落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

勝ち組は誰

2005年12月13日 | movie
『SAYURI』
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にも書いたけど、ぐりはこの映画にハナから何も期待していない。
なるほどハリウッドは『ラスト・サムライ』では日本独自の世界観を新たな視点から再現することに成功した。しかしあれとこれとではわけが違う。監督も違うし、準備期間もお金のかけ方も違っている。なにしろ『SAYURI』のヒロインは中国人女優なのだ。ハリウッドが中国人俳優で日本の時代劇を撮るのだから、時代考証や造形設計や専門用語に正確さを求めるのはそもそも無意味な話だ。
確かにツッコミどころは満載です。ぐりのようなド素人の目からみても、失笑どころかまさに顎も外れるようなデタラメだらけ。けどぐりはそんなことはどうでもいいです。最初から気にしないことにして観にいったんだし、それをいちいちあげつらったところでそんなもの何かの役にたつわけもない。他人はどうあれ、ぐりはわざわざトリビアクイズをしに映画館に行ったりはしない。だからここではそれについては一切言及しません。

しかしこの映画は日本を舞台にした時代劇を中国人が演じアメリカ人が撮っているというハンデをすっかり除けても、それでも、どうみても大失敗だと思う。
もう何がいいたいのか全然わからないんですよ。貧しい少女のシンデレラストーリー?華やかな芸者の世界?東洋の神秘?どれもまったくの見当違いに終わってしまっている。
まず話が長い。ムダなパートが多すぎるし、その割りにカメラワークや編集に落着きがなく、台詞が多い上に効果音や音楽が異様にやかましい。情報量が多過ぎる。説明過多なのに辻褄のあわない箇所が多く、結果的には何の説明にもなっていない。話の流れにメリハリがないのに場面転換が忙しく、シーンのひとつひとつがそれぞれの用を成していない。そのために物語の展開がどうしようもなくもたついていて、波瀾万丈なストーリーのはずなのに退屈。華麗なはずの花柳界の情景描写もぱっとしない。一部に「映像がきれい」というレビューもみかけたけど、ぐりはどこがきれいなのかわからなかった。ハッキリいってグロテスクな部分の方が目立っていたと思う。
つまり、この物語によって観客に何を伝えたいのかをつくり手自身が消化しきれていないのだ。あるいはモチーフやストーリーに愛情がないのかもしれない。少なくとも、つくり手がこの物語の世界を楽しもうとしているようにはまったく見えなかった。単にダイジェスト的に原作のストーリーをなぞっているだけに見えた。
この映画を観た外国人の感想が非常に気になる。ぐりは原作を読んでたから話は理解できたけど、原作も読んでない、日本をしらない観客はあの話にどれほどついていけるだろう。
全体の印象として、「なんだかバタバタバタバタうるさい映画だったなあ」という感じがしました。これじゃあ祇園も芸者(正しくは芸妓)も東洋の神秘もナニもあったもんじゃないです。問題外。

ただし出演者はどの人もとても頑張ってました。
章子怡(チャン・ツィイー)は可もなく不可もなく、といったところか。もうひとつ本領発揮という風には見えなかった。彼女にはこういうおしとやかな役は似合わないんじゃないかなあ。それにしてもこの子は顔も芝居も鞏俐(コン・リー)そっくりだ。
当の鞏俐はまさに初桃にぴったり。ハマり役でした。楊紫瓊(ミシェル・ヨー)は所作がいちばんよかったです。
そしてやはりなんといっても最もキャラ立ちしてたのは桃井かおりでしょう。この人も‘ハリウッド向き日本人俳優’ですねー。渡辺謙も顔も芝居も濃すぎて日本映画よりハリウッドが似合ってると思ったけど、彼女もすっごいハマってました。役所広司も相変わらずうまい。英語苦手らしいけど、全然そんな感じしなかったです。
渡辺謙は役的においしすぎ。かっこよすぎです。イヤそれでいいんだけど。そういうキャラだし。うん。

彼らの熱演だけでも観る価値のある映画だといっていえなくはない。
でも、ただオリエンタル趣味なアメリカ人向けのエンターテインメント映画としても、これは失敗ではないかと、ぐりは思います。それこそまだふつうに日本で映画化した方がなんぼかマシだったんじゃないかと思ってしまう。
残念。
ぐり的にいちばんがっかりしたのは老年のさゆりのナレーション。あんな魔法使いのおばあさんみたいなしわがれ声じゃなくて、 草村礼子のようなやわらかくてかわいらしい声でやってほしかったです。あれでは「初恋の人と結ばれた幸せな女=人生の勝者」ではなく、もろに「売春窟に売られた不幸な少女の成れの果て」の語りです。
あーあ。

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