原子力資料情報室によると、2019年と2021年の2度、ALPS設備の排気フィルターの大量破損というトラブルがあった。2019年には25基の排気フィルターすべてが破損していた。その際、東電はフィルターを交換しただけで、経済産業省や経産省「廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合/事務局会議」や原子力規制庁への報告をしておらず、原因の追及もしなかった。
2021年の場合は、9月30日に東電HDが経緯や原因究明に関する資料を経産省「廃炉・汚染水・処理水対策チーム会合/事務局会議」に提出したので以下に要旨を紹介しよう。8月24日に増設ALPS内でスリラー(ALPSでの処理過程で出てくる残滓で外側をステンレスで補強したポリエチレン製容器(HIC)に貯蔵。残滓が含む放射性物質からの強い放射線に晒され脆くなるため、容器の吸収線量が積算で500万グレイを超えると評価された場合、移し替え作業を実施)の移し替え作業中、移し替え装置の排気ラインで警報が鳴ったため、作業を中断、調査を開始し、8月30日に排気フィルターの破損を発見した。スリラー移し替え作業に関連する排気フィルターは全部で25基設置しているが、24基が破損していた。ALPSは8月24日から2週間停止し9月7日に再開した。
移し替えはスリラー溶液を吸い上げて移送するのであるが、全量を移す事は出来ず、底の2㌢ほどは残る。そして2本の容器を放射性廃棄物として当面保管する。底に残った方の容器からの移し替え作業は「原子力規制庁殿と議論のうえ実施」としている。警報はスリラー移送作業中にダストモニターの警報が鳴ったのであり、排気フィルター破損の原因はエアブローを実施する作業によるものであった。それはHICの中のミストを吸い込む事で、排気フィルターに水分による強度劣化が生じ、エアブローを実施する事で破れた。
東電HDは、ALPS設備の他の部分の排気フィルターについても調査した結果、新たに8基(既設ALPSにある28基の排気フィルターのうち4基、増設ALPSにある18基のうち4基)の破損を発見した。高性能ALPSにある5基の排気フィルターに破損はなかった。これらの破損原因もミストであった。
(2023年8月22日投稿)