Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ウルトラミラクルラブストーリー

2010-08-30 | 日本映画(あ行)
★★★★ 2009年/日本 監督/横浜聡子

「ひねり方がウルトラ」



キテレツな設定だけども、これはちゃんとした純愛ストーリーなんかもしれんなあ。と少しほのぼのした気持ちでエンディングを迎えようとしていたら、開いた口がふさがらない驚くべきエンディングでした。ビックリ仰天。

前作「ジャーマン+雨」同様、ラブストーリーと言えども実にシュールな展開で、主人公町子の元彼は交通事故で亡くなったのだが、未だに首が見つかっていないとか。どん引きエピソードと演出のてんこ盛りです。これから観る方は、かなりヘンな映画だと了解してから観ましょう。

さて、東京で失恋した女の子が傷を癒すために田舎に行く。そして、純朴な青年に出会う。彼は彼女に好かれようと努力するけど、叶わない。でも、彼は彼女に大事なものを遺していった、というのが本作の骨子。これはとてもベタなラブストーリーの展開です。ただ、彼女の失恋の仕方とか、純朴な青年の純朴さとか、好かれようと努力するその行為とか。それぞれがかなりおかしな方向にイカれてるんですね。理解に苦しむラストも、普通のラブストーリーなら、さしずめ「彼が遺していった手紙が波にさらわれた」という演出にでもなりましょうか。と勝手に解釈。

なぜそういう方向にひねる!?と言った凡人には理解しがたいセンスこそ、この監督の持ち味。それが独自の世界観を作っていて、唯一無二の輝きを放っています。それに、あまりに突出したひねくれ具合が作品全体を破綻させていないのは、人物達の掛け合い、特に松ケンと太、松ケンと子供たちなどのシークエンスにおける間の作り方の巧さが作品を落ち着かせているからでしょう。

それにしても、この監督の作品の子供たちは全くかわいくない。おそらくほとんど演技指導せずに即興的な演出をしているのだろうと思う。このかわいくない感じこそが、実に子供の子供らしさを表現できていると思います。ともあれ、松山ケンイチという俳優が持っている純粋さ、危うさが大変魅力的に映し出された作品で、松ケンのための映画と言っていいのではないでしょうか。松ケンが好きな人は見るべし、ですね。津軽弁がカワイイです。