Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

キサラギ

2007-07-02 | 日本映画(か行)
★★★★★ 2007年/日本 監督/佐藤祐市
<梅田シネ・リーブルにて鑑賞>

「奴らの正体は何だ!?」


最初は少々仰々しい舞台劇風台詞回しが気になったんだけど、物語が動き始めると二転三転するストーリーにぐいぐい引き込まれた。ただ今満足感No.1の売り込みもナットクの面白さ!

さて、この作品は何を言ってもネタバレになってしまい、これから見る人が読んだら面白さ半減なので、詳しく書けないのがツライところ。とにかく、5人の役者の個性が十分引き出されていたし、お互いがかぶるように、矢継ぎ早に繰り出されるセリフも実にテンポが良くて、面白い。そんな脚本の良さはもちろんなのだけど、本作が会話劇として観客を大いに引き込ませた要因、それは喪服にあるんではないのかしら、と思う。登場人物全員が喪服。これは実にいいアイデアだった。

まず喪服は、ユニフォームの役割を果たし、あのせまい空間に一体感を生んだ。そして、余計な事に目が奪われないので、観客は会話に集中できる。そして、なんと言っても喪服の役割は没個性。つまり、登場人物に対して、観客が先入観を持たない役割を担う。これによって、5人の正体が次から次へと転換していっても、その場その場でその人物に重ね合わせることができた。

回想シーンの貼り絵もポップな感じで楽しかった。香川照之の平行移動がおかしくて。あんなシーン、これまでの映画にあったかなあ。なかったような気がする。実は、私は演劇が苦手なんだけども、この回想シーンでずいぶん演劇風テイストが緩和された。ラストは蛇足かもねえ。ただ、こういう展開はラストをどう持ってくるかってのは、悩みどころだと思うので許せる範囲内。私としては、気合いのダンスで終わって欲しかったな。ミキちゃんの名前を呼ぶ振り付け部分の香川照之がたまらなくおかしかったもんで。最年長なのに、あそこで一番踊りがキレてたもん。

さて、私は俳優としてのユースケ・サンタマリアが結構好きなんです。この人、何をやっても貧乏くじ引きそうな哀れさを持ってる(褒め言葉になってないかな^^)。でね、なんか無個性なのよ。そこを私は結構役者として買っているところなの。本作では、いつものダメ男っぷりは少なく、クールな進行役って感じなんだけども、わざわざHNに「オダ・ユージ」とつけられるところを見るに設定そのものがいじられキャラって感じでした。
とにかく、堪能しましたです。本年度邦画ベスト3に食い込みそうな予感。