OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ブライアン・オーガーの意地は痛快!

2009-12-15 11:53:51 | Rock Jazz

Definitely What / Brean Auger & The Trinity (Marmalade)

最近は我国でも人気が著しく安定したイギリスのキーボード奏者、その名もブライアン・オーガー&ザ・トリニティの2枚目のアルバムですが、実はデビュー盤だった前作「オープン」、および関連シングル曲がバンドメンバーだった女性歌手のジェリー・ドリスコール名義で売り出されたことから、ブライアン・オーガーは怒り頂点!

そこで当時のプロデューサー兼マネージャーだった凄腕興行師のジョルジォ・ゴメルスキーと大喧嘩の末に、ようやく実質的なリーダー盤として制作されたのが本作の真相という逸話は有名なところでしょう。

そしてもちろん、中身は秀逸なロックジャズ♪♪~♪

というか、如何にも1960年代末のイギリスという、爛熟したポップサイケとモダンジャズが最高に上手く融合した傑作だと思います。

メンバーはブライアン・オーガー(org,p,vo)、デイヴ・アンブローズ(b)、クライヴ・サッカー(ds) というトリオを中心に、ジャズ系のビッグバンドやストリングスのセッションオーケストラ、また男女混声のコーラス隊が大きく参加していますが、ブライアン・オーガーのボーカルはともかく、オルガンのアドリブや演奏全体の熱気、さらにツボを押さえたアレンジの妙が実に秀逸!

A-1 A Day In The Life
 ご存じ、ビートルズが至高の名曲として、その楽曲の完成度の高さもありますから、モダンジャズでもウェス・モンゴメリー(g) やグラント・グリーン(g) 等々、ソフトロックとソウルジャズの巧みな折衷名演が多数残されていますが、このブライアン・オーガーのバージョンも素晴らしいです♪♪~♪
 いきなりオルガンがリードしていく曲メロの背後には重厚にしてメリハリの効いたオーケストラが配され、しかもボサロックなドラムスにソウルフルなエレキベース! もう、ここだけで完全にサイケおやじが大好きな世界です。
 ちなみにアレンジャーとしてジャケットにクレジットされているのはリチャード・ヒルとブライアン・オーガー本人ですが、両者共に当時のヴァーヴやCTIあたりの所謂イージーリスニングジャズを相当に研究したと思われる仕事は、流石に目配りが秀逸だと思います。
 そして肝心のブライアン・オーガーのオルガンは、そのクールな雰囲気と押さえ気味のアドリブがバックのオーケストラと自然に融合し、中盤からの盛り上がりには血が騒ぎますよ。さらに最終盤のピアノの一撃は、オリジナルへの敬意でもありますが、次曲への繋ぎとしても最高の効果になっています。

A-2 Geoge Bruno Money
 で、そのピアノの一撃を合図に、間髪を入れずスタートするのが、このスピード感が心地良すぎるオルガンジャズの決定版! ほとんどジミー・スミス&オリバー・ネルソンの世界を疑似体験する痛快な潔さです。
 しかも、これは賛否両論でしょうが、ブラアン・オーガーが自ら歌ったと思われるボーカルは正直、オトボケとしか思えないものがあります。しかし、その一生懸命さゆえに可愛くもあり、憎めません。
 まあ、それはそれとして、ここではやっぱりオルガンジャズの楽しさを徹底的に楽しめることを楽しみましょうね。スバリ、楽しいんですよ♪♪~♪

A-3 For Horizon
 これまたモードジャズにどっぷりのボサロック系サイケデリック演奏で、その幻想的で深みのある曲メロが一瞬、ハービー・ハンコック?
 と思った次の瞬間、心地良く脱力したボーカルが聞こえてくる展開が、如何にも当時の最先端を狙ったものでしょう。しかし、ここでも演奏パートの方が魅力的なのは言わずもがな、全体のアレンジの綿密にして分かり易いところは、後のフュージョンに繋がるものかもしされません。

A-4 John Brown's Body
 あまりにも有名なメロディを素材にソウルフルなロックジャズが遠慮なく楽しめます。
 ファンキー&ゴスペルなブライアン・オーガーのオルガン、セカンドラインまでも叩いてしまうドラムス、そして重心をさらに低くして蠢くエレキベース! 本当に最高♪♪~♪
 おまけに大コーラスとオトボケのホーンセクション、各種のお遊び風効果音が、最後の最後で正体を現すという仕掛けも憎めませんねぇ。

B-1 Red Beans And Rice
 スピード感満点に突っ走るロックジャズのインストですから、当然ながらブッカーT&MG's のオリジナルバージョンをブリティッシュロックで解釈したと書くべきなんでしょうが……。
 率直に言えばハードロックと4ビートの味わいばかりが強調され、個人的には、もう少しソウルフルなムードを望みたいところです。
 しかし爽快感は抜群で、これを聞きながら車の運転をしていると、完全にスピードオーバーでしょうね。アブナイ、アブナイ!

B-2 Bumpin' On Sunset
 これは嬉しい選曲で、もちろんウェス・モンゴメリーが秀逸なオリジナルバージョを残しているイージーリスニングジャズの素敵なメロディ♪♪~♪ それをブライアン・オーガーは実に愛情溢れる解釈で、まさに薬籠中の快演を聞かせてくれます。
 リズム隊の定型ビートを土台に、まるっきりそのまんまのアレンジが逆に潔いオーケストラを従え、ブライアン・オーガーのキーボードが冴えわたりアドリブパートは、要所にキメを入れつつも、極めて自然体の計算が働いているようです。
 そして本人にとっても会心の仕上がりだったのでしょう、後々までライプでは人気の演目となり、また再演バージョンも残されていますが、ここでのテイクは流石に素晴らしいと思います。

B-3 If You Live
 ブライアン・オーガー流儀のジャズブルースというか、ピアノを弾き語るようなムードは失礼ながら本人のヘタウマボーカルによって、なかなか十人十色の好みが魅力的かもしれません。
 ただし結論から言うと、次曲の「Definitely What」が些か凝り過ぎのところがありますから、その前段として、こういうリラックスした演奏が配置されたアルバム構成は用意周到でしょう。実際、間奏でのピアノは実にグルーヴィなアドリブを聞かせてくれますから、私はそれなりに楽しい気分にさせられてしまうのですが……。

B-4 Definitely What
 土人のリズムと原始の響きを思わせるフルート、それがフリージャズなペースソロに繋がり、またまたフルートによる素朴なメロディが流れてくるという、ちょいと???の展開ですから、う~ん……。
 実はブライアン・オーガーの、これが悪いクセというか、自分のリーダー作では、ほとんど毎回、ひとつはやってしまう毎度の凝り過ぎなんですよねぇ……。おそらく何かの意地か、失礼ながら勘違いの創作意欲なんでしょうが、個人的には楽しくありません。
 しかしアルバム全体の流れからすれば、オーラスに意味不明の進歩(?)的な演奏を入れるというのは、当時のロックでもジャズでも、はたまたポップスの世界でさえも、ひとつの「お約束」になっていた売れセンの歴史もありましたですねぇ。
 そのあたりを覚悟して聴けば、これも悪くないという苦しい言い訳なのでした。

ということで、このアルバムもまた、今日ではCD化されていますので、機会があればお楽しみ下さい。

また同時期に出していたシングル曲も、今日では様々な形で復刻されていますが、そこには尚更に大衆的なロックジャズやソウルジャズが刻まれていて、このアルバムには収めきれなかった快楽主義が楽しめますので、要注意だと思います。

ちなみに私は当然ながら後追いで聴いたわけですが、これが世に出た1968年はロックもジャズもR&Bもポップスも、ある意味ではひとつの頂点にあった時期でしたから、その狭間で揺れながら様々にクロスオーバーを試みていたブライアン・オーガーの奮闘は十分に価値のある仕事だったと思います。

それゆえに今日の人気もムペなるかな、1970年代のフュージョンブームでのブレイクも含めて、残された作品群は好きな人には好き! そういう頑固さを弁護してくれるのが、ブライアン・オーガーの魅力のひとつかもしれません。

コメント (6)
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