『みえない雲』
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作品ごとに圧倒的なカタストロフで読者を打ちのめすマンガ作家・清水玲子氏の作品に『月の子』という社会派SFコミックがある。
『月の子』はアンデルセン童話「人魚姫」を下敷きに地球環境問題を描きつつも、基本はラブストーリーであり、しかも同時にSFでもありファンタジーでもあるという、非常に多面的な作品でもある。80年代の作品だがベストセラーでもあるし読まれた方は多いと思うのでネタバレさせていただくが、なんとこの物語は「チェルノブイリ原発事故は起こらなかった」という設定で「ハッピーエンド」に終わる。
主人公ジミーが事故後の地球の「悪夢」をみて泣きながら目覚めると、事故は起きなかったんだよ、それはただの夢だよ、と恋人が慰めてくれる。
映画『みえない雲』の中盤で、変わり果てた自分の姿を鏡でみて泣く主人公ハンナ(パウラ・カレンベルク)を、同室のアイシェ(クレール・エルカース)が抱きしめて「大丈夫よ」というシーンがある。
「大丈夫」。
ありふれた、なにげない言葉。
誰もが、不安に怯える誰かを抱きしめるとき、ささやく言葉。
でも、そういっている本人は、ほんとうは何が「大丈夫」なのかわかってはいない。
ほんとうは全然「大丈夫」じゃないかもしれない。
もしかしたら、奇跡が起きて、「大丈夫」になるかもしれない。
そんな、あてのない祈りにも似た言葉。
「大丈夫」。
この映画のテーマは原発事故だが、やはり物語の軸になるのはヒロインと転校生エルマー(フランツ・ディンダ)の淡い恋愛である。
彼らは出会ったばかり、恋に堕ちたばかりで原発事故という大惨事に巻きこまれ、引き裂かれ、出会いと別れを何度となく繰り返す運命を強いられる。まだティーンエイジャーのふたりを苛酷な悲劇が容赦なく襲い続ける。
つまり、全体としてはこの少年少女のロマンスの背景に原発事故がある、という構成になっている。それがものすごく上手いと思いました。ラブストーリーと原発事故の要素の配分もちょうどいい。どちらかに偏ってもいないし、甘えてもいない。社会派ドラマだからといってかたくなりすぎてもいないし、説教くさくもない。悲劇的なラブストーリーだからといって安易なお涙頂戴ドラマにもなっていない。ホントによくできてます。
ぐりはチェルノブイリ原発事故当時中学生で事故の報道をよく覚えているけれど、この映画に登場する子たちのような10代20代の世代にとっては遠い昔の他人事のようなものではないだろうか。しかし実はまったく他人事ではない。映画のラストに「ドイツには17基の原発がある」というテロップが出てくるが、日本には55基。これがいつ何どき大事故を起こさないという保証はどこにもない。
学生のとき、80年代に会社経由で政府の依頼を受けて原発事故のシミュレーション調査をしたという研究者の授業を受けたことがある。日本でスリーマイルのような事故が起きたらどうなるか、彼はマジメに研究調査をし、報告書をまとめた。結局、彼の報告書はにぎりつぶされ、会社からは「一生研究と生活のめんどうはみてあげるから、報告書のことは忘れてくれ」といわれたそうだ。要するに彼の報告書は「大丈夫」じゃなかったってことです。
そんな国に、我々は住んでいるのだ。
若い子に是非みてほしい映画です。感動的です。いい映画です。オススメ。
個人的にはエルマー役のフランツ・ディンダがどーしてもキアヌ・リーブスにみえてしまうのが超気になりました(爆)が、チェルノブイリの影響で生まれつき肺がひとつしかないという主役のパウラ・カレンベルクもすばらしい。とても19歳(撮影当時)とは思えない堂々とした名演でした。
『月の子』について追記。
このマンガには黙示録第8章の
「第三の御使 ラッパを吹きしに ともしびのごとく燃ゆる大なる星 天より隕ちきたり 川の三分の一と水のみなもとの上におちたり この星の名はにがよもぎといふ 水の三分の一はにがよもぎとなり 水の苦くなりしに因りて多くの人 死にたり」
に登場する「にがよもぎ」がウクライナ語で「チェルノブイリ」と同義であるという表現があるが、この翻訳には異論もあり、「チェルノブイリ原発事故が聖書に記載されていた」という説は英語圏のキリスト教徒の間で信じられている一種の都市伝説。
チェルノブイリとはもともとウクライナ語でよもぎを意味するチョルノブイリが語源であり、これがすなわち「にがよもぎ」を指すわけではないそうだ。
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作品ごとに圧倒的なカタストロフで読者を打ちのめすマンガ作家・清水玲子氏の作品に『月の子』という社会派SFコミックがある。
『月の子』はアンデルセン童話「人魚姫」を下敷きに地球環境問題を描きつつも、基本はラブストーリーであり、しかも同時にSFでもありファンタジーでもあるという、非常に多面的な作品でもある。80年代の作品だがベストセラーでもあるし読まれた方は多いと思うのでネタバレさせていただくが、なんとこの物語は「チェルノブイリ原発事故は起こらなかった」という設定で「ハッピーエンド」に終わる。
主人公ジミーが事故後の地球の「悪夢」をみて泣きながら目覚めると、事故は起きなかったんだよ、それはただの夢だよ、と恋人が慰めてくれる。
映画『みえない雲』の中盤で、変わり果てた自分の姿を鏡でみて泣く主人公ハンナ(パウラ・カレンベルク)を、同室のアイシェ(クレール・エルカース)が抱きしめて「大丈夫よ」というシーンがある。
「大丈夫」。
ありふれた、なにげない言葉。
誰もが、不安に怯える誰かを抱きしめるとき、ささやく言葉。
でも、そういっている本人は、ほんとうは何が「大丈夫」なのかわかってはいない。
ほんとうは全然「大丈夫」じゃないかもしれない。
もしかしたら、奇跡が起きて、「大丈夫」になるかもしれない。
そんな、あてのない祈りにも似た言葉。
「大丈夫」。
この映画のテーマは原発事故だが、やはり物語の軸になるのはヒロインと転校生エルマー(フランツ・ディンダ)の淡い恋愛である。
彼らは出会ったばかり、恋に堕ちたばかりで原発事故という大惨事に巻きこまれ、引き裂かれ、出会いと別れを何度となく繰り返す運命を強いられる。まだティーンエイジャーのふたりを苛酷な悲劇が容赦なく襲い続ける。
つまり、全体としてはこの少年少女のロマンスの背景に原発事故がある、という構成になっている。それがものすごく上手いと思いました。ラブストーリーと原発事故の要素の配分もちょうどいい。どちらかに偏ってもいないし、甘えてもいない。社会派ドラマだからといってかたくなりすぎてもいないし、説教くさくもない。悲劇的なラブストーリーだからといって安易なお涙頂戴ドラマにもなっていない。ホントによくできてます。
ぐりはチェルノブイリ原発事故当時中学生で事故の報道をよく覚えているけれど、この映画に登場する子たちのような10代20代の世代にとっては遠い昔の他人事のようなものではないだろうか。しかし実はまったく他人事ではない。映画のラストに「ドイツには17基の原発がある」というテロップが出てくるが、日本には55基。これがいつ何どき大事故を起こさないという保証はどこにもない。
学生のとき、80年代に会社経由で政府の依頼を受けて原発事故のシミュレーション調査をしたという研究者の授業を受けたことがある。日本でスリーマイルのような事故が起きたらどうなるか、彼はマジメに研究調査をし、報告書をまとめた。結局、彼の報告書はにぎりつぶされ、会社からは「一生研究と生活のめんどうはみてあげるから、報告書のことは忘れてくれ」といわれたそうだ。要するに彼の報告書は「大丈夫」じゃなかったってことです。
そんな国に、我々は住んでいるのだ。
若い子に是非みてほしい映画です。感動的です。いい映画です。オススメ。
個人的にはエルマー役のフランツ・ディンダがどーしてもキアヌ・リーブスにみえてしまうのが超気になりました(爆)が、チェルノブイリの影響で生まれつき肺がひとつしかないという主役のパウラ・カレンベルクもすばらしい。とても19歳(撮影当時)とは思えない堂々とした名演でした。
『月の子』について追記。
このマンガには黙示録第8章の
「第三の御使 ラッパを吹きしに ともしびのごとく燃ゆる大なる星 天より隕ちきたり 川の三分の一と水のみなもとの上におちたり この星の名はにがよもぎといふ 水の三分の一はにがよもぎとなり 水の苦くなりしに因りて多くの人 死にたり」
に登場する「にがよもぎ」がウクライナ語で「チェルノブイリ」と同義であるという表現があるが、この翻訳には異論もあり、「チェルノブイリ原発事故が聖書に記載されていた」という説は英語圏のキリスト教徒の間で信じられている一種の都市伝説。
チェルノブイリとはもともとウクライナ語でよもぎを意味するチョルノブイリが語源であり、これがすなわち「にがよもぎ」を指すわけではないそうだ。
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