昨日は就職関連のイベントに出張し、百人ほどの美女がヒナ壇に勢揃いする現場に参加するという幸運がありました。
しかし彼女達の髪型が???で、全然、髪の毛のカットが揃っていなくて、ボサボサと……。もちろん流行だってのは分かっていますが、ひとりならともかく百人近くも集っていると、う~ん、なんだかなぁ……。
ということで、本日は――
■The Magnificent Thad Jones (Blue Note)
サド・ジョーンズはカウント・ベイシー楽団で名を売ったトランペッターで、後年は自分でもオーケストラを持つので、どうしてもビッグバンドの人と思われがちですが、小編成のバンドでも味わい深い演奏を聞かせてくれます。
そのスタイルはハードバップというよりはソフトバップで、丁寧に和みのフレーズを綴る温か味が魅力でしょうか。ただしカウント・ベイシー楽団では、時としてトンパチなアドリブをやったり、作編曲にも秀でていたところから、考えすぎた演奏に陥る時もあるようです。つまり、それは天才の証なのかもしれません。
さて、このアルバムは前述したようにカウント・ベイシー楽団での活躍で注目されはじめた時期のリーダー盤で、ブルーノートと契約しての2枚目となります。
録音は1956年7月14日、メンバーはサド・ジョーンズ(tp)、ビリー・ミッチェル(ts)、バリー・ハリス(p)、パーシー・ヒース(b)、マックス・ローチ(ds) という素晴らしすぎる人選です――
A-1 April In Paris / パリの4月
これぞ、カウント・ベイシー楽団でサド・ジョーンズが人気を集めるきっかけとなった曲のコンポバージョンというべき演奏です。
グッと重心の低いリズム隊のビートは黒っぽく、よりテンポを落とした演奏は、サド・ジョーンズの丁寧なテーマメロディの吹奏で、こちらも大変に魅力的♪ しかもサド・ジョーンズのアドリブは、カウント・ベイシー楽団で当りをとった、あのフレーズと同じく始るのですから、たまりません♪ 全体としては、やや不安定なんですが、この一撃で許してしまいます。
さらにマックス・ローチのヘヴィなブラシとか、リズム隊の凄さにも、聴くほどに感銘するのでした。
A-2 Billie-Doo
サド・ジョーンズのオリジナルで、朴訥として粘っこいハードバップのブルースで、ここでもリズム隊が実に良い雰囲気です。
そしてサド・ジョーンズの柔らかいブルースフィーリングが、少しずつ熱くなっていく伝統的な展開が、快感! 微熱があるような音色のトランペットが、たまりませんねぇ~♪
またビリー・ミッチェルもソフトな黒っぽさで迫ってきます。たっぷりとしたファンキー感覚やタフテナー系のキメが最高! ちなみにサド・ジョーンズとビリー・ミッチェルは駆け出し時代から一緒にバンドを組んでいたらしく、カウント・ベイシー楽団でも1950年代末頃から共に在団していた時期もありました。
A-3 If I Love Again
クリフォード・ブラウン&マックス・ローチのバンドでは十八番でしたから、これは勇気ある挑戦! そして見事に結果を出しています。
まず快適な4ビートを敲き出すマックス・ローチの押えたドラミング、歌心の真髄を聴かせるバリー・ハリスの超快演が素晴らしく、それだけでシビれます♪
ちなみに当時のバリー・ハリスは、デトロイトで活躍していたところをサド・ジョーンズに誘われ、特にニューヨークへ出て来てのセッションだったとか!! 隠れ名手の本領発揮ですねぇ♪
そしてビリー・ミッチェルがソフトな音色でファンキーを演じた後、いよいよサド・ジョーンズが登場し、気負う事なく絶妙の味わいを聞かせてくれます。フレーズを重ねる度に熱くなっていくサド・ジョーンズ、それに合わせて白熱化するマックス・ローチのドラミング! 気の利いたアレンジも良いですねぇ~。
ちなみにクリフォード・ブラウンが夭逝したのは、このセッションの3週間前でしたから、マックス・ローチ以下、バンドメンバーも胸に去来する様々な想いがあったのかもしれません。
B-1 If Someone Had Told Me
あまり有名ではない歌物スタンダードですが、サド・ジョーンズは朴訥として朗々とテーマメロディを歌い上げ、バリー・ハリスが最高の伴奏をつけたスローな演奏になっています。
あぁ、実に素晴らしいです!
途中から入ってくるマックス・ローチのシンバル、そしてパーシー・ヒースのベースは、共に強いビートが持っていますが、嫌味になっていません。そしてサド・ジョーンズは、優しく、力強く演奏を発展させ、会心の名演を披露していくのでした。
B-2 Thedia
オーラスはサド・ジョーンズのオリジナルで、これまた和みのハードバップですから、まずはビリー・ミッチェルが本領発揮のソフトファンキー♪ するとバリー・ハリスはマイルドな歌心で酔わせてくれます。トミー・フラナガンあたりが好きな人には、絶対のオススメですよ。
肝心のサド・ジョーンズは中間派っぽいフレーズ展開にモダンなノリという、些かトンパチなところもありますが、総じて個性的で、元祖伝承派という楽しいアドリブを聞かせてくれます。
ということで、派手さはありませんが、ガイド本には登場する事も多い名盤です。ジャズ喫茶よりは自宅で聴いて味わい深い仕上がりかと思います。
特に私は「If Someone Had Told Me」が大好きですし、全篇でのバリー・ハリスの隠れ名演とか、聞き飽きないですねぇ♪
アルバムタイトルは「荘厳なサド・ジョーンズ」ですが、マニアの間では「鳩」と呼ばれる、愛すべき作品ですから、一度は楽しんで下さいませ。