Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

ザ・中学教師

2007-11-24 | 日本映画(さ行)
★★★★☆ 1992年/日本 監督/平山秀幸

「女王の教室の原形、ここにあり」


今から15年前の作品である。おそらく「悪い奴は見た目も不良」という時代から「普通の子がキレる」時代への扉が開いた頃だろう。出演者の中学生はどの子もいたって見た目はフツー。しかし、その飄々とした風貌とは裏腹に不穏な空気を教師に送り続ける恐ろしさは現代のキレる子そのものだ。

徹底した管理主義で子供たちを束ねる冷徹教師が三上先生(長塚京三)。で、ですね、この三上先生のキャラクターが「女王の教室」の阿久津真矢先生にとても似ている。もしかして、ドラマ作りにこの映画を参考にしたのでは?と勘ぐってしまう。しかも、生徒に媚びへつらう友だち先生の役を藤田朋子が演じているのですが、これがまさに真矢先生が鬼と化す前の姿にそっくり。

「女王の教室」もそうだったけど、結局先生って子供に嫌われてナンボの世界ってことでしょう。ドラマや映画では教師像の描き方が極端になるのは当然のことでね、本作では行き過ぎと言われる三上先生の管理教育がマラソン大会では花開くわけだから、結末としてはちょっとイージーかな、と言う気もする。

でも、この映画の良いところは、そんな三上先生も自分の娘の子育てはうまくいかないことを描いている点。厳しくて、良くできた先生ほど、実の子供はいろんなプレッシャーを受けて道をそれる。これは、現実社会でも非常に良くあること。親が先生って、子供がたいへんだな、とつくづく思っちゃう。

藤田朋子演じる先生の授業中に、生徒が好き勝手な行動を取るシーンやシンナーを吸った生徒が先生を襲うシーンは、「台風クラブ」を思い出させる。
そう、本作もウエットな演出は全くなく、非常に淡々と冷めた目線で中学生を描いている。その距離感は三上先生が劇中つぶやく「僕だって生徒は怖い」という意識とリンクしていて、つまり三上先生が行う管理教育というのは、生徒にべったりするのではなく、一定の距離感をキープするための手法であるわけだ。で、同じように観客も劇中の生徒たちとの距離感を冷めた演出によってキープすることができる。

先生がいい人かどうか、というのはあまり問題ではなく、ポイントは子供との距離の取り方。それが、寂しいと捉える人もいれば、現実的でいいと捉える人もいる。私は、三上先生大いに結構。わかろうとする、入り込もうとする、理解し合えると思っている。そんなのは大人のおごりだろう、って思うからだ。
三上先生は、見た目は冷徹だけど、責任を取ることに関しては、全て引き受けようという、志が見える。それは、教師という職業においてとても大切なことだと思う。

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