<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=B0002XG7NO&fc1=000000&IS2=1<1=_blank&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>
映画『ブエノスアイレス』にまつわるメイキング映像とインタビュー、ロケ地再訪ドキュメントをまとめた短編『ブエノスアイレス摂氏零度』日本語字幕版、観ました。前にこの台湾版(広東語/中国語・英語字幕)は観てたんだけど、今回日本語で観てかなりいろいろとスッキリしました。
と云うのは、王家衛の映像世界は過分に感覚的・情緒的なので、一時停止して外国語字幕を解読しながら観てると全体のトーンとかリズムが全然分かんなくなっちゃうんだよね。まぁどの映像作品もそうだろうとは思うけど。
『ブエノスアイレス』が撮影されたのは1996年から97年、中国への返還を目前にして一種の同性愛映画ブームが香港映画界に起きた頃。なぜ同性愛なのか?共産圏では同性愛は犯罪にあたるため、返還後はそうした表現への規制が厳しくなるかもしれない、それなら今のうちにやっちゃおうと云う発想であるらしい。現実には今のところそんな規制はないみたいだけど(しかしつくっても内陸での上映許可は下りない)、結局映画作家にとってみればそれだけ同性愛って心惹かれるテーマだってことですね。出来れば撮ってみたい、撮れるうちに撮りたい、みたいな。
結果的にはこの時期につくられた同志片の中でも『ブエノスアイレス』は出色の傑作となった訳だけど、ココでこの作品について語りだすと止まらなくなるのでこのへんで止めときますです。
この『摂氏零度』がつくられたのは・・・2000年頃かな?正確にはちょっと分かんないけどどっかの国際映画祭で上映されたらしいよー、と云う噂を小耳に挟んで、それ観たい!すっごい観たい!!とずっと切望しておりました。なにしろ本編用に撮影したフィルムは約70時間ぶん超、本編に使用されたのはそのうちのほんの2%程度と云うのを一般公開時に聞いてたからです。そのカケラでも使われてんなら観たいよお。因みに本編の尺は90分。結構短いです。
しかしこの短編が日本で公開されることは無く(何かのイベントでは上映したかもしれない)、DVDもビデオも長らく発売されませんでした。
それがいきなりリリースされたのは去年のこと。理由は簡単、一方の主役である巨星・張國榮(レスリー・チャン)の死去によって彼の出演作がバカ売れし旧作ソフトのリリースラッシュが始まったから。流石中国人商魂逞しいです。イヤ、褒めてんだけどね。ホントに。今回の日本版だって『2046』に併せた発売だしね。
『摂氏零度』に実際にレスリーが登場するのは前半のみ。それもリアルタイムなオフショットや未使用映像の中だけで、追撮のインタビュー部分には出て来ません。と云うのも本編撮影時にもレスリーは前半しか参加してないからで(例によってロケが長期化したため)、出演したものの全てカットされた關淑怡(シャーリー・クワン)の出演パートの方がむしろ新鮮で印象的に感じました。ぐりはこの方あんまり知らないんだけどなんだか雰囲気があって『ブエノスアイレス』の世界にとても似合ってます。
そして梁朝偉(トニー・レオン)はやっぱかっこええわー。じーん。兵役前の張震(チャン・チェン)は可愛らしいですね。ホント若い!幼い!って感じがします。
撮影当時クルーはどんどん時間の感覚を失っていったと語られるけど、このメイキングには全編に当時を回想する関係者の特殊な感情─作品そのものを超えるような深い愛惜とノスタルジー─が満ちあふれてます。確かに、激しく郷愁を募らせながらいつ帰れると云うあてもなく異境で過ごした濃密な時間をまるで永遠のように思い出す感覚は、どこか遠い過去の恋愛を思う気分に似てる気がします。つらくてせつないのに何だか甘くてしっとりとあったかい、時間が止まったような、夢の中にいるような心地に漂っていた日々の思い出。
そう云えば『ブエノスアイレス』の撮影時の仮題は『Buenos Aires Affair』、直訳すると“ブエノスアイレスの情事”と云う意味で、南米が?ヨる文豪マヌエル・プイグの傑作『ブエノスアイレス事件』に因んでます。
カーウァイと云えば日本では未だに『恋する惑星』や『天使の涙』のポップでクールな恋愛映画の監督と云われることが多いようだけど、本当はこんなつらい恋への焦燥や憧れをじっとり撮る作風の方がメインなんだよね。
挿入歌「ククルクク・パロマ」(カエタノ・ヴェローゾ)の歌詞そのものの世界です。
夜がきても
もう鳴くことはなかった
なにも食べず
なにも飲まず
その涙がしたたり落ちるとき
空が身を震わせるのがわかった
死んでしまったあとも
この悲しみを忘れられない
名を呼びつづけたことを忘れられない
歌っていたおまえ
呻いていたおまえ
心を焼き尽くす炎により
死んでいったおまえ
悲しい鳩のように
朝早くから歌っていた
誰もいないこの家で
すべての扉が開いたままの家で
あの鳩は
おまえの魂だったのだ
不幸せな女が戻ってくるのを待っていた鳩
ククルクク
ククルクク
何があってももう泣くな
鳩よ
おまえが恋について知りうることは
いったいなんだろうか
明日『2046』公開。期待しないで楽しみにしてます。

『ブエノスアイレス』のオフショットより、タンゴを躍る張國榮。
『ブエノスアイレス』に関するデータを集めたサイトはこちら。
映画『ブエノスアイレス』にまつわるメイキング映像とインタビュー、ロケ地再訪ドキュメントをまとめた短編『ブエノスアイレス摂氏零度』日本語字幕版、観ました。前にこの台湾版(広東語/中国語・英語字幕)は観てたんだけど、今回日本語で観てかなりいろいろとスッキリしました。
と云うのは、王家衛の映像世界は過分に感覚的・情緒的なので、一時停止して外国語字幕を解読しながら観てると全体のトーンとかリズムが全然分かんなくなっちゃうんだよね。まぁどの映像作品もそうだろうとは思うけど。
『ブエノスアイレス』が撮影されたのは1996年から97年、中国への返還を目前にして一種の同性愛映画ブームが香港映画界に起きた頃。なぜ同性愛なのか?共産圏では同性愛は犯罪にあたるため、返還後はそうした表現への規制が厳しくなるかもしれない、それなら今のうちにやっちゃおうと云う発想であるらしい。現実には今のところそんな規制はないみたいだけど(しかしつくっても内陸での上映許可は下りない)、結局映画作家にとってみればそれだけ同性愛って心惹かれるテーマだってことですね。出来れば撮ってみたい、撮れるうちに撮りたい、みたいな。
結果的にはこの時期につくられた同志片の中でも『ブエノスアイレス』は出色の傑作となった訳だけど、ココでこの作品について語りだすと止まらなくなるのでこのへんで止めときますです。
この『摂氏零度』がつくられたのは・・・2000年頃かな?正確にはちょっと分かんないけどどっかの国際映画祭で上映されたらしいよー、と云う噂を小耳に挟んで、それ観たい!すっごい観たい!!とずっと切望しておりました。なにしろ本編用に撮影したフィルムは約70時間ぶん超、本編に使用されたのはそのうちのほんの2%程度と云うのを一般公開時に聞いてたからです。そのカケラでも使われてんなら観たいよお。因みに本編の尺は90分。結構短いです。
しかしこの短編が日本で公開されることは無く(何かのイベントでは上映したかもしれない)、DVDもビデオも長らく発売されませんでした。
それがいきなりリリースされたのは去年のこと。理由は簡単、一方の主役である巨星・張國榮(レスリー・チャン)の死去によって彼の出演作がバカ売れし旧作ソフトのリリースラッシュが始まったから。流石中国人商魂逞しいです。イヤ、褒めてんだけどね。ホントに。今回の日本版だって『2046』に併せた発売だしね。
『摂氏零度』に実際にレスリーが登場するのは前半のみ。それもリアルタイムなオフショットや未使用映像の中だけで、追撮のインタビュー部分には出て来ません。と云うのも本編撮影時にもレスリーは前半しか参加してないからで(例によってロケが長期化したため)、出演したものの全てカットされた關淑怡(シャーリー・クワン)の出演パートの方がむしろ新鮮で印象的に感じました。ぐりはこの方あんまり知らないんだけどなんだか雰囲気があって『ブエノスアイレス』の世界にとても似合ってます。
そして梁朝偉(トニー・レオン)はやっぱかっこええわー。じーん。兵役前の張震(チャン・チェン)は可愛らしいですね。ホント若い!幼い!って感じがします。
撮影当時クルーはどんどん時間の感覚を失っていったと語られるけど、このメイキングには全編に当時を回想する関係者の特殊な感情─作品そのものを超えるような深い愛惜とノスタルジー─が満ちあふれてます。確かに、激しく郷愁を募らせながらいつ帰れると云うあてもなく異境で過ごした濃密な時間をまるで永遠のように思い出す感覚は、どこか遠い過去の恋愛を思う気分に似てる気がします。つらくてせつないのに何だか甘くてしっとりとあったかい、時間が止まったような、夢の中にいるような心地に漂っていた日々の思い出。
そう云えば『ブエノスアイレス』の撮影時の仮題は『Buenos Aires Affair』、直訳すると“ブエノスアイレスの情事”と云う意味で、南米が?ヨる文豪マヌエル・プイグの傑作『ブエノスアイレス事件』に因んでます。
カーウァイと云えば日本では未だに『恋する惑星』や『天使の涙』のポップでクールな恋愛映画の監督と云われることが多いようだけど、本当はこんなつらい恋への焦燥や憧れをじっとり撮る作風の方がメインなんだよね。
挿入歌「ククルクク・パロマ」(カエタノ・ヴェローゾ)の歌詞そのものの世界です。
夜がきても
もう鳴くことはなかった
なにも食べず
なにも飲まず
その涙がしたたり落ちるとき
空が身を震わせるのがわかった
死んでしまったあとも
この悲しみを忘れられない
名を呼びつづけたことを忘れられない
歌っていたおまえ
呻いていたおまえ
心を焼き尽くす炎により
死んでいったおまえ
悲しい鳩のように
朝早くから歌っていた
誰もいないこの家で
すべての扉が開いたままの家で
あの鳩は
おまえの魂だったのだ
不幸せな女が戻ってくるのを待っていた鳩
ククルクク
ククルクク
何があってももう泣くな
鳩よ
おまえが恋について知りうることは
いったいなんだろうか
明日『2046』公開。期待しないで楽しみにしてます。

『ブエノスアイレス』のオフショットより、タンゴを躍る張國榮。
『ブエノスアイレス』に関するデータを集めたサイトはこちら。