Casa Galarina

映画についてのあれこれを書き殴り。映画を見れば見るほど、見ていない映画が多いことに愕然とする。

アナザーラウンド

2021-08-10 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2020年/デンマーク 監督/トマス・ビンターベア

飲酒で乗り越えられるかミッドライフクライシス。アルコール摂取を機に中年男4人組が自身の弱さに向き合う物語。様々なものに被せてきた蓋が開き、少しずつ気づく大切なこと。人間の脆さと輝きが飲酒を媒介に交互に映し出される。

ただしデンマークの飲酒事情は事前に知っておいた方がいい。16歳から購入可能、高校生の飲酒は日常。アルコールとの距離感が日本とは全く違うからだ。飲酒に対する価値観によってエンディングの感想も異なるはず。しかし、監督の悲しい経験に思いを馳せれば「これは存分に生きよ」だ。沁みる。

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実

2021-08-08 | 日本映画(ま行)
★★★★ 2020年/日本 監督/豊島圭介

本作を見たからといって右翼左翼の融和の道筋が見えるわけではない。1969年という時代の断片を垣間見るに過ぎない。しかしこの断片の切っ先は鋭い。結果的に平行線でも「言葉を尽くす」ことを今の我々は完全に手放してしまったのだという現実に打ちひしがれる。

大学生時代。中核派ヘルメットの学生が毎日校門に立っていたし、彼らの演説で授業はよく中止になっていた。良くも悪くも彼らの行為が私に政治思想について考えることを促していたのは間違いない。彼らの演説に対して意見を言う教官もいて、あれはあれで貴重な体験だったんだと今にして思う。

エルカミーノ ブレイキング・バッド THE MOVIE

2021-08-08 | 外国映画(あ行)
★★★☆ 2019年/アメリカ 監督/ビンス・ギリガン

ブレイキング・バッドファンにとっては、ウォルターと決別してしまったジェシーへの想いって、すごい大きいんだなと言うのを実感。ウォルターはやりたいことやって死んじゃったけど、本懐を遂げたという感じだったから、ジェシーもまた自分の道を見つけましたよ、ということをファンに見せる必要があったんだよねー。ドラマ終了後のモヤモヤを収めるための1本とも言える。

ドクトル・ジバゴ

2021-08-08 | 外国映画(た行)
★★★★ 1965年/アメリカ 監督/デビッド・リーン

197分の巨編ようやく鑑賞。巨大セットに大群衆エキストラ。歴史に翻弄された男の悲哀が浮き彫りに。原作者の実人生や撮影中の大事故など、壮絶な背景を知るほどに感慨も深くなる。歴史の大波の中で一個人が善に生きることの意義とは。やはり結論、ファッキンイデオロギー。

志乃ちゃんは自分の名前が言えない

2021-08-07 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2017年/日本 監督/湯浅弘章

言葉を話せない、歌えない、周囲に馴染めない。できない者同士で友情を育むのかと思いきや、そうはならない展開がいい。傷を舐めあう友人よりも、まず自分を認めることから始めなきゃ。饒舌なセリフも少なく、表情や仕草だけで繊細な心情を伝える主演二人が天晴。


ファイティング・ダディ 怒りの除雪車

2021-08-05 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2014年/ノルウェー・スウェーデン 監督/ハンス・ペテル・モランド

息子の復讐がいつの間にか犯罪組織の抗争に発展する物語は北欧版ファーゴの様相。黒バックに殺された人間の名前と宗教が浮かび上がるカットがおかしい。北欧ならではの闇社会、その歴史的な背景とブラックユーモアが相まった独特の世界観に満足。

怒りの除雪車なんてサブタイ付いてるから、除雪車が殺人マシーンと化すのかと思ったらそうでもないのよ。ファイティングダディみたいな明るさも全然ないし、邦題がダメダメ。でっかい除雪車が走る絵や北欧家具バチバチに決まってる邸宅はフォトジェニックで良い。名優ブルーノガンツ出演も嬉しい驚き。

レッド・ファミリー

2021-08-03 | 外国映画(や・ら・わ行)
★★★★ 2013年/韓国 監督/イ・ジュヒョン

隣家の声が聞こえるんなら、こちらの会話も隣に筒抜では?など確信犯的とも思える雑なコメディパートと、スパイ家族の恐怖の日常のコントラストが絶妙。終盤の絶体絶命のスパイ家族の会話は、まさにクライマックスと呼ぶにふさわしい脚本の妙。不覚にも泣いてしまった。



高い城の男

2021-08-02 | TVドラマ(海外)
★★★★☆ Amazon Prime 

もし大戦でドイツが勝利しても、いずれ破綻するなら…。様々な展開が可能な中、優生思想による家族間の断裂を中心に持ってきたのは、クリエイションとしてとても正しい選択だと思う。何でもありなIF-SFで脚本も美術も作り込みがすばらしいドラマだった。

パラレルワールドと繋がる技術をドイツが開発し、地下に別世界への入口が建設されるという飛躍した展開も、ドイツ軍内の勢力争い、アメリカ黒人たちの解放運動など、実際の歴史をなぞらえた展開がリアルで緊迫感を保つ。しかも黒人解放運動が共産主義と結びついているなど、ひねり方が面白いのだった。

V.I.P. 修羅の獣たち

2021-08-01 | 外国映画(は行)
★★★☆ 2010年/韓国 監督/パク・フンジョン

北朝鮮高官の息子が猟奇殺人犯というだけでも攻めた設定なのに、そこへ南北関係、CIAとの政治的な駆け引きが入り乱れて一大クライムアクションへ突入。強引な展開に若干ツッコミどころはあるが、容赦ないバイオレンス描写が圧倒的。久しぶりにかっこいいチャン・ドンゴン見た。

最初の晩餐

2021-08-01 | 日本映画(さ行)
★★★☆ 2018年/日本 監督/常盤司郎

父の葬儀で久しぶりに家族が集まる。なぜ兄は家を出たのか、次第にわかる真相。葬儀を起点にした家族の再生物語はありがちなだが、人間ドラマとしての引力の所以は永瀬正敏と斉藤由貴。永瀬正敏の病人演技の説得力よ。そして私生活のあれやこれやを彷彿とさせ、凌駕する斉藤由貴の凄み。

作品批評とはズレるが、個人的には家族の問題を子供に何も話さず、家族が崩壊する話が好きではない。子供にも知る権利があると思うからだ。親がどう生きようが自由だが、付き合わされる子供には言葉を尽くして欲しい。子供が子供のうちに親ときちんと対話する物語が邦画には少ないように感じる。