産経で、早速米紙・WSJと、中国紙の反応を報じていただいています。中国紙は中国がやり玉に挙げられているのですから、それ相応の反応があっても想定内ですが、米紙・WSJは、産経の記事が指摘している様な、記者の思い込みか、白書の内容の理解不足なのか、故意なのか、事実とは異なる内容の報道となっています。
政府が9日の閣議で了承した平成25(2013)年版防衛白書に対し、海外では第2次安倍政権の「右傾化」と結びつける論調が目立つ。中には誤解を招く表現や事実誤認も含まれ、論調の質を疑わせるものもある。
白書は中国による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での挑発活動を批判し、日米同盟を基軸に島嶼(とうしょ)防衛など国防力を強化していく方向性を打ち出した。10日付の米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は「防衛で国粋主義的な立場」と題する記事を掲載。白書が中国に対して警戒的な論調となったことを伝えた。同紙日本版サイトによると、記事を執筆した記者は政治、経済担当のベテランだといい、論調の変化を昨年版の白書と比較する手法などは説得力がある。
問題は、白書が「敵基地への先制攻撃を行う能力の構築」の議論を紹介しており、この分野が「自衛隊としての日本の軍事力の役割の本質を変更しかねない」としている点だ。確かに白書は解説コラムに「いわゆる敵基地攻撃能力について」を掲載している。だが、コラムのどこにも「先制攻撃」を行うとは書いていない。敵基地攻撃は、第一撃を受けた後の反撃として行うことも十分、あり得る。さらに、「敵ミサイル基地攻撃能力の保有」を提言した5月末の自民党国防部会の報告書自体が、「予防的先制攻撃は行わない範囲で」と強調している。記事の表現が思い込みによるものか、意図的なものかは分からないが、事実誤認であることは間違いない。
一方、中国では、人民解放軍の機関紙、解放軍報が10日付で、「日本の政界は重病だ」とする寄稿文を掲載し、防衛白書を批判した。筆者は、軍研究機関の軍事科学院の武養浩氏とあるが、肩書は不明。武氏は「新たな防衛白書が盛んに中国脅威論を宣伝するのは、安倍(首相)だけでなく、一部の日本の政治家も病気であることを説明している」と主張。「戦後、自民党は右翼分子の誤った行動を見て見ぬふりをし、右翼勢力をひそかにはびこらせた」とした上で、「安倍政権が今日あるのも右翼の先達の布石があるおかげだ」と防衛白書が“右翼勢力”の影響を受けているかのような論理を展開した。
共産党機関紙、人民日報傘下の国際情報紙、環球時報(電子版)は10日付の「防衛白書、日本の最新傲慢ショー」と題する社説で、「日本の国力の衰退は確実だが、日本は強硬姿勢を保てば中国が何もしないと固く信じている」と白書の記述を批判。「現在の日本といえば、多くの中国人が容易に連想する国はフィリピンだ」として、南シナ海で島嶼の領有権を争うフィリピンと日本を同列視してみせた。さらに、社説は「あと10年、20年の(中国の)発展を経れば『戦わずして勝つ』。われわれは、日中間のこの過程を味わえばよいのだ」と述べ、軍事大国の“余裕”を打ち出している。
WSJの日本語版の記事とは以下。
By YUKA HAYASHI
【東京】日本政府は9日発表した防衛白書で、中国との領土をめぐる緊張の高まりや北朝鮮の挑発的態度を指摘し、国家の安全保障への脅威が高まっているとし、軍事能力の拡大と米国との連携の一段の強化が必要だと強調した。
安倍晋三政権で初となる防衛白書の中で、政府は地域安保面で日本が直面する課題と、これらにどう対応するかについて、過去数年よりもよりナショナリスト的な言葉遣いをし、より警戒的な調子を示した。
小野寺五典防衛相は白書の前書きで、日本の安保環境におけるさまざまな課題と不安定要因は「顕在化、先鋭化、深刻化」しているとし、日本は「国民の生命と財産、領土、領海、領空を断固として守り抜く」と述べた。
安倍首相は昨年12月、東シナ海の諸島をめぐる中国との紛争と北朝鮮の核兵器計画の脅威など地域の挑発に対して断固たる態度を取ると約束して、再び首相の座に就いた。同政権の分厚い白書は、地域安保問題と日本独自の防衛能力および戦略を分析している。
安倍政権は過去11年で初めて防衛予算を増やし、前年度比0.7%増の4兆6800億円とした。また、今後10年間の防衛戦略の方向を定める長期の防衛計画大綱を見直している。新大綱は年末までに発表されるとみられる。
白書はこの内容について詳細を記していないが、自衛力としての日本の軍隊の性格を変える可能性のある、現在検討中の二つの新しい分野を示した。それは外国の敵基地への先制攻撃能力と、米海兵隊に似た水陸両面で活動する新たな戦力の創設だ。
白書の論調が大きく変化したのは、中国の軍事面での影響力と領土問題における攻撃性の高まりを扱った部分だ。白書は、中国が「既存の国際秩序と相容れない独自の主張に基づき、力による現状変更の試みを含む高圧的とも指摘される対応を示しており、その中には不測の事態を招きかねない危険な行動もみられるなど、今後の方向性について不安を抱かせる面もある」としている。
今年1月に東シナ海の問題の諸島周辺で起きた中国軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への射撃管制用レーダー照射に関連したこの部分には、昨年の白書に比べてはるかに対立的な表現がみられる。以前の白書は、中国は「高圧的とも指摘される対応を示すなど、今後の方向性について不安を抱かせる面もある」としていた。
中国国営新華社通信によると、同国外務省の華春瑩・副報道局長は北京での記者会見で、白書について、「中国脅威論」を不当に強調したものだと批判した。同副局長は「日本がもっと適切な態度を取り、政治的信頼を改善し、地域平和と安定を高めるために努力するよう希望する」と述べた。
同副局長は領土紛争に関して、中国は常にこうした問題は対話で解決すべきだと言っているとし、「同時に中国はいかなる国にも領土を侵害させない」と強調した。
白書は北朝鮮について、「弾道ミサイル問題は、核問題ともあいまって、国際社会にとってより現実的で差し迫った問題となっている」とし、「その動向が強く懸念される」述べた。
地域の敵対意識が高まって、日本は米国との防衛協力を強化しているが、白書はこの2国の関係が日本の防衛の柱の一つであり、アジア太平洋地域の安保の枠組みにおいて不可欠な基礎だと強調した。米国と日本は最近、自国防衛と地域安保の面で日本の役割を拡大することを目指して、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の見直しを始めた。
白書はまた、米国が政策の「軸足」をアジアに移そうとしている中で、同国の国防費の削減圧力が強まっていることに懸念を示し、「われわれは厳しい財政状況がこうした政策にどう影響するか注視している」と述べた。
今回の白書のもう一つの特徴は、自衛隊隊員による多くのミニエッセーが掲載されていることだ。これは自衛隊への注目度を高めることを狙ったものとみられる。
産経が言う、政治・経済担当のベテラン記者というのは、YUKA HAYASHI氏のことでしょうか。
この、YUKA HAYASHI氏についてネットで検索してみると、その偏向ぶりを非難するページが山ほど出てきます。
例
米紙WSJは韓国紙、慰安婦は性奴隷、靖国参拝は反対、日本だけはヘイトスピーチ反対|Shimarnyのブログ
日本向けとは違う、ウォールストリート・ジャーナルの悪意に満ちた米国向け記事:イザ!
敵基地攻撃能力を、敵基地への先制攻撃能力と表現しているのは、産経の記事が指摘するように、白書に載せられるに至る前の背景を知らない、あるいは敵基地攻撃能力についての知識が乏しいというYUKA HAYASHI氏の記者としての資質不足なのか、これまでのYUKA HAYASHI氏の記事の偏向ぶりからうかがえる、思い込みや故意による表現なのでしょうか。
WSJの編集責任者は、こうした間違いに気づかないのでしょうか。
また、華春瑩・副報道局長の談話を、新華社のものを引用しています。防衛白書を非難する中国の姿勢を肯定している様に受け取れる文書構成に読み取れるのは、遊爺だけでしょうか。それは、WSJの編集姿勢なのでしょうか。
遊爺の体験でも、新聞記事はこちらの話の半分も正しく書いてくれれば良しとせざるを得ないものと理解していますが、WSJのYUKA HAYASHI氏の日本に関する記事は、度を超すものの様です。
白書のこれまでとは異なる、事実を正面から取り上げた内容が、世界に正しく伝わることを願います。英語版も公開されているのに、誤った報道がされるのは、英語版が誤解を受けやすい表現なのだとしたら、改善が必要ですが。(YUKA HAYASHI氏の国籍=母国語が何かは不明ですけど。)
多少の誤報があるとしても、より多くの国々で読んでいただき、中国の暴挙の真実が伝わることを願います。
余談ですが、WSJのホームページにご意見メールの表示(service@wsj-asia.com)がありましたので、誤りを指摘するメールを送っておきました。
平成25年度版防衛白書 「一つの画期」だと - 遊爺雑記帳
# 冒頭の画像は、米軍との共同訓練においてオスプレイから降着後、前進する陸自隊員(防衛白書より)
この花の名前は、シナマンサク
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