goo blog サービス終了のお知らせ 

落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

クローンの夢

2013年04月28日 | diary
職場の人もいっしょに青年の家のような場所に滞在中のぐり。
宿泊棟には朝鮮大学校の女子生徒や、正体不明の十代の少年グループもいる。
朝鮮大学校の子たちが施設を離れるというので、片付けを手伝う。そこを十代の少年グループの何人かが覗きにくる。通常は男子棟と女子棟の行き来はとめられているが、好奇心に負けたのか、ドサクサに紛れて見るだけ見てみたいということなのだろう。

少年グループの一部はごくふつうに歩いているが、3人はストレッチャーに載せられて半身を起した状態で連れてこられる。
ひとりはまだ幼くて10歳だといい、あとのふたりは16歳だという。連れの少年たちは、3人ともクローンだとこともなげにいう。いわれてみれば、3人とも年齢の割りに雰囲気が大人びている(DNAは年齢で変化する性質があるので、細胞を全部コピーすると親と同年齢のDNAがコピーされるため、クローンの成熟速度が早く、生存年数が短くなる)。
少年グループは某タレント事務所のタレント養成員たちで、クローンは既に売れっ子になっている先輩タレント(実在。テレビを観ないぐりでも知ってる)からつくられたそうだ。タレントの若く美しい時期は短いから、売れることがあらかじめ保証されている子どもを密かにつくって育てているという。
とんでもない話だがありえなくもない。しかしその生い立ちをクローン本人が承知だというのにびびってしまう。

まわりの女性たちはなんといっていいのか驚いている様子だったが、ぐりは何か一生懸命少年たちに話しかけていた。3人はおとなしくてはしゃいだところがまったくなく、どことなくクールで、驚かれることに慣れている様子だった。顔立ちは親であるタレントとはあまり似ていない。うっすら似ているという程度でそっくりうりふたつというわけではなく、それが彼ら本人を落胆させていることがなんとなく伝わる。16歳といえば既にタレント活動をしていてもおかしくはないのに、ふたりはまったくそれをしていないし(あるいは健康上の理由でできない)、あとからつくられた10歳の子も似なかったということは、おそらくこの試みは失敗とされているのだろう。親である先輩タレントが予想に反してまだ活動しているのだから、クローンの存在意義もない。それも本人たちは感づいている。
考えてみれば彼らには、生まれながらの家族というものがいない。DNAを提供したタレント本人はクローンのことは知らないらしいし、学校にも通わず、医療施設と養成所のなかだけで育てられているわけだから、父母兄弟といったような肉親もいない。
老成してみえるのはそういう境遇のせいかもしれない。

彼らが部屋を出ていくとき、何気なく10歳の男の子と握手をしたら、しばらくじっと握って離してくれなかった。
その手がものすごく柔らかくてあたたかくて、しっとりしめっていて、こちらからも離しがたく感じたところで目が覚めた。


高校時代、遺伝に興味があってその手の本を何冊か読んだのを思い出す。
SFのようだがまったくありえなくもない夢だった。なんとなく『わたしを離さないで』みたいな感じ。あの本泣けたなあ。また読もう。


気仙沼市、造船所の風景。