『ビルマ、パゴダの影で』
昨年の反政府デモをきっかけに軍事政権と民主化を求める市民との間で緊張が高まっているビルマで、国境地帯の難民キャンプに暮す少数民族や反政府武装組織を取材したスイスのドキュメンタリー(※日本の報道では軍事政権が名乗る「ミャンマー」が正式な国名とされているが、本稿では作品の内容に沿って「ビルマ」と表記します)。
このドキュメンタリーがつくられたのは2004年なのでおそらく現在は多少状況は変わってると思うけど、日本人カメラマンが白昼堂々公衆の面前で射殺されるほど、今も政府軍の海外ジャーナリストに対する姿勢には容赦がない。そんななか、アイリーヌ・マーティー監督は厳しい報道規制をくぐりぬけて少数民族の難民たちに接触し、1988年のクーデター以来反政府運動を続けている民兵組織にも取材している。果敢である。ぐりはTVを観ないので最近のビルマ情勢に関する報道がどうなっているのかよく知らないけど、少なくとも、この映画に登場するほどの極地までアクセスできた報道機関はめったにないのではないだろうか。
そういう意味では確かに非常に貴重な映像ではある。
ひとくちに難民というが、彼らはいったいなぜ、どうして難民になり、そして難民になったらどういう生活が待っているのかが、難民自身の言葉で語られる。
家を破壊され、家族を失い、故郷の村を追われ、密林の中を転々と逃げまどう。キャンプに避難できたとしても安心はできない。いつ政府軍が襲いかかってくるかわからないからだ。
子どもたちは目の前で親を殺された光景をまざまざと記憶している。そして大きくなったら「民兵になりたい」「政府軍に復讐したい」という。ぐりが観ていていちばん悲しいと思ったのはこのシーンだった。たった今「故郷の村に平和が戻ってほしい」といったその口で「政府軍が憎い」という子ども。子どもに罪はない。子どもにはもっと明るくて夢のある将来像が当り前にあるはずなのに、ビルマの難民の子どもの夢は人を殺すことなのだ。
映画は全編音楽が大袈裟な上にナレーションがやたら感情的で、それもやはり欧米人とアジア人との距離感を如実に感じる“上から目線”モロ出しな感じの表現が妙に多いのが鼻についたけど、前述の通り、まず一般の報道機関にはなかなか踏み込めないレベルまで到達しているという意味では一見の価値は充分にある作品になっていると思う。
ただ、同じ難民を扱ったドキュメンタリーとしては先日観たばかりの『パレスチナ1948 NAKBA』ほどの完成度まではいっていない。まあね、かけた時間も根性の入り方も違い過ぎっちゃそーなんだけど。
昨年の反政府デモをきっかけに軍事政権と民主化を求める市民との間で緊張が高まっているビルマで、国境地帯の難民キャンプに暮す少数民族や反政府武装組織を取材したスイスのドキュメンタリー(※日本の報道では軍事政権が名乗る「ミャンマー」が正式な国名とされているが、本稿では作品の内容に沿って「ビルマ」と表記します)。
このドキュメンタリーがつくられたのは2004年なのでおそらく現在は多少状況は変わってると思うけど、日本人カメラマンが白昼堂々公衆の面前で射殺されるほど、今も政府軍の海外ジャーナリストに対する姿勢には容赦がない。そんななか、アイリーヌ・マーティー監督は厳しい報道規制をくぐりぬけて少数民族の難民たちに接触し、1988年のクーデター以来反政府運動を続けている民兵組織にも取材している。果敢である。ぐりはTVを観ないので最近のビルマ情勢に関する報道がどうなっているのかよく知らないけど、少なくとも、この映画に登場するほどの極地までアクセスできた報道機関はめったにないのではないだろうか。
そういう意味では確かに非常に貴重な映像ではある。
ひとくちに難民というが、彼らはいったいなぜ、どうして難民になり、そして難民になったらどういう生活が待っているのかが、難民自身の言葉で語られる。
家を破壊され、家族を失い、故郷の村を追われ、密林の中を転々と逃げまどう。キャンプに避難できたとしても安心はできない。いつ政府軍が襲いかかってくるかわからないからだ。
子どもたちは目の前で親を殺された光景をまざまざと記憶している。そして大きくなったら「民兵になりたい」「政府軍に復讐したい」という。ぐりが観ていていちばん悲しいと思ったのはこのシーンだった。たった今「故郷の村に平和が戻ってほしい」といったその口で「政府軍が憎い」という子ども。子どもに罪はない。子どもにはもっと明るくて夢のある将来像が当り前にあるはずなのに、ビルマの難民の子どもの夢は人を殺すことなのだ。
映画は全編音楽が大袈裟な上にナレーションがやたら感情的で、それもやはり欧米人とアジア人との距離感を如実に感じる“上から目線”モロ出しな感じの表現が妙に多いのが鼻についたけど、前述の通り、まず一般の報道機関にはなかなか踏み込めないレベルまで到達しているという意味では一見の価値は充分にある作品になっていると思う。
ただ、同じ難民を扱ったドキュメンタリーとしては先日観たばかりの『パレスチナ1948 NAKBA』ほどの完成度まではいっていない。まあね、かけた時間も根性の入り方も違い過ぎっちゃそーなんだけど。