OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

史上最強のゲット・ヤー

2009-12-31 10:49:42 | Rolling Stones

Get Yer Ya-Ya's Out! 40th Anniversary Deluxe Edition
                                            / The Rollong Stones (Abkco / ユニバーサル)


ストーンズが1969年の北米巡業から作られた名作ライプ盤のデラックスエディション!

実はご存じのとおり、これは本来、前座出演した黒人ミュージシャン達の演奏も収録したアナログ盤2枚組LPの企画でしたが、発売元の英国デッカレコードから却下され、結局はストーンズの演奏だけを収めた1枚物として発売された経緯があります。

また同時に、歴史的に名高い海賊ライプ盤「Liver Than You'll Ever」が驚異的な売上となったことから、本来は映画用に録られたと思しき音源から制作されたという実情もありますから、その内容の濃さと諸々のエピソードは、まさにロック全盛期の証明でもありました。

そしてついに本年12月、待望の発売となったのが、本日ご紹介の「40周年記念箱」というわけですが、嬉しいことに本来の企画をさらに拡張した音源と映像の多角的なサービスが流石にデラックス♪♪~♪ 3枚のCDとボーナス扱いのDVDが1枚には、ライプ全盛期へと踏み込んでいった上昇期のストーンズの真実が記録されています。

☆Disc-1:Get Yer Ya-Ya's Out! Original Remaster
 01 Jumpin' Jack Flash (1969年11月27日)
 02 Carol (1969年11月28日、昼の部)
 03 Stray Cat Blues (1969年11月28日、昼の部)
 04 Love In Vain (1969年11月26日)
 05 Midnight Rambler (1969年11月28日、夜の部)
 06 Sympathy For The Devil (1969年11月28日、昼の部)
 07 Live With Me (1969年11月28日、夜の部)
 08 Little Queenie (1969年11月28日、昼の部)
 09 Honky Tonk Women (1969年11月28日、昼の部)
 10 Street Fighting Man (1969年11月28日、昼の部)
 このパートについては、オリジナルのアナログ盤収録の音源をリマスターした事になっていて、その詳細については本サイト「サイケおやじ館」内の拙稿「転石音盤史 1970 part 1」を参照していただきたいのですが、そこでも述べたとおり、ライプ音源といっても、後にスタジオで様々な手直しが行われたのはミエミエでした。
 参考までに、海賊盤音源やファンクラブ用の資料から、基本となった録音年月日を入れておきましたが、「11月28日の昼の部」に関しては、おそらくこれまでにコンプリートな音源がブートでも発掘されていないようで、当然ながら私も全貌を聴いたことがありません。
 ただし通称「アップルアセテート」と呼ばれる、この公式ライプ盤の未完成ミックス音源が様々なプートで流通しておりますから、そこでの顕著な違いとか、完成されるまでの試行錯誤がファンにとっては嬉しいところでした。
 で、今回の音質等々は、現行の2002年のリマスターバージョンと基本的な変化はそれほど感じられないものの、低音域の輪郭が幾分、補正されている感じがしています。

☆Disc-2:Unreleased Tracks
 01 Prodigal Son (1969年11月28日、夜の部)
 02 You Gotta Move (1969年11月28日、夜の部)
 03 Under My Thumb (1969年11月27日)
 04 I'm Free (1969年11月27日)
 05 Satisfaction (1969年11月28日、昼の部)
 このパートは公式ライプ盤には未収録の音源集で、もちろんリアルタイムの北米巡業のステージでは定番だった演目ですから、悪いはずがありません。
 ただしこれだったら、当時のライプステージ全体を再現する編集が望ましかったのが本音です。もちろんオリジナルの「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!」と音源がダブりますから、無駄という実態もあるんでしょうが、そこはストーンズですよっ。
 ストーンズも、会社側も、こういう中途半端な姿勢があるから、ブートの需要も尽きないというのが結論では、ちょっと……。
 肝心の演奏については流石に公式音源とあって、アコースティックセットの「Prodigal Son」と「You Gotta Move」におけるミックとキースのシンプルな姿勢、また「Satisfaction」での激したバンドの勢いが克明に楽しめると思います。

☆Disc-3:B.B.King, Ike & Tina Tutner Sets
 01 Everyday I Have The Blues / B.B. King
 02 How Blue Can You Get / B.B. King
 03 That s Wrong Little Mama / B.B. King
 04 Why I Sing The Blues / B.B. King
 05 Please Accept My Love / B.B. King
 06 Gimme Some Loving / Ike & Tina Turner
 07 Sweet Soul Music / Ike & Tina Turner
 08 Son Of A Preacher Man / Ike & Tina Turner
 09 Proud Mary / Ike & Tina Turner
 10 I've Been Loving You Too Long / Ike & Tina Turner
 11 Come Together / Ike & Tina Turner
 12 Land Of 1000 Dances / Ike & Tina Turner

 ある意味では今回の復刻の大きなウリが、このパートです。
 つまり40年前の企画が、ようやく実現したというか、既に述べた本来の2枚組LPの1枚になるはずだった音源が、これだと思われます。おそらく収録されたのも、ストーンズのライプと同じマジソン・スクエア・ガーデンじゃないでしょうか? このあたりは、これまでの海賊盤でも全く聴けなかった音源ですから、確証はありませんが、興味深々♪♪~♪
 そして結果は、素晴らしいです!
 まず前半のB.B.キングは、ご存じモダンブルースの大御所にして、そのギタープレイとゴスペルフィーリングが濃厚な歌唱はロックにも多大な影響を与えた偉人として、今日では黒人芸能の域を超越した存在になっていますが、当時のアメリカでは白人が自発的に楽しめる一般的な人気はなかったと言われています。
 もちろん本人やスタッフは白人マーケットを意識したレコーディングも当時はやっていたのですが、実際の巡業ライプは黒人中心のサーキットでしたから、堂々と白人ファンの多いストーンズの前座というのは、相当に思いきった登場だったと思います。しかもバンドは全盛期の勢いが見事すぎる時代とあって、ハナからケツまでシビレが止まらない演奏ばかり!
 お馴染みのご挨拶という「Everyday I Have The Blues」から定番だった嘆きのブルース「How Blue Can You Get」と続く構成は、わかっちゃいるけど、やめられない♪♪~♪ 躍動して呻き、豪快にウネり、むせび泣くギターとボーカルのコンビネーションをがっちりと支える鉄壁のバンドアンサンブル! いみじくもB.B.キングがMCで「ストーンズに感謝しよう、だって君たちはB.B.キングが楽しめるんだから」という言葉に嘘はありません。
 それは後半のアイク&ティナ・ターナーのパートでも、尚更に鮮やかで、実は同時に制作されたストーンズ初の本格的劇場用映画「ギミー・シェルター」でも、その極一部が観られた濃厚なステージパフォーマンスが存分に楽しめますよ♪♪~♪
 ただし、それゆえに、ここは音源だけなのが非常に残念……。映像が観たくなるのが人情という贅沢は、決して独り言ではないはずです。ここは次なる発掘が待たれますね。
 ちなみにアイク&ティナ・ターナーが意識的に取り上げたと思われる「Gimme Some Loving」「Proud Mary」、そして「Come Together」といった白人ロックバンドのヒット曲を痛烈なR&Bに変換させるエグイ技の数々は、ストーンズが黒人ブルースやR&Bをカパーし、さらにパクっていた事実の裏返しとしても、当時の芸能界の本質が如実に浮き出た現象かもしれません。もう、最高ですよっ!

☆Disc-4:Bonus DVD
 01 Introduction
 02 Prodigal Son
(1969年11月27日)
 03 You Gotta Move (1969年11月27日)
 04 写真撮影
 05 スタジオでのキース
 06 Under My Thumb ~ I'm Free
(1969年11月28日、昼の部?)
 07 Satisfaction (1969年11月27日)
 08 Credits
 これまた、ボーナスというには驚愕の映像集!
 まず演奏部分ですが、音源的には Disc-2 と同じ演目でありながら、別テイク&別バージョンという恐ろしさです。ここは全く個人的な推察として、プート音源等々から演奏データを付記しておきましたが、映像ソースとしては映画「ギミー・シェルター」からの素材を上手く繋ぎ合わせたドキュメント作品として、とにかく物凄い中味の濃さは圧巻!
 特にステージ裏でのストーンズや関係者の様子は、まさに当時の状況の縮図で、なんとジミ・ヘンドリクスも登場! キースやミック・テイラーと簡単なギターセッションまでやっています♪♪~♪ また「Satisfaction」では客席で熱狂するジャニス・ジョプリンの姿もご覧になれますよ。さらに映画制作の関係者とかジャケット撮影現場の様子は、これまでもプート映像で少しは出回っていたとはいえ、日本盤は字幕付きですから、状況がリアルに楽しめます。
 そしてサイケおやじが特に感銘を受けたのが、「スタジオでのキース」というパートです。ピアノを弾いたり、マスターテープを探したり、当時はスタジオのエンジニアで、後にはストーンズのプロデュースも担当することになるクリス・キムジーと作業する真剣さは、歴史のヒトコマにさえ見えてきます。
 それと、例のオルタモントへと移動するストーンズとグレイトフル・デッドの面々がヘリコプターを待っている場面も、後の混乱を鑑みれば、なかなか味わい深いと思います。

ということで当然、サイケおやじには歓喜悶絶のプレゼントになりました。もちろんゲットしたのは日本盤なんですが、それはDVDの字幕がキメ手というわけです。

ちなみに商品仕様は掲載した写真のとおり、豪華な箱に入ったデジパック体裁のディスクが4枚、当時の北米巡業のボスターを縮小したレプリカ、豪華なハードカパーのブックレット、さらに日本盤には翻訳解説書とオリジナル「ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!」のイギリス盤を縮小再現した紙ジャケットが付属するという大サービスが嬉しいかぎり♪♪~♪

そして実は今回、前述した映画「ギミー・シェルター」のリマスターDVDも同時に発売されているのですが、ボーナスDVDに収録の映像は、そのオマケ部分でもご覧になれない素材が使われていますから、要注意!

しかし、これでも、まだまだ出し惜しみしているとしか言えないところが、確かにあるんですよねぇ~~。こうなったら、ど~~しても長生きして、その後は地獄でも天国でも、一生ついていく決意を固めるのでした。

最後になりましたが、今年もお世話になりました。

こうして独善的な戯言プログを続けられたのも、皆様のご厚情があればこそと、感謝しております。

来年も、よろしくお願い致します。

コメント (6)
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