今年も押し詰まるだけ詰まったところで、仕事のトラブルがイマイチ、解消されません。自分でも煮詰まりを感じていますから、本日は、これを聴きました――
■Dave Digs Disney / Dave Brubeck (Columbia)
楽しいアルバムが多いデイヴ・ブルーペックの諸作中、特に親しみやすい1枚で、タイトルどおりディズニー映画の名曲集♪
録音は1957年6&8月、メンバーはポール・デスモンド(as)、デイヴ・ブルーベック(p)、ノーマン・ベイツ(b)、ジョー・モレロ(ds) ですから安定感があって、なおかつ硬派なところも含んだ快演ばかりです――
A-1 Alice In Wonderland / 不思議の国のアリス (1957年6月29日録音)
今日ではビル・エバンスの十八番だった事で名曲・名演になっておりますが、このバージョンも素晴らしく、個人的には大好きです。
まずデイヴ・ブルーベックが穏やかにテーマメロディをひとりで弾いた後、グッとメリハリの効いたリズムアレンジが入って、そのまんまポール・デスモンドの甘いアルトサックスに引き継がれるところからして、最高です。
シャープなビートを刻むジョー・モレロのブラシもゴキゲンですし、歌いまくるポール・デスモンド、さらに何時しかリズムを逸脱したようなスイング感を聞かせるデイヴ・ブルーベックのアドリブは、煮え切らないようでクセになる魅力があります。
そしてクライマックスはアルトサックスとピアノの絡みによる、如何にも白人らしい知性的なアドリブ構成が、このバンドの特性を良く表しているのではないでしょうか。
それでもなお、ジャズ本来の楽しさを蔑ろにしていないところが、素敵だと思います。
A-2 Give A Little Whistle / 口笛吹いて (1957年6月29日録音)
これまたジョー・モレロのブラシが冴え渡った軽快な演奏ですから、楽しい限り♪ ポール・デスモンドの涼やかなアルトサックスの音色、そしてここでの流麗な歌心には、何時聴いても心がウキウキさせられます。
ところがデイヴ・ブルーベックが一筋縄では収まらない妙なスイング感を披露! 楽しいフレーズやテキパキとしたノリは、確かに分かり易いのですが、ここでもリズムを無視したような、ミョウチキリンなアドリブを展開しているんですねぇ~。
しかしジョー・モレロとノーマン・ベイツの4ビートが鉄壁ですから、決して本道から外れない見事な演奏が大変に魅力的です。
そしてクライマックスは、もちろんポール・デスモンドとデイヴ・ブルーベックのクラシック調の絡み合いなのでした。うっ、MJQのような……♪
A-3 Heigh - Ho (1957年8月3日録音)
早いテンポでジョー・モロレのドラミングが強烈な演奏です。叩きつけるようにテーマメロディを弾くデイヴ・ブルーベックのヤケクソな感性もジャズっぽく、ツッコミ気味にアルトサックスを鳴らすポール・デスモンドも、憎めません。
しかしここは、やっぱりジョー・モレロ! 千変万化のテクニックと鉄壁のビート感で素晴らしいドラムソロを展開しています。もっと長くても、きっと飽きなかったでしょう。
B-1 When You Wish Upon A Star / 星に願いを (1957年8月3日録音)
ディズニー作品では一番有名な曲でしょう。
ところが誰もが知っているメロディを、デイヴ・ブルーベックは2ビートで意地悪く変奏するのですから、本当に一筋縄ではいきません。
しかしポール・デスモンドはアドリブとは思えないほどに美メロばかりのフレーズを綴ります。けっこう鋭い硬派なところもあって、流石ですねぇ。
全体としては緩やかなビートでの演奏が、一層、シブイ感じです。
B-2 Some Day My Price Will Come / いつか王子様が (1957年6月30日録音)
これもマイルス・デイビスが有名にした感じのメロディ解釈になっています。もちろん、こちらの演奏が先なんですが、キモはワルツビートでのアドリブ展開でしょう。リズム隊の完璧なスイング感に煽られて穏やかにアドリブしていくポール・デスモンドは、確実に桃源郷を作り上げていきます♪
う~ん、それにしても、この纏まりの素晴らしさはレギューバンドの良さなんでしょうねぇ。デイヴ・ブルーベックは例によって、リズム外しのようなアドリブに走りますが、絶対に迷い道にならないのですからっ!
ジョー・モレロのブラシは気持ち良さの塊です。
B-3 One Song (1957年8月3日録音)
あまり有名ではない曲ですが、スピード感満点の4ビートで正統派ジャズの模範演奏になっています。特にポール・デスモンドは好調で、柔らかな音色による豊かなアドリブフレーズの洪水は、見せ場のブレイクでも冴えまくり♪
デイヴ・ブルーベックは些か生硬なノリで、グルーヴィとは正反対のビアノを聞かせてくれるのもご愛嬌というか、抜群のスイング感を作り出すジョー・モレロとの対比が、このバンドの魅力と実感させてくれるのでした。
ということで徹頭徹尾、楽しい作品ですから、私はジャズ喫茶では聴いた記憶がありません。名盤認定もされていないのでしょうか……。あまり評論家の先生方も推薦していないようです。
まあ、デイヴ・ブルーベックとポール・デスモンドのコンビによるアルバムは、素敵なブツが多いですから、さもありなんでしょうね。
私は煮詰まった時、こんなアルバムを聴いているということで……。