■The Things Are Getting Better / Cannonball Adderley (Riverside)
キャノンボール・アダレイの代表的な人気盤のひとつですが、やはり「全ては順調~♪」というアルバムタイトルに偽り無しの演奏、そしてジャケットに写る本人の笑顔が実に印象的ですよね。
連日のハードワークに些か疲れ気味のサイケおやじの願望が、ここにあるのは言わずもがなでしょうか……。
録音は1958年10月28日、メンバーはキャノンボール・アダレイ(as)、ミルト・ジャクソン(vib)、ウイントン・ケリー(p)、パーシー・ヒース(b)、アート・ブレイキー(ds) という、当時のジャズ界ではトップを競っていたマイルス・デイビスのセクステット、MJQ、そしてジャズメッセンジャーズが揃い踏みという絢爛豪華な大セッション♪♪~♪ もちろん内容も素晴らしいの一言に尽きます。
A-1 Blues Oriental
タイトルどおり、ちょっとアジア風エスニックなテーマメロディには悪い予感もするのですが、そこは作者がミルト・ジャクソンとあって、アドリブパートはブルース味がひたすらに濃厚! 真っ黒な余韻がたまらないヴァイブラフォンの響きが、まず最高です。
そしてキャノンボール・アダレイの大袈裟とも言えるアルトサックスの泣き叫びにしても、実はプッ太い音色とファンキーフレーズのビバップ的な展開を大切にしています。
となれば、ウイントン・ケリーの粘っこい飛び跳ね節も「お約束」ですし、アート・ブレイキーの強靭なバックピート、さらに土台を固めるパーシー・ヒースの堅実な演奏も流石の味わいで、まさに人気アルバムの露払いとしては、これ以上はありえないと思います。
A-2 Things Are Getting Better
そして続くのがゴスペルファンキーが極みのアルバムタイトル曲♪♪~♪ 最高のリズム隊によって作られるミディアムテンポの強力なグルーヴには、おもわず手拍子、足拍子、ですよっ! ミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが抑え気味なテーマの提示、それを熱く煮詰めていくキャノンボール・アダレイのアルトサックスも良い感じ♪♪~♪
ですからアドリブパートの楽しさ、熱狂は保証付きの痛快さがゴキゲンです。
あぁ、それにしても、ここでのアルトサックスの鳴りっぷりは凄すぎますねぇ~♪
またミルト・ジャクソンのハードバップな躍動感は水を得た魚ですし、続くウイントン・ケリーのファンキーな味わい、そしてパーシー・ヒースの職人芸が好ましいペースソロ!
全く間然することのない名演だと思います。
A-3 Serves Me Right
一転して陰鬱な「泣き」のメロディが最高というスロ~バラードの世界ですが、これもまた参加メンバーにとっては薬籠中の名演が胸に迫ってきます。まずヘヴィなイントロのキメから天才的な歌心を披露するミルト・ジャクソンが実に良いですねぇ~♪
そして繊細な節回しでテーマを吹奏するキャノンボール・アダレイの神妙なプレイも、侮れません。サビをキメるミルト・ジャクソンの上手さが、これまた絶品♪♪~♪
ですからアドリブパートもこの2人がメインになるのですが、力強いリズム隊の働きも流石だと思いますし、全篇に横溢する気分はロンリーな味わいにシビレますよ。
A-4 Groovin' High
ビバップの聖典曲に挑戦するバンドメンバーでは、やはりチャーリー・パーカーを意識せざるをえないキャノンボール・アダレイが大ハッスル! しかも自らの個性を失うどころから、逆に豪快なウネリと破天荒なファンキー節が炸裂した名演を聞かせてくれます。
ただし、それゆえに些かの「軽さ」も否めません。
このあたりはアルバム全体の中でも異質という感じなんですが……。
それを普遍的なハードバップの王道にしているのが、ミルト・ジャクソンやウイントン・ケリーのマンネリ寸前というアドリブと言えば、贔屓の引き倒しでしょうねぇ。
しかし、これが実に心地良いんですっ!
ドラムスとベースのストライクゾーンど真ん中の4ビートも、この時代ならではの魅力だと思います。
B-1 The Sidewalks Of New York
どうやらスタンダード曲のようですが、クレジットではアレンジがキャノンボール・アダレイということで、微妙なゴスペルムードを湛えたテーマのアンサンブルが素敵です。
そしてアドリブパートでは、それを増幅していくミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンがニクイばかりですし、キャノンボール・アダレイのアルトサックスが泣き叫ぶブレイクから突進していく勢いは絶品! グッと馬力を強くするリズム隊も恐ろしいばかりですよ♪♪~♪
まさにこれがハードバップ! イェェェェェェ~~~!
ハッと気がつくと、ジャズモードへどっぷり自分に怖くなるほどです。
B-2 Sounds For Sid
キャノンボール・アダレイが書いたオリジナルのブルースですから、初っ端からの大袈裟なアルトサックスの泣き叫びも、決してクサイ芝居と言ってはなりません。
続いて重厚なグルーヴを演出するパーシー・ヒースのペースワーク、さらに十八番の展開に歓喜のブルースフィーリングを発散させていくミルト・ジャクソンのヴァイブラフォンが、もう最高♪♪~♪ それに絡みつつ絶妙な伴奏を聞かせてくれるウイントン・ケリーにも嬉しくなります。
そして当然、キャノンボール・アダレイがダーティなファンキーフレーズを駆使して綴るブルースな表現は、大袈裟との一言では片付けられないと思いますし、抑え気味のバックピートが逆に凄いというアート・ブレイキーのドラミングも秀逸でしょう。もちろん、ここぞっ、では怖いリックを敲いていますよ。
B-3 Just One Of Those Things
さて、オーラスは有名スタンダードのハードバップ的解釈♪♪~♪ その典型が実に見事な快演になっています。まずはアップテンポながらヘヴィなグルーヴを提供するリズム隊が、やはり素晴らしいですねぇ~♪ アート・ブレイキーのシャープなキメとメリハリが特に強烈です。
そしてアドリブ先発のミルト・ジャクソンが、まさに驚異的なノリでキャノンボール・アダレイへとバトンを渡せば、待ってましたの爆裂アルトサックスが豪放なフレーズを連発してくれますから、本当にたまりません。ウネリと鳴りっぷりも凄いですねぇ~♪
さらにウイントン・ケリーが、これまたこちらの思っているとおりのスイングしまくったピアノを聞かせてくれますから、まさにハードバップの桃源郷ですよ。
ラストテーマへと纏めていくバンドの一体感も最高だと思います。
ということで、駄演や捨て曲がひとつもない、名盤アルバムだと思いますし、これが日常的に行われていた当時の凄さは、ちょっと筆舌に尽くし難い感じですね。
歴史的にはキャノンボール・アダレイにしても傑作盤「イン・シカゴ」からマイルス・デイビスの「カインド・オブ・ブルー」を経て、ナット・アダレーとの兄弟バンド再結成へ向かう上昇期ですし、ハードバップというか、モダンジャズそれ自体が最高にヒップだった時代の記録として、至極当然の結果なのかもしれません。
それゆえに「聴かずに死ねるか!」の1枚だと思いますが、直接的にスピーカーに対峙しなくとも、自然にグッと惹きつけられる魅力満載の名盤が、これっ!
あぁ、本日も断言してしまったです……。