やれやれ、年末で仕事も追い込みだというのに、もう来年のスケジュールがビシバシに入っているという情けなさ……。
正月も仕事あるしなぁ……。家族は旅行へ行くというし、もはや何のために働くのか、自問自答すると、やはり自分の物欲の為でしたとさ。
ということで、本日は――
■Stan Getz Quartet (Prestige)
スタン・ゲッツは白人テナーサックス奏者の最高峰! こう、私は断言してしまいますねぇ。もちろん、お叱りは覚悟しておりますが。
その豊かな歌心、流麗なフレーズ展開、誰にも真似出来ない天才的なリズム感、そして甘美で涼しい音色の魅力♪ そこへ進取の気概もあるのですから、本当に凄い人でした。
しかし当然ながら、駆け出し時代はビバップに強い影響受けた、バリバリと生硬に吹きまくるスタイルで、それが決定的に変化したのが、1948年12月末に行われたウディ・ハーマン楽団での「Early Autumn」セッションというのは定説だと思います。
そこに聴かれるソフトでスマートな演奏で、スタン・ゲッツは人気を得たのですが、それをさらに推し進め、確固たるスタイルを極めた最初のピークが、翌年から残されるプレスティッジでのセッションでしょう。
そしてこのアルバムは、リアルタイムではSPフォームで作られた音源を集めた12吋LP盤で、収録曲順は必ずしも録音毎では無く、片面通して違和感の無いプログラムにされています――
A-1 There's A Small Hotel (1950年1月6日録音)
A-2 I've Got You Under My Skin (1950年1月6日録音)
A-3 What's New (1950年1月6日録音)
A-4 Too Marvelous For Words (1950年1月6日録音)
A-5 You Stepped Out Of A Dream (1950年4月14日録音)
A-6 My Old Flame (1950年4月14日録音)
B-1 Long Island Sound (1949年6月21日録音)
B-2 Indian Summer (1949年6月21日録音)
B-3 Mar-Cia (1949年6月21日録音)
B-4 Crazy Chords (1949年6月21日録音)
B-5 The Lady In Red (1950年4月14日録音)
B-6 Wrap Your Troubles In Dreams (1950年4月14日録音)
――という演目は、全てが最高♪ 何度聴いても、飽きることを知りません。
☆1949年6月21日録音
B-1 Long Island Sound
B-2 Indian Summer
B-3 Mar-Cia
B-4 Crazy Chords
メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、アル・ヘイグ(p)、ジーン・ラミー(b)、スタン・レヴィー(ds) という理想的なカルテット♪ もちろん全員がリーダーの意図するクールスタイルには精通していたのでしょう、とにかくスタン・ゲッツの柔らかな歌心を万全にサポートしています。
特に独自のドライヴ感が全開した「Long Island Sound」は、明らかにビバップから抜け出した演奏で、スタン・ゲッツはもちろんのこと、アル・ヘイグの仄かにネクラなフレーズ展開、スティックとブラシをシャープに使い分けるスタン・レヴィーのドラミングの素晴らしさ♪
ホノボノとした「Indian Summer」も最高ですし、アドリブ真っ向勝負の「Crazy Chords」やジンワリと心に染み入る「Mar-Cia」といったスタン・ゲッツのオリジナル曲も冴えています。
☆1950年1月6日録音
A-1 There's A Small Hotel
A-2 I've Got You Under My Skin
A-3 What's New
A-4 Too Marvelous For Words
メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、アル・ヘイグ(p)、トミー・ポッター(b)、ロイ・ヘインズ(ds) という白黒混成のバンドで、特にドラムスとベースが黒人らしいグルーヴを提供したことから、逆にスタン・ゲッツの個性が浮彫りになった名演ぞろいです。
まず「There's A Small Hotel」は、まさにアルバム冒頭に置かれるに相応しい快演で、ミディアム・テンポの粘っこいビートの中で自在に浮遊するスタン・ゲッツの名人芸! スカスカの音色も好ましく、さらにアル・ヘイグも最高の歌心を聞かせてくれます。
もちろん人気バラードの「What's New」はソツが無さ過ぎて面白くないほどの完成度ですし、意想外とも言えるグルーヴィな表現で熱くなる「Too Marvelous For Words」も深遠です。また、穏やかにスイングしまくる「I've Got You Under My Skin」は、テーマメロディの変奏が見事だと思います。
☆1950年4月14日録音
A-5 You Stepped Out Of A Dream
A-6 My Old Flame
B-5 The Lady In Red
B-6 Wrap Your Troubles In Dreams
メンバーはスタン・ゲッツ(ts)、トニー・アレス(p)、パーシー・ヒース(b)、ドン・ラモンド(ds) という、一筋縄ではいかないカルテットで、多分、レコーディング用の臨時編成かと思われますが、これまた素晴らしい♪
とにかく「You Stepped Out Of A Dream」はスタン・ゲッツ畢生の名演とされた決定的なバージョンです。ソフトにかすれる音色で深みのあるテーマメロディが変奏されていく、ただそれだけで完全KOされてしまいます。パーシー・ヒースのベースも強い印象を残しますが、続いてアドリブを無限大に飛翔させるスタン・ゲッツには、後光がさしている感じです。
そして力強くて優しい「My Old Flame」での充実した表現も素晴らしく、ラテンのリズムで楽しくスイングする「The Lady In Red」では、後のボサノバに通じる雰囲気も楽しめます。
しかし「Wrap Your Troubles In Dreams」では、やや煮え切らない感じがしてしまいます。妙に力んで新しい展開を模索しているのでしょうか……。後付ですが、続くルーストやヴァーヴ時代の萌芽と受け取れないこともありません。
ということで、スタン・ゲッツはもちろんのこと、共演者も素晴らしい出来栄えの演奏ばかりです。特にアル・ヘイグは最高ですねぇ~~~♪ 私はこのアルバムで、アル・ヘイグの虜になりましたです。
スタン・ゲッツは、速いテンポの演奏でも、ルーストやヴァーヴのセッションとは異なり、闇雲に疾走することをしていません。そのあたりが私には好ましく、このアルバムには何時までも愛着が持てるのでした。