最も遠い場所での合同演習」(中国紙・環球時報)。中国が東・南シナ海にとどまらず、遠洋での作戦能力を高めていることを誇示
する狙いがある。
 地中海は、習近平(シージンピン)国家主席が提唱する中国沿岸部から欧州に至る経済圏構想「海上シルクロード」の要衝となる。経済圏構想を推進するため、中国主導で設立準備が進む「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)にはロシアや英国など欧州の出資も決まった。
欧州に近い地中海での演習は、中国が経済・安保両面で影響力を強める意図
もあるようだ。
 中露は次の海上合同軍事演習を、戦後70年の節目にあたる8月に日本海で実施する予定だ。同じ頃、戦後70年の談話を発表する予定の安倍首相をけん制する思惑もうかがえる。
 一方、インターファクス通信によると、米軍が11日、ロシアと対立するジョージアで合同演習を始めた。ジョージア軍とNATOの即応部隊との協力を強めるのが狙いだという。

中国軍 欧州への影響力示す…英王立統合軍事研究所 ピーター・ロバーツ上席研究員
 
欧州にとって、中国とロシアの軍事演習が初めて地中海で行われていることは、重要な意味を持つ。特に、アジア域内での海洋進出というイメージだった中国が欧州の海に現れたことは、有事の際は欧州に影響力を及ぼす力があることを示している
からだ。
 欧州はこれまで、
純粋に経済的な文脈からしか中国を見ておらず、軍事力としてとらえる視点は希薄だった。それだけに今回の演習は、欧州の中国観に変化をもたらす
だろう。欧州の指導者たちは今後、経済と軍事の影響力を勘案しながら、中国と対話することになるはずだ。
 中露はこれからも軍事協力を強め、演習の規模を拡大し続けていくだろう。地中海だけでなく、大西洋でもあり得る。
自分たちは超大国であり、西欧社会はこれを尊重しなくてはならないというメッセージだ。中露が地中海や大西洋で軍事演習を続けるのなら、米欧や日本も、アジアでの演習を展開していくことになると思う。(聞き手・ロンドン 森太)

 日経も、「中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は同構想を推進すると「我々が権益を持つ範囲が広がっていく」との専門家の解説を載せた。地中海での演習には「我々はこの海域に不慣れなので(演習を通じ)自然条件などの情報を理解する」(同紙)という具体的な目的もあるようだ。」と報じている様に、陸と海の現代版シルクロード「一帯一路」構想には、軍事力の拡大も含んでいることが明らかにされているのですね。
 
中ロが地中海で軍事演習 米欧けん制、日本海でも8月実施 :日本経済新聞

 英独仏伊の反応情報には未だ接していませんが、どのような反応をするのか、報道が待たれます。AIIBへの加盟のドタバタ劇を、中国の勧誘に騙されたことと評価されたくない為に無視するのでしょうか。
 合同演習の提案を、欧州各国から制裁を受けていて対立しているロシアではなく、AIIBの加入を獲得した中国側が行ったと言うのですから、中国に野望があるのは明らかですね。
 いずれにしても、欧州各国が、中国の衣の下の鎧の姿を垣間見ることが出来たことは、日米が中国と対峙している問題点=ウクライナのロシアと同様に、力でアジアの現状変更を進めようとしている中国の正体が、実感していただけたことはよかったと考えます。

 ピーター・ロバーツ上席研究員が述べておられるように、欧州各国の首脳が、今後対中政策を検討する際、経済だけでなく、安全保障と両面の兼ね合いを検討したうえで政策決定していただけることに期待します。



 # 冒頭の画像は、過去の中露合同軍事演習での画像。




  残波ビーチの朝 (2015年 1月 撮影)


↓よろしかったら、お願いします。






Fotolia


続 中国の海洋戦略
暴かれた中国の極秘戦略―2012年台湾乗っ取り、そして日本は…?




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5月12日(火)のつぶやき | トップ | 5月13日(水)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国 全般」カテゴリの最新記事