落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

That's marriage.

2015年01月15日 | movie
『ゴーン・ガール』

5回めの結婚記念日、ニック(ベン・アフレック)が自宅に戻ると室内は荒らされ、妻エイミー(ロザムンド・パイク)の姿が消えていた。不審に思ったニックは警察に通報し、著名人を両親に持ち子どものころから名前を知られていたエイミーの失踪は瞬く間にメディアを巻き込んだ大騒動に発展。捜査に協力的なニックには当初同情が寄せられるが、なんの手がかりも見つからない中で人々の感情はコントロールを失い・・・。
全米でミリオンセラーとなったギリアン・フリンの同名小説を『ソーシャル・ネットワーク』『ベンジャミン・バトン』『ゾディアック』のデヴィッド・フィンチャーが映画化。

おもしろかったです。
エンドロールが流れた瞬間、座席でガッツポーズしたくなったくらい。たぶんここ数年で観たミステリーではナンバーワンじゃないかな?下馬評通り、期待以上の傑作。大袈裟にいえばもう一回観てもいいくらい。今回はひとりで観たので、次はできれば誰かといっしょに観て、終わったらあーだこーだ語りあってみたい。個人的には男性の感想が気になる。どっちかといえば女性向きの映画だとは思うけどね。原作も今度読んでみよ。
この原作は2002年に起きたスコット・ピーターソン事件を基にしている。小説はフィクションなので、結末は事実とは異なるようです。

ネタバレになるのであらすじについては触れないが、簡単にいえばタイトルになっている妻エイミーの失踪そのものは物語のほんの序の口に過ぎない。そしてこの物語はミステリーであると同時に、“リレーションシップ”の困難さを強烈に皮肉ったブラックコメディでもある。
たとえば人は誰かを好きになると、相手に自分のことをよく見せようと意識し、少しでも優位にたとうとする。相手のことを何でも知りたいと願うようになり、逆に自分の都合の悪い部分は隠そうとする。相手をいったん手に入れるとどこまでも支配したくなるが、自分は支配されたくないと考える。だが、人はどこまでいっても相手のことを完全に知りつくすことはできないし、完全に人を支配することもできない。その壁を乗り越えるのが愛情なのだろう。生まれ育った環境も違う赤の他人が結婚して家族になる。わからなくて当り前、愛があるからわからなくても信じられるのではないのか。それができないのは愛ではなくただの自己愛、恋をしている自分に酔っているだけである。つーてもぐりは結婚したことないからあんましわかんないんだけど。
残念ながらニックとエイミーはいいトシをして己の精神的な未熟さに対してあまりにも無意識過ぎたし、互いに敬意をもつことの大切さを知らな過ぎた。美男美女で仲睦まじいプチセレブ夫妻というパブリックイメージは虚構だが、まるで思春期の子どものようなめんどくささに関していえば、まったくお似合いな似たもの夫婦である。

でももしかすると、大人になりきれずいつまでも不器用な「学園祭の人気者」気取りのニックと、美人で恐ろしいほど頭はきれるが主体性はもたないエイミーの人物造形は、どこかで現代アメリカ人の持つコンプレックスをそのままカリカチュアライズした狂言廻しで、この映画のほんとうの主人公はマスメディアに狂乱しロクに名前すら出てこないオーディエンスの集団心理なのかもしれない。
主人公たちが巻き込まれていく事件ももちろんすごく怖いんだけど、会ったこともない誰かを勝手に知ったつもりになって無責任にいいたいことを口々にいいあい、時によって同情してみたり疑ってみたり憎んでみたり許してみたり、そんな感情をぶつけあっては天災のようなカタストロフを巻き起こす怪物の恐ろしさほど制御不能なものはない。
ニックと妹マーゴ(キャリー・クーン)はエイミーの頭脳と人格に戦慄するけど、ほんとうに恐れるべきなのは彼女の向こうにいるオーディエンスなんじゃないかと思う。劇中でエイミーがニックの前にいるときと完全に別の顔を見せるパートがあるのだが、オーディエンスに対して無防備な彼女はとくに恐れなくてはならないような特異なキャラクターではないし、愛すべき人間らしさもある。あるいはこちらの彼女の方が真の姿ではないかと思えるくらいである。それを思えば、名もない“その他大勢”にただただちやほやされるためにひたすら血道を上げなきゃいけない生き方も相当しんどそうなんだけどね。
しかし観ていてマーゴがとにかく可哀想で仕方なかった。似たもの夫婦が互いをドツボにハメあう茶番に、双子だからというだけで引きずりこまれてどんどん抜け出せなくなっていく。こういうドツボの中毒性みたいなものもあるのかなあ?

ところでアメリカでも大ヒットして各映画賞でも有力候補になってるこの映画、なぜか主演のベンアフはぜんぜんノミネートされてないみたいで残念です。ものごつ天晴れな抜け作ぶりが素晴らしいんですけど。ロザムンド・パイクの演技が強烈過ぎて霞んじゃったのなら気の毒です。
ぐり的にはニックの教え子・アンディ役のエミリー・ラタコウスキーのウルトラボディに完璧ノックアウトでした(爆)。だってあのロリ顔であの巨乳・・・ビックリですってマジで。すいません。
あとコレ、戯曲で観てみたいと思いました。日本でだったら菅野美穂と香川照之とかどうでしょうかね。真木よう子と西島秀俊でもいいな。深津絵里と堺雅人でもおもしろいかも。いかがでしょう。

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