落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

雷の日曜日

2006年04月02日 | movie
『バブル・ボーイ』
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生まれつき免疫機能をもたないために一度も無菌室から出たことのないジミー(ジェイク・ギレンホール)。隣家に越してきた美少女クロエ(マーリー・シェルトン)と恋仲になるが、彼の障害のために彼女は別の男性との結婚を選ぶ。クロエの真意を知ったジミーは自作の“バブルスーツ”を着て結婚式場のナイアガラまでひとり旅に出る。
コメディです。それもすんごいおバカコメディ。もー爆笑なんてもんじゃありません。涙ちょちょぎれますわ(死語)。おかしすぎて。
と同時に冒険物語でもあるし、ロードムービーでもあるんだよね。そしてある意味では「フリークスってなんだ?」というちょっと重いテーマを、思いっきり大胆にひっくりかえしてハッピーな解釈で捉えた映画でもあります。人は自分と違うもの、相容れないものを「ヘンだ」というだけで嫌悪したり拒絶したりするけど、この映画にはホンットにいろーんな種類の“ヘンな人”が出てくる。タトゥーまみれのバイカー集団や身体障害者サーカス団、カルト教団からヒンズー教徒から、異常な潔癖性で狂信的なキリスト教徒であるジミーの母親(スウージー・カーツ)も一種の“ヘンな人”だ。“ヘンな人”満載。だからヘンな風船のなかに暮して接する人間は両親だけ、ヘンな髪型でヘンな服を着てるジミーが最初は“ヘンな人”にみえるんだけど、周りのおかしさが目立ってくるにつれだんだん彼なんか全然フツーじゃん!という風にみえてくる。それもおかしい。しかしコレ観て怒る人も相当いるだろーなー・・・。
といってもそんなマジメにおカタイ話ではなくて、ごくごくお気楽なファンタジーコメディです。そんなアホな〜!な展開の連続。でもそれでいいのだ。笑えれば。映画だもん。

ジェイクは最初『デイ・アフター・トゥモロー』で観た時も「ヘンなカオだなあ」と思ったけど、今作ではもうその「ヘンなカオ」炸裂。微妙にヘラヘラした表情も素っ頓狂な甲高い声も、仕種や歩き方や喋り方まで独特の完全コメディアンモードです。力いっぱいの大熱演。てゆーかこれ『遠い空の向こうに』で有名になった2年後の映画なんだよね。・・・なんでこの役やったんだろー。不可解。ラストシーンではちゃんとかっこよくなって出てくるけど。ほぼ別人といっていいほどのあまりの変身ぶりでそれも笑える。今みるとこの頃ずいぶん痩せてたんですねー。役柄的にはもうちょっとふっくらしてた方がよかったかも。
VFXシーンもいっぱいあるし、けっこうお金のかかったちゃんとした映画ではあります。こういうアホ映画をここまで真剣にやっちゃうとこがさすがハリウッド。ジミーとクロエのお気に入り番組「恐竜王国」もチープだけどかわいい。
『グッド・ガール』でスーパー店長役だったジョン・キャロル・リンチがジミーの無口なおとうさんを演じてました。この人ホンワカした雰囲気でぐりは好きです。
ところでジェイクがはいてたキャラクタープリント柄の大人サイズのブリーフって実在するのかな?あれば浮気防止グッズとしてなかなかよさそーです(爆)。

雷の日曜日

2006年04月02日 | movie
『恋人たちの食卓』
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一流ホテルの料理長だった朱氏(郎雄ロン・ション)の家では毎週日曜の夕食は自宅で父の手料理を食べる習慣があった。妻亡きあと男手ひとつで3人の娘を育ててきた父、長女家珍(楊貴媚ヤン・クイメイ)は堅物の高校教師、次女家倩(呉倩蓮ン・シンリン)は航空会社に勤務するキャリアウーマン、三女家寧(王渝文ワン・ユーウェン)はアルバイトに忙しい女子大生。台北の中流家庭の“食卓”を舞台に、それぞれに自立を求め幸せを模索する家族の姿を静かに描いたホームドラマ。
10年近くぶりの再見。最初に観た時も地味だと思ったけど、今観てもやっぱり地味です。イヤ好きですよ。こういうの。ただぐりん家も三姉妹だからちょっとハナシがナマナマしいとゆーか(笑)、他人事としてみれないとこがあるってのはしょうがないね。うちは両親ともに健在だけど。
はっきりといえばとりたててどうということもない物語ではある。失恋の痛手をいいわけに自分の殻に閉じこもる家珍、父に憧れながら素直になれない家倩、末っ子らしく気楽気侭で愛嬌が取り柄の家寧、仕事ひとすじで厳格で頑固一徹なおとうさん、どこにでもいて誰でもが知っているようなありきたりなキャラクターだ。だがそれぞれを愛情こめて丁寧にしっかりととらえているからこそ、この物語はどこまでもあたたかくやさしい。ドラマをわざと非ドラマチックに平凡にとらえることで、逆にひとりひとりのエピソードがより説得力をもって響いてくる。
この映画のいいところは、絶対無二のようにみえて実際にはうつろいやすいものという家庭の負の側面を、ヘンな感傷にとらわれず誠実に描いているところだと思う。家族といっても所詮は生きた人間の寄せあつめだから、わかりあえないこともあればぶつかることもある。子どもはいつかは親から離れていくし、親だってそうだ。でもそうして移りかわっていくこと自体は不幸でもなんでもない。当り前のことだ。

改めてみるとこれすんごい豪華キャストなんだよね。今さらながら。
楊貴媚は今や台湾を代表する大女優だし、呉倩蓮も大スター。王渝文は彼氏役の陳昭榮(チェン・チャオロン)ともども『青春神話』に出てた子ですね。あのときもかわいいと思ったけど、今作でもホントに愛くるしい末娘ぶり。きゃわいい。最近ではプロデューサーとしても活躍する張艾嘉(シルヴィア・チャン)まで出ている。その母・梁夫人役の歸亞蕾 (グァ・アーレイ)はもしかして『さらば、わが愛─覇王別姫』に出てなかったっけか。趙文瑄(ウィンストン・チャオ)は確か同じ李安(アン・リー)の『ウェディング・バンケット』でデビューしたんだよね。ひさびさ見たけど洗練されててやっぱりかっこいいね〜とゆーかそのかっこよさが嫌味なんだけど(笑)。郎雄は『ウェディング〜』で彼のおとうさん役やってたね。
全編にくりかえし出てくる豪華な中華料理がほんとうにおいしそう。中華電影は毎度食事のシーンが多くてみるたびにおなかがすくけど、この映画はまた食事そのものがモチーフなもんだからその頻度がすごいし、内容もホテルのディナーなみだからかないません。ああ中華が食べたいなあ。

山は高かった

2006年04月01日 | movie
『我愛你 ウォ・アイ・ニー』
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婚約者を事故で突然失った小橘(徐静蕾シュー・ジンレイ)は彼の親友だった王毅([イ冬]大為トン・ダーウェイ)と結婚、彼女の勤務する病院の職員寮で新婚生活を始めるが、異様に独占欲が強く自己中心的な妻との生活に王毅は間もなく疲れはじめ、毎日のように激しい口論を繰り返すようになる。
まあかなりイタイ話です。でもこれも最初観た時にすぐわかるんだけど、ヒロインはふつうの精神状態ではない。一見ごくノーマルに社会生活を営んでいるので周囲の人間はなかなか気づかないんだけど、この人は完全に病気です。愛する人と対等な関係を築くことができない、とにかく相手に全面的に依存するというかたちでしかコミュニケーションできないという、いわゆる一種のアダルト・チルドレン。それも重症。アダルト・チルドレンは厳密には病気ではないけど、このヒロインのケースは病気の域に入ってるかもしれない。なぜ彼女がそうなったのかは映画の終わりの方でちゃんと説明がある。ホラね、やっぱりね。みたいな。

しかし全編ひっきりなしに出てくる夫婦の口論の内容自体はとにくとりたてておかしなやり取りではない。夫婦でも恋人でも、親しい他人との共同生活の経験のある人なら、誰でも大なり小なり身に覚えのあるような些細なことでふたりはいつも争っている。傍目からみれば争うほどのことではないのに争わずにいられないのは、彼らに愛情があるからだ。愛しているから向きあいたい、つながっていたいと欲するからこそ、彼らは諍いをやめない。
そんな愛情は歪んでいるという人もいるかもしれない。だが愛情なんてみんなどこか歪んで、病んでいるものだ。この物語は、愛情という深く複雑な感情の病理の部分を克明に描写しているという意味で非常に挑戦的だし、マジメな力作だとも思います。

主演の徐静蕾はいかにも薄幸そうな美人ぶりと少女のように毒気のある話し方が非常にこの役にあってます。[イ冬]大為はたぶん映画を観たのは初めてかな?最近人気あるみたいですね。
上映前に張元(チャン・ユアン)監督の次作『緑茶』の予告をやってました。
撮影監督は張元組の常連張健(チャン・ジェン)。『東宮西宮』『藍宇』の人ですね。この人の映像はライティングはスタイリッシュだしカメラワークの?ト吸がなんとゆーかシックで、ホントにオシャレで大人っぽい。今回もかっこよかったです。

山は高かった

2006年04月01日 | movie
『ヒストリー・オブ・バイオレンス』
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一時はオスカー候補にも挙がったデヴィッド・クローネンバーグの最新作。
トム・ストール(ヴィゴ・モーテンセン)はインディアナ州の片田舎で小さなダイナーを営む平凡な男。ある日ダイナーを襲った強盗を反射的に射殺したトムは街の英雄に祭り上げられる。そして彼を“ジョーイ”と呼ぶマフィア風の男たちがトムの店や家族の周囲に出没するようになり、徐々に家庭の平穏は乱され平和だった生活が脅かされ・・・という、一見サスペンスのよーな物語。
しかし。しかしこれはサスペンスではなーい。もし仮にそーだとしたら話がゆる過ぎます。カンッペキに宣伝ミスですこれわー。

※以下ネタバレ部分。
てゆーのが。主人公トムが筋金入りの天才的殺人マシーンであることは初めの強盗のシーンで誰にでもわかってしまう。目もさめるほどあざやかな身のこなし、一切の躊躇もなく相手の急所を狙う銃の撃ち方とそのテクニック、どっからどーみても素人とは思えません。それはその場にいた全員が気づくはずだ。疑いの余地がない。アメリカが舞台だから軍隊経験のある人なら射撃くらいはできるだろうけど、軍隊で教わる射撃とギャングの教わる射撃はまるっきり質が違う。それに身分をいつわって暮してる人間が無防備にメディアの取材に応じたりする筈がないし、そもそもひとめにつくような行動や職業は選ばないはずだ。
おそらくトムはそういうことに神経をつかうタイプではないのだろう。それはそれでアリだ。
だから、この物語は彼が暴かれていく過去と戦うサスペンスなんかではなくて、「暴力」という烙印から無理矢理に逃れようとする不器用な男の悲しい物語ではないだろうか。サスペンスとしてはハッキリと三流だが、見方を変えれば、人殺しという取り返しのつかない罪を負った人間が、一生それに囚われ続ける不幸の一側面はちゃんと描かれている良作ともとれる。
トムに一旦身についた殺人テクニックは死ぬまで削ぎ落とせないだろうし、追っ手は彼を捕えるまで永久につきまとうだろう。まさに蟻地獄のような人生だ。それはそれで死ぬよりも悲惨な生き方かもしれない。
※ネタバレ以上。

特殊メイクがスゴイです(笑)。主人公はいちーち相手の心臓か頭部をきっちり撃つんだけど、それを逐一ちゃんと撮るんだよね。もーリアルすぎて笑っちゃう。暴力シーンが苦手なぐりでもここまで来たら笑います。銃弾の威力というか衝撃度の表現も、黒澤明の斬撃シーンばりのナマナマしさ。マニアックだ。
それとオスカー候補になったウィリアム・ハートの出番が少なくてまた笑った。なっかなか出てこないし、出てきたらきたでアッという間にご退場(爆)。マジでそれだけ?うそぉ?!みたいな。
奥さん役のマリア・ベロとヴィゴのラブシーンが激しさがなんともクローネンバーグらしかったです。