落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

週末のおさらい其の参

2008年08月07日 | lecture
AIDS文化フォーラムin横浜 8月3日
「日本における人身売買〜ホットラインの向こう側」 てのひら〜人身売買に立ち向かう会ポラリスプロジェクト藤原志帆子氏(初出

*全世界で人身売買の被害者は1200万人。市場規模は310億ドル/年。被害者の8割が女性、5割が子ども(国際労働機関)。
日本国内での外国人被害者は20万人(国際移住機関)。

*日本で発覚する被害は全体の1割程度。
人身売買が地下産業で社会の認知度が低いことにくわえ、システムが複雑でわかりにくいことも原因。当事者本人が被害に気づいていないことも多い。

*アメリカ留学中、アジア系留学生から日本人の買春ツアーの存在を聞いたのをきっかけにワシントンDCでポラリスを立ち上げた藤原氏。
LGBTや売春させられている女性たちのホットラインを設置、次第に警察や地域社会の信頼を得て、警察側からも協力を求められるようになった。

*日本の問題に取り組むため2004年東京事務所を開設。活動資金は主に外資系企業やアメリカ企業から募った。
もともと関心の高い企業を除けば、日本企業は重すぎるからという理由で協力したがらない。

*ホットラインという形にしたのは、当事者の声を集めないことには具体的な法改正にはつながらないから。

*電話スタッフは10人。常駐では日本語・英語・韓国語に対応。臨時でスペイン語とロシア語もスタッフがいる。

*電話相談件数は年間750件。
相談内容は闇金、ドメスティック・ヴァイオレンス、国際結婚に関する悩み、妊娠、HIVを含む性感染症に関する問題、仕事のトラブルなどさまざま。
いちばん多いのは法律相談で、そもそも110番を知らない人もいる。

*当事者からの電話相談に対応するのが基本的なサポート活動だが、気になるケースでは1ヶ月に1度ポラリス側から電話をして「元気?」などと世間話をすることで状況確認をとる場合もある。

*アメリカなどでは人身売買を「現代の奴隷制」などといって社会的な関心も高いが、日本では性産業に携わる女性に対する偏見が厳しく、「好きでやってるんでしょ」「お金目当てでしょ」という見方から誰も離れない。
最も理解を必要とする公的機関においても同様。

実はこのインタビュー、ろくにメモをとってないのでおさらいしようとしても、あんまりうまくまとまらない・・・。すごくいいお話だったんだけど。
聞いてていちばん心に残ったのは、語っている藤原氏の飾り気のなさ。年齢的には30代前半くらいだと思うんだけど、アメリカ留学の理由を聞かれても「頭悪くて日本の大学に入れなかったから」なんてサラッといってしまうし、実際には政府間会合や警察の勉強会で発言するなど専門家として相応の活躍をされているのに、そういった「あたしこんなことやってすよ」感がいっさいない。
正直な話、ぐりがこの手の人権団体の話を聞いていていちばんひっかかるのが「あたしこんなことやってますよ」的な上から目線。こういう活動って結局は過去の実績よりも継続が重要なわけで、常に現実に則した地道な姿勢が何よりも当事者に強く求められているものなんじゃないかと思う。
そういう点では、電話をかけてくる人たちとまったく同じ目線で向かいあおうとしている藤原氏のスタンスって、たったこれだけの話でもすごく信頼できる感じがしました。

人身売買のすべての元凶は買う側にある。
そもそも人間をお金で買うなんて人権上では決して許されはしない。それなのに買う人間がいるから売るビジネスが生まれてくる。
海外から来る女性にしても、日本国内で売り買いされる被害者にしても(もちろん日本人も売買されている)、好きこのんで自らを売り渡したわけではない。騙されて違法な借金を背負わされ、脅迫され、暴力をふるわれて精神的な自由を奪われて仕事を強制されている。そのことに社会が無関心なために、被害がなかなか表沙汰にならない。被害者は社会からの孤立という二重の苦しみを被ることになる。
人が人を買うことがどれほど間違ったことか、そのことさえもっとしっかり認識されれば、被害はもっと少なくなるはずなのに・・・。


抜け殻。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (liyehuku)
2008-08-08 05:58:13
(ささいなことなので詳細は割愛しますが)最近、「人間って精神的・体力的消耗が限界を超えると自分が異常な事態にあるという認識ができなくなる」ということを実感した出来事があり、ふと、日本で数年前に起こった凄惨な監禁事件(数件の殺人を含む)の被害者たち(同時に加害者でもある人もいる)のことを思い出しました。
「当事者本人が被害に気づいていないことも多い」という箇所を読んでまたそのことを思い出しました。
日本でその部分を社会的に問題として掘り起こすのは(欧米諸国と比較すると)とてつもなく難しいことだと思うし、でもだからこそ是非必要なことなのだろうな、と思います。
返信する
Unknown (ぐり)
2008-08-08 08:21:07
liyehukuさん

おはようございます。
ブログ拝見してます。体調はいかがですか。

> 日本で数年前に起こった凄惨な監禁事件(数件の殺人を含む)の被害者たち(同時に加害者でもある人もいる)のことを思い出しました。
どの事件のことだろう・・・って思いだせないのも怖いですね。監禁事件多いですから。

>「当事者本人が被害に気づいていないことも多い」という箇所を読んでまたそのことを思い出しました。
比較的最近の事件では、ホストクラブに誘われた少女が「オゴリだから」と飲食を勧められた挙げ句に法外な勘定を求められ、その借金のカタに離島の性風俗店に売り飛ばされるというのがありました。
クスリ漬けにされたり、家族に危害を加えると脅される人もたくさんいて、「自分が悪い」という意識を植えつけられて、自分が被害者であることに気づかないんですよね。

>日本でその部分を社会的に問題として掘り起こすのは(欧米諸国と比較すると)とてつもなく難しいことだと思うし、でもだからこそ是非必要なことなのだろうな、と思います。
最近公開された映画『闇の子供たち』で多少関心は高まってる気はしますが、どうしても国内での被害にまでは目が届かないみたいです。
そういうのこそ映画とかドラマにしてほしいけど、ヤクザが絡んでると現実的にはなかなか難しい。
実際に被害者を支援してる団体はどこも、脅迫とかあったりするみたいなんだけど、なかなか警察も協力的じゃない。ってか警察がどっちかというと“あちら側”だったりするから・・・。
返信する

コメントを投稿